管理費・修繕積立金40 未払管理費等について和解に基づく債務名義がある場合に訴訟をする訴えの利益があるか(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、未払管理費等について和解に基づく債務名義がある場合に訴訟をする訴えの利益があるか(東京地判平成28年12月8日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告が所有する区分所有建物を含むマンションの各区分所有者によって構成される権利能力なき社団である原告が、原告により定められた管理費、修繕積立金等の費用等を支払わない被告に対し、規約に基づき、滞納費用等のほか、未払町会費及びそれらの遅延損害金並びに提訴のための弁護士費用の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件において、被告が、原告の主張する金員を滞納していることに争いはない。
そこで、前件和解に基づく債務名義がある中で、本件訴訟をする訴えの利益があるかについてまず検討する。
被告は、本件滞納金の存在を認めながら支払をしない理由として、前件和解において、原告が本件確約をしたのに、それを履行しようとしないためにやむを得ず支払いを止めたと主張する。
原告が債務名義となる公正証書を所持している場合であっても、請求権の存在につき既判力をもって確定する必要がある場合には、訴えの利益が認められるところ(大審院大審院大正7年1月28日判決)、本件においては、被告が、原告の債務名義の行使について疑義を唱えているといえることからすると、既判力で確定する必要があるといえる。
よって、本件においては訴えの利益が認められる。

2 本件訴訟をする訴えの利益が認められ、被告に本件滞納金が存在することからすると、原告が、本件訴訟をする際、弁護士に委任し、それについてかかる費用については、管理規約65条2項により、被告において負担する義務がある。
原告は、本件訴訟につき、原告代理人との間で、着手金として請求額の8パーセント、報酬金として経済的利益の16パーセントを支払うとの委任契約を締結したことが認められる。
よって、被告は、原告に対して、上記の弁護士費用を負担する義務がある。
なお、被告は、原告において、本件確約を履行しないことを問題視し、るる主張するが、本件確約は、前件和解において、管理費等や町会費負担金を支払う条件等になっているわけではないから、仮に原告が本件確約を履行していないとしても、本件滞納金の支払拒絶事由になるとはいえない。
そして、本件滞納金が216万4607円であることは当事者間で争いがないから、被告は、原告に対し、消費税分を含め、着手金分として18万7022円、報酬金として37万4044円の合計56万1066円を支払う義務を負う。

既に債務名義がある場合であっても、必要に応じて提訴することが認められています。

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駐車場問題15 総会決議を経ずに駐車場に設置された防犯カメラの撤去が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会決議を経ずに駐車場に設置された防犯カメラの撤去が認められた事案(東京地判平成28年12月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者全員で組織される権利能力なき社団である原告が、区分所有者の一人である被告に対し、①本件駐車場の使用契約は終了した(主位的に管理規約及び駐車場使用細則違反による解除により、予備的に期間満了により、更に予備的に解約申入れにより)として、使用契約の終了に基づき、本件駐車場の明渡しを求め、また、②主位的に駐車場使用細則等に基づく原状回復請求として、予備的に区分所有法57条1項に基づく行為停止等請求として、防犯カメラ設備及び同防犯カメラの配線設備の撤去を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件設備の設置は、本件駐車場等の共用部分である壁部分及び天井部分に、防犯カメラという他の区分所有者のプライバシーを侵害し得る装置を固定的に設置することであり、これは、有体物の設置という物理的な面でみても、防犯カメラという装置の機能的な面でみても、共用部分に対する「通常の用法」(管理規約13条)とはいえず、共用部分の変更又は管理というべきである。
そうすると、かかる行為は、「管理組合の業務に関する重要事項」に該当するので、総会決議が必要であると解される(管理規約48条16号、管理規約44条13号)。
このことは、「共用部分の変更」や「共用部分の管理に関する事項」は総会の決議で決する旨を定めた法(17条1項及び18条1項)の趣旨にも合致する。
これに対し、被告は、駐車場の運営、使用に関することであればあらゆる事項に総会決議が必要というのは不合理である旨主張するが、共用部分に対する通常の用法とは異なる用法について総会決議を求めても、「あらゆる事項」について総会決議を求めることにはならず、不合理とはいえない。
また、理事長や理事会の決議に一定の業務遂行権限があるとしても、それは、上記のような総会の決議事項について総会決議なしに遂行できることまでも意味するものではない。
なお、仮にC元理事長を含む理事がいずれも総会決議が必要とは認識していなかったとしても、かかることから被告に本件設備を設置、保持する権限が生じるわけではない

