管理会社等との紛争7 管理組合が弁護士に対して訴訟追行等に関する弁護士費用の返還請求をしたが棄却された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合が弁護士に対して訴訟追行等に関する弁護士費用の返還請求をしたが棄却された事案(東京地判令和2年2月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、弁護士である被告との間で複数の訴訟等の追行に関する委任契約を締結し、着手金等を支払ったが、それらの委任契約は無効であるから、被告はそれらの委任契約に基づき受領した金員を法律上の原因なく利得し、そのために原告は損失を受けたと主張して、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、416万8800円及びこれに対する遅延損害金の支払を認める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、本件各委任契約が無効である理由について、被告には本件委任契約締結当初からそれらに基づく債務を履行しようとする意思はなく、被告が着手金等を詐取しようとしていたことは明白であるとしか主張していないところ、そのような事実があったとしても本件各委任契約が当然に無効となるものではないから、原告の主張は、主張自体失当である。

2 第1事件については、平成30年4月18日に判決が言い渡されて委任事務が終了し、第4事件については、被告又は所属弁護士が口頭弁論が終結されるまで訴訟を追行し、第5事件については、被告又は所属弁護士が解任されるまで7回の口頭弁論期日に出廷し、訴状及び準備書面1ないし3並びに甲第1号証ないし第30号証を提出し、第6事件については、強制執行停止決定を受けて委任事務が終了し、第7事件については、紛議調停が不成立で終了するまで手続を行って委任事務が終了したことがそれぞれ認められるところ、それにもかかわらず、被告に本件各委任契約締結当初からそれらに基づく債務を履行しようとする意思がなかったとか、被告が着手金等を詐取しようとしていたと認めることができるだけの証拠はない。したがって、本件各委任契約が無効であると認めることはできない。

3 したがって、原告が被告に対し本件各金員について不当利得返還請求権を有すると認めることはできないから、原告の請求は理由がない(なお、仮に被告が本件各委任契約について債務の本旨に従った履行をしなかったとすれば、原告が被告に対し債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる場合があるが、本件の請求はそのような請求ではない。)。

本件は、管理組合が原告となり、委任契約を締結していた弁護士に対して弁護士費用について不当利得返還請求をした事案ですが、原告側には代理人がついておらず、適切な法律構成がなされておらず、結果として請求棄却となっています。

上記判例のポイント3のとおり、法律構成如何によっては請求が一部認められた可能性は0ではなかったと思います(もっとも、上記判例のポイント2を読む限り、可能性はそれほど高くないように思いますが)。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

漏水事故4 屋上部分の瑕疵を原因とする漏水について管理組合法人の工作物責任が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、屋上部分の瑕疵を原因とする漏水について管理組合法人の工作物責任が認められた事案(東京地判令和2年2月7日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告は、被告が共用部分を管理しているマンションの最上階の居室を所有している。

本件は、原告が、上記マンションの共用部分である屋上部分の瑕疵のため、上記居室に漏水が生じて損害を被った旨主張し、民法717条1項本文に基づき、被告に対し、口頭弁論終結時までに具体化した損害として461万4034円の賠償+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、380万4512円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件マンションの最上階にある本件居室に生じた本件漏水は、本件マンションの共用部分である屋上部分の瑕疵によるものと認められる。
被告は、本件漏水が共用部分に起因することを否認するが、他の原因を具体的に主張立証するものではなく、また、被告自身、本件漏水の対策工事として、屋上の笠木部分等にシーリング充てん等を行う本件対策工事を行っているのであり、上記の否認には理由がない。
以上によれば、被告には、本件漏水について、民法717条1項本文に基づく責任があると認められる。

2 原告は、本件賃借人退去後の平成29年11月1日から令和元年12月31日までの26箇月間の賃料相当額が本件漏水と相当因果関係のある損害である旨主張する。
本件賃借人が退去したのは本件漏水が原因であると認められる。
被告は、本件居室の相当賃料額が10万円であることを争うほか、本件居室の稼働率が100%となるものではない旨主張する。
しかし、本件賃借人は、平成19年9月に本件賃貸借契約を締結してから10年間にわたり本件居室に居住していたものであり、本件漏水以外に、あえて本件賃貸借契約の解約を図る事情があったことはうかがわれない
そうすると、少なくとも令和元年12月31日までは、本件賃貸借契約は維持され、本件賃借人は本件居室に居住し続けていたと認めるのが相当である。
また、仮に本件賃貸借契約が継続していたとして、同日までに、本件賃借人が賃料の減額を求めたことをうかがわせる事情も認められない。

