【東京地決平成25年9月17日】基準日後取得株主による価格決定申立権行使の可否

1 「参加人は、申立人が保有していた本件株式(2427株)のうち本件基準日後に取得した2081株に係る申立ては、会社法172条1項2号所定の株主に該当しないから、不適法であると主張する。

しかし、会社法172条1項2号は「当該株主総会において議決権を行使することができない株主」と規定するのみであり、他に基準日後に取得した株主に取得価格決定の申立権を認めない旨の明文の規定は存在しない

また、株主が株式の全部取得に係る株主総会の基準日後に株式を取得した場合であっても、その時点において、当該株主が株主総会の議案を認識しているとは限らず、全部取得に係る株主総会決議が成立することが決定しているものでもない。

実質的にも、基準日後に株式を取得した株主は、株式の全部取得に係る株主総会の決議において議決権を有しないとしても、その後の株式の全部取得に係る取得価格決定の申立権までも有しないものと解すべき必然性はなく、全部取得によって株主は強制的に株式を取得されることや、一般的に基準日から株主総会決議の日まで相当の期間が設定される可能性があることに照らすと、基準日後に株式を取得したことをもって、当該株主に対しその投下資本の回収の機会を保障しないとする合理的な理由があるものと認めることはできないというべきである

このことは、株式会社が基準日後に取得した株主の総株式数やその後にされる反対株主による取得価格決定の申立て及びその取得価格を把握できない事情があるとしても、上記判断を左右しない。

そうすると、本件において、参加人が本件基準日の設定前に株式の全部取得に係る本件株主総会の議案を公表したことや、本件公開買付けによって本件全部取得に係る本件株主総会決議の成立が確実であったことを考慮しても、申立人の本件取得価格の申立てを不適法とまで認めることはできず、その他、申立人が株式取得価格決定の申立制度を濫用し不当な投機的目的のみをもって本件基準日後に参加人の株式を取得したことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、参加人の上記主張を採用することはできない。」

2 「会社法172条1項所定の株式取得価格決定の申立制度は、全部取得条項付種類株式の全部取得が株主総会の決議により行われ、当該株式の全部が強制的に取得されることになるから、これに反対する株主等に取得価格決定の申立権を保障し、その経済的価値を補償することにより、当該反対株主等の保護を図ることにある

したがって、株式取得価格決定申立事件における「公正な価格」とは、強制的に株式を取得される少数株主の利益にも配慮し、基準日である取得日において、経営者による企業買収(MBO)が行われなかったならば株主が享受し得る価値(ナカリセバ価格)と、MBOの実施によって増大が期待される価値のうち株主が享受してしかるべき部分とを合算して算定するのが相当であり、裁判所は、その合理的な裁量により、これを決定するものであると解される。」

3 「一般に、株式市場においては、投資家による一定の投機的思惑など偶然的要素の影響を受けながら、多数の投資家の評価を通して、企業を取り巻く経済環境下における、個別企業の資産内容、財務状況、収益力及び将来の業績見通しなどを考慮した企業の客観的価値が株価に反映されているということができる。

したがって、市場株価のある株式の客観的価値を算定するに当たっては、異常な価格形成がされた場合等、当該市場株価がその企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情が存しない限り、評価基準時点にできる限り近接した市場株価を基礎として、当該株式の客観的価値を評価するのが相当である。」


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