本の紹介2139 折れないハートをつくる7つの秘訣#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

12年前に出版された本ですが、今読んでも、全く色褪せない内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仲間といると知らないうちに起こっているのが”無意識の伝染”。だからこそ、自分を成長させたいなら、『誰と一緒に過ごすか』の見極めが大切。自分が誰といたら、成長できるか?輝けるのか?決めるのはあなた自身。」(77頁)

これは昔からずっと言われ続けていることですが、まわりの環境が極めて重要であることを物語っています。

未成年のうちは、事実上、親の選択に従わざるを得ない場面が多いと思いますが、成人してからは、どのような環境に身を置くかについては、多くの場合、自分の選択によります。

「無意識の伝染」はプラスにもマイナスにも働きます。

成長したいのなら、コンフォートゾーンから抜け出し、自分が「こうなりたい」と思う人とできるだけ時間を共にすることです。

守秘義務・内部告発13 公益通報と認められる内部告発を行った労働者の解雇を無効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、公益通報と認められる内部告発を行った労働者の解雇を無効とした事案を見ていきましょう。

水産業協同組合A事件(水戸地裁令和6年4月26日・労経速2556号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXらが、Y社に普通解雇されたことに関し、以下の請求をした事案である。
(1)X1が、Y社に対し、Y社によるX1の解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものであって、権利を濫用したものとして無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める(請求1(1))とともに、令和4年3月から判決確定日まで毎月25日限り賃金30万6000円+遅延損害金の支払(請求1(2))、並びに、労働契約に基づき、本件解雇1以前の令和3年の冬季賞与98万6000円及びこれに対する弁済期の翌日である令和3年12月14日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払を求めたもの。
(2)X2が、Y社に対し、Y社によるX2の解雇は、原告Bが業務上の疾病にかかり療養するために休業する期間内になされたものであるから労基法19条1項に反し、又は、権利を濫用したものとして無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和4年3月から判決確定日まで毎月25日限り賃金25万円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払、並びに、労働契約に基づき、本件解雇2以前の令和3年の冬季賞与87万8400円及びこれに対する弁済期の翌日である令和3年12月14日から支払済みまで上記同旨の遅延損害金の支払を求めたもの。

【裁判所の判断】

1 X1が、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、X1に対し、令和4年3月から本判決確定の日まで、毎月25日限り30万6000円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、X1に対し、13万7000円+遅延損害金を支払え。
4 X2が、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
5 Y社は、X2に対し、令和4年3月から同年10月まで、毎月25日限り25万円+遅延損害金を支払え。
6 Y社は、X2に対し、令和4年11月から令和5年12月まで、毎月25日限り15万円+遅延損害金を支払え。
7 Y社は、X2に対し、令和6年1月から本判決確定の日まで、毎月25日限り25万円+遅延損害金を支払え。
8 Xらのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 本件記事の内容は、「茨城県加工シラス放射能“基準超え”数値はなぜ消えた」との題名のもと、本件書面に数値修正の書き込みがあり、修正後の数値を県が公表したこと、本件会議において放射性物質の検査結果が改ざんされた疑惑が生じたとの記載がある一方で、本件会議においてY社の幹部職員が説明した内容、Y社及び県に対する取材結果も同様に記載され、茨城県の数値は健康に影響が出るレベルではなかったと締めくくっているのであるから、これを読んだ一般読者においては、Y社が何らの根拠なく隠蔽目的で放射性物質分析結果数値を修正し、改ざんしたとの印象を抱くとまではいえず、Y社の信用低下は仮にあるとしても限定的なものにとどまる

2 X1が、本件書面の記載内容から、Y社あるいは茨城県が、漁獲物の流通を確保するために、実際の放射性物質検査結果の数値よりも低い数値を公表したのではないかとの疑念を抱くことは必ずしも不合理なことではないというべきである。
したがって、X1が、週刊誌記者からの取材に対して、本件書面及び本件会議の録音音声を提供し、実際の放射性物質分析結果とは異なる数値が公表された可能性があるとの認識を回答していたとしても、それが、故意に虚偽の情報を提供したものであったということはできず、およそ合理的な理由なくY社の信用を毀損する行為であったということもできない
以上に説示したところによれば、X1が取材に応じたことは、不合理にY社の信用を低下させるものであったとは認められず、解雇の有効性を基礎付ける客観的合理的な理由たり得ないというべきである。