3 原告は、本件に関する立会のため有給休暇を11日使用したとして、11日分の収入額を本件漏水による損害として主張する。
確かに、原告は、本件漏水のため、本件賃借人から損害賠償を求められ、調停の申立てもされるなどして、一定の対応を要したことは認められる。
しかし、自らが有給休暇を取得して対応しなければならなかった具体的必要性ないし原告の対応の具体的内容を認めるだけの証拠はない
また、本件漏水に係る損害として、一定の弁護士費用を認めることをも考慮すれば、原告の休業損害を本件漏水と相当因果関係のある損害と認めることはできないというべきであり、原告の上記主張は採用することができない。

漏水事故が発生した場合の損害(特に消極損害)をどのように認定するかについては、同種事案の裁判例が参考になります。

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管理組合運営19 管理組合法人と理事長の利益相反が否定され、監事が管理組合を代表して行った訴訟提起が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合法人と理事長の利益相反が否定され、監事が管理組合を代表して行った訴訟提起が認められなかった事案(東京地判令和3年7月30日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、管理組合法人と理事長の利益相反の有無、及び、監事が管理組合を代表して行った訴訟提起の有効性が争いとなった事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は監事として、臨時総会を招集しようとしたが、本件管理会社が監事である原告の指示に従わなかったとして、同総会の運営について補助することを求め、本件管理組合を代表して別件訴訟を提起したことが認められる。
本件管理組合においては、理事長が代表権を有しており、本件管理組合と理事長との利益が相反する事項に限って、監事が代表権を有することとされている(区分所有法51条)。
そして、管理組合法人と理事長(代表権を有する理事)の利益が相反する事項であるか否かは、当該行為の外形から判断すべきであり、理事長個人と管理組合法人との間で法律行為をする場合(自己契約)や、理事長が代表し、又は代理する第三者と管理組合法人との間で法律行為をする場合(双方代表又は双方代理)などが想定される
しかし、別件訴訟は、本件管理組合の理事長であった被告を相手方とするものではなく、本件管理会社を相手方とするものであるから、外形的に見て、本件管理組合と被告との利益が相反する事項に該当するとは認められない。
そうすると、原告は、別件訴訟について本件管理組合を代表することはできず、そもそも、本件管理組合を代表して別件訴訟を提起することができなかったと言わざるを得ない。

2 以上によれば、監事である原告が本件管理組合を代表することができる場合に該当しないにもかかわらず、原告が本件管理組合を代表して提起した別件訴訟について、原告がその費用を本件管理組合に対して請求することができる根拠は明らかでない。
したがって、本件管理組合が原告に対して前記費用を支払うべき義務があるとは認められないから、前記支払義務があることを前提とする原告の主張は前提を欠くといわざるを得ない。

本裁判例を通じて、管理組合と理事との利益相反について裁判所の考え方を押さえておきましょう。

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管理費・修繕積立金14 管理規約に定めるコミュニティ費について脱退届を提出した後も支払義務があるとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理規約に定めるコミュニティ費について脱退届を提出した後も支払義務があるとされた事案(東京地判令和3年9月9日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は原告が、マンション管理組合である被告に対し、当該マンションの管理規約に定めるコミュニティ費用については、平成30年1月31日に脱退届を提出して契約を解除しているため、同年2月分以降支払う義務がないと主張して、平成30年2月分から平成31年3月分までの被告に対する原告の上記コミュニティ費用合計1400円及び同年4月分以降の債務が存在しないことの確認を求めるとともに、名誉毀損等の不法行為に基づく損害賠償として50万円+遅延損害金の支払及び被告の第7期通常総会における第1号議案に係る決議の無効確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 原告は、被告の組合員となることでコミュニティへの加入すなわち委任契約が成立していると主張し、脱退届を提出することによってコミュニティから脱退していると主張する
なお、原告によれば、「コミュニティ」は、法的団体ではなく、区分所有者及び賃貸居住者による「人の集団」であって、管理組合の構成員とは一致しておらず、区分所有法の範囲外である旨主張する。
しかし、本件マンションにおいて、区分所有者及び賃貸居住者で構成されている団体があるとは認められず、原告が本件マンションの区分所有者となったことで委任契約が成立したとも認められないから、原告の主張は採用できない。

