おはようございます。
今日は、区分所有建物を賃貸する旨の届出を管理業者が不受理としたことを理由とする損害賠償請求が棄却された事案(東京地判平成29年4月21日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、原告が、マンションの区分所有建物を第三者に賃貸すべく、管理組合にその旨の届出をしたところ、管理業者である被告が、その権限を逸脱して同届出を不受理としたため、損害を被った旨主張して、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 原告は、被告が、本件営業開始届に関するすべての対応と判断をし、本件営業開始届の取扱いに関するアンケートが実施された際には回答者を誤導するなどして、本件マンションの管理業務の受託者としての権限を逸脱して本件営業開始届を不受理とし、原告がKに本件物件を賃貸する権利を侵害した旨主張する。
しかし、本件営業開始届は、理事会が、その判断に基づき不受理としたものであることが明らかである。
原告は、被告が、平成28年5月31日、理事会の役員に対し、「本件条項は福祉施設の開業はできない旨規定しているため、今回の申請は不受理になるかと存じます。6月6日までにご意見がない場合、不受理の回答をさせていただきます。」旨記載したメールを送信し、役員からメールに対する回答がなかったことをもって理事会の決定に代えた点を論難するが、本件マンションの管理業者である被告が、理事会に対して自身の見解を示したとしても、何ら非難を受けるいわれはなく、また、理事会において、役員が集合する必要のない限り、メールでのやりとりによって意思決定をすることは、何ら不合理ではない。
そして、被告が、同年6月7日、サンケイビルに対し、「理事会に連絡した結果、本件営業開始届は、本件条項に該当するため、不受理となりました。」旨記載したメールを送信したことについては、同月12日に開催された理事会の会議において、理事会の判断として是認され、その結論は、同年7月3日に開催された理事会の会議においても維持されたものである。
なお、原告は、被告が、本件営業開始届の取扱いに関するアンケートが実施された際に回答者を誤導した旨も主張するが、アンケートの説明文は、被告がこれを作成したとしても、理事会の了承を得て、理事会名義で発出されたものと認められ、その記載内容も、アンケートを実施するに至った経緯を回答者に説明するために必要かつ相当なものといえるから、被告が回答者を誤導したなどということはできない。
管理会社が主導していたとしても、最終的な判断は管理組合(理事会)が行うことから、上記結論となりました。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。