「抗告人は、長年にわたり、被相続人が人間として尊厳を保ち、なるべく快適な暮らしを送ることのできるように献身的な介護を続けていたものと認められる。このような療養監護は、社会福祉法人として通常期待されるサービスの程度を超え、近親者の行う世話に匹敵すべきもの(あるいはそれ以上のもの)といって差し支えない。
なお、確かに抗告人の施設利用料は、平成18年までは市町村が負担し、それ以降は利用者負担金として毎月5万円程度を被相続人が負担していたが、これは法令に従い所得に応じて決定された金額であって、国等からの補助金があることを考慮しても、被相続人の介護の内容やその程度に見合うものではなかったといえるし、しかも、このような低廉な利用料の負担で済んだことが被相続人の資産形成に大きく寄与したことは、前記認定のとおりである。
これらの事情を総合考慮すれば、抗告人は、被相続人の療養看護に努めた者として、民法958条の3第1項にいう特別縁故者に当たるというべきであり、精算後残存する被相続人の相続財産は、その全部を抗告人に分与するのが相当であると認められる。」