2 また、原告は、コミュニティ費の徴収及び支出は、管理組合ができる業務の範囲と管理費を超えており、区分所有法3条に反しており無効であると主張する。
しかし、管理組合は、建物、その敷地及び付属施設の管理又は使用に関する事項について、規約で定めることが可能であるところ(区分所有法30条)、コミュニティ費については本件規約にも規定されている
そして、コミュニティ費が、建物、その敷地及び付属施設の管理又は使用に関する事項であるかを検討するに、コミュニティ費は主に本件パーティーに支出されているところ、被告の理事会は、本件パーティーについて、居住者間のコミュニティ形成に寄与し、マンションの治安を維持、ひいてはマンションの資産価値低下を防ぐ効果を持つものとして実施されていると評価している。
上記のように、マンションの住人(本件マンションの区分所有者、居住者又はその家族のみが参加可能であり、自治会ないし町会による会合とは異なるものである。)が互いに交流を持つことにより、一定の防犯効果を期待し、マンションの資産価値低下を防止するとの考え方には一定の合理性がある
また、少なくとも平成28年以降は、アルコールを始めとする飲食物に係る費用についてコミュニティ費用から支出しておらず、本件パーティーへの支出をもって一部の住人らによる懇親会に支出するものと同視することもできない。
そうすると、本件パーティーへの支出があることが想定されたとしても、コミュニティ費用の徴収は区分所有法3条に反しないというべきである。

3 また、原告は、マンション標準管理規約について指摘するが、マンションの標準管理規約は、区分所有者による規約の設定等に当たって参照されるべきモデルないし指針ではあるが、標準管理規約のとおりに規約をつくらなければならないものではなく、標準管理規約の記載から管理組合の目的の範囲の内外が判別されるとはいえない。

管理規約に規定されており、かつ、コミュニティ費の支払については一定の合理性が認められることを理由に原告の請求が棄却されています。

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管理組合運営18 管理組合が区分所有者がマンション内で営む民泊事業が違法である旨を記載した書面を送付したこと等が名誉毀損にあたらないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、管理組合が区分所有者がマンション内で営む民泊事業が違法である旨を記載した書面を送付したこと等が名誉毀損にあたらないとされた事案(東京地判令和3年9月29日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者であり、同マンションにおいて住宅宿泊事業又は住宅宿泊管理業を営む原告らと、当該事業の禁止を求める本件マンション管理組合(被告管理組合)及びその理事(被告Y2)との紛争であり、①原告らが、被告らに対し、原告らが営む民泊事業が違法である旨を記載した書面を被告らが本件マンションの区分所有者に送付し、また、原告らが悪質な民泊事業者である旨を記載した書面を被告らが観光庁及び新潟県に送付したことについて、不法行為に基づき、連帯して、原告X1においては損害金500万円+遅延損害金の支払を求め、原告会社においては損害金1000万円+遅延損害金の支払を求め、②原告らが、被告らに対し、上記①の不法行為に基づく名誉回復措置として、謝罪広告の掲載を求め、③原告らが、被告管理組合に対し、被告管理組合の令和2年11月21日付けの第30期通常総会における第7号議案「役員選任の件」が偽りで、「理事会が推薦した推薦人リストの任命決議」であることかから、議案そのものが無効であることの確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

本件訴えのうち、被告管理組合の令和2年11月21日付けの第30期通常総会における第7号議案「役員選任の件」が無効であることの確認を求める部分を却下する。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 ある事実を基礎とした意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったといえ、意見ないし論評の前提としている事実の重要部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠き(最判平成元年12月21日参照)、仮に意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも、行為者においてそれを真実と信ずるについて相当な理由があれば、その故意または過失が否定される(最判平成9年9月9日第三小法廷判決)。

2 本件要望書は、観光庁及び新潟県に送付されているところ、他人に伝播する可能性があったと認めるに足りる証拠はないから、被告らが原告らの社会的評価を低下させる事実又は意見を流布したとはいえない。したがって、名誉棄損を理由とする不法行為は成立しない。

