【遺産相続⑮】遺留分の請求をしたいのですが・・・

先日、父が亡くなりました。相続人は、私と兄の2人です。父は、生前、兄に全財産を相続させる旨の遺言を残していました。この場合、私は、兄から遺産の一部をもらうことはできませんか?

1 あなたは、お兄さんに対して、遺産の4分の1について、遺留分の減殺(げんさい)請求をすることができます。
遺留分とは、被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分(贈与・遺贈)に制限が加えられている持分的利益をいいます。
遺留分権利者は、被相続人の配偶者、子、直系尊属であり、子の代襲相続人も、被代襲者である子と同じ遺留分を持ちます。
一方で、兄弟姉妹には遺留分はありません(民1028条)。
なお、相続欠格、廃除、相続放棄により相続権を失った者は遺留分もありません。
ただし、相続欠格、廃除の場合には、代襲相続となるため、これらの者の直系卑属は遺留分権利者となります(民1044条、887条2項・3項)。
相続欠格については、【遺産相続⑨】を、廃除については【遺産相続㉟】をそれぞれご参照ください。
2 遺留分に反する譲渡行為も、当然に無効となるのではなく、単に減殺請求をなし得るにすぎません(最高裁昭和35年7月19日判決)。
遺留分減殺請求の方法ですが、必ずしも訴えによることなく、裁判外で、書面でも口頭でも構いません。
もっとも、後で「言った、言わない」という争いにならないように、内容証明郵便によって請求するのがよいでしょう。
3 また、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、又は相続開始の時から10年、これを行わないときには時効により消滅してしまいます。
「減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時」とは、贈与や遺贈が自己の遺留分額を侵害し、減殺の対象となることまで認識していることが必要です。
すなわち、遺留分権利者が単に被相続人の財産の贈与があったことを知るだけでは足りず、その贈与が減殺すべきものであることを知った時を指します。
いったん裁判外においてでも、行使しておけば、1年間の短期消滅時効にかからないとされています。
なお、遺留分減殺請求権を裁判外で行使しただけで話がつくのはまれですので、家庭裁判所に調停・審判を申し立てるか、地方裁判所に遺留分減殺請求訴訟を提起することが考えられます。
4 遺留分減殺の対象となる財産の範囲については【遺産相続㉕】をご参照下さい。