【最判昭和54年7月10日】特定物の遺贈につき履行がされた場合に民法1041条の規定により受遺者が遺贈の目的の返還義務を免れるためにすべき価額弁償の意義

1 「遺留分権利者が民法1031条の規定に基づき遺贈の減殺を請求した場合において、受遺者が減殺を受けるべき限度において遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れうることは、同法1041条により明らかであるところ、本件のように特定物の遺贈につき履行がされた場合において右規定により受遺者が返還の義務を免れる効果を生ずるためには、受遺者において遺留分権利者に対し価額の弁償を現実に履行し又は価額の弁償のための弁済の提供をしなければならず、単に価額の弁償をすべき旨の意思表示をしただけでは足りないもの、と解するのが相当である。

けだし、右のような場合に単に弁償の意思表示をしたのみで受遺者をして返還の義務を免れさせるものとすることは、同条1項の規定の体裁に必ずしも合うものではないばかりでなく、遺留分権利者に対し右価額を確実に手中に収める道を保障しないまま減殺の請求の対象とされた目的の受遺者への帰属の効果を確定する結果となり、遺留分権利者と受遺者との間の権利の調整上公平を失し、ひいては遺留分の制度を設けた法意にそわないこととなるものというべきであるからである。

これを本件についてみるのに、原審の確定したところによれば、被上告人は、遺贈者亡Aの長女で唯一の相続人であり、遺留分権利者として右Aがその所有の財産である本件建物を目的としていた遺贈につき減殺の請求をしたところ、本件建物の受遺者としてこれにつき所有権移転登記を経由している上告人は、本件建物についての価額を弁償する旨の意思表示をしただけであり、右価額の弁償を現実に履行し又は価額弁償のため弁済の提供をしたことについては主張立証をしていない、というのであるから、被上告人は本件建物につき二分の一の持分権を有しているものであり、上告人は遺留分減殺により被上告人に対し本件建物につき二分の一の持分権移転登記手続をすべき義務を免れることができないといわなければならない。」

2 関連条文

民法1041条1項(遺留分権利者に対する価額による弁償)「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。」


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