3 ①原告らが、本件管理規約や理事会の不許可を認識しながら、本件マンションにおいて民泊事業を行っていること、②原告X1が、理事会メンバーに対し、旅館業法違反を主張したり、警察に被害届を提出したりしたこと、③原告らが、被告らに対し、被告らが原告らの住宅宿泊事業等を妨害したことなどを理由として、損害賠償等を求める訴えを提起したこと、④原告らが被告管理組合への管理費、修繕積立費、水道代などを滞納し、民泊事業を営んでいた本件マンション内の部屋の故障した暖房ボイラーの新規購入費用、取り付け工事の費用を支払わなかったことは真実である。また、⑤妨害行為を働く理事会が悪であるといった風評をYouTube等に投稿したとの事実について検討すると、原告X1が本件マンション内に監視カメラを設置して撮影した動画が、YouTube上に200本以上、掲載されており、そこには理事会を批判する内容が含まれていることが認められる。
この点,原告X1は,上記動画を掲載したのは原告X1ではないと主張するところ、被告らにおいて原告X1が上記動画を撮影していたと認識していたこと、それまでの原告X1の理事会に対する言動等に照らせば、少なくとも、被告らが原告X1において上記動画を掲載したと信じたことについて相当の理由があったというべきである。
以上からすれば、被告らが本件要望書を作成するに当たって、そこで摘示した事実の重要な部分は、真実であるかあるいは真実と信じるについて相当の理由があったこととなる。

管理組合や理事もしくは管理会社の対応が、区分所有者等との関係で名誉毀損に該当するかが争点となることは決して珍しくありません。

名誉毀損該当性を事前に把握することは容易ではありませんが、上記判例のポイント1の規範を理解し、同種の裁判例をフォローすることによりある程度はリスクヘッジができます。

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管理組合運営17 総会における損保保険料を管理費から支出する旨の決議の無効確認の訴えが却下された事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会における損保保険料を管理費から支出する旨の決議の無効確認の訴えが却下された事案(東京地判令和2年2月20日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件マンションの区分所有者であった原告らが、本件マンション管理組合である被告の臨時総会において、被告と損保ジャパン日本興亜株式会社との間でマンション総合保険に係る契約を締結し、その保険料を管理費から支出する旨の決議がされたことにつき、本件マンションの管理規約上は、管理費は共用部分直接費としての保険料にのみ充当するものとされているのに、上記保険契約には本件マンションの各専有部分に係る個人賠償責任保険特約が付されており、本件規約に違反する内容となっているから無効であると主張して、被告に対し、本件決議が無効であることの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

訴え却下

【判例のポイント】

1 本件訴えの内容は、被告の臨時総会において可決された本件決議が無効であることの確認を求めるというものであるところ、原告らは、本件決議が無効とされれば、原告らが被告の組合員であった時に管理費から支出された保険料が返還され、本件マンションの管理費を充実させることができるのであり、被告との間の紛争が抜本的に解決されることから、本件訴えの確認の利益及び原告適格が認められると主張する。
しかし、本件規約上、被告の組合員は、被告に対し、既に納めた管理費の返還を求めることはできないと定められていることが認められる(61条4項)。
そうすると、仮に、原告が主張するように本件決議が無効であることを確認する旨の判決を得た上、原告らが被告の組合員であった時に本件マンションの管理費から支出された保険料が返還されたとしても、原告らに対して直接金員の返還がされることにはならない
そして、原告X1は令和元年6月28日に、原告X2は同年7月18日に、それぞれ各専有部分である区分所有建物を売却し、いずれも被告の組合員の資格を喪失しているのであって、本件マンションの管理費を上記返還金の分だけ充実させることについて、本件決議に関する原告らの不満等が緩和されることはあったとしても、原告ら自身の現在の法律上の利益ないし地位は何ら客観的・具体的な影響を受けるものではないというほかない。
その他、本件において、原告らが、本件決議の効力について格別の利害関係を有することをうかがわせる事情は見当たらず、本件訴えが、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のために適切かつ必要な場合に当たると認めることはできない
以上のとおり、原告らにおいて、本件訴えによって本件決議が無効であることの確認を求めることについて、法律上の利益があるとはいえないから、本件訴えにつき確認の利益があると認めることはできない

