【東京地立川支判平成25年9月25日】非公開会社における属人的定めの効力

1 「会社法109条1項は,株式会社は,株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならないという株主平等原則を定め,同条2項は,同条1項の規定にかかわらず,非公開会社は,同法105条1項各号に掲げる権利(剰余金の配当を受ける権利(同項1号),残余財産の分配を受ける権利(同項2号)及び株主総会における議決権(同項3号))に関する事項について,株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができるとし,属人的定めの制度について定めている。

このような条文の文言及び位置関係に照らせば,属人的定めの制度は,株主平等原則の例外として置かれたものであり,同制度について同法109条1項が直接適用されることはないといわざるを得ない。

しかしながら,株主平等原則は,多数決の濫用や会社経営者による恣意的な権限行使から,個々の株主の利益を保護するため,株式会社に対し,株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務付けるものであるところ,団体の構成員が平等の取扱いを受けるべきことは正義・衡平の理念を基礎とし全ての団体に共通する原則であるから,株主平等原則の背後には一般的な正義・衡平の理念が存在するものというべきである。

そして,属人的定めの制度は,その運用の仕方次第では非公開会社における無秩序状況をも招きかねないものであり,とりわけ,新たに株式を発行する場合と,既に発行されている株式の内容を変更する場合とでは,株主の置かれている利益状況は質的に異なること(前者の場面では,新株を引き受ける者は差別的取扱いを前提に株式を取得するのに対し,後者の場面では,株式取得後に定款変更の特殊決議によって一方的な差別化が行われることになる。)を考慮すると,同制度を利用して行う定款変更であればおよそ如何なる内容のものであっても許されると解するのは相当でなく,株主ごとの異なる取扱いの内容の定め方については,上記理念に照らし,自ずと限界があるものというべきである。

そうすると,属人的定めの制度についても株主平等原則の趣旨による規制が及ぶと解するのが相当であり,同制度を利用して行う定款変更が,具体的な強行規定に形式的に違反する場合はもとより,差別的取扱いが合理的な理由に基づかず,その目的において正当性を欠いているような場合や,特定の株主の基本的な権利を実質的に奪うものであるなど,当該株主に対する差別的取扱いが手段の必要性や相当性を欠くような場合には,そのような定款変更をする旨の株主総会決議は,株主平等原則の趣旨に違反するものとして無効になるというべきである。」

2 「被告が本件決議によって行った属人的定めの制度に基づく定款変更は,その内容としての差別的取扱いが何ら合理的な理由に基づくものであるとはいえず,かえって,前提事実(3)のとおり,本件決議の結果,原告の持株比率は14.7パーセントから0.17パーセントにまで,原告の子であるAの持株比率は6.2パーセントから0.07パーセントにまでそれぞれ減少した一方で,被告の代表取締役であるDの持株比率は13.6パーセントから34.17パーセントまで,Eの持株比率は51.7パーセントから58.97パーセントまでそれぞれ増加したことや,平成24年度の売上げが年商●●●億円にまで達し,将来的にも順調な増収が見込まれる状況の中で原告らの剰余金の配当を受ける権利がその余の23名の株主の100分の1となったことが認められるのであって,これらの事情に照らせば,本件決議は,原告らを被告の経営から実質的に排除し,原告らの財産的犠牲の下に,Dらによる被告の経営支配を盤石ならしめる目的で行われたものであるといわざるを得ない

そうすると,本件決議は,その目的において正当性を欠いており,株主平等原則の趣旨に違反するものというべきである。」

3 「本件決議の結果,原告の持株比率は14.7パーセントから0.17パーセントにまで減少したことや,原告の剰余金の配当を受ける権利は,原告らを除くその余の23名の株主の100分の1となったことが認められ,これらの事情に照らせば,原告は,本件決議の結果,一定の要件を具備することを前提に認められる株主の監督是正権を行使することができなくなり,また,株主としての財産権が大幅に制約されるに至ったものといえ,しかも,全証拠によっても,これに対する経済的代償措置が被告によって講じられたことも窺われない

そうすると,本件決議は,原告の基本的な権利を実質的に奪うものであり,原告に対する差別的取扱いが手段において相当性を欠いているものといわざるを得ず,この点においても,株主平等原則の趣旨に違反するものというべきである。」


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