「原告は、取締役からの解任が有効であったとしても、解任の正当な理由がなく、本件決議1がされてから少なくとも平成26年12月1日までの間に取締役であれば得られたであろう役員報酬相当額の損害を被ったとして、会社法339条2項に基づく損害賠償請求をする。
しかし、平成17年法律第87号による廃止前の有限会社法においては取締役の任期は定められておらず、定款上もこれを設けないことが許されていたところ、同法32条が準用する、同号による改正前の商法257条1項ただし書は「任期ノ定アル場合ニ於テ正当ノ事由ナクシテ其ノ任期ノ満了前ニ之ヲ解任シタルトキハ其ノ取締役ハ会社ニ対シ解任ニ因リテ生ジタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得」とし、取締役の任期の定めがある場合にのみ、解任された取締役は解任により生じた損害の賠償を請求し得るとしており、任期の定めがない場合には、取締役は、正当な理由なく解任されたとしても、同項ただし書に基づく損害賠償を請求することはできなかった。
同項を受け継いだ会社法339条2項には「任期ノ定アル場合ニ於テ」に相当する文言はないが、会社法の下では、取締役の任期は法律又は定款によって定められており、任期の定めが全くない場合は想定できないことから同文言は不要とされたものと考えられる。
そして、会社法の施行により、同項の損害賠償責任の本質に変化が生じたという事情はないし、解任された取締役を有限会社法の下におけるよりも手厚く保護する実質的な理由は見当たらない。
そうすると、特例有限会社における任期の定めのない取締役が解任されたとしても、当該取締役は、解任の正当な理由の有無にかかわらず、少なくとも会社法339条2項に基づく損害賠償請求をすることはできないと解するのが相当である。」