意識していないと、被告(管理組合)としては、単に請求棄却を求めてしまいそうなところですので注意しましょう。

管理規約に「被告の組合員は、被告に対し、既に納めた管理費の返還を求めることはできない」旨が定められていることが多いため、是非、本件裁判例を参考にしてください。

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駐車場問題8 駐車場の管理費を定めた総会決議が原告の権利に特別な影響を及ぼすものとはいえないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、駐車場の管理費を定めた総会決議が原告の権利に特別な影響を及ぼすものとはいえないとされた事案(東京地判令和2年3月19日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本訴原告が本訴被告に対し、マンション内で専用使用している駐車場の管理費を定めた臨時総会決議について原告の権利に特別な影響を及ぼすものであるにもかかわらず、原告の承諾なくして決議したものであり区分所有法31条1項後段に反するとして臨時総会決議の無効確認を求める本訴事案と、反訴被告が反訴原告に対し、未払となっている管理費(平成26年5月分~平成31年4月分 合計678万円)と各支払期日の翌日から約定利率年14%の遅延損害金の支払を求める反訴事案である。

【裁判所の判断】

本訴原告の請求棄却

反訴被告の請求認容

【判例のポイント】

1 本件決議では、本件各室の管理費額について、住戸と駐車場の違いを考慮していない
しかし、住戸と駐車場の違いをどの程度考慮するかは、一義的に決められるものではなく、被告において裁量的に決めることができる性質のものであり、本件決議のように専有面積や共有持分に応じて定めることも一つの方法として許されるものと考えられる。
また、本件各室は雨ざらしの駐車場ではなく、本件マンション内の半地下にあり、構造上部屋に変更することもでき、貸駐車場として収益物件として使用されていること、管理人による清掃も行われているところであり、本件各室の管理費は、住戸部分と同一に扱われるべき要素も認められる。また、本件各室の管理費は、旧各管理会社とDがなれ合ったり、本件マンションの最大の区分所有者であるDが被告において強硬策に出られないことをよいことに被告からの請求を無視し、本件マンション建築以降40年間払われてこなかったものであり、かかる不平等が長きにわたって続いてきたことを無視することもできない
本件決議は、かかる管理費の不平等を是正し、管理費の徴収を確実にするため行ったものであり、原告に特別の影響をもたらすものとまでは認め難い

本件は、上記のとおり、住戸と駐車場の違いを考慮せずに駐車場の管理費を住戸部分と同一に取り扱っていますが、裁判所は、駐車場の特徴や原告のこれまでの対応等を考慮して、総会決議を有効と判断しました。

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管理費・修繕積立金13 団地の管理組合が、総会において、管理組合規約のうち管理費等の負担割合に関する定めを変更する決議をしたところ、団地を構成する商業棟や敷地の共有持分を有する原告らの権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当するとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団地の管理組合が、総会において、管理組合規約のうち管理費等の負担割合に関する定めを変更する決議をしたところ、団地を構成する商業棟や敷地の共有持分を有する原告らの権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当するとされた事案(札幌地判令和2年4月13日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件本訴請求及び承継参加に係る訴えは、本件団地の管理組合である被告管理組合が平成28年4月24日に開催した第10回通常総会において、管理規約のうち、管理費等の負担割合に関する定めを変更することを内容とする本件規約変更決議をしたところ、本件規約変更決議は、団地建物所有者である従前原告らの権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当し、区分所有法66条、31条1項後段、本件規約変更決議時の管理規約51条5項によれば、従前原告らの承諾が必要となるにもかかわらず、被告管理組合は、その承諾を得ることなく、本件規約変更決議をしたとして、従前原告らが、本件規約変更決議は無効であることの確認を求める事案である。

本件反訴請求に係る訴えは、本件規約変更決議によって従前原告らが支払うべき管理費等の金額が増額となり、その支払うべき管理費等の金額は月額107万1040円となったにもかかわらず、従前原告ら又は原告らは本件規約変更決議以前の管理費等の金額である月額81万9550円を支払うにとどまっているとして、本件規約変更決議後の管理規約の定めに基づき、同年8月から令和元年12月までの41か月分の管理費等について、従前原告ら又は原告らが支払うべき管理費等の金額と支払済みの管理費等の金額の差額(月額25万1490円×41か月分)である1031万1090円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

平成28年4月24日に開催された被告管理組合の第10回通常総会においてされた決議は、無効であることを確認する。

被告管理組合の反訴請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1  区分所有法31条1項後段は、区分所有者間の利害を調整するため、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定めており、ここでいう「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される(最判平成10年10月30日)ところ、同法66条によって同法31条1項後段を準用する場合及び同項後段の下に定められた旧規約51条5項の趣旨も同様であると解される。

