Category Archives: 継続雇用制度

継続雇用制度37 58歳で退職させたうえで7年間継続雇用する制度が適法とされ、当該継続雇用制度における待遇も「高年法の趣旨」に反しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、58歳で退職させたうえで7年間継続雇用する制度が適法とされ、当該継続雇用制度における待遇も「高年法の趣旨」に反しないとされた事案を見ていきましょう。

成田国際空港事件(東京地裁令和7年3月27日・労経速2594号36頁)

【事案の概要】

Y社は、定年を60歳とした上で高年法9条1項2号の継続雇用制度として65歳まで雇用する制度を定めているが、本件再雇用制度では、本件再雇用制度の利用を希望する労働者は定年前の58歳で退職することが必要であるとされており、本件再雇用制度を利用しないまま60歳に達した者は定年退職することとなる。
本件は、60歳でY社を定年退職とされたXが、本件再雇用制度が高年法又は労働契約法に反するなどと主張して、(1)主位的に、定年退職後に本件再雇用制度による労働契約が成立するとして、同労働契約に基づき、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉令和5年2月以降の各月支払分の賃金(本件再雇用制度により雇用継続がされた場合に得られるべき賃金20万7750円)+遅延損害金の支払、〈3〉令和5年2月以降の毎年6月及び12月支払分の賞与(本件再雇用制度により雇用継続がされた場合に得られるべき賞与17万6588円)+遅延損害金の支払を求め、(2)予備的に、高年法の規定又は趣旨に反する本件再雇用制度を定めたことが65歳まで賃金を得る権利又は65歳まで雇用を継続できるという法的保護に値する期待を侵害する不法行為に該当するとして、不法行為に基づき、損害賠償金1309万2405円(本件再雇用制度により雇用継続された場合に得られるべき賃金と賞与の合計額又は慰謝料)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 高年法における「定年」とは、労働者が所定の年齢に達したことを理由として自動的に又は解雇の意思表示によってその地位を失わせる制度であると解されるところ、Y社の従業員は本件再雇用制度を利用せずに60歳で定年退職することを選択することもできるから、本件再雇用制度を利用する場合に58歳で退職する必要があることをもって、Y社が定年を58歳と定めたとはいえない

2 高年法8条が、事業主が定年の定めをする場合には、当該定年は「60歳を下回ることができない。」として同条の予定する定年制の内容を一義的に規定しているのに対し、高年法9条1項2号の継続雇用制度については、条文の文言上、制度の内容を一義的に規定せず、多様な制度を含み得るものとなっている。また、高年法9条の改正の基礎となった労働政策審議会の建議においても、年金支給開始年齢までの雇用の確保を進める一方で、経済社会の構造変化等が進む中で厳しい状況が続く企業の経営環境等を考慮すれば65歳までの雇用確保の方法については個々の企業の実情に応じた対応が取れるようにするべきである旨が指摘されている。
これらのことからすれば、高年法9条1項は、同項2号の継続雇用制度の具体的な内容については、65歳までの安定した雇用の確保という同項の目的(同項柱書)に反しない限り、各事業主がその実情等に応じて定めるところに委ねる趣旨であると解される。そして、定年退職後に引き続いて雇用される制度としなければ65歳までの安定した雇用の確保という同項の目的に反するということはできない。
そうすると、同項2号の継続雇用制度が、現に定年まで雇用されている労働者が希望するときはその定年退職後に引き続き雇用される制度であることを要するということはできない
以上によれば、本件再雇用制度を利用する場合に58歳で退職する必要があることをもって、実質的に58歳を定年と定めたものとはいえず、高年法8条及び9条に反するということはできない。

3 この点につき、Xは、高年法9条1項2号が、継続雇用制度を「その定年後も引き続いて雇用する制度」としていることから、継続雇用制度は、定年で退職した労働者を引き続き雇用する制度であることを要する旨主張する。しかしながら、上記規定内容は、「定年と定められた年齢に達した後も引き続いて雇用する制度」と解することもできるのであり、既に説示した同項の趣旨からするとそのように解することが合理的である。

非常にユニークな制度設計ですが、上記判例のポイント1、2からしますと許容される制度であると考えられますね。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度36 65歳以降の雇用について雇止め法理の適用を否定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、65歳以降の雇用について雇止め法理の適用を否定した事案を見ていきましょう。

