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【名古屋地判平成27年3月25日】追突された40歳女子の約2ヶ月後の自殺との因果関係否認、低髄液圧症候群も否認

1 低髄液圧症候群についての医学的知見について

低髄液圧症候群は、脳脊髄液が漏出し、これにより脳脊髄腔内にある脳脊髄液の減少により、頭蓋内圧が低下し、頭が下方に移動することが起こり、脳底部の欠陥などに通常とは異なる張力が加わり、更に硬膜、血管、末梢神経などがけん引されて頭痛が生じたり、頭蓋内圧低下によって生じる代償性の血管拡張により頭痛が生じたりするものをいう。

日本脳神経外傷学会の「外傷に伴う低髄液圧症候群」の診断基準は、次の前提基準1項目及び大基準1項目以上で低髄液圧症候群と診断する、というものである。

(ア)前提基準 ①起立性頭痛(頭部全体及び・又は鈍い頭痛で、座位又は立位をとると15分以内に増悪する頭痛である。)、②体位による症状の変化(項部硬直、耳鳴、聴力低下、光過敏、悪心を指す。)

(イ)大基準 ①造形MRIでびまん性の硬膜肥厚増強、②腰椎穿刺にて低髄液圧(60㎜水銀柱以下)の証明、③髄液漏出を示す画像所見(脊髄MRI、CTミエログラフィー、RI脳槽造影のいずれかにより、髄液漏出部位が特定されたものを指す。)

(ウ)「外傷に伴う」と診断するための条件 外傷後30日以内に発症し、外傷以外の原因が否定的(医原性は除く。)であること。

低髄液圧症候群の治療としては、脳脊髄液が漏出している部位の近傍の硬膜外壁に患者本人の末梢血を注入して髄液漏孔の修復を図るブラッドパッチ療法が有効であるとされている。

また、補液を行い髄液の増加を図るという療法もある。

2 亡Aの受傷内容について

・・・したがって、厚生労働省研究班の基準によれば、亡Aは本件事故による低髄液圧症候群に該当しないと言わざるを得ない。

また、1回の施術ではあるがブラッドパッチ療法によっても亡Aの訴える頭痛が消失しなかったこと、上記頭痛は、頸椎捻挫に伴う頸部痛から派生した症状とも、うつ病に罹患していたことから心因性の症状とも捉えられるものであることからすると、この点からも、亡Aが本件事故の結果、低髄液圧症候群を発症したとは認められない。

3 亡Aの死亡と本件事故との相当因果関係について

本件事故は比較的軽微な事故であったことは、その態様や原告車両の損傷状況、さらに亡Aの受傷内容が、頸椎捻挫等で当初は保存的に通院治療がなされるに止まり、日常生活に大きな誓約をもたらすものではなかったことや同乗していた原告Bの治療経過からも裏付けられる。

したがって、本件事故が、通常重大な結果、特に死亡といった結果を発生させる態様のものではないことは明らかである。

亡Aは、長期間にわたり重篤なうつ病に罹患しており、本件事故当時も改善されてきたとはいえ治療中であったところ、本件事故後の亡Aの症状は、うつ病の症候としても了解可能なものであり、これに元々、思い込みが強く、信じ込みやすいが、上手く行かないと反応しやすい性格であり、衝動性も高いという性格傾向、さらには、本件事故後偶々精神科の主治医の診察が十分に受けられなかったことも考慮すると、亡Aはブラッドパッチ療法に大きな期待を寄せ、これによって改善が認められずに落胆し、自殺に至ったものと推認される。

交通事故は一般的にはストレス要因となり得るものであり、本件事故が亡Aのうつ病を悪化させた一因であることは否定できないものの、比較的軽微な本件事故から、短期間の内に被害者である亡Aの死亡との結果が生じることは一般的に予見できる事柄とはいえない

また、上記結果は特別の事情というべきところ、被告Yにおいて本件事故時にこれを予見可能であったという事情は見当たらない

したがって、本件事故と亡Aの死亡との間に相当因果関係を認めることは困難といわざるを得ない。


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