2 旧規約における団地管理費等の負担割合を定める方法は、新規約におけるそれと比して合理性を欠いていたものとはいえず、本件規約変更の必要性及び合理性が高かったとはいえない一方で,従前原告らは、団地管理費等に係る本件規約変更によって実質的な利益を得ていないにもかかわらず、本件規約変更前と比して大きな負担の増加を強いられることとなり、その均衡を失しているものといわざるを得ない。
ところで、従前原告らは本件商業業務棟の共有者であり、被告管理組合の組合員の大半は、本件住居棟の区分所有者であるところ、本件商業業務棟の共有者と本件住居棟の区分所有者では、本件団地の利用方法、利用価値が、営業活動の場であるか生活の場であるかという点で大きく異なることは明らかである。
しかしながら、本件住宅棟以外団地共用部分を構成する設備や本件敷地の状況に照らせば、本件住宅棟以外団地共用部分及び本件敷地のうち、屋内通路等、本件住居棟の区分所有者のみがその利益を享受し得るものはあるが、本件商業業務棟の共有者のみがその利益を享受可能なものは必ずしも多くはなく、少なくとも、本件商業業務棟の共有者において本件敷地及び本件住宅棟以外団地共用部分から受ける利益が、本件住居棟の区分所有者が受けるそれと比して大きいとはいえない
この点、団地型規約においては、団地管理費等を定めるに当たり、使用頻度等は勘案しないこととしているが、団地型規約が本件団地に直ちに適用されるわけではないことに加え、本件規約変更に伴って従前原告らが受ける不利益の程度を検討するに当たって、このような実態を考慮することは、必ずしも禁止されるものではないと解される。
このような本件住宅棟以外団地共用部分及び本件敷地の利用実態にも照らせば、本件規約変更決議のうち団地管理費等の負担割合を定める方法を変更する部分は、本件商業業務棟の所有者(共有者)に与える不利益がその受忍限度を超えていると認められる。
したがって、同部分の変更は、従前原告らに対して「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当する。

本件では、複合団地において商業棟と住宅棟の各区分所有者間での比較衡量が行われています。

区分所有法31条1項後段の解釈においては、団地型規約に関する考え方(使用頻度等は勘案しない)がストレートに妥当しないことが書かれています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理組合運営16 総会において原告が管理組合法人の役員(理事長)に立候補したにもかかわらず議案に掲げられなかったことが不当とはいえないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、総会において原告が管理組合法人の役員(理事長)に立候補したにもかかわらず議案に掲げられなかったことが不当とはいえないとされた事案(東京地判令和2年2月25日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、本件物件の区分所有者である原告が、本件物件の管理組合法人である被告に対し、①被告の役員の選出手続が適正に行われていないなどと主張して、被告の役員を選出する手続を行うことを求め、②本件総会の議長が原告であるべきはずであったのに、他の者が議長とされたなどと主張して、本件総会の議長が原告であったことの確認を求め、③被告がその理事の地位にあると主張するB、C、D、E及びF並びにその監事の地位にあると主張するGは、いずれも理事又は監事の資格を有しない旨主張して、本件役員らがそれぞれ被告の理事又は監事の資格を欠格していることの確認を求め、④上記Gが監事の資格を有しない結果、被告には監事が存在しない旨主張して、被告に監事が存在しないことの確認を求め、⑤本件役員らが役員として主催した被告の総会が無効であると主張して、被告の設立以降に開催された総会の決議が無効であることの確認を求める事案であると解される。

【裁判所の判断】

本件訴えのうち、定時総会の議長が原告であることの確認を求める部分を却下する。

原告のその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 原告は、被告の役員が本件物件の区分所有者の中から選任されるべきであり、本件総会において自らが理事長に立候補したのに議案に掲げられなかったことから、被告が役員を選出する手続をすべき義務を負う旨主張する。
しかしながら、区分所有法及び本件管理規約において、管理組合法人である被告の役員が本件物件の区分所有者でなければならないことを定めた規定は見当たらない
そして、本件管理規約において、被告の役員は、本件物件の管理組合にて区分所有法上の管理者を務めていたA社の推薦する本件物件の管理事務につき専門的知識と経験を有する者を、総会にて選任するものとされているところ、この本件管理規約の定めによれば、本件総会に当たり原告がA社から推薦されていなかった以上、被告の役員(理事長)に立候補したことが議案に掲げられなかったこともやむを得ないというべきである。