多分に評価が含まれることから、現場において、解雇の是非を判断することは至難の業かと思います。

日頃から顧問弁護士に相談をする体制を整えておき、速やかに相談することにより敗訴リスクを軽減することが重要です。

本の紹介2138 成功する偶然を味方にする(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

帯には、「『努力と才能は報われる』という幻想」と書かれています(笑)

著者は、ささいな偶然がきわめて重要であると説いています。

とはいえ、ある出来事を偶然と捉えるか必然と捉えるかは単なる解釈の違いであり、たいした問題ではありません。

読み物としてとてもおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

生産とコミュニケーションにおける新たな手法が偶然の影響を増幅し、勝者と敗者の差を著しく拡大させたのである。他者より1%がんばって働く人や、1%多く才能がある人が、1%多い所得を得るというならばわかりやすいが、そうではない。小さな違いが何千倍もの収入の違いにつながるのだ。だから、偶然はきわめて重要なものになる。」(34頁)

仮に偶然がきわめて重要であるとして、多くの人は「で、どうすればいいの?」と思うはずです。

ずっと宝くじを買い続けていればいいのかと。

そういう話ではないですよね。

仮に偶然が重要であるとしても、結局のところ、私たちにできることといえば、日々、努力と工夫を積み重ねるほかないのです。

その結果、まわりまわって、偶然と思えるような形で、実を結ぶのです。

解雇413 日本語能力の欠如等を理由とする外国人労働者の試用期間中の留保解約権行使を無効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、日本語能力の欠如等を理由とする外国人労働者の試用期間中の留保解約権行使を無効とした事案を見ていきましょう。

R&L事件(東京地裁令和5年12月1日・労経速2556号23頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある雇用契約を締結していたXが、Y社のXに対する解雇が無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、660万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
Y社はXに対し、587万7144円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件雇用契約時にXの日本語能力は「中級」であることが前提とされていたが、「中級」の基準が明確に定まっていたとまではいえない。ただし、Y社のX採用に至るまでの経緯に照らせば、「中級」とは、少なくとも採用面接時にXがY社と日本語でやり取りした程度の日本語能力をいい、これを前提に本件雇用契約が締結されたと認めるのが相当である。したがって、Xが妻の名前を漢字で書くことができなかった点や、Xの兄が死亡した際にY社従業員の「葬式はどこでやるのか。」という質問の意図が理解できなかったこと等をもって、Xが「中級」程度の日本語能力を欠くとまでは認められない。

2 本件雇用契約には3か月の試用期間が設けられており、仮にXの日本語能力に十分でない部分があったとしても、Xが、日本語教育研究所の評価する日本語能力を有し、かつ、Y社の提供する週1回の日本語教室に通うなどの意欲を示していたことからすれば、上記試用期間3か月のうち約1か月しか経過していない11月25日の時点で、試用期間が満了する令和4年1月24日の時点においても本件雇用契約で前提とされていた「中級」の日本語能力を有さないことが見込まれる状態にあったとは認められない。

能力不足を理由とする解雇の場合、上記判例のポイント2のように判断されることがありますので、注意が必要です。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2137 ビジネスで一番、大切なこと#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から12年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「消費者のこころを学ぶ授業」です。

顧客置き去りの差別化が横行している現状を省みるにはとてもいい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

不思議なことに、市場の他の商品に比べて必ずしも優れているとは限らないが、差別化には成功している。顧客と特別な関係を築き、群れから抜きん出ている。・・・差別化を実現するためには、競争ではなく、競争からの完全な脱却が必要なのだ。」(80頁)