大成ロテック事件(東京地裁令和7年3月11日・労経速2594号3頁)

【事案の概要】

本件は、道路工事等の設計、施工、管理及びコンサルティング等を目的とする株式会社であるY社を定年退職した後に、期間の定めのある労働契約をY社と締結し、複数回更新してきたが、その後、Y社から契約更新を拒絶されたXが、Y社に対し、前記有期労働契約は労契法19条1号又は2号により更新された旨主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和5年7月から本件判決確定の日まで、毎月25日限り、20万円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 有期労働契約締結の際には、いずれも、Y社の人事担当者が原告と面談をしてXの契約締結の意向を確認した上で、XとY社との間で雇用契約書が作成されており、本件労働契約は、その更新手続が形がい化していたとはいえないから、更新の回数等を考慮しても、労契法19条1号に該当するものとはいえない。

2 満65歳までの雇用区分を再雇用社員とする有期労働契約とそれ以降の雇用区分を契約社員とする有期労働契約では、労働契約更新の期待の程度には大きな差異があり、後者についてXを含むY社の従業員が労働契約更新の期待をもつことが合理的であるということは困難というべきである。このような事情に加えて、最終的に雇用区分を再雇用社員とする有期労働契約が終了した後の、XとY社との間の雇用区分を契約社員とする有期労働契約は、1回しか更新されていない上、その更新の際、Y社からXに対し、それ以降の更新はない旨伝えられていること、Y社は、Xに対して、令和5年7月以降も雇用が継続されることを期待させるような言動は行っていないこと、令和5年度における契約社員の契約更新状況をみても、70歳未満で契約更新を希望した34人の内、Xを含む6人が契約更新されず雇用契約が終了となっており、65歳以降も原則として契約更新がなされる取扱いであったとまでは評価できないこと等の事情も併せ考慮すれば、本件労働契約の契約期間の満了時に満66歳に達するXにおいて、本件労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとは認められない。

65歳以降の継続雇用は、現在のところ、努力義務であり、上記判例のポイント2の各要素を踏まえれば、裁判所の判断は妥当であると思います。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度36 従前の労働条件を下回る再雇用の提案に同意のないまま、定年後再雇用者の契約期間が満了し、雇止めが有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、従前の労働条件を下回る再雇用の提案に同意のないまま、定年後再雇用者の契約期間が満了し、雇止めが有効とされた事案を見ていきましょう。

東光高岳事件(東京高裁令和6年10月17日・労判1323号5頁)