2 原告は、平成30年11月17日に開催された本件総会の議長が原告であることの確認を求めている。
しかしながら、本件総会は既に行われたものであり、かつ、総会の議長であったか否かは事実関係の存否の問題であるから、本件議長確認請求は、過去の事実関係の確認を求めるものであるということができる。
そして、本件総会の議長が原告であったことの確認をすることが、原告の現在の法律関係に関する法律上の紛争を抜本的に解決するために必要かつ適切であると認めることができない以上、本件議長確認請求は、確認の利益を欠く不適法な訴えであるといわざるを得ない。
なお、本件物件の管理規約においては、「総会の議長は理事長又は理事,若しくは理事長の指定する代理人が務める。」こととされているところ、本件総会においては、被告の理事長から代理人として委任された本件従業員が議長を務めたのであり、その手続に瑕疵も認められないし、本件管理規約の上記規定によれば、原告が、被告の理事長又は理事でなく、理事長から代理人として指定されたこともなかった以上、本件総会の議長であったとは認められない。

本件同様、規約により役員の選任要件が限定されている場合、その要件に合理性が認められる限りは、裁判所も当該規約を尊重します。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。

管理組合運営15 不起訴合意に反する提訴が不当提訴にあたるとされ不法行為に該当すると判断された事案(不動産・顧問弁護士@静岡) 

おはようございます。

今日は、不起訴合意に反する提訴が不当提訴にあたるとされ不法行為に該当すると判断された事案(東京地判令和2年3月24日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本訴は、「本件マンション」の区分所有者である原告が、本件マンションの区分所有者全員で構成される区分所有法3条所定の団体である被告に対し、①平成30年6月17日開催の本件総会における第1号議案及び第2号議案に係る各決議について、決議に至る手続に瑕疵がある、決議内容に不合理な点があるなどと主張して、これらの決議がいずれも無効であることの確認を求めるとともに、②被告の管理規約68条に基づく、本訴における被告の弁護士費用に係る原告の債務が存在しないことの確認を求める事案である。

反訴は、被告が、原告による本訴の提起は当事者間における不起訴合意に反する不当な訴訟提起であると主張して、原告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、本訴に係る弁護士費用(43万2000円)及びその他損害(10万円)の合計53万2000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

原告の各訴えをいずれも却下する。

原告は、被告に対し、30万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件各決議は、本件不起訴合意にいう「本和解成立までに行われた被告管理組合の運営及び役員の業務執行に関する一切の事項」に該当する。よって、本件各決議の無効確認を内容とする本訴請求(1)に係る訴えは、本件不起訴合意に抵触し、訴えの利益がないから、却下するのが相当である。
これに対し,原告は、本件不起訴合意は、訴権を不当に制限するものであり、無効であると主張する。しかしながら、本件不起訴合意は、「本和解成立までに行われた」と時間的限定を設けており、将来にわたって一切の裁判上の請求ができないとまではしていないこと、また、合意当時にはおよそ知り得なかった事情が後に発覚したような例外的場合にも一切の裁判上の請求を禁ずるものとは解されないことに照らせば、原告の訴権を不当に制約するものであるとはいえないから、原告の上記主張は採用できない。
 
2 訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、本件不起訴合意の内容は明確であること、本件各決議が本件不起訴合意にいう「管理組合の運営及び役員の業務執行に関する」事項であることは明白であることからすれば、本訴に係る訴えが本件不起訴合意によって却下となることは通常人であれば容易に知り得たといえる。
したがって、原告は、その主張する法律関係が事実的、法律的根拠を欠くことを通常人であれば容易に知り得たといえる状況においてて、あえて本訴を提起したものといえる
加えて、本件不起訴合意に至る協議の中で本件各決議についても検討を行い、本件各決議があることを念頭に置いた上で本件不起訴合意に至ったのにもかかわらず、本件不起訴合意から間もなくして本訴提起に至っていることをも併せ考慮すれば、本訴の提起は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く違法なものと認められ、不法行為を構成するといえる。

「不起訴合意」の有効性は、裁判でよく争点となりますので、上記判例のポイント1でしっかり押さえておきましょう。

有効な不起訴合意に反して提訴した場合には、本件同様、不当提訴と判断され、不法行為責任を負うことになりますので注意が必要です。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。