そのとおりです。

この意味を理解していないと、ますます顧客そっちのけの差別化が横行します。

意識していないと、手段が目的化してしまうのです。

「競争からの脱却」が何を意味するのか、そのためには何をすべきかを深く考える必要があります。

解雇412 試用期間中に逮捕勾留された旨を連絡せず、5日半欠勤した従業員の解雇を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、試用期間中に逮捕勾留された旨を連絡せず、5日半欠勤した従業員の解雇を認めた事案を見てきましょう。

シービーアールイーCMソリューションズ事件(東京地裁令和5年11月16日・労経速2555号35頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結しY社において勤務していたXが、Y社から試用期間中に留保された解約権を行使されたことについて、本件解雇が無効である旨主張して、Y社に対し、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②令和4年12月支払分の賃金45万9346円及び遅延損害金の支払、③令和5年1月支払分から本判決確定の日までの賃金毎月月額116万6667円+遅延損害金の支払、④不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料200万円と弁護士費用相当額20万円の合計220万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 5日半の欠勤については、労働者の労働契約における最も基本的かつ重要な義務である就労義務を放棄したものとしてそれ自体重大な違反であるといえる。Xは、5日半の欠勤に先立ち有給休暇及び振替休日を取得しているものの、本件逮捕勾留という事の性質上、引継ぎ等がされたとは考え難いから、これらを含めれば、Y社において、Xが突然長期間不在になったことによって多大な迷惑を被りその穴を埋めるために対応を余儀なくされたことは明らかである。また、Xは、Y社から欠勤について事情の説明を求められても、Y社に対し、個人的事情によるものとしか説明していない。犯罪による身柄拘束といった高度にプライバシーに関わる事項であるものの、それを知らないY社から欠勤について事情の説明を求められるのは当然である。Xは、本件解雇後、Y社に対し、欠勤の理由が本件逮捕勾留であることを伝えているものの、それであれば、欠勤する際に伝えるべきであり、本件逮捕勾留についてY社に対し一切伝えないといった当時の対応は不適切であったといえる。Xは、Y社において勤務を開始したばかりでY社との間の信頼関係を徐々に構築していく段階であったところ、Y社に対し、欠勤の理由について個人的事情によるものとしか回答しない状態であったから、Y社からすれば、Xの就労意思すら不明であるし、Xについて仮に本採用をしても理由を明らかにしないで突然長期間の欠勤をする可能性がある無責任な人物と考えるのは当然である。
これらによれば、Xの上記対応によって、XとY社との間の労働契約の基礎となるべき信頼関係は毀損されたといえる。なお、Xの欠勤が逮捕勾留によるものといった当時判明していなかった事実を考慮しても、不起訴処分後に起訴することは妨げられないこと、犯罪の内容等によっては逮捕勾留の事実も社会的に半ば有罪と同視されてマスコミ報道等で取り上げられY社の社会的評価が毀損されることもあり得ることによれば、Xを本採用することは、Y社においてなおさらリスクが高かったといえる。
これらについては、Y社において、本件労働契約締結当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実であるといえるし、Y社において引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することが相当であるともいえる。
したがって、Xは、試用期間中の解雇事由について定めた就業規則における「正当な理由のない無断欠勤が3日以上に及んだ場合」(8条1項2号)に該当するといえるし、欠勤すること自体の連絡があったことから「無断欠勤」とはいえないと解する余地があったとしても、少なくとも「社員としての本採用が不適当と認められた場合」(本条柱書)及び「その他前各号に準ずる程度の事由がある場合」(同条1項11号)に該当するといえる。

逮捕勾留されたことを素直に会社に伝えられない気持ちはよくわかります。

伝えたら伝えたで難しい状況になりますので。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

 

本の紹介2136 自分の秘密-才能を自分で見つける方法-#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から12年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

