おはようございます。
今日は、取締役の労働者性が認められた事案を見ていきましょう。
日生米穀事件(大阪地裁令和6年3月14日・労判ジャーナル148号14頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結して就労していた旨主張するXが、Y社に対し、時間外労働及び深夜労働に対する賃金及び付加金等の支払を求め、また、令和4年1月21日から同年2月20日までの賃金が未払いである旨主張して、未払賃金等の支払を求め、さらに、退職金150万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
一部認容
【判例のポイント】
1 Xは労基法所定の「労働者」に該当するかについて、まず、労務提供の形態について、一般の従業員と同様かつ取締役就任前と変わらない営業及び配達業務に従事していた上、タイムカードによる労働時間の管理及び把握を受けていたものといえ、Xは業務執行権限を有しておらず、業務執行に係る意思決定をしていたとも認められない一方で、取締役就任前から一般の従業員と同様の業務に従事し、勤怠管理を受けているなどの拘束性があることからすると、Xは、Y社の指揮監督下で労務を提供していたものといえ、次に、報酬の労務対償性について、Xの報酬額は取締役就任の前後を通じて月35万円と変動がなく、また、取締役就任に際して退職届の提出や雇用保険資格喪失手続はとられず、引き続き雇用保険に加入しており、Xは取締役就任前後を通じて報酬額に変動がなく、労働者の地位を清算する手続もとられず、社会保険上の取扱いもそれまでと変わらなかったことからすると、Xに対して支払われていた報酬は賃金としての性質を有していたものといえるから、Xは、Y社の取締役ではあったが、Y社の指揮監督下で労務を提供しており、支払われていた報酬は賃金としての性質を有していたものといえるから、Xは、労基法所定の「労働者」に該当する。
典型的な名ばかり取締役ですね。
労働法規の適用を回避するために、取締役にさせるという例が散見されますが、実態が伴っていない場合には、本件同様、労働者性が肯定されますのでご注意ください。
労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、判断に悩まれる場合には、事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。