【事案の概要】

本件は、A社との間で期間1年の有期労働契約(本件契約1)を締結していたXが、A社を吸収合併したY社に対し、本件契約1の期間満了時、Xには契約更新の合理的期待があり、本件契約1と同一の労働条件によるXの更新申込みを被控訴人が拒絶したことは客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないため、本件契約1の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約2)が成立し、同様の理由で、本件契約2の期間満了時、本件契約2の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約3)が成立し、本件契約3の期間満了時、本件契約3の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約4)が成立したと主張して、Y社に対し、本件契約4に基づき労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求をするとともに、本件契約2ないし4に基づく令和3年10月分以降の賃金として、同月から本判決確定日まで毎月25日限り30万7100円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、本件契約1の期間満了の時点において、Xが、本件契約1が更新されると期待したことにつき合理的な理由はなく、仮に、これがあると認められる場合でも、Y社が本件更新申込みを拒絶したことについて、客観的合理的な理由があり、社会通念上相当であるとして、Xの請求を全部棄却したところ、これを不服として、Xが本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 A社継続雇用規程では、定年後再雇用者の労働契約は期間1年とされ、初回及び更新後の労働時間・日数、月例賃金等の労働条件については、継続雇用者の希望を聴取した上で諸事情を勘案して、その都度決定することとなっている上(A社継続雇用規程6条ないし8条)、実際、定年後再雇用者の労働条件は、上記のとおり運用され、1回目の労働契約の賃金より50%以上低下した条件で契約を更新した者もいたというのであるから、A社継続雇用規程において、1回目の労働契約と同じ労働条件による契約更新が保障されていたとは認め難い
2 A社は、平成30年度から3年連続で経常赤字を続け、直近2期には連続で1億円近くの赤字を出し、従業員の昇給停止及び賞与削減などの経費削減措置を行っていたが、続く令和3年5月には、売却できなかった商品等を減損処理した結果2億8000万円余の債務超過になり、同年7月30日には、本件契約1の期間満了日の翌日をもって被控訴人に吸収合併されることが決定したことが認められる。さらに、A社の経営が厳しく債務超過となる見込みであること、A社がY社に吸収合併される可能性があることは、吸収合併の約5か月前から控訴人を含む従業員に対する説明会で説明がされたほか、吸収合併が決定した後の説明会でも、A社が本件契約1の期間満了日の翌日にY社に吸収合併されることは説明されていたことから、Xは、本件契約1の更新の相手方がA社ではなく、その地位を承継したY社となることを認識できる状況にあったと認められる。そして、A社のB社長は、上記説明会において、Xを含む従業員に対し、Y社に吸収合併された後、A社継続雇用規程をY社の定年後再雇用の制度であるY社シニア嘱託規程の内容に変更することを伝え、その内容をA社の従業員が見ることができるイントラネットに掲載していたところ、Y社シニア嘱託規程には、定年後再雇用者の賃金は基本給と諸手当であること、基本給は時給1200円を原則とすることが記載されていたから(Y社シニア嘱託規程10条)、本件契約1の期間満了後のXとY社との労働契約の賃金が、本件契約1の基本賃金月額30万3600円とはならず、これを下回るものとなることは客観的に避けられない状況であったと認められ、X自身も、本件更新申込みをするに当たり、A社がY社に吸収合併されるのであれば、ある程度、労働条件を変更する提案がされる可能性があることを認識していたと認められる。
3 そして、Y社は、Y社シニア嘱託規程及びY社管理職賃金内規という定年後再雇用者が非管理職又は管理職として就労する場合の各労働条件についての基準を設けていたところ、A社及びY社は、Xに対し、本件契約1の期間満了の約1か月前には、上記基準に沿った具体的労働条件を内容とする本件提案1、2を提示し、これがY社の定年後再雇用者に適用される条件に沿ったものであることを説明していたこと、当時、Y社の定年後再雇用者約120名は、Y社の定年後再雇用者に適用される労働条件の基準に従い労働契約を締結しており、それ以外の条件で雇用された者はいなかったことが認められる。
4 以上によれば、Xにおいて、本件契約1の期間満了時点で、Y社との間で、従前と同一の労働条件で本件契約1が更新されると期待することについて、合理的理由が存在したとは認め難い。

上記判例のポイント2記載の事情があることから、原審の判断が維持されました。

手続面についても考慮の対象となっていますので注意しましょう。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。
 

継続雇用制度35 定年後再雇用の合意解除の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用の合意解除の有効性について見ていきましょう。

ヤマサン食品工業事件(富山地裁令和4年7月20日・労判1273号5頁)

【事案の概要】

本件は、各種山菜の缶詰などの製造販売、輸入業務等を業とするY社に定年まで勤務していた従業員Xが、Y社から、Xが譴責の懲戒処分を受けたことが、本件合意に定める本件合意の破棄条項の「就業規則の定めに抵触した場合」に該当することを理由に、上記始期付き嘱託雇用契約を解除する旨の通知を受け、定年後の再雇用を拒否されたところ、このような合意の解除は、客観的に合理的な理由及び相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であるなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認などを請求したものである。

【裁判所の判断】

1 地位確認認容
→バックペイ認容

2 Y社はXに対し、172万6516円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社における継続雇用制度は、平成24年改正の趣旨を踏まえ、就業規則に定める基準年齢に達するまでは、本件労使協定に定める基準を適用することなく、解雇事由又は退職事由に該当する事由がない限り再雇用し、上記基準年齢に達した後は、本件労使協定に定める基準を満たす者に限って65歳まで再雇用する旨定めるものと解釈すべきである。

