メンタルヘルス19 休職期間中に提出した退職願による意思表示につき、錯誤取消しを認めなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、休職期間中に提出した退職願による意思表示につき、錯誤取消しを認めなかった事案を見ていきましょう。

マックスグループ事件(東京地裁令和7年7月30日・労経速2605号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、休職中であったXが、休職事由が消滅しており、また、退職願を提出したが、これが辞職の意思表示又は合意退職の申込みのいずれであったとしても、錯誤があったから取り消すとして、Y社に対し、〈1〉Xが雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、〈2〉賃金請求権に基づき、令和5年12月1日から本判決確定の日まで毎月末日限り、25万6750円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xについては、令和5年11月13日付けで、うつ病の症状が改善したため、同月14日より就労再開可能である旨の診断書が作成されているものの、同年12月には、同診断書を作成した医師によって、同診断書で就労再開可能とされている日のわずか2週間後の同年11月28日から同年12月24日までうつ病で就労困難とする旨の「健康保険傷病手当金支給申請書(療養担当者記入用)」が作成されている。
その上、Xは、令和2年頃から、心身症、うつ病等を理由として欠勤・休職を繰り返しており、令和5年6月、体調不良で連続して有給休暇を取得し、Y社に対し、同月30日付けでうつ病と診断された旨の診断書を提出し、同年7月も、21日以降、体調不良で連続して欠勤し(一部有給休暇の取得あり)、同年8月30日、出勤し、同年9月も、体調不良を理由として4日欠勤し、2日早退し、同年10月も、体調不良を理由として5日欠勤しており、同年においても、出勤と多数回にわたり出勤しないこと(欠勤、有給休暇の取得)を繰り返している状況にある。
これらのことからすれば、同年10月30日に休職となってからわずか2週間しか経たない同年11月14日の時点において、Xが従前の職務を通常程度に行える健康状態になったとはいえないし、また、Xを当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常程度に行える健康状態になったともいえない。そして、上記のXの状態からして、Xが労務の提供をすることができるような配置される現実的可能性があると認められる他の業務があったとも認められない。
以上によれば、令和5年11月14日時点で、Xについて休職事由が消滅していたとは認められないし、また、その後、Xの退職願の提出までの間に、Xについて休職事由が消滅していたことを認めるに足りる証拠はない。

2 Xは、令和5年10月30日から休職となっていたところ、同年11月29日のC本部長及びBとの面談において、〈1〉週3日(1日4時間)の時短勤務、〈2〉他部署に異動した上で週3日(1日4時間)の時短勤務、〈3〉Xの意思に基づく退職の3つの選択肢を示され、一旦は、令和6年1月から週3日(1日4時間)の時短勤務で勤務に復帰することとなった。
しかし、Xは、フルタイムで復職できるようになるまで休職を延長することを希望するようになったが、C本部長からは、上記〈1〉から〈3〉までの選択肢の中から決めるよう伝えられ、また、Bからは、過去の勤務の状況等を鑑みて時短勤務での復職は必須である旨伝えられている。これらのやり取りにおいて、C本部長やBは、休職期間を延長しても直ちにフルタイムでの復職は困難で、まずは時短勤務で様子を見ることが必須である旨を伝えているにすぎず、休職期間の延長自体が不可能であるとは伝えていない。
また、Xは、過去に休職をしたことがあり、令和5年7月31日には、C本部長に対し、休職期間について尋ねていることもあり、休職期間について、一定の知識を有していたことがうかがわれるところ、同年12月のC本部長やBとのやり取りにおいては、休職期間について尋ねることはしていない。これらのことからすれば、Xは、休職期間が令和6年1月9日までで延長することができないと誤解していた旨陳述しているが、その陳述を裏付ける証拠はなく、これを採用することはできず、Xが引き続き休職することができないとの錯誤に陥っていたと認めるに足りる証拠はない

