管理組合運営46 区分所有者が理事長の妻に対して提起した訴訟における妻の弁護士費用を管理費から支出することは可能か?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者が理事長の妻に対して提起した訴訟における妻の弁護士費用を管理費から支出することは可能か?(東京地判令和3年10月28日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、区分所有建物である本件マンションの区分所有者である原告が本件マンション管理組合である被告に対し、原告が理事長(当時)の妻に対して提起した訴訟の同人の弁護士費用について、これを管理費から支出することを承認した被告の臨時総会における決議は、管理規約に反して無効であるとして、その無効確認を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件決議は、別件弁護士費用を本件マンションの管理費から支出することを承認するものであるので、別件弁護士費用を本件規約上、適法に支出し得るか検討する。
本件規約36条5項は、被告における「役員の職務は、現に居住する親族(事実婚者を含む。)が代行できることとし、その職務遂行は役員がしたものとみなす」と定めており、特定居住者は、同項に基づき、第19期理事長の職務を代行して、原告との間の訴訟に関して被告が支払義務を負担した弁護士費用として、23万7908円を管理費から支出したことが認められる。
そのため、別件訴訟は、原告と特定居住者が当事者ではあっても、被告における通常の職務行為に当たることが客観的に明らかな特定居住者の行為に関して提起されたものと解される。
このように、管理組合における通常の職務であることが明らかな行為に関して役員個人としての法的責任が問われた際、その手続に要する弁護士費用については、管理組合の職務の遂行に伴い生じた負担であり、本来、管理組合の運営によって利益を受ける区分所有者全員で負担すべきいわば共益費としての性質を帯びることを否定できない。
そうすると、別件弁護士費用は、本件規約30条9号所定の「管理組合の運営に要する費用」に当たるというべきであり、本件議案を承認した本件決議に法令又は規約違反があるとはいえない。
以上の次第で、原告の被告に対する本件決議の無効確認を求める請求は理由がない。

規約の解釈上、結論自体は異論がないところだと思います。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。