共用部分に防犯カメラを設置するは、共用部分の変更又は管理に該当するため、理事会ではなく総会決議が必要となります。

仮に理事のみなさんが総会決議が必要であると認識していなかったとしても、当然に防犯カメラの設置が許容されるものではないと判断されています。

実務上は基本的なことですので、手続きを間違えないように気を付けましょう。

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管理費・修繕積立金39 管理費等を滞納する区分所有者と協議を行わずに支払督促を申し立てたら違法?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理費等を滞納する区分所有者と協議を行わずに支払督促を申し立てたら違法?(東京地判平成29年1月11日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、控訴人が、同人の居住するマンション管理組合の理事長である被控訴人から、マンション管理費等7万5000円及び弁護士費用3万2400円を支払うよう求める旨の支払督促の申立てを受けたところ、弁護士費用は、被控訴人が支払うべき費用であると主張して、被控訴人に対し、3万2400円の支払を求めた事案である。
原判決は、控訴人の主張する請求原因事実によっても、控訴人の被控訴人に対する3万2400円の支払請求権は発生しないとして、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴し、前記第1のとおりの判決を求めた。
なお、控訴人は、当審において、本件請求は、被控訴人が控訴人に対して弁護士費用(3万2400円)を請求したことが不法行為に当たり、これにより控訴人が同額の債務を負担したことが損害に当たると主張するものであるとした。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 控訴人の主張は必ずしも明らかでないが、これを善解すると、被控訴人は、控訴人からの話合いの申出に応じず、一方的に本件申立てを行ったものであり、このことは、被控訴人の本件管理組合の理事長としての職務の怠慢であると評価されるべきものであるから、本件申立てを行うためにかかった弁護士費用を控訴人に対して請求することは、控訴人に対する不法行為を構成するということのようである。
しかし、そもそも控訴人が、管理費等の支払について、被控訴人に対して話合いを求めていたことを裏付ける証拠はないし、仮にそのような事実が認められるとしても、被控訴人は、控訴人に対して滞納管理費等を請求するに当たり、支払督促を申し立てる前に控訴人との間で話合いを行うべき義務を負っているものではなく(本件管理規約においても、そのような定めはない。)、話合い等に応じずに本件申立てを行ったことが、不法行為法上違法な行為であると評価することはできない。
また、本件管理規約において、管理費等を期限までに支払わない区分所有者に対し、一定の場合に弁護士費用を請求することが認められていることに鑑みれば、本件申立てに係る弁護士費用を控訴人に請求することが、控訴人に対する不法行為を構成するということもできない

特に異論のないところかと思います。

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管理費・修繕積立金38 駐車場の所有権の帰属に関する裁判所の事実認定(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場の所有権の帰属に関する裁判所の事実認定(東京地判平成29年2月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有マンション管理組合である原告が、区分建物の共有者である被告らに対し、管理費等及びその遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

