重要判例【神戸地判平成25年11月28日】兼業主婦の休業損害、外貌醜状(7級12号)、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料

1 休業損害について

原告(女・事故時43歳・症状固定時44歳)は、老健施設の介護士として稼働し(年収は約275万円)、かつ、家庭にあっては主婦であり、休業損害算定の基礎収入としては、本件事故当時の平成22年度賃金センサス産業計・企業規模計・女子学歴計・40~44歳平均年収額である381万5100円とすべきである。

原告は、本件事故当日の平成22年11月10日から、職場復帰の前日である平成23年2月20日までの103日間につき、仕事はもとより家事労働についても行うことができない状態であったと認められる。

2 後遺障害逸失利益について

原告は、兼業主婦であり、後遺障害逸失利益算定の基礎収入としては、症状固定時に近接する平成23年度賃金センサス産業計・企業規模計・女子学歴計・40~44歳平均年収額である394万1400円とすべきである。

・・・④原告の収入は、本件事故によって減収したものとは認められないが、原告自身が、就労に対する後遺障害の悪影響を最小限度に抑えるために、日々相当程度の努力を重ねていること、⑤今後、仮に原告が転職するとした場合、後遺障害による不利益の発生が考えられることなどが認められ、こうした諸事情を総合考慮すると、原告の労働能力喪失率としては20%とするのが相当であり、労働能力喪失期間は、症状固定時に原告が44歳であったことから67歳までの23年間と認めるのが相当である。

3 後遺障害慰謝料について

確かに、外貌醜状の自賠責の等級については、平成23年に等級表の改正が行われ、女子についても平成23年5月2日以降に発生した事故による5㎝以上の線状痕については、原則として新規に設けられた9級16号に該当するとされており、この点につき一定の留意が必要であるが、個別案件の後遺障害慰謝料については、最終的には、裁判所が諸般の事情を考慮し、合理的判断によって決定するものといえる。

本件については、前記後遺障害の内容及び程度、特に原告の主たる醜状は、前額部の長さ9.5㎝にも及ぶ半円形の線状痕であり、原告が終始人目を気にしている状況にあること、前額部のつっぱり感やしびれ感を伴っていること、頚椎捻挫以後の局部の神経症状についてもそれなりのものが残存していること、そして、本件事故は、上記等級表改正前の平成22年11月10日に発生したものであり、本件事故当時における社会通念として、女子の醜状痕に対する精神的苦痛を当時の等級水準に比して低く評価すべきであるとまではいえないこと、その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、原告の後遺障害慰謝料としては、1030万円を認めるのが相当である。