重要判例【大阪地判平成25年12月3日】福祉施設の送迎運転手の休業損害、後遺障害慰謝料(14級9号)

1 休業損害について

ア 平成22年1月20日まで

原告(男・55歳・症状固定時56歳・福祉施設の送迎運転手)は、事故日から平成22年1月20日までの間、F福祉会の仕事を休んでおり、その間休業損害が発生していたことが認められる。

そして、①当該期間中に原告は1か月入院しており、その後も通院を続けていた上、その後症状固定までなお10か月以上を要していること、②原告の職種が運転手であり膝の症状の影響は小さくなかったと思われること、③原告がF福祉会以外で勤務する蓋然性が認められない状況であったこと、④平均賃金で基礎収入を認定しているのであればともかく、本件では認定できる基礎収入が日額3180円と低額であり、全額について休業損害として認定しても損害規模としての不均衡があるとは考え難いこと等を総合すると、当該期間の休業損害について割合的な認定をすることは本件に関しては相当ではなく、当該期間の休業全体について、100%の休業損害を認めるのが相当である。

イ 平成22年1月21日から症状固定まで

この時期には原告はF福祉会の仕事に復帰しており、かつその後症状固定までの間、原告は事故前とさほど変わらない給料を得ていたものと認められる。そうすると、当該期間について原告に金銭的な減収が直接発生していたとはいえない。

しかしながら、本来は休業等により減収が発生してもおかしくない状況において、本人や同僚の特段の努力によって減収を回避した場合には、一定の割合で休業損害の発生を認めるのが公平に資するものであるところ、原告は福祉施設の送迎運転手であり、その運転や社内管理を慎重に行う必要があったが、職務復帰後、特に社内管理について相当な問題が生じ、本人の努力や同乗していた同僚の努力や配慮によって弊害が相当程度カバーされていた状況が認められる。

そうすると、原告については一定の範囲で休業損害に準ずる損害の発生を認めるべきであり、その割合は諸般の事情に照らして30%を相当とする。

したがって、上記のとおり認定した基礎収入の30%に期間を乗じた分について、本件事故によって損害が生じていたものと認める。

2 後遺障害慰謝料について

・・・後遺障害慰謝料についてはその後遺障害が14級に該当するものであることが基本となる。

しかし、上記のとおり原告の症状が医学的な証明を伴う器質的なものであるとは認められないものの、軟部組織の一部について一定の変化があること、症状内容が神経症状としてはある程度強度のものに属すること、原告の実際の生活上相当な不便が生じていること、派生症状として腰痛を伴っていることも原告のおかれた生活状況を物語っていることなど、様々な事情があり、これらは十分に考慮すべきである

これらの事情を考慮すると、本件においては、これまで認定してきた各種損害項目によって慰謝されない、強度の精神的苦痛が原告に生じているといえ、その点一般的な基準の範囲に収まらない特段の事情があるものとして、慰謝料については基本となる金額に相当程度の増額をすべきである。

以上のことを考慮し、・・・後遺障害慰謝料については150万円を相当とする。