2 Xの懲戒事由該当行為が、職場の秩序を乱したとか情状が悪質であるなどの就業規則に定める解雇事由に相当するほどの事情であるとはいえない。
定年前約2年間におけるXの人事評価の結果を全体としてみると、Y社の人事評価制度やそれに基づく査定を前提としても、せいぜい標準ややや下回っているという程度であり、解雇事由や退職事由に相当するほど著しく不良であるとはいえない
以上によれば、Xは、高年法及びY社の継続雇用制度に基づき、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情がない限り、令和2年7月20日の定年退職後もY社に再雇用される立場にあり、現に本件合意が締結され、年齢を除く解雇事由又は退職事由に該当する事情も認められなかったのであるから、本件合意に定められた条件において、本件就業規則抵触条項に定める解除条件を充足したとして本件合意を解除し、Xを再雇用しないことは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないから、Y社による本件解除は無効である。

定年後の再雇用拒否に関しても、解雇と同様の判断方法が採用されますので、そう簡単にはできません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度34 無期転換直後に定年を迎えた労働者への継続雇用拒否が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、無期転換直後に定年を迎えた労働者への継続雇用拒否が有効とされた事案を見ていきましょう。

一般財団法人NHKサービスセンター事件(横浜地裁川崎支部令和3年11月30日・労経速2477号18頁)

【事案の概要】

本件は、平成14年4月から、1年契約更新で、NHK視聴者コールセンターにおいて、視聴者対応を行うコミュニケーターとしてY社に採用され、17回にわたり契約更新を行い、平成31年には無期労働契約への転換権を行使し、これがY社において受理されたため、令和元年8月以降契約期間の定めのない労働者となったXが、60歳の定年を迎える同年末をもってY社を退職することとされ、Xの希望に反しY社に継続雇用されなかったことが、実質的には高年法に反し、労働契約法18条の趣旨に反する雇止めであるとして、Y社に対し、XがY社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、労働契約に基づく賃金(バックペイ)+遅延損害金の支払を求めるとともに、Y社がXに対し、要注意視聴者に対する刑事や民事上の法的措置をとることなどにより、要注意視聴者によるわいせつ発言や暴言等に触れさせないようにすべき安全配慮義務を怠り、これによってXが精神的苦痛を受けたとして、雇用契約に基づく付随義務としての安全配慮義務違反に基づき損害賠償(慰謝料)100万円及び弁護士費用10万円たす遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社に在籍する約150人のコミュニケーターには、公平・公正、自主・自律、不偏不党を旨とするNHKの方針に則り、個人的意見を述べないことなどが要請されており、また極力均一なサービスを視聴者に提供すべく、コミュニケーターは策定された視聴者対応のためのルールに従うことが強く求められている。
しかし、Xは視聴者との電話対応で度々トラブルになっており、それもY社の作成したルールを遵守せず、ひいてはそこから逸脱して、感情的にいわゆる売り言葉に買い言葉となって口論に発展した場面が少なくない。これらのXの視聴者対応は、中にはそれ1つを取り上げれば比較的些細なものとみうる余地があるとしても、それが度々繰り返された以上、Xの電話対応の問題や不適切さを示すものにほかならず、全体を総合してみればY社が策定したルール及び就業規則に反するといわざるを得ない
また、Xは、視聴者対応について平成19年以降再三にわたりY社からルール違反等を指摘され注意・指導を受けながらも、自己の対応が正当であるとの思いから、指導を受け入れて改善する意欲に乏しく、指導を受け入れずに勤務を続けていたことが認められる。

2 「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」が定める、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由に該当し、継続雇用しないことについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるというほかはない。
そして、問題となるXの電話対応の内容及びその頻度並びにこれまでのY社のXに対する多数回にわたる注意・指導の経緯及びXの改善意思の欠如等に鑑みれば、本件継続雇用拒否が重すぎて妥当性を欠くとは認められない。

上記判例のポイント1の「中にはそれ1つを取り上げれば比較的些細なものとみうる余地があるとしても、それが度々繰り返された以上、Xの電話対応の問題や不適切さを示すものにほかならず」との理解のしかたは注意が必要です。

一般的には、些細な非違行為をたくさん寄せ集めても、それをもって解雇や雇止めの合理的理由があると認定することはありません。

また、本件同様の事案の場合には、注意・指導のエビデンスをどのように残すかに留意する必要があります。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度33 再雇用前より好待遇の記載がある就業規則の適用は不合理?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、再雇用職員に対して、再雇用以前より好待遇の記載がある就業規則適用が認められた事案を見てみましょう。