被告らは原告に対し、各自、3503万6062円+遅延損害金をそれぞれ支払え。

【判例のポイント】

1 被告らは、N設計から本件駐車場の所有権を取得して、以後これを所有しているなどと主張するが、原告の管理組合規約では、共有部分である本件マンションの附属施設として本件駐車場も列挙されており(8条1項、別表2)、他方、本件駐車場の所有権が被告らに留保される旨の規定は存しない
被告らがN設計との間で平成11年11月30日に締結した基本約定書中にも、被告らが本件マンションの建築後に附属施設である本件駐車場の所有権を取得することをうかがわせるに足りる約定は存しないし、被告らがN設計との間で締結した土地信託契約書中にも、被告らが建築後の本件マンションの専有部分のうち合計150坪以上の部分をN設計から取得する旨の約定があるのみで(8条2項)、被告らが本件駐車場の所有権を取得することをうかがわせるに足りる約定は存しない
被告らとN設計の平成12年1月29日の打ち合わせ事項のメモ中には、N設計からの報告事項として、「駐車場に関しては、リフト式設備になると思いますが、Y1様の権利となるよう手続きをしてまいります。」との記載があるが、被告らが設置後の駐車場に関しどのような権利を取得するのかが明らかにされておらず、上記記載をもって被告らによる本件駐車場の所有権取得の事実の裏付けとみるのは困難である。
被告らの実父Bは、その証人尋問で、被告らがN設計に依頼して本件駐車場が設置されたもので、N設計の代表者との間で、本件駐車場の所有権を被告らに取得させる旨を合意したと証言するが、上記のとおり、土地信託契約書に盛り込まれていないことにかんがみると、少なくとも確定的な合意内容になっていなかったものといわざるをえず、被告らがN設計との合意に基づいて本件駐車場の所有権を取得した事実を認定できるものではない。
他方、原告は、平成13年以降本件駐車場の点検費用、補修費用を支出してきた事実が認められるところ、この事実は本件駐車場が本件マンションの共有部分であり、被告らがその所有権を取得したものでないことをうかがわせるものである。
結局、被告らが本件駐車場の所有権を取得したものとはいえない一方、原告は、被告らとの間で、本件駐車場の少なくとも2区画につき使用契約を締結したものであって、被告らは原告に対し、未払駐車場料金の支払義務を負う(以上につき,被告らの不可分債務)。

完全に事実認定の問題ですね。

裁判所がどのような事実に着目して判断しているのか、参考になります。

それにしてもすごい金額ですね。

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義務違反者に対する措置28 管理規約に違反する民泊営業の停止請求が棄却されたにもかかわらず弁護士費用は全額認容された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理規約に違反する民泊営業の停止請求が棄却されたにもかかわらず弁護士費用は全額認容された事案(大阪地判平成29年1月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの管理者である原告が、被告に対し、被告は、本件建物において本件マンションの管理規約上禁止されている不特定の者を宿泊させる営業を行っている、その際の鍵の管理が不適切であってマンションの安全性が害されている、多数の利用者がエントランスホールでたむろするなどして他の区分所有者等の邪魔になっている、ゴミを指定場所に出さず放置し害虫も発生している、共用部分の床のメンテナンスの回数が増えている等の事実を挙げ、これらは建物の管理、使用に関し、区分所有者の共同の利益に反する(区分所有法6条1項)ものであると主張して、法57条1項により民泊営業の停止等を求め(請求の趣旨1項)、あわせて、本件訴訟に関し弁護士費用を支出することになったのは、被告の不法行為による損害であるとしてその損害賠償(遅延損害金を含む。)を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、原告に対し、50万円+遅延損害金を支払え。

 原告のその余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 法57条1項は、「区分所有者」である行為者等を請求の相手方とするものであるから、区分所有権を失った者に対し同項に基づく請求をすることはできない
被告が、平成28年10月21日に新所有者に対して本件建物を売却し、本件建物の区分所有権を失ったことは、所有名義移転の事実から容易に認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
したがって、原告の行為停止請求(請求の趣旨1項)については、その余の点について検討するまでもなく理由がない。
なお、管理規約に基づく差止請求(63条3項)をするとしても、被告が本件建物を売却したことにより、被告による民泊営業は終了したと言わざるを得ないから、そのような差止請求も認められない。

2 すべてが不法行為に当たるとまで言えるかはともかく、被告の行っていた民泊営業のために、区分所有者の共同の利益に反する状況(鍵の管理状況、床の汚れ、ゴミの放置、非常ボタンの誤用の多発といった、不当使用や共同生活上の不当行為に当たるものが含まれる。)が現実に発生し、原告としては管理規約12条1項を改正して趣旨を明確にし、被告に対して注意や勧告等をしているにもかかわらず、被告は、あえて本件建物を旅行者に賃貸する営業を止めなかったため、管理組合の集会で被告に対する行為停止請求等を順次行うことを決議し、弁護士である原告訴訟代理人に委任して被告に対する本件訴訟を提起せざるを得なかったと言える。
そうすると、被告による本件建物における民泊営業は、区分所有者に対する不法行為に当たると言え、被告は弁護士費用相当額の損害賠償をしなければならない。
本件の経緯等にかんがみると、被告が本件建物を売却したことは被告に有利な事情とは言えず、弁護士費用としては50万円が相当である。

