配転・出向・転籍61 内部通報の調査過程で判明した事実を理由とする配置転換の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、内部通報の調査過程で判明した事実を理由とする配置転換の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

日本政策金融公庫事件(東京地裁令和7年4月15日・労経速2597号27頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社の国民生活事業本部南関東地区債権業務室Y分室において定年後の再雇用職員として勤務していたXが、XをY分室からY社の国民生活事業本部Zセンターへ配転する旨のY社の命令は、配転命令権の濫用ないし公益通報者保護法が禁止する不利益取扱いに当たり無効であると主張して、Y社に対し、XがZセンターにおいて勤務する雇用契約上の義務がないことの確認を求めるとともに、①令和5年3月23日の人事上の注意処分としての訓告は、Xの正当な権利行使を阻もうとする不当な意図に基づくものであって不法行為に当たると主張して、不法行為の損害賠償請求権に基づき、慰謝料等として110万円+遅延損害金、②本件配転命令は違法であり不法行為に当たると主張して、不法行為の損害賠償請求権に基づき、慰謝料等として110万円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの言動は、その内容の適否の問題にかかわりなく、態様として不適切なものであり、職場の規律や秩序を乱すものであったというべきである。また、月1面接等でのXの言動は、上司であるA分室長を長時間拘束し、その間、A分室長は、決裁や検印等の管理職業務を行うことができず、代わりにD副室長がその一部を代行せざるを得ない状況に陥らせていたものであり、業務への支障も生じさせていた。さらに、Xの言動により、A分室長は体調不良となり、令和5年3月25日付でY分室から異動することになった。このような事情を踏まえれば、Y分室の職場環境の改善のためには、Xを他の職場に異動させる必要があったものと認められる。

2 Xは、①本件訓告の理由において、Xが公益通報を示唆したことを不当な行為として評価していたこと、②Y社は、本件配転命令を決定する前に本件公益通報がなされたことを明確に認識していたこと、③Y社における定期異動の時期である3月末とは異なる異例の時期に本件配転命令が発令されていることを理由に不当な動機・目的をもってなされたものであると主張する。
しかし、①について言えば、すでに解決した事柄について、あえて繰り返し、脅すかのように「マスコミや個人情報保護委員会に言う」との発言をしたことを問題としているのであって、個人情報保護委員会に通報すること自体を問題視したものとはいえないし、②について言えば、Y社は、本件配転命令を決定する前に本件公益通報がなされたことを明確に認識していたとは認められず、③について言えば、Y社が本件配転命令を発令することを決定した時点において、本件公益通報がなされたことを明確に認識していたとは認められない以上、異例の時期に本件配転命令が発令されているとしても、本件公益通報に対する報復であることを推認させる事情とはいえない。

3 Xは、本件配転命令を受けたことにより、周囲の従業員からの奇異の目にさらされる精神的苦痛の他、通勤が片道30分、往復合計1時間増加したことにより、Xの両親の介護や娘の自立支援という家庭生活に多大な影響を被った旨主張する。
しかし、Xが「周囲の従業員からの奇異の目にさらされる」と感じる点があったとしても、それは本件配転命令に起因するものというよりも、Xの職場内での言動に起因するものというべきである。次に、通勤時間が長くなったことについてみるに、元々、通勤時間が片道1時間30分程度のところが2時間程度になったというものであることや、Xには転居を伴う異動が命じられる余地もあったこと等を考慮すれば、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとはいえない。次に、家庭生活についてみるに、Xの両親の介護を主に担っているのはXの妹であるほか、Xの娘は配転後の就業地から遠くない場所に居住しており、本件配転命令により多大な影響を受けるものとはいえない。
以上の事情を踏まえれば、本件配転命令は、原告に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとはいえない。

公益通報と配置転換が時期的に近接していると、本件のような紛争に発展することが多いです。

配転命令の有効性に関する3要件について、具体的に主張立証をし、公益通報との因果関係を否定することが求められます。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。