重要判例【明石簡判平成26年9月25日】初度登録4年、約4万8000㎞走行の国産大衆車の評価損、修理費用

1 修理費用について

原告は、修理費用43万5017円(税抜き)の裏付けとして概算見積書を、被告は、修理費40万円(税抜き)の裏付けとして画像伝送損害確認報告書及び見積書を、それぞれ書証として提出している。

画像伝送損害確認報告書及び見積書は、原告車本体を持ち込んで修理費を見積もったものではなく、伝送された画像をもとに修理費を見積もったものと解されるから、原告車本体を持ち込んで見積りをした概算見積書と比べて、見積りの精度が落ちると考えられること、見積書に記載された見積金額は40万円(税抜き)で、千円以下に端数のつかない数字となっているが、原告車の多種多様な修理に要する費用の見積額が、値引きがされていないのに、千円以下に端数のつかない数字となるのは不自然であること、見積書は、原告車の修理をしないことを前提にする見積書であること、見積書の作成者であるB調査会社は、被告と自動車保険契約を締結しているC保険会社の子会社であるから、保険金の支払額を少なくしようとする親会社の意向に沿った金額を見積もる可能性を否定できないことを考慮すると、見積書記載の40万円(税抜き)という金額は、客観的に算出された修理費とはいい難い

一方、概算見積書を作成したのは、原告と被告のいずれとも利害関係のないD会社であること、D会社は、原告車を製造した日産自動車株式会社の系列会社であり、原告車の修理に必要な作業内容や使用部品名等について技術的専門的な知見を有していると考えられることを考慮すると、概算見積書の信用性は高いというべきである。

以上により、原告車の修理費は、概算見積書に記載された金額43万5017円(税抜き)であると認めることができる。

2 評価損について

交通事故により損傷を受けた車両は、修理を終えても、技術上の限界等から機能や外観に回復できない欠陥が残り、あるいは、事故歴、修復歴があること自体から、交換価値が下落することがある。

このような交換価値の下落、すなわち評価損は、事故時に発生すると考えられることから、車両の所有者である原告は、事故によって評価損に相当する損害を被っていると解することができる。

評価損の有無及び金額は、事故車両の車種・初度登録からの期間、走行距離、損傷の部位・程度、修理の内容、修理の額等の諸事情を総合考慮して判断すべきである

原告車は、日産自動車株式会社製「セレナ ハイウェイスター」をベースにした特別仕様車である「ハイウェイスターVセレクション2WD」で、新車価格が256万5150円であるが、大衆車に属する車両であると考えられること、原告車は、本件事故によって、右フロントフェンダー、右フロントピラー、右フロントドア等に損傷を受け、その修理に43万5017円(税抜き)を要すること、原告車の修理としては、右フロントピラーの損傷については板金修理が、その他の損傷については部品交換の修理が予定されていること、原告車の初度登録は平成21年1月であり、本件事故当時には、初度登録から約4年が経過していたこと、原告車の走行距離は、本件事故日から平成25年3月25日の時点で、4万7984㎞であること及び原告車の評価損を15万8000円と評価した事故減価額証明書があることを総合考慮すると、原告車の評価損は、修理費用43万5017円の約1割に相当する4万3000円(税抜き)と認めるのが相当である。