まず、判例のポイント1は、実務上は基本的知識ですが、とても重要ですのでしっかり理解しておきましょう。

結果として原告の行為停止請求は棄却されましたが、違約金としての弁護士費用については全額認容されています。

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管理組合運営49 専有部分の破損した窓ガラスの補修が「通常の使用に伴うもの」とされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、専有部分の破損した窓ガラスの補修が「通常の使用に伴うもの」とされた事案(東京地判平成29年1月17日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの一室を所有する原告が、同室の窓ガラスが破損したとして、同マンション管理組合である被告に対し、管理規約の規定に基づき、同窓ガラス及び窓枠の取替補修工事をするよう求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件管理規約7条2項3号、14条1項及び25条1項によれば、本件窓ガラスは、原告の専有部分には含まれないものの、原告が専用使用権を有しており、その管理のうち「通常の使用に伴うもの」については、原告がその責任と負担においてこれを行うものとされている。
そこで、以下、本件破損の補修が「通常の使用に伴うもの」であるかについて検討する。

2 本件破損の原因については、原告の依頼により調査を行った一級建築士のDが、平成27年5月10日、「窓ガラスが割れていた原因は、そもそも出窓の取付が日光が集中的にあたる場所にあり、出窓の枢体及びガラスの老朽化に伴い、窓ガラスの一日の温度差により(温度差が大きい時に起こる)割れた可能性が最もあると一番考えられます。」と記載した報告書を作成しているところ、原告は、その記載内容を前提に、本件出窓ないし本件窓ガラスに構造上の欠陥があり、これが本件破損の主たる原因であると主張するのであるが、本件出窓が出窓であること自体や、日光がよく当たる場所に窓ガラスを配置することが、いずれも構造上の欠陥であるなどといえないことは明らかである。

3 次に、原告は、区分所有法9条の規定について主張するが、同規定は、建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じた場合の瑕疵の所在に係る立証責任について定めたものにすぎず、かかる規定の存在によって本件の争点についての判断が左右されるものではない。
また、原告は、経年劣化による窓ガラスの破損についての補修は計画修繕として行うべきであると主張するが、本件破損が経年劣化によるものであると認めるに足りる証拠はなく、原告の主張は前提を欠くものである。
そして、原告は、窓ガラスの破損が第三者による犯罪行為等によって生じた場合の責任についても主張するが、かかる場合と本件破損とを同視すべき理由はない。

4 以上によれば、本件破損の原因が被告にあるということはできず、また、その原因が本件窓ガラスの経年劣化にあるということもできず、そのほかに、本件破損の補修が「通常の使用に伴うもの」でないと解すべき理由はないから、本件破損の補修は、「通常の使用に伴うもの」であると認めるほかない
したがって、本件破損の補修は、原告の責任と負担において行うべきものである。

窓ガラスが専有部分に含まれないということや「通常の使用に伴うもの」については区分所有者の責任と負担において管理するという知識は、各種試験でも問われる非常に基本的かつ重要な知識です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理組合運営48 区分所有者全員の承諾なく行われた書面決議が無効とされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者全員の承諾なく行われた書面決議が無効とされた事案(東京地判令和4年2月28日)を見てみましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの一部である本件居室の共有持分権者である原告が、本件マンション管理組合である被告において令和3年5月28日にされた別紙「通常総会議案書」記載第1号ないし第8号の各議案を承認する旨の書面による各決議について、区分所有者全員の承諾がないのに書面による決議がされたものであり、区分所有法45条1項に違反するとして、その無効確認又は取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 被告は、令和3年5月頃、組合員である本件マンションの区分所有者に対し、前年と同様、通常総会の開催が非常に困難であるため今回は文書総会になる旨通知しており(この通知が区分所有者全員に到着したかどうかについては証拠上明らかでないが、この点を措くとしても)、被告は、本件マンションの区分所有者に対し、書面による決議を実施することについての承諾を求めたのではなく、すでに決定されたこととして、書面による決議を実施することを通知したものということができる
また、議決権行使書を提出したのは本件マンションの区分所有者37名中32名にすぎず、書面による決議の実施につき事後的に区分所有者全員の承諾が得られたということもできない。
これは、被告において、令和2年も書面による決議が実施され、それから令和3年5月まで、区分所有者から同決議に異議が出されたことがうかがわれないことを考慮しても同様である
そうすると、令和3年の通常総会を開催せずに書面による決議を実施することについて、少なくとも区分所有者全員の承諾があるということはできず、本件各決議には、書面による決議の実施につき区分所有者全員の承諾があることが必要であるのに、その承諾がないまま行われたという手続的瑕疵がある。

