1 「会社法369条2項が特別利害関係取締役を取締役会の議決に加わることができないとしている趣旨は、特定の取締役が、会社に対する忠実義務(同法355条)を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないしは会社外の利害関係を有する場合に、取締役個人と会社の間の利害対立を事前に防止するために、当該取締役の議決権行使を否定するところにあると解される。
これを本件についてみると、対象取締役は、取締役会において自己の解任議案が株主総会に提出されるか否かが決定される以上、自己の身分に係る重大な利害関係を有することは明らかであって、会社に対して負担する忠実義務に従い、公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、むしろ自己の利益を図って議決権行使することも否定できない。
そうだとすると、忠実義務違反を予防し、取締役個人と会社との間の利害対立を事前に防止するために、対象取締役は、議決に加わることができないとすることが相当である。」
2 「対象取締役が、自己の解任に係る議案について反対の議決権を行使することで、そもそも株主に当該取締役解任の可否を問う機会すら奪うことがあり得るのであるから、対象取締役は、特別利害関係取締役であるとして、議決に加わることができないとするべきである。」
3 「よって、本件取締役会決議・・・において、対象取締役が特別利害関係取締役に該当するとして議決に加えなかったことに会社法369条2項違反はない。そして、その他本件取締役会決議・・・を違法ならしめる事由は認められないから、本件臨時株主総会の招集手続に重大な法令違反があり、無効であるとはいえない。」