いかにして能力を発揮するか、にフォーカスした本です。

これまでなんとなく思っていたことが言語化された時の気持ちよさを味わえます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『ある・ない』はあくまでも自分が感じる『主観』で決まる。同じ世界を見て生きていても、感じ方、考え方、行動が違うゆえんです。まわりの人が何と言おうと、私たちは『自分の主観』で世界を決めているのです。」(167頁)

真理です。

同じものを見ても、感じ方は十人十色です。

幸せな環境があるのではなく、今いる環境を幸せと感じる自分がいるだけです。

その逆もまたしかり。

人生はその人の解釈によって、天国にも地獄にもなります。

人生は主観で決まります。

解雇411 外資系企業に中途採用された従業員への職務遂行能力不足を理由とした解雇の有効性を否定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、外資系企業に中途採用された従業員への職務遂行能力不足を理由とした解雇の有効性を否定した事案を見ていきましょう。

PAGインベストメント・マネジメント事件(東京地裁令和5年10月27日・労経速2555号21頁)

【事案の概要】

本件は、世界中の機関投資家から預託された資産を基に投資運用を行う会社の日本法人であるY社に勤務していたXが、(1)業績評価が不良であることなどを理由に令和3年6月30日付けで解雇されたことについて、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、無効であると主張して、Y社に対し、①労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、②同年7月分の未払賃金15万9356円+遅延損害金、③同年8月分から本判決確定の日まで毎月25日限り月額82万1000円の割合による金員+遅延損害金の各支払を求めるとともに、(2)Xの上司がXに対する退職勧奨に関する情報等が記載されたメールを、当該情報を知らない同僚らを宛先に含めて送信したことにより、Xの社会的評価が低下し、精神的苦痛を被ったなどと主張して、使用者責任による損害賠償請求権(民法709条、715条)に基づき、慰謝料100万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 解雇無効→バックペイ
2 Y社はXに対し、15万9356円+遅延損害金を支払え
3 Xのその余の請求を棄却する

【判例のポイント】

1 Xが所属する部署は、投資家やY社の経営陣向けにPAGが運用するファンドに関する各種データを提供する部署であって、令和3年7月当時、同部署のメンバーはXを含めて6名と少数であったこと、Xは年俸900万円という相当程度の労働条件で中途採用され、その職務内容としては投資家向けの四半期レポートの作成等とされていたことが認められる。そして、これらの事情に加え、世界有数の投資運用会社であるPAGの日本法人であるY社が投資家の信頼するファンドに関する最新の情報を迅速かつ正確に提供することが重要であることからすれば、Xが同部署で2番目に低いアソシエイトの職位であることを考慮しても、本件労働契約上、課せられた期限内に、担当分野についての正確な内容の資料を作成する能力が相当程度高い水準で求められていたというべきである。

2 Xは、正確性及び迅速性に関する職務遂行能力に問題があり、その業績評価は不良であったものの、本件解雇当時においては、「会社の人的資源を開発する絶え間ない努力、十分な個人指導、カウンセリング、及び警告を与えてもなお」、是正し難い程度であったとまでは直ちに認められず、Xにつき、解雇事由に該当する事実は認められない。したがって、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから(労働契約法16条)、無効である。

能力不足を理由とする解雇については、その判断基準が曖昧なため、使用者側は、訴訟での立証に工夫が必要です。

多くの裁判例で、上記判例のポイント2のような判断がされていることを留意する必要があります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介2135 ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から4年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトル通り、いかにして競争優位のポジションを確立すればよいかが書かれています。

すべての項目でトップを目指す必要はないという発想は非常に参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今の時代、ほとんどの車はちゃんと走る。それも、安定した走りっぷりだ。冷蔵庫は食品をきちんと冷やすし、ステレオの音だって良好だ。洗剤は服の汚れを落としてくれるし、ホテルの部屋は清潔で静かである。成熟した経済の消費者は、商品の品質は当然、一定レベルをクリアしているものだと信じている。今日、究極の差別化とブランド構築、ブランドロイヤルティ確立のチャンスを生み出すのは、商品やサービスの提供を通して示される、人としての価値観なのだ。」(38頁)

