継続雇用制度32 コロナ禍における懲戒処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、コロナ禍での譴責処分に基づく再雇用合意解除の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ヤマサン食品工業(仮処分)事件(富山地裁令和2年11月27日・労判1236号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結して定年まで勤務してきたXが、Y社との間で、定年翌日を始期とする嘱託雇用契約を締結していたにもかかわらず、Y社から、Xが譴責の懲戒処分を受けたことを理由に、上記始期付き嘱託雇用契約を解除する旨の通知を受け、定年後の再雇用を拒否されたところ、このような合意の解除は、客観的に合理的な理由及び相当性に欠け、権利の濫用に当たり無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることを求めるとともに、賃金の仮払を求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認却下

賃金仮払認容

【判例のポイント】

1 Y社における継続雇用制度は、平成24年改正の趣旨を踏まえ、就業規則3-7別表1に定める基準年齢に達するまでは、本件労使協定に定める基準を適用することなく、解雇事由又は退職事由に該当する事由がない限り再雇用し、上記基準年齢に達した後は、本件労使協定に定める基準を満たす者に限って65歳まで再雇用する旨定めるものと解釈すべきである。
Xは、定年に達した令和2年7月20日時点において、60歳であり、就業規則3-7別表1の基準年齢(当時は63歳)には達していなかったから、同月21日以降もXに再雇用されるために、本件労使協定に定める基準がないと認められる必要があったにすぎないと解すべきである。そうすると、本件就業規則抵触条項についても、解雇事由又は退職事由に該当するような就業規則違反があった場合に限定して、本件合意を解除し、再雇用の可否や雇用条件を再検討するという趣旨であると解釈すべきである。

2 Xが、Y社の面談において概ね事実を認めて反省の弁を述べ、始末書を提出しており、その後同様の行為に及んだことも認められないこと、Y社においても譴責処分にとどめていること、除菌水の持ち帰りについては、一定量を上限とするような明確な基準まではなかった上、一応事前にCに話を通していたこと等を踏まえると、当時のY社における新型コロナウィルス対策の重要性やXの立場及び担当業務等のY社が指摘する事情を考慮しても、Xの上記行為が、職場の秩序を乱したとか情状が悪質であるなどの就業規則に定める解雇事由に相当するほどの事情であるとはいえない

高年法が改正され、努力義務とはいえ、定年が引き上げられました。

今後ますます継続雇用制度に関する紛争が増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。