上記判例のポイント1のようなケースは決して珍しくありません。

そのため、裁判所は、診断書の記載内容のみから復職の可否を判断することはありません。

使用者としていかに対応すべきかについては、顧問弁護士の助言の下に判断するのが賢明です。

 

本の紹介2264 貧乏はお金持ち#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは「『雇われない生き方』で格差社会を逆転する」です。

自由な生き方を選択するために必要な知識や覚悟が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ひとびとはいま、自由な人生に背を向け、安定を求めて会社に束縛されることを求めている。自由の価値がこれほどまでに貶められた時代はない。だがその一方で、会社はもはや社員の生活を保証することができなくなっている。”サラリーマン”は絶滅しつつある生き方であり、彼らの楽園は、いずれこの世から消えていくことになるだろう。」(310頁)

アメリカにおけるAIリストラは対岸の火事ではありません。

日本は解雇規制により雇用が相対的に守られていますので、直ちにアメリカのようにはなりませんが、その代わりに、新規採用を絞るという方向で策が講じられるものと思われます。

そして、理屈上は、人手不足の業界へと余剰人員がシフトしていくということなのでしょうが、果たしてそんなにうまくいくものでしょうか。

解雇444 接待交際費の不正請求を多数回にわたって繰り返した従業員の普通解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、接待交際費の不正請求を多数回にわたって繰り返した従業員の普通解雇の有効性について見ていきましょう。

テクトロン事件(東京地裁令和7年7月18日・労経速2605号3頁)

【事案の概要】

1 第1事件
ア Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、以下の各請求をする事案である。
Y社が令和3年9月6日付けで行った懲戒解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位の確認
イ 民法536条2項に基づき、解雇日以降の未払賃金21万4400円+遅延損害金
ウ 民法536条2項に基づき、主位的には、令和3年12月以降の賞与として毎年6月末日限り42万1333円及び毎年12月末日限り141万6500円、予備的には、同年12月以降の賞与として毎年12月末日限り67万3000円+遅延損害金の支払
エ Y社が令和3年6月1日付けで行った配転命令及びこれに伴う役職手当の減額はいずれも無効であるとして、営業推進部長としての賃金体系上の地位の確認
オ 役職手当の減額分として令和3年7月分及び8月分の差額賃金の各1万円(合計2万円)+遅延損害金の支払
カ 在職中の令和元年9月1日から令和2年3月31日までの時間外労働、深夜労働及び休日労働に対する未払割増賃金合計85万0850円+遅延損害金並びに同年4月1日から令和3年9月6日までの時間外労働等に対する未払割増賃金合計112万8246円+遅延損害金
キ 前記カの割増賃金の不払につき、労基法114条に基づく付加金126万5896円の支払+遅延損害金
ク 〈1〉Y社が令和3年5月14日付けでXに譴責処分を行い、さらにX配転命令及びX懲戒解雇を行ったこと、〈2〉Y社の取締役らがA社の取締役らにXが接待交際費を不正受給したこと等を伝えたこと、〈3〉Y社の取締役がB社の代表取締役に対し、Xが接待交際費を不正受給したために懲戒解雇した旨を伝え、これが伝播したことについて、〈1〉ないし〈3〉がそれぞれ不法行為に当たると主張して、民法715条ないし709条に基づき、〈1〉〈2〉の損害として慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の賠償並びに〈3〉の損害として慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の賠償+遅延損害金の支払
を求める事案である。
2 第2事件
Y社が、Xらに対し、Xらが共謀して、虚偽の事実を申告した請求により実態のない接待交際費を被告に支払わせたことが共同不法行為に当たるとして、民法709条、719条1項に基づき、連帯して253万8154円の損害賠償+遅延損害金の支払
を求める事案である。
3 第3事件
Y社との間で労働契約を締結していたZが、Y社に対し、以下の各請求をする事案である。
ア Y社が令和3年9月22日付けで行った懲戒解雇が無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位の確認
イ 民法536条2項に基づき、解雇日以降の未払賃金37万0700円及び令和3年11月以降の賃金として毎月28日限り月額40万9000円+並びに遅延損害金の支払
ウ 民法536条2項に基づき、主位的には、令和3年12月以降の賞与として毎年6月末日限り45万1000円及び毎年12月末日限り115万5000円、予備的には、同年12月以降の賞与として毎年12月末日限り59万円+遅延損害金の支払(前記第1の3(5))
エ Y社が令和3年6月1日付けで行った配転命令及びこれに伴う役職手当の減額はいずれも無効であるとして、次長としての賃金体系上の地位の確認
オ 役職手当の減額分として令和3年7月分から9月分までの差額賃金の各1万円(合計3万円)+遅延損害金の支払
カ 在職中の令和元年11月21日から令和2年3月20日までの時間外労働等に対する未払割増賃金合計47万2237円+遅延損害金並びに同月21日から令和3年9月22日までの時間外労働等に対する未払割増賃金合計163万5219円+遅延損害金の支払
キ 前記カの割増賃金の不払につき、労基法114条に基づく付加金163万5219円の支払+遅延損害金
ク Y社が令和3年5月14日付けで乙山に譴責処分を行い、さらにZ配転命令及びZ懲戒解雇を行ったことは不法行為に当たると主張して、慰謝料150万円及び弁護士費用15万円の賠償+遅延損害金(始期は不法行為以後の日)の支払