社会福祉法人青梅市社会福祉協議会事件(東京地裁立川支部令和2年8月13日・労経速2445号31頁)

【事案の概要】

本件は、Xらが、Y社に対し、雇用契約及び有給休暇の買取の合意に基づき、Y社就業規則及びY社再雇用職員取扱要綱に基づき算定される給料等の金額と実際の支給額との差額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
Xらは、給料、地域手当、期末手当、勤勉手当、時間外勤務手当及び有給休暇買取分について上記差額の支払を求め、給料、地域手当、期末手当、勤勉手当及び時間外勤務手当の差額について遅延損害金の支払を求めている。

Y社は、定年退職後の再雇用期間におけるXらには、就業規則における再雇用職員の給料に関する定めは適用されず、仮に適用されるとしてもXらの請求は権利濫用に当たると主張し、また、有給休暇買取分について買取の合意を争っている。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Y社は、再雇用職員の給料に関する定めはXらに適用されないと主張する。
まず、Y社は、仮に再雇用職員の給料に関する定めがXらに適用された場合、Xらの再雇用期間における給料は、再雇用前の給料を上回ることとなるが、再雇用職員の給料に関する定めは、雇用慣行に従った通常の採用の場合を前提としているのであり、再雇用職員の給料が再雇用される前の給料を上回ることは想定されていないなどと主張する。
しかし、再雇用職員の給料に関する定めは、職務の級により異なる金額を記載しているものの、再雇用職員の定年退職までの勤続年数や定年退職時の給料の月額等によって再雇用職員の給料を区分していないのであるから、再雇用職員の給料に関する定めは,再雇用職員の定年退職までの勤続年数や定年退職時の給料の月額等にかかわらず、再雇用職員の職務の級に従って一律に適用されるものと解するのが相当であり、このように解する再雇用職員の給料に関する定めの内容が不合理であるとはいえない
また、Y社は、Xらを再雇用するに際し、再雇用後の給料を含む雇用条件は再雇用前と同じであることを説明し、Xらはそれを承認していたと主張する。
しかし、同事実を認めるに足りる証拠はなく、仮にY社の主張するような説明と承認があり、これについてXらと被告が合意していたとしても、その内容はXらに適用される再雇用職員の給料に関する定めに達しない労働条件であるから、同合意は無効である。

あまり見かけないタイプの事案です。

規程内容からすると、このような判断もしかたがありません。

今後ますます継続雇用制度に関する紛争が増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

 

継続雇用制度32 コロナ禍における懲戒処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コロナ禍での譴責処分に基づく再雇用合意解除の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ヤマサン食品工業(仮処分)事件(富山地裁令和2年11月27日・労判1236号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して定年まで勤務してきたXが、Y社との間で、定年翌日を始期とする嘱託雇用契約を締結していたにもかかわらず、Y社から、Xが譴責の懲戒処分を受けたことを理由に、上記始期付き嘱託雇用契約を解除する旨の通知を受け、定年後の再雇用を拒否されたところ、このような合意の解除は、客観的に合理的な理由及び相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることを求めるとともに、賃金の仮払を求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認却下

賃金仮払認容

【判例のポイント】

1 Y社における継続雇用制度は、平成24年改正の趣旨を踏まえ、就業規則3-7別表1に定める基準年齢に達するまでは、本件労使協定に定める基準を適用することなく、解雇事由又は退職事由に該当する事由がない限り再雇用し、上記基準年齢に達した後は、本件労使協定に定める基準を満たす者に限って65歳まで再雇用する旨定めるものと解釈すべきである。
Xは、定年に達した令和2年7月20日時点において、60歳であり、就業規則3-7別表1の基準年齢(当時は63歳)には達していなかったから、同月21日以降もXに再雇用されるために、本件労使協定に定める基準がないと認められる必要があったにすぎないと解すべきである。そうすると、本件就業規則抵触条項についても、解雇事由又は退職事由に該当するような就業規則違反があった場合に限定して、本件合意を解除し、再雇用の可否や雇用条件を再検討するという趣旨であると解釈すべきである。

