重要判例【東京地判平成26年11月26日】44歳男子9級主張の脳脊髄液減少症等の発症は特徴的な症状の起立性頭痛が認められない等から発症を否認

1 後遺障害について

原告は、本件事故により頸椎捻挫の傷害を負ったことが認められるが、本件症状について、外傷性の異常所見を裏付ける画像所見等の的確な証拠はない。

しかし、本件症状のうち、頸部痛に限っては、本件事故当初から頸部痛の訴えがあり、その後の通院期間中、頸部痛が軽減する日もあったが、全体としては頸部痛の訴えは継続しており、受傷当初から頸部痛の症状は一貫していたというべきである。

そして、頸部痛に対する投薬等の治療経過及びリハビリテーションの経過等を併せ考慮すると、原告には本件事故により「局部に神経症状を残すもの」(後遺障害等級表14級9号)として後遺障害が残ったものと認められ、リハビリテーションを終了した平成22年8月31日に症状固定したものと認めるのが相当である。

なお、原告が労働者災害補償保険における障害等級第12級の12(系列13)に該当するものと判断されたことが直ちに当裁判所の上記判断を左右するものではなく、他に後遺障害の程度に関する原告の主張を認めるに足りる証拠はない。

2 脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症、低髄液圧症候群の発症について

原告は、本件事故により脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症、低髄液圧症候群を発症したと主張し、その根拠として、E病院のA医師作成の後遺障害診断書のほか、E病院におけるRI脳槽シンチグラフィーの結果、3時間以内にRI早期膀胱集積が認められたこと、E病院における頭部CT検査の結果、円蓋部くも膜下腔拡大、硬膜下水腫が認められたこと、ブラッドパッチ治療により起立性頭痛、両上肢及び両下肢のしびれ、後頭部痛の症状が改善したとの診断がされたことを挙げる。

しかし、原告が本件事故後に通院した医療機関の診療録には、E病院を受診するまで、原告が起立性頭痛を訴えていたことをうかがわせる記載はなく、脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症、低髄液圧症候群の特徴的な症状である起立性頭痛が生じたことを認めることはできないから、脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症、低髄液圧症候群の発症を認めることはできない

・・・さらに、ブラッドパッチの治療効果については、起立性頭痛が生じたことが認められないのであるから、起立性頭痛の改善効果の有無を検討する余地はなく、それ以外の本件症状についても、ブラッドパッチ治療により継続的な改善効果があったことを認めることはできない。

したがって、原告の主張は採用できず、髄液圧検査の結果等、他に脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症、低髄液圧症候群の発症を認めるに足りる証拠はない。