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、2万円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Zに対し、3万円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、5万5000円+遅延損害金を支払え。
4 Xは、Y社に対し、64万2423円+遅延損害金を支払え。
5 Zは、Y社に対し、39万3155円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 D取締役は、B社の代表取締役に対し、Xは接待交際費の不正受給により懲戒解雇にしたことを伝えた事実が認められる。
B社は、Y社が導入していたMの電子カルテシステムのサポート体制等についてY社からヒアリングをする目的で面談を打診したものと認められるところ、そのような面談の趣旨やY社の立場からすれば、Y社としてはB社に対し、Y社のガバナンスやサポート体制に問題がないことを説明する必要があったと認められるが、その限度で足りたというべきである。
仮に、サポート体制への懸念に対する対応として、多数の退職者が生じた経緯にY社の責めに帰すべき事情がなかったことを説明する必要があったとしても、B社に対して、Xという個人名を挙げて同人が接待交際費の不正受給により懲戒解雇になった事実まで伝える業務上の必要性は見出し難い。B社において、Y社との面談前にXの接待交際費の不正受給や懲戒解雇の事実まで認識していたと認めるに足りる証拠はなく、これらの事実が一般には第三者に公表されることを欲しない個人情報であることや、現にかかる事実がB社からXの雇用主であった株式会社Jに伝播したことにも鑑みれば、D取締役の上記伝達行為は、業務行為としても相当ということはできず、少なくともXに対するプライバシー侵害の不法行為を構成するというべきである。
また、D取締役は、Y社の取締役の地位にあるが、代表者として包括的な権限を有しているわけではなく、B社への伝達行為もY社の事実上の指揮監督の下でその業務を行うについてされたものというのが相当であるから、D取締役によるプライバシー侵害の不法行為について、Y社は民法715条に基づく使用者責任を負うというべきである。
したがって、B社に対する伝達行為についてプライバシー侵害による不法行為が成立し、Y社は民法715条に基づく責任を負うが、D取締役による伝達行為の態様や、伝達した事実の内容が限定的であること等の事情も考慮すれば、Xが被った精神的苦痛を慰謝するための金額としては、5万円とするのが相当である。

