重要判例【大阪地判平成27年2月9日】40㎞制限を65㎞走行車から約27㍍地点で幅員3.5㍍の反対車線を渡った72歳男子の過失を10%認定

1 過失相殺について

被告は、本件車線を時速約65㎞で進行していたものであるが、別紙の①地点で、亡Aが本件道路を横断しようとして左右を見回すなどしながら歩道上に佇立しているのを認めたのであるから、このような場合、減速してその動静に十分注意しながら進行すべき注意義務があったというべきである。

しかるに、被告は、これを怠り、減速することなく時速約65㎞で漫然と進行した過失により本件事故を惹起したもので、その過失は重大である。

一方、道路を横断しようとする歩行者には、左右の安全を十分確認した上で道路を横断すべき注意義務があるところ、亡Aは、前照灯を点灯して進行する被告車が近くまで(少なくとも27.3㍍よりも手前まで)迫ってくるにもかかわらず、横断を開始して本件事故に至ったものであるから、本件事故の発生については、亡Aにも過失があったことは否定できない。

以上のとおり、本件は、被告の前記過失と亡Aの上記過失が競合して発生したものであるが、被告の速度超過の程度は著しいこと、亡Aは本件事故当時72歳の高齢者であったこと、他方、本件事故発生時は、常用薄明の時間帯内であったとはいえ、被告車は前照灯を灯火しており、亡Aにおいても比較的容易に被告車を認識し得たと推認できること等を考慮すると、過失相殺率は10%とみるのが相当である。

2 後遺障害逸失利益について

原告らは、亡Aが受給していた年金を基礎として、後遺障害逸失利益が認められるべきである旨主張するが、亡Aに生前支給されていた年金が支給されなくなったのは、亡Aが死亡したからであって、後遺障害を負ったからではない

そして、亡Aは、平成23年6月19日に肺炎で死亡したところ、本件全証拠をもってしても、肺炎の原因は明らかではなく、亡Aの死亡と本件事故との間に相当因果関係があることを認めるに足りる証拠はない

したがって、原告らの上記主張は採用できず、亡Aが将来収入を得られる蓋然性があることを認めるに足りる証拠もないから、後遺障害逸失利益を認めることはできない

3 原告B固有の慰謝料について

亡Aが本件事故によって重度の後遺障害を負ったことに加え、原告Bが亡Aのであり、本件事故時同居して生計をともにしていたこと、原告Bが本件事故後うつ病及び不眠症を発症し、病院に通院していること、その他本件における一切の事情を考慮すると、原告Bの固有の慰謝料として、通院に係るものも含めて350万円を認めるのが相当である。

4 原告C固有の慰謝料について

亡Aが本件事故によって重度の後遺障害を負ったことに加え、原告Cが亡Aの長男であり、本件事故時別居していたことその他本件における一切の事情を考慮すると、原告Cの固有の慰謝料として50万円を認めるのが相当である。