2 Xが、Y社の面談において概ね事実を認めて反省の弁を述べ、始末書を提出しており、その後同様の行為に及んだことも認められないこと、Y社においても譴責処分にとどめていること、除菌水の持ち帰りについては、一定量を上限とするような明確な基準まではなかった上、一応事前にCに話を通していたこと等を踏まえると、当時のY社における新型コロナウィルス対策の重要性やXの立場及び担当業務等のY社が指摘する事情を考慮しても、Xの上記行為が、職場の秩序を乱したとか情状が悪質であるなどの就業規則に定める解雇事由に相当するほどの事情であるとはいえない

高年法が改正され、努力義務とはいえ、定年が引き上げられました。

今後ますます継続雇用制度に関する紛争が増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度31 人件費削減の必要から嘱託社員の雇止めは認められるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後有期雇用契約を2回更新した元社長補佐に対する更新拒絶の適法性に関する裁判例を見てみましょう。

テヅカ事件(福岡地裁令和2年3月19日・労判1230号87頁)

【事案の概要】

本件は、いわゆる定年後の継続雇用としてY社との間で雇用期間を1年とする有期の雇用契約を締結し、複数回の契約更新をしていたXが、雇用契約が更新されると期待することに合理的理由があったにもかかわらず、Y社がこれを拒絶し、そのことについて客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上も相当でないと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認するとともに、民法536条2項に基づき、更新拒絶の後の給与支払日である平成30年4月から本判決確定の日まで毎月25日限り従前と同一の労働条件である賃金41万7000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件継続雇用制度の運用実態を前提とすると、本件継続雇用制度に基づき継続雇用されていたY社の従業員は、更新することができない何らかの事情がない限り、契約期間の満了時に、満65歳に至るまでは更新されると期待し、そのことについて合理的理由があると認めるのが相当であり、それはXも例外ではないというべきである。

2 Y社において人件費削減の必要性がないとはいえないとしても、平成29年3月頃以降に業績不振に直面した後、人件費削減以外の方策としてどのような対処が考えられるのか、人件費削減による賃金削減により被る不利益の程度をどう抑制するのかなど、経営再建を図るために必要な経営合理化策と解雇や雇止めを可及的に回避するために採るべき措置を具体的に検討した形跡は証拠上認められない

3 現時点(当審の口頭弁論終結日)では、次の更新があるかどうか、又はその更新後の本件雇用契約に基づく賃金額は未確定であるといわざるを得ず、令和2年3月21日以降にも本件雇用契約が当然に存続し、かつそれに基づく賃金額も定められているとは認められない。したがって、Xの賃金請求については、本判決を言い渡す口頭弁論期日が本件雇用契約上の最後の賃金締日である同月20日の前日である同月19日に指定されていることに鑑み、本件雇用契約に基づく最後の賃金支払日である令和2年3月25日を終期として認める限度で理由があり、上記の終期にかかわらず本判決確定の日までの賃金の支払を請求する部分は理由がない

有期雇用契約の場合であっても、正社員同様、整理解雇の場合には、4要素を考慮してその是非を判断する必要があります。

解雇(雇止め)回避努力が不十分な場合には、本件同様の結論となってしまいます。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度30 懲戒処分歴を理由とした定年後再雇用拒否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、懲戒処分歴を理由とした定年後再雇用拒否を無効とした原判決が維持された事案を見てみましょう。

学校法人Y学園事件(名古屋高裁令和2年1月23日・労経速2409号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置するY大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年に達したXが、Y社に対し、(1)Y社による再雇用を希望する旨の意思表示を拒否する旨のXの意思表示が正当な理由を欠き無効であって、Y社との間で再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)当該雇用契約に基づき、同年4月1日から上記地位確認の判決確定日又は令和2年3月31日のいずれか先に到来する日までの間、毎月末日限り、賃金月額75万5040円の支払を求め、(3)無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして主張して、不法行為に基づき、慰謝料500万円の支払を求める事案である。

原審が、Xの地位確認請求を認めるとともに、賃金支払請求を月額63万0700円の限度で、慰謝料請求を50万円の限度で、それぞれ認めたところ、Y社が控訴し、Xが附帯控訴した。