2 Xらは、記入した日付に接待を行った事実がないにもかかわらず、虚偽の接待の事実を経費申請書に記載して接待交際費の請求を行い、Y社から相当額の支払をさせたものであって、これらの行為はY社に対する詐欺を構成し、故意によってY社の財産を侵害したものというべきである。
他方、Y社は、平成30年1月31日から令和3年8月2日までの間、Xらが、C及びIとともに4名で共謀の上、継続して、Y社に対して、虚偽の接待交際費の請求を行っており、かかる行為が共同不法行為に該当すると主張する。
たしかに、Xらは、平成30年1月頃から、C及びIとの間において、メールやLINEメッセージを通じて接待交際費に関するやりとりをしており、その中には、接待交際費の経費申請の内容をあらかじめ情報共有し、重複や矛盾が生じないように口裏合わせをしているかのように受け取れる内容も含まれていることが認められる。
しかし、かかるメールやLINEメッセージのやりとりのみをもって、別紙3のX非違行為及び別紙4のZ非違行為の個々の不正請求行為について、Xら両名ないしCやIとの間において、具体的な共謀があったと認めるには足りないし、Xらがそれぞれ個別に接待交際費を請求し、支払を受ける行為に関連共同性があったとも認め難い

金額の多寡はさておき、上記判例のポイント1は注意しましょう。

意識しておかないとやってしまいがちですから。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2263 空気を読んではいけない#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

ザ・空気を読まない生き様が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

流されるがままに不要なものを持ち、意味のない食事をして、価値観の合わない人と付き合っていては、本当にやるべきことに集中できない。」(69頁)

無目的になんとなく生きている人の典型例でしょうか。

気付いたら何も積み上がっていないことに気付くのです。

人生の後半で。

でも、多くの場合、そのときにはもう手遅れです。

解雇443 退職願及び懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職願及び懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

宮田自動車商会ほか事件(札幌高裁令和6年3月22日・労判1343号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されたXが、使用者であるY社に対し、以下のアないしエの請求をするとともに、Y社及びその代表取締役であるAに対し、以下のオの請求をする事案である。
ア 懲戒解雇が無効である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
イ 無効な懲戒解雇により就労を拒否されている旨主張して、民法536条2項に基づき、令和2年5月から本判決確定の日までの間の賃金(月額33万7000円)+遅延損害金の支払
ウ 無効な懲戒解雇により就労を拒否されている旨主張して、民法536条2項に基づき、令和2年4月から本判決確定の日までの間の賞与(夏季42万7000円、冬季79万円)+遅延損害金の支払
エ 賃金から根拠なく仮払金精算名目で1万9840円を控除した旨主張して、雇用契約に基づき、未払賃金1万9840円+遅延損害金の支払
オ A及びY社からパワーハラスメントを受けた旨主張して、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、賠償金110万円+遅延損害金の連帯支払

原審は、Xの請求のうち、前記ア及びエの全部並びにオのうち11万円+遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却したところ、Y社らが自らの敗訴部分に不服があるとして控訴し、Xが自らの敗訴部分のうち前記イ及びウに係る部分に不服があるとして附帯控訴した。

【裁判所の判断】

本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xが令和2年1月14日に本件退職願を提出したのは、令和元年12月28日におけるAやY社の役員らとの面談で、Y社から、F牧場の件、G店の件、福岡旅行の件などについて事情聴取がされ、これらに関する顛末書と進退伺書の提出を指示されたことが契機となっている。その当時、Xにおいて、具体的な転職や独立の予定があったとは認められず、本件退職願の記載も、労働契約の解消を強く求めるといった趣旨のものではない。
以上の事情を踏まえると、Xが、本件退職願を提出した際に、Y社との間の労働契約を積極的に解消したいとの強い意向を示していたということはできないそうすると、Xによる本件退職願の提出は、労働者の一方的意思表示による労働契約の解約である辞職の申出ではなく、労働者と使用者の合意により労働契約を将来に向けて解約するための合意解約の申込みであったと解するのが相当である
以上に対し、Y社は進退伺の意義や本件退職願が提出された経緯を考慮すると、XにはY社の意思にかかわらず退職する意思があったと考えるのが自然である旨主張する。しかし、Y社の主張する上記事情を勘案したとしても、その当時、たとえY社から慰留されたとしても労働契約を解消するほどの強固な意思をXが有していたとまでは認めることはできない

