重要判例【京都地判平成26年7月1日】将来の手術費否定、後遺障害11級慰謝料520万円で考慮

1 将来の手術費について

今後、大腿骨骨頭壊死や変形性股関節症が生じ、人工関節手術が必要になる可能性があり、定期的に通院して診察及び検査を受ける必要のあること、現に症状固定後も定期的に通院して診察及び検査を受けていることが認められるものの、症状固定後の治療費については、後遺障害慰謝料の中で考慮するのが相当である

…先に認定したとおり、本件事故による後遺障害として、原告に大腿骨骨頭壊死や変形性股関節症が生じ、人工関節手術が必要になる可能性のあることが認められ、証拠によれば、上記手術には約3週間の入院期間と、10割全額負担として、手術料を含む入院費用として約230万円、入院前・術前検査として約5万円、食事療養費として約3万8000円を要することが見込まれる。

もっとも、現時点で上記手術の蓋然性は具体化していないこと、将来上記手術を行う場合には健康保険で対処される可能性も高いことからすれば、現時点で損害が具体化しているとは言い難く、上記手術の可能性やその費用については、後遺障害慰謝料の中で考慮するのが相当であり、これとは別に将来の手術費を認めることはできない

2 入院付添看護費について

原告は、本件事故による傷害により、平成19年11月12日から同年12月30日まで49日間の入院を余儀なくされたこと、その間、2度の手術を受け、術後はベッド上での介達牽引を要し、その後も松葉杖で歩行できるようになるまでリハビリを要したこと、そして、この間、食事や排泄などの身の回りの世話や、移動時の介助やリハビリの手伝い等に付添看護を要し、両親が少なくとも2日に1度は来て、付添看護にあたっていたことが認められる

このような入院中の原告の状態にかんがみれば、入院付添看護の必要性が認められ、その費用は、入院期間を通じて1日6500円と認めるのが相当である。

3 通院付添看護費について

原告は、退院後も両松葉杖を必要とし、平成20年1月16日から部分荷重歩行が可能となり、同月28日より全荷重歩行が可能となって片松葉杖となったものの、同年2月27日まで松葉杖を必要としたことが認められ、この間の通院時には、母親による付添が必要であったことが認められる。

このような通院時の原告の状態にかんがみれば、通院付添看護の必要性が認められ、その費用は、上記17日間の通院につき1日3300円と認めるのが相当である。

4 後遺障害慰謝料について

原告には併合11級に相当する後遺障害があり、証拠によれば、上記後遺障害により、階段の上り下り、長時間の歩行、同じ姿勢の維持等、日常生活にも支障があり、趣味であったハイキングや登山ができなくなったことが認められる。

また、将来的に大腿骨骨頭壊死や変形性関節症が生じ、人工関節手術が必要になる可能性があり、定期的に通院して診察及び検査を受ける必要があるほか、仮に手術が必要となった場合には相当の費用を要するところ、原告は、このような不安を抱えての生活を余儀なくされた

以上の点を考慮すると、原告の後遺障害慰謝料は520万円とするのが相当である。