不当労働行為278 使用者が身の危険と恐怖を感じたという理由で団交拒否できるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、組合員の解雇問題を議題とする団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

ラクサス・テクノロジーズ事件(広島県労委令和2年8月7日・労判1245号95頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の解雇問題を議題とする団交に応じなかった会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 団体交渉は、誠実、平和的かつ秩序ある方法で行われなければならず、暴力の行使が許容されるものではないことは、労働組合法第1条第2項ただし書の規定を待つまでもなく明らかである。
しかしながら、会社が主張するように、単に使用者が身の危険と恐怖を感じたというだけで団体交渉を拒否する正当な理由が認められるとすれば、使用者の主観的な判断によって団体交渉を拒否できることとなり、憲法第28条によって認められた団体交渉権が保障されないことになる。
したがって、将来行われる団体交渉の場において、労働組合の代表者等が暴力を行使する蓋然性が高いと認められる場合に、使用者は、正当な理由があるものとして、労働組合の言動を理由に団体交渉を拒否することができると解される。
そして、暴力行使の蓋然性が高く団体交渉の拒否に正当な理由があるか否かは、使用者及び労働者双方の従前の団体交渉その他の折衝の場における態度等諸般の事情を考慮して決するのが相当である(東京地裁昭和58年12月22日判決)。

2 組合が同意なしに会社に赴く旨を強い口調で通告したのは、組合から本件団体交渉要求について再三にわたり回答を要求されたにもかかわらず、会社が明確に回答しなかったためであり、会社の態度に原因があると解される。
A副委員長とB社員の電話でのやり取りは、わずか数分程度であって、長時間にわたって暴力的な言動を繰り返したというものではなかったことが認められる。
以上のことから、組合が暴力を行使する蓋然性が高いとはいい難い

会社側の主張は理解できなくはありません。

しかし、労働委員会としては上記命令のポイントのように判断することを認識しておく必要があります。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。