2 Y社は、令和2年1月22日、Xに対し、本件退職願が正式に受理された旨伝えているから、同日の時点でY社とXとの間の労働契約が同年3月31日をもって終了する旨の合意が一旦は成立したということができる。
しかし、Xは、同年2月19日頃にY社から諭旨解雇処分を予定している旨伝えられたことがきっかけとなり、同月27日、Y社に対し、退職の意思表示を撤回する旨の意思表示をしている。これに対し、Y社は、Xに対し、同年3月6日に本件退職願の撤回はできない旨伝えたにもかかわらず、同月27日には、Xに対し、同年4月28日をもって懲戒解雇する旨の本件懲戒解雇の意思表示をしている。
本件懲戒解雇は、Y社とXとの間の労働契約が同年3月31日を経過した後も同年4月28日までは維持されることを前提に、同日をもって懲戒解雇処分により終了するとの内容であると解さざるを得ないから、Y社は、本件懲戒解雇の通知により、同年3月31日をもって労働契約を終了する旨の申込みに対する承諾を撤回し、改めて同年4月28日をもって懲戒解雇を行う旨の意思表示をしたものと評価するほかはない。
そうすると、Y社とXとの間では、同年1月22日の段階で、同年3月31日をもって労働契約が終了する旨の合意が一旦は成立したものの、その効果が発生する前の同年3月27日の段階で、X及びY社の双方が合意退職の申込み及びこれに対する承諾を撤回する旨の意思表示をした結果、合意が撤回されて退職合意の効果が生じないことになったということができる。したがって、本件退職願の提出により、Y社とXとの間の労働契約が終了したということはできない。

試験問題の題材になりそうな内容ですね。

上記判例のポイント1は重要ですので、しっかりと押さえておきましょう。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2262 英語力の核心(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

ショーン川上さんの本です。

帯にも書かれているとおり、「どう」言うかよりも「何を」言うか、にフォーカスした本です。

ある程度、英語が話せる人が読んだほうが、より効果的ではないかと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分を下げることで相手に合わせるやり方は、長期のグローバル関係では持続しにくいからです。尊敬は『相手に合わせた人』ではなく、『自分の軸を持った、私とは違う人』に集まりやすい。そして多様性のある環境では、軸のない同質化はむしろ『存在感の希薄化』として受け取られかねません。」(142頁)

日本人あるあるです。

過度な謙遜や奥ゆかしさは、ビジネスや交渉の場面においてはマイナスに働きます。

安易に同調するのではなく、自分の意見をしっかりと伝えられる訓練をしておく必要があります。

変わり映えのしないOne of themでは何も始まりません。

解雇442 調査を尽くさずに行われた懲戒処分(出勤停止)が無効かつ不法行為に当たるとされ、その後に行われた懲戒解雇には理由があり有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、調査を尽くさずに行われた懲戒処分(出勤停止)が無効かつ不法行為に当たるとされ、その後に行われた懲戒解雇には理由があり有効とされた事案を見ていきましょう。

公益財団法人東京都学校給食会事件(東京地裁令和7年7月3日・労経速2603号13頁)