これはすべてのサービス業についてそのままあてはまります。

サービスのクオリティが一定レベルを超えた先は、サービス提供者の価値観こそが究極の差別化要素なのです。

もう純主観的に「あう・あわない」「好き、嫌い」というレベルです。

この人にまた会いたい、この人とずっと一緒にいたいと思ってもらえるか否か。

人の選択基準なんて、つまるところ、そんなものです。

解雇410 海外勤務者の退職・解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、海外勤務者の退職・解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

アイウエア事件(東京高裁令和4年1月26日・労判1310号131頁)

【事案の概要】

本件は、A塾という名称で学習塾を運営するY社に平成25年6月1日付けで入社し、同月13日から中華人民共和国(中国)内に所在するA塾A1校において講師として勤務していたXが、同年9月末日を退職日とする同月1日付け退職願に署名押印したものの、退職の意思表示は不存在であり、又は仮に存在していたとしても心裡留保若しくは虚偽表示により無効であって、同年10月1日以降もY社との雇用関係が継続していたとした上、平成28年12月27日にY社によってされた解雇は解雇権の濫用に当たり無効であるとともに、Xに対する不法行為に該当するなどと主張して、Y社に対し、①労働基準法37条1項に基づき、平成27年11月1日から平成29年1月26日までの未払割増賃金合計167万7307円+遅延損害金の、②労働基準法114条に基づき、付加金167万7307円+遅延損害金、③民法536条2項に基づき、Y社が再就職した平成29年4月1日の前日までの間の未払基本賃金50万4460円+遅延損害金、④民法709条に基づき、損害金143万2832円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

原審は、Xの上記各請求について、①未払割増賃金合計126万7361円+遅延損害金、②付加金126万7361円+遅延損害金、③未払基本賃金44万8360円+遅延損害金、④損害金49万5000円+遅延損害金の各支払を求める限度でこれらを認容し、その余をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

1 原判決主文2項を取り消す。

2 上記取消部分に係るXの請求を棄却する。

3 その余の本件控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 少なくともXにおいては、Y社とXとの雇用契約が、就労ビザ取得までの短期間で終了する前提で締結されたなどとは認識していなかったものとみるのが相当であるとともに、Y社から、転籍出向後もY社の海外赴任規定の適用を前提とした手当の支給等が行われることや、転籍出向後もY社への帰任が前提となっているかのような説明を受けていたXにおいて、転籍後もY社との雇用契約が存続するとの認識を有していたとしても不自然ではなかったものと認めることができる。
そうすると、Y社における「転籍」が一般に「それまで在籍していた会社を退職して別の会社に属すること」を意味し、Xが「転籍出向」を自ら選択して本件退職願を提出したとの事実が存したとしても、本件における上記の事実関係の下においては、Xにおいて、上記のような意味での「転籍」を自ら選択し、Y社との雇用契約を終了させる意思に基づいて本件退職願を提出したものとは認められないものというべきである。

2 Y社は、原判決言渡し後である令和3年11月12日、前記第2の2(5)のとおり、Xに対し、原判決主文1項で認容された未払割増賃金及び遅延損害金を含む合計286万2783円を支払ったものであるところ、原判決主文1項には仮執行宣言が付されており、Y社は当審においてもXの未払割増賃金請求を争っているものの、上記の支払については、原判決主文1項が維持されることを前提とした、留保付きの弁済とみることができるから、その限度で弁済の効力を有するものと解するのが相当である。したがって、本件においては、裁判所が付加金の支払を命ずるまでに使用者が未払割増賃金の支払を完了したものとして、Y社に対し付加金の請求を命じないこととする。

第一審で付加金の支払を命じられた場合の対抗策としては、控訴し、判決が確定する前に遅延損害金を含め全額支払うということですが、仮執行宣言が付されている場合(通常付されています)、上記判例のポイント2のような別の論点が出てきます。

この点は少しマニアックではありますが、弁済をしても付加金が認められてしまうか否かに関連する重要な論点ですので、是非、押さえておきましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。