重要判例【京都地判平成23年10月7日】加害者の事故直後の暴言及び訴訟における主張内容と通院慰謝料の増額

1 被告Aは、本人尋問において、原告がいたところの1.5mくらい手前で停止し、バックモニターで見ながら後退していたので、原告に当たっていないし、警察官にも当たっていないと説明したと供述する。

しかし、被告Aは、その少し後に当たったことについて抗議した原告に対して、当たっていないことを述べたり、本当に当たったのかどうか、どこが当たって痛まないかどうかなどを尋ねることもせず、原告に対し、、「どけや」と怒鳴りつけ、「バックブザー鳴ってんのに聞こえへんのか」と原告に言い、そのように怒鳴ったり言ったりしたのは、「バックブザーが鳴っているのになんでどかんのや」という気持ちがあったからだと供述している。また、原告に対して、「くそがき」などという汚い言葉を投げかけたことも否定しない

2 通院慰謝料について

負傷内容及び通院治療経過に照らし、実質的には通院5か月程度の治療と評価するのが相当である。

これに対応する標準的な通院慰謝料は、108万円であると解される。

また、本件においては、被告側の一方的な過失であるに止まらず、ほぼ故意とも言うべき事故状況であるにも関わらず、事故直後に原告は被告車運転者である被告Aから乱暴かつ汚い言葉で罵倒を浴びせられるなどし、その後一時的に責任を一応認めるような対応が被告側からされたこともあったが、その後再び責任否定に転じ、本件訴訟においても、被告らは自己の存在自体を否定する主張を行い、被告Aは当たっていないと断言する証言を行っている

これらの事情は、原告の本件事故による精神的苦痛を著しく増幅したと認められるから、この点を慰謝料額に反映するのが相当であり、標準的な慰謝料額に2割加算することとする。