【事案の概要】

Xは、期間の定めのない労働契約に基づきY社において勤務していた者であるが、Y社から、令和5年1月11日付けで、同月12日から同月31日までのうち土曜日及び日曜日を除く14日間を出勤停止とする旨の懲戒処分を受け、また、同年6月7日付けで、同日限りで免職(懲戒解雇)とする旨の懲戒処分を受けるとともに、予備的に同日限りで普通解雇する旨を告知された。
第1事件は、Xが、本件停職処分には懲戒事由に該当する理由がなく、客観的合理性や社会通念上の相当性も認められないから、同処分は権利の濫用として無効であり、不法行為にも当たると主張して、Y社に対して各請求をする事案である。
第2事件は、Xが、本件免職処分には懲戒事由に該当する理由がなく、客観的合理性や社会通念上の相当性も認められないから、同処分は権利の濫用として無効であり、本件予備的解雇についても同様に無効である上、本件免職処分等は不法行為にも当たると主張して、Y社に対し、各請求をする事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社がXに対してした令和5年1月11日付け出勤停止処分が無効であることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、38万7624円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、20万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件免職処分の理由のうち中心的なものであると認められる本件各メールの送信行為については、取り分けY社の職員が休職に至った経緯という職員個人の高度なプライバシーに関する情報を部外者であるD事務局長に伝えた点において、重大な非違行為に当たる。
また、Xは、D事務局長のY社に対する干渉によってBと被告との間に確執が生じていることを認識していたにもかかわらず、本件各メールにおいて、職員が休職に至った経緯といったY社に対する攻撃材料となり得る情報をD事務局長に提供するとともに、C理事長やE事務局長がBに対する侮蔑的な発言を繰り返しており表向きの謝罪で解決とはいえない状態であるなど、D事務局長を助長するような記載をしている。このように、本件各メールの内容はY社とBとの対立をいっそう激しくさせかねないものであって、これらを送信したXの行為はY社に対する背信性の高いものであったといえる。
そして、Xが、Bへの出向を終えてY社に復帰した初日に、C理事長から外部情報(注:内部情報の誤りと思われる)を外部に一切出さないように指示されたにもかかわらず、その日のうちに、D事務局長に対してみずから本件メール〈1〉を送信し、また、その2日後にも本件メール〈2〉を送信していることからすれば、Y社からの指示や法人秩序を軽視するXの姿勢は顕著である。

2 Xは、以前、E事務局長に対する不適切な記載をしたファイルをY社の共有フォルダ内において管理していたとして前件懲戒処分を受けたことがある。Xは、その際、Y社から指導を受け、始末書を提出してE事務局長に対する振る舞い等について研さんを図る旨を述べていたにもかかわらず、本件メール〈2〉において再びE事務局長を誹謗中傷するような行動に及んでいる
また、本件降格処分を告げられた際のC理事長に対するXの発言についても、法人の代表者に対する態度としては不適切といわざるを得ない。これらの点においてもXの法人秩序の軽視には根深いものがある。

3 以上からすると、本件免職処分には客観的合理性が認められ、社会通念上も相当であるといえる。

タイトルのとおり、出勤停止処分については無効とされましたが、判例のポイントのとおり、免職処分については有効という判断です。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2261 疑う力#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「自分の頭で考えないヤツは一生バカをみる!」と書かれています。

AIの普及によって、ほとんどの人は自分の頭で考えなくなっております。

今後、人間の存在価値がどのように変わっていくのか、とても興味があります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『常識』はいつだって、僕たちの自由な思考を縛ろうとする。この事実をスルーしてはいけない。鈍感になってはいけない。」(218頁)

「みんながそうしているから」という理由で、やりたくもないことに時間やお金を使うことほど無意味なことはありません。

もう無駄の極みです。

もっとも、自分の好きなように生き抜くためには、「嫌われる勇気」が必要です。

全員から好かれようとすると、さまざまなお付き合いやしがらみによって、かんじがらめになります。

嫌なことを嫌と言えるためには、自分に力をつけることと嫌われる勇気を持つことです。

たったこれだけで幸せ度は爆上がりします。

解雇441 医療従事者としての適格性を欠くとして行われた内定取り消しを有効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、医療従事者としての適格性を欠くとして行われた内定取り消しを有効とした事案を見ていきましょう。

Y眼科事件(東京地裁令和7年7月30日・労経速2603号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から採用内定を得て、これを取り消された亡Aの父母であるXらが、Y社に対し、以下の各金員をそれぞれ法定相続分である各2分の1の割合で相続したとして、上記相続分に対応した金員の各支払を求める事案である。
(1)上記内定取消しが無効であると主張して、労働契約に基づき、令和4年9月から同年12月まで、約定(毎月20日締め毎月25日支払)の支払日限り、各賃金(基本給月額相当額。ただし、令和4年12月分については9万0322円)+遅延損害金
(2)上記内定取消しが不法行為を構成すると主張して、不法行為に基づき、慰謝料200万円+遅延損害金