【裁判所の判断】

控訴・附帯控訴いずれも棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件処分は純然たる大学内部の問題として一般市民法秩序と直接の関係を有するものではないから、司法審査は及ばず、仮に、本件処分の当否が司法審査の対象になるとしても、懲戒権者であるY社の所定機関の合理的な裁量に委ねられるべき旨主張する。
しかしながら、Xの請求は、本件処分が無効であることを前提に、雇用契約上の地位を有することの確認、同契約に基づく賃金支払及び不法行為に基づく損害賠償を求めるものであるから、民法、労働契約法等で規律される法律関係及び権利に関するものとして一般市民法秩序に直接の関係を有し、Xの単なる内部規律の問題にとどまらないことは明らかである。

2 Y社は、平成29年度の再任用が認められなかったことにより、Y大学名誉教授の称号が授与されることもなくなった旨主張する。しかしながら、本件処分が無効であって、Xについて再任用規程3条3号の欠格事由がなく、定年後も再任用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続していることは、上記に判示したとおりであるから、Xに対してY大学名誉教授の称号が授与されるかどうかは、本判決確定後にXにおいて判断されるべきものであり、現時点において、上記称号の可能性の有無を慰謝料額算定の要素として考慮するのは相当でないというべきである。

上記判例のポイント1は大学等の紛争の際に登場する論点ですが、まず認められません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

継続雇用制度29 再雇用拒否が無効とされた場合のバックペイの判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、パワハラ調査中の行為を理由とした専攻主任の譴責処分と再雇用拒否に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人南山学園(南山大学)事件(名古屋地裁令和元年7月30日・労判1213号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の設置するa大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年に達したXが、Y社に対し、再雇用を希望する旨の意思表示をしていたのにY社がこれを拒否したが、同拒否の意思表示は正当な理由を欠き無効であり、Y社との間で再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び平成29年4月以降毎月末日限り月額賃金75万5040円の支払を求めるとともに、無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして不法行為に基づき慰謝料500万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

Y社は、Xに対し、平成29年4月1日から本判決確定の日又は令和2年3月31日までのいずれか早いほうの時期に至るまでの間、毎月末日限り、月額63万0700円を支払え。

Y社は、Xに対し、50万円を支払え。

【判例のポイント】

1 労働者において定年時、定年後も再雇用契約を新たに締結することで雇用が継続されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合、使用者において再雇用基準を満たしていないものとして再雇用をすることなく定年により労働者の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情がない限り、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、この場合、使用者と労働者との間に、定年後も就業規則等に定めのある再雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当である(労働契約法19条2号類推適用、最一判平成24年11月29日参照。原告が解雇権濫用法理(労働契約法16条)の類推適用を主張するのも、これと同趣旨と解される。)。
・・・本件処分がされた点を除いては、原告において、定年時、再雇用契約を締結し、満68歳の属する年度末まで雇用が継続すると期待することが合理的であると認められる。
・・・原告の再雇用後の給与面での待遇については、原則として、定年年齢時の俸給63万0700円は少なくとも支給され、雇用期間については、Xが満68歳に達する年の学年度末である令和2年3月31日までになるものと解される。

2 本件再雇用拒否により被る不利益は、主として、本来得られたはずの賃金という財産的利益に関するものであり、未払賃金等の経済的損害のてん補が認められる場合には、これによっても償えない特段の精神的苦痛が生じたといえることが必要と解するのが相当である。
本件処分が懲戒事由該当性すら欠き無効であること、X本人の陳述書及び本人尋問の結果によれば、Xが本件再雇用拒否によって2名の大学院生への指導を道半ばで放棄する形になったことXの研究に少なからず支障が出たことがうかがわれることに照らすと、弁論の全趣旨によれば、Xに対する懲戒処分について、D教授に対する懲戒処分の周知と同様、学生は勿論、一般の教職員にも氏名を公表されることはなかったと認められることを考慮しても、未払賃金の経済的損害のてん補によっても償えない特段の精神的苦痛が生じたと認めるのが相当である。
これまで述べた認定説示その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば、Xの精神的苦痛に対する慰謝料額としては50万円が相当である。

定年後の継続雇用の開始時点での争いです。

会社側が敗訴すると、このような結果になってしまう可能性があることを十分理解をして、慎重に判断することが求められます。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。