2 本件各決議に係る上記瑕疵は、区分所有法45条1項に違反するものであり、同条項の趣旨に鑑みれば、区分所有者の討議の機会を奪うという重大なものである。
本件マンションの区分所有者37名中32名から議決権行使書が提出されているが、これは、被告が同区分所有者に対して書面による決議の実施につき承諾を求めることなく、すでに決まったこととして、書面による決議を実施する旨通知した後に送付した議決権行使書に、区分所有者が記入して返送したものであるから、これをもって、上記瑕疵が治癒されたり軽微なものとなったりするということはできない
したがって、本件各決議に係る上記瑕疵は無効事由に当たるというべきである。

区分所有法45条1項の内容は以下のとおりです。

「この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。」

実務的に極めて基本的かつ重要な内容ですので、しっかりと押さえておきましょう。

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管理組合運営47 区分所有者が賃料値上げ反対等を内容とするセミナーを開催するためマンションの会議室の使用及び同セミナー開催通知の掲示を申し込んだものの、理事長及び副理事長が不許可とした行為が違法とはいえないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者が賃料値上げ反対等を内容とするセミナーを開催するためマンションの会議室の使用及び同セミナー開催通知の掲示を申し込んだものの、理事長及び副理事長が不許可とした行為が違法とはいえないとされた事案(東京地判平成29年1月23日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者兼管理組合員である控訴人が、本件マンション敷地の賃料値上げ反対等を内容とするセミナーを本件マンションにおいて開催するため、本件管理組合に対して、本件マンションの会議室の使用及び本件セミナー開催通知の掲示を申し込んだところ、本件管理組合の理事長及び副理事長である被控訴人らが当該申込みを不許可とした行為により、控訴人は、本件マンションの区分所有者らに対して、ポスティングで本件セミナーの開催を通知し、本件会議室外の廊下で本件セミナーを開催せざるを得ず、控訴人の、区分所有者の共同の利益に関する事柄を本件区分所有者らに対して伝える権利及び本件会議室を使用して充実した本件セミナーを行う権利を侵害され、精神的苦痛を被ったと主張し、被控訴人らに対し、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料10万円+遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

被控訴人らは、本件行為は正当な行為であるから共同不法行為は成立しないとして、控訴人の請求を争った。

原判決は、被控訴人らは区分所有法や本件マンションの管理規約によって定められた業務を遂行すべき者であり、本件行為は法的には本件管理組合の行為であるから、被控訴人らに共同不法行為は成立しないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人は、原判決の全部を不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 被控訴人らは、以下のような理由から本件申込みを不許可とし、その旨を3月24日の定例理事会に報告して了承されたことが認められる。
ア 本件セミナーの講演者とされているAの営業活動が行われるおそれがあったこと
イ 本件チラシ1には「管理組合セミナー」と大きな字で記載され、本件管理組合が主催していると誤解されると困ること
ウ 本件チラシ1には、本件セミナーの内容がR裁判、地代、管理会社等についてと記載されており、理事会の検討が必要な事項であること

2 本件マンションの敷地をめぐって本件管理組合とRとの間で裁判が係属し、本件管理組合は、Rから、本件区分所有者らに対する賃料増額の求めについて介入をやめるよう指摘を受けた経緯があることから、本件申込みが許可され、本件チラシ1が掲示板に掲示されるとともに本件セミナーが開催された場合には、本件管理組合が本件セミナーを主催したと誤解され、本件マンションの管理運営に支障が出ることも予想された
また、本件セミナーにおいてAが営業活動を行い、本件区分所有者らの和を乱し、本件マンションの管理運営に支障が出ることも予想された
したがって、被控訴人らが、本件申込みを不許可としたことは、何ら不合理なものとはいえず、本件管理組合の理事長又は副理事長としての義務に違反したとはいえない。