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件採用内定における就労の始期は令和4年8月2日であったところ、Y社は、要旨、同月1日、亡Aに対し、これを同月15日にしたい旨伝えたものの、亡Aがこれに対して不合理な対応に終始したことから、亡Aにおいて医療従事者としての適格性に著しく欠け、また、普通解雇事由を定めた就業規則47条1項4号に該当するものと主張する。

2 Y社が亡Aに対し、上記のとおり伝えた根拠は、亡Aにおける新型コロナウイルス感染症の発症日を同月1日としていることにあるところ、亡Aにおいて、同年7月30日に実施したPCR検査の結果が陰性だったものの、同年8月1日に実施した抗原検査キットによる検査の結果では陽性となっている。同年7月30日の時点でPCR検査を実施していたということは、亡Aにおいて同日頃には何らかの症状が出ていたことがうかがわれるが(現に亡Aは令和4年8月1日に受診したクリニックにおいて同年7月27日からの症状として咽頭痛等を訴えている。)、同月30日に実施したPCR検査の結果が陰性であったことから、陽性の反応が出た同年8月1日より前の日を発症日と扱うことが可能かは明らかではなかったといえる。
そして、厚生労働省のホームページにおいて、その頃、「発症日が明らかでない場合には、陽性が確定した検体の採取日とする。」とされていたことからすれば、Y社が同年8月1日を発症日としたことには合理性があったということができる。
そして、同省のホームページにおいて、「症状がある場合は10日間」「が経過するまでは、感染リスクがあります。」「高齢者等ハイリスク者との接触、ハイリスク施設への不要不急の訪問」「を避けること」とされ、療養期間に関し、「症状が出た日から7日間以上経過」などとされ、他の自治体のホームページにおいても、「療養期間:発症日から10日間が経過」などとされ、亡A代理人自身、本件内定取消し後の交渉経緯において、10日間を一般的な療養期間としていたことからすれば、Y社が発症日である同日から10日間の療養期間を要すると考えていたことにも合理性があったということができる。
Y社が亡Aに伝えた内容は、就労の始期を同月15日とするものであるところ、上記発症日である同月1日から10日経過後の同月11日が本件眼科における同月10日から14日までの夏季休暇期間に該当してしまうことからすれば、Y社による上記伝達内容は、合理性を有するものであったということができる。

コロナ(に限りませんが)、このような現象に対し、どの程度、センシティブかは、人によって大きく異なります。

これだけ猛暑の夏ですら、日中マスクを着用されている方も散見される中で、本件同様の問題について全員が納得できる労務管理は存在しないのでしょう。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2260 カネに洗脳されるな!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

生きていくことの厳しさを感じることができる本です。

騙し合い、奪い合いの社会において、搾取されないために必要なことが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

条件が揃わないと動き出したらいけない、リスクがあるという洗脳にかかっている。それは自分で解かない事には、どうにもならない。不満があっても、変えようとしない。現状を維持する方がラクだから、そうしているだけ。大きなチャンスを失っていたり、誰かに不当に搾取されたりしているのに、じっと耐えている。『いろいろ不満だけど解消する方法がない』と、自分の不遇を環境のせいにして、本当はただラクしたいだけなのに。」(183~184頁)

みなさん、いろんなことに不満があるのでしょうね。

不満や愚痴や悪口ばかりを言っていると、不思議なことに顔つきもだんだんそういう顔になってきます。

不満を言っているうちに人生は終わってしまいます。

居酒屋で不満を言っても、状況は何一つ変わらないことは、自分が一番よくわかっています。

他人は変えられない。

変えられるのは、自分だけ。

そんなことはみんなわかっているけど、自分を変えられないのです。