【大阪高決平成15年5月22日】過去の扶養料の求償権は、具体的な財産上の権利であって、扶養審判を通じて行使が可能な権利であるから、その求償権をあえて具体的な財産上の権利ではない「寄与分」とみた上で、寄与分に関する審判を通じて行使させる必要は原則として認められないとした事例

1 「扶養義務者の一人が自己の分担義務の限度を超えて扶養義務を履行した場合、家事審判法9条1項乙類8号所定の審判(以下「扶養審判」という。)を申し立て、過去の扶養料につき他の扶養義務者に求償を求めることができる

この場合、家庭裁判所は、各扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して各人の扶養義務の分担の割合を定めることになる(最高裁判所昭和42年2月17日判決)。

すなわち、過去の扶養料の求償権は、具体的な財産上の権利であって、扶養審判を通じて行使が可能な権利であるから、その求償権を、敢えて、具体的な財産上の権利ではない「寄与分」とみたうえで、家事審判法9条1項乙類9号の2所定の審判(以下「寄与分審判」という。)を通じて行使させる必要は原則として認められない。」

2 「実質的に検討しても、寄与分審判を通じて過去の扶養料の求償を求めることは、必ずしも適切ではない。

被相続人に生活費を渡す、あるいは扶養家族の一員として被相続人を引き取るという通常の扶養は、民法904条の2所定の「その他の方法」に該当するが(同条にいう「療養看護」とは、病気や障害のため日常の起居動作が不自由な被相続人を看護・介護する行為を指す。)、これが特別の寄与と認められるためには、この行為によって被相続人の財産が減少を免れ、相続開始時まで遺産が維持されたという関係が必要となり、この関係が認められた場合に限り、維持されたとみられる遺産の価額が寄与分として評価されるのである。

したがって、遺産総額が少ない場合には、そもそも寄与分制度を通じて過去の扶養料を回収することはできないし、寄与分審判の審理においては、一般に、過去の扶養料の求償権の有無及び金額を定める上で極めて重要な要素となる同順位扶養義務者の資力が調査されることはなく、その資力を考慮して寄与分が定められることもない。

そうすると、寄与分審判によっては、過去の扶養料の求償に関する適切な紛争解決が必ずしも保障されているとはいえないから、過去の扶養料の求償を求める場合には、原則として、扶養審判の申立てがされるべきであるといわなければならない。」

3 「もっとも、遺産分割の機会に、遺産分割に関する紛争と過去の扶養料に関する紛争を一挙に解決するため、過去の扶養料の求償を求める趣旨で寄与分審判を申し立てることが許されないわけではなく、実務上はそのような寄与分審判の申立ても許容されている(先行審判も抗告人の寄与分審判の申立てを不適法とはしていない。)。

しかしながら、この場合であっても、寄与分の認定手法が上記2のとおりであることからすれば、寄与分審判と扶養審判は二者択一の関係に立つとか、寄与分審判の申立てをした以上は扶養審判の申立てが許されなくなると解すべきではない。

すなわち、過去の扶養に関して寄与分審判で何らかの判断がされたとしても、寄与分としては認定されなかった過去の扶養に関し、本来的な権利行使の手段である扶養審判が申し立てられれば、家庭裁判所は、各扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して各人の扶養義務の分担の割合を定める必要があるといわなければならない(もちろん、寄与分が認められた分についてまで、重ねて過去の扶養料の求償が許されることにならないことはいうまでもない。)。」

4 「これを本件についてみると、先行審判の説示は必ずしも明確ではないが、先行審判は、要するに、抗告人の扶養は「療養看護」に該当しないか、Aの遺産の形成に特別の寄与をしたとは認められないから、これを「寄与分」とするのは相当ではないと判断したものと解される。少なくとも、先行審判においては、抗告人と同順位の扶養義務者に求償に応じる資力があるか等の、過去の扶養料の求償の可否を判断するための事実の有無を判断していないし、先行審判の手続において、その事実の調査が行われたとは到底考えられない

したがって、先行審判が存在するとしても、過去の扶養料の求償の可否について、既に裁判所の公権的判断がされたとみるわけにはいかないのであり、その求償に関する原則的権利行使手段である本件申立てが紛争の蒸し返しであるとか、信義則に反する不適法な申立てであると解することはできないのであって、この点に関する原審判の説示は相当ではない。」


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