まず、本件で問題とすべきは、理事長、副理事長個人の行為ではなく、管理組合の行為です。

その上で、管理組合が不許可としたことの合理性が認められています。

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大規模修繕・建替え1 大規模修繕工事の際に、立体駐車場部分の外壁等を修繕の対象から除かれたため、やむなく原告において自己の費用で修繕工事を行ったことを理由とする不当利得返還請求が棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、大規模修繕工事の際に、立体駐車場部分の外壁等を修繕の対象から除かれたため、やむなく原告において自己の費用で修繕工事を行ったことを理由とする不当利得返還請求が棄却された事案(東京地判平成28年9月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンションの区分所有者である原告が、同マンションの管理組合である被告に対し、マンション大規模修繕工事の際に、マンションの立体駐車場部分の外壁等が修繕の対象から除かれたため、やむなく原告において自己の費用で修繕工事を行ったことで、法律上の原因なくして被告が修繕工事費用分の利得を得ているとして、不当利得に基づき、利得金の返還を求めるとともに、選択的に、被告の修繕義務の不履行に基づいて、上記費用支出額相当の損害の賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・以上の検討結果を総合すれば、社会通念に照らし、本件立体駐車場部分は、本件マンションと一棟の建物として構成されず、別棟となるものと認められる(本件立体駐車場部分は、マンション敷地内の別棟の立体駐車場棟ということになるから、区分所有建物の建物部分ではない。)。

2 本件総会において、本件決議により、本件工事の対象に本件外壁が含まれないものとして多数決により承認可決されている。
本件外壁を含む本件立体駐車場部分が本件マンションとは別棟である以上、本件外壁を本件マンションの大規模修繕工事の対象に含めるか否かについて、集会の多数決の決議で決することとしても、本件管理規約に反せず、違法はない
本件決議により、不利益を被ることが合理的に予想される原告及び原告関係者は、集会の議事進行手続において、質問し、異議を述べる機会を与えられており、実際にもCは異議を述べる等しているし、原告、C及びAは大規模修繕工事に関する議案(第5号議案)に反対の議決権を行使している。
そうだとすると、本件総会の招集手続、議事進行について、手続的瑕疵があったとは認められない。
なお、本件立体駐車場部分に関する前記検討結果を踏まえれば、平成11年工事と本件工事とで大規模修繕工事の実施範囲が異なる結果となったとしても、いずれも適法な多数決決議で行われたものであって違法な決議ではない
以上によれば、本件外壁を大規模修繕工事対象に含めなかったことは適法な総会決議に基づく決議事項であり、このことをもって、不当利得にいう「法律上の原因がないこと(民法703条)」にはならない
そうすると、原告の主張する不法利得返還請求権は理由がないことになる。

不当利得構成、債務不履行構成ともに要件を満たさないため、請求棄却となりました。

ちなみに、事務管理構成も本人の意思に反しないとはいえないため、こちらも難しいでしょう。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

悪臭問題2 賃借人が営業する台湾料理店の悪臭について、賃貸人である区分所有者の共同利益背反行為と認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃借人が営業する台湾料理店の悪臭について、賃貸人である区分所有者の共同利益背反行為と認められた事案(東京地判平成29年2月22日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合の管理者である原告が、本件建物の区分所有者である被告に対し、(1)本件建物の賃借人の営業する台湾料理店が悪臭を生じさせており、これは区分所有者の共同の利益に反するものであると主張して、区分所有法57条1項、3項に基づき、本件建物内を台湾料理店として使用させることの差止めを求めるとともに、
(2)①不法行為に基づき、上記賃借人が共用部分に看板、ごみ箱を無断で設置している使用料相当損害金63万円(平成26年11月12日から平成28年7月11日までの21か月分)、②上記マンション管理組合の管理規約に基づき、本件訴訟の追行費用相当損害金108万0400円、③上記①のうち平成26年12月1日から平成27年7月31日までの使用料相当損害金24万円に対しては訴状送達の日である平成27年8月22日から、上記①のその余の期間の使用料相当損害金及び上記②の合計147万0400円に対しては、訴えの変更申立書送達の日である平成28年8月5日から、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

