【東京地判平成29年1月26日】取締役の解任における正当な理由と解任による損害の範囲

1 「会社法339条は、1項において株主総会決議による役員解任の自由を保障しつつ、当該役員の任期に対する期待を保護するため、2項において、当該解任に正当な理由がある場合を除き、当該解任がなければ当該役員が残存任期中及び任期終了時に得ていたであろう利益の喪失による損害について、会社に特別の賠償責任(法定責任)を負わせることにより、会社・株主の利益と当該役員の利益の調和を図ったものと解される。
同項の「正当な理由」の内容も、以上のような会社・株主の利益と当該役員の利益の調和の観点から決せられるべきものであり、具体的には、会社において、当該役員に役員としての職務執行を委ねることができないと判断することもやむを得ない客観的な事情があることをいうものと解するのが相当である。

2 「以上によれば、前記の原告の行為について、各項目ごとに独立して、会社法339条2項の「正当な理由」があるということはできない。
もっとも、前記…の原告の行為や前記…の原告の対応が、b社グループに属する被告Y2社の代表取締役(社長)の行為として問題のあるものであり、これらを総合すると、原告の代表取締役としての適性に疑念を生じさせる面があることは否定できないところである。しかしながら、他方、証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告Y2社の前代表取締役会長であるCから、業績が低迷して営業力も低い被告Y2社の収益を改善し規模を拡大することを目的として、被告Y2社に招聘されたものであり(そのことは被告Y1監査法人も前提としていた。)、原告自身、そのことを十分認識して同被告の代表取締役(社長)に就任したものであること、実際、被告Y2社の損益は、平成24年6月期から黒字に転じ、原告の在任中は一応黒字を維持しており、同被告の従業員数も、平成24年6月期から平成27年6月期までの間の期末の人員を比較すると、毎年約100人ないし150人ずつ増加していることが認められる。これらの事実を総合すれば、原告が代表取締役として著しく不適任であると断ずることはできず、本件解任について会社法339条2項の「正当な理由」があるとまでいうこともできない。」

3 「会社法339条2項の「損害」とは、当該解任がなければ当該役員が残存任期中及び任期終了時に得ていたであろう利益の喪失による損害をいう。…この点につき、被告らは、前記のとおり、会社と取締役との間の委任契約において、会社の解除権及び解除に伴う処理が具体的に規定されているのであれば、かかる規定に従う限り、会社法339条2項において保護すべき取締役の損失(委任契約に基づく期待権の喪失)は生じず、賠償すべき「損害」を観念することもできない旨主張する。しかしながら、会社と取締役との間の委任契約(取締役任用契約)において、会社の無条件の解除権や解除された場合の処理が具体的に規定されたとしても、そのことをもって、当該取締役の任期に対する期待権が生じないなどと解することはできず、同項の「損害」を観念することができないともいえないから、被告らの上記主張は採用することができない。」

4 「会社法339条2項の趣旨に徴すると、原告主張の弁護士費用は、「解任がなければ当該役員が残存任期中及び任期終了時に得ていたであろう利益の喪失による損害」には含まれず、同項による補償の対象には含まれないと解するのが相当である。」

5 「被告Y2社の原告に対する会社法339条2項に基づく損害賠償債務については、法令上、その履行期限が定められておらず、両者間でその履行期限が定められたとの主張立証もないから、同被告は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うものと解される(民法412条3項)。」


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