1 被告は、別紙物件目録記載の建物内を、賃借人有限会社bをして台湾料理店として使用させてはならない。
 被告は、原告に対し、134万2349円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 悪臭の態様と程度、本件マンションの居住者等の受け止め方であるが、本件店舗から発せられる臭いは「中華料理のような臭い」であるところ、一定の状況下では食欲をそそる好ましい臭いと感じられることはあっても、望みもしないのに連日長時間さらされる臭いとしては、一般的には不快感が大きいと受け止められるものと解される。
そして、本件店舗から発せられる臭いは、本件建物の真上にとどまらず、本件マンションの居住者の多くが利用する本件マンションのエントランスにも及んでいるところ、午後6時30分頃時点における2階ベランダ及び1階エントランス部分の臭気指数(それぞれ27及び22)は、文京区長の定める敷地境界線での規制基準(他者の生活圏に侵入することが許容される臭気の基準という意味合いがある。)である臭気指数(12)を大幅に上回っているものである。
また、本件店舗の営業開始直後から、本件店舗の発する臭いに対する苦情が多数寄せられているところ、そのような状況は現在も続いており、他の区分所有者の中には、本件店舗の臭いによってテナントの撤退を余儀なくされるといった具体的な不利益も生じているのであって、上記臭いは、本件マンションの居住者等に対し、相当程度に深刻な被害をもたらしているものということができる。

2 次に、地域環境についてみるに、本件マンションは商業地域内に位置し周辺には一定の商業施設はあるものの、飲食店が集中する繁華街などとは異なり居住環境との調和も求められているということができる。
実際にも、本件マンションは、1階の公道面の101号室から105号室が店舗であるものの、それ以外の専有部分は全て居住を目的とする住戸であって、本件マンションを全体としてみれば、居住用物件としての比重がはるかに高いものということができ、その趣旨は、本件規約12条3項、使用細則4条1項にも現れているところである。

3 悪臭の防止に関する対応策の有無とその効果についていえば、本件店舗の開店直後に、悪臭対策としておよそ無防備といわざるを得ない本件排気設備が本件管理組合に無断で設置されてから、少なくとも結果に現れる形での対策は一切講じられないまま現在に至っている
しかも、この間、本件管理組合からは、書面による通告を含め繰り返し善処を求められてきたという経過もあるのであって、それにもかかわらず何らの対応策がとられていないという事実は、受忍限度の判断に当たっても重視せざるを得ない
なお、被告としては、本件管理組合とb社の板挟みになって対応に苦慮していたという事情があることはうかがわれるが、本件のそもそもの発端は、本件管理組合からテナントとしてふさわしくない店舗の基準は事前に示されていながら、被告において余りに楽観的にすぎる判断をした上、本件管理組合に対し本件店舗に関する必要な情報の開示を尽くさなかった点にあると解される。
また、事後的にも、b社との関係で、本件賃貸借契約の貸主としての対応が可能であることは後記のとおりである。したがって、上記の事情は被告の責任を免れさせる根拠となるものではない。
以上によれば、本件店舗から生じさせている悪臭は本件マンションの居住者等の受忍限度を超えるものというべきであり、被告がb社をして本件店舗において台湾料理の営業を行わせている行為は、区分所有者の共同の利益に反する行為であって、区分所有法57条の規定に基づく差止めの対象になるというべきである。

4 本件規約68条によれば、原告は、区分所有者である被告に対し、弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができるところ、原告ないし本件管理組合は、本件訴訟追行のため、臭気測定報告書等作成費用19万4400円を支出し、弁護士費用86万4000円については、未払のものも含まれてはいるものの、訴訟の終了時にはその結果にかかわらず支払うこととされており、その金額が不合理でもないことからすると、被告は、上記規約に基づき、合計105万8400円の支払義務を負うというべきである。

本件では、専門家である臭気判定士による判定結果を証拠として提出しています。

損害として、臭気測定報告書等作成費用についても認めてくれています(認めてくれない裁判例もあります。)。

違約金としての弁護士費用について、着手金のみならず(まだ支払がされていない)成功報酬についても認めてもらうための工夫のしかたが示されていますので参考にしてください。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。