Author Archives: 栗田 勇

配転・出向・転籍60 出向命令の有効性と自由な意思に基づく同意(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、出向命令の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

図書館流通センター事件(東京地裁令和7年6月26日・労経速163号2頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であって令和2年7月1日から現在までa株式会社へ在籍出向しているXが、Y社に対し、Xのa社への出向は、XとY社との間の本件に先立つ訴訟で成立した訴訟上の和解の履行として、同日から令和5年6月30日までを出向期間とする出向命令に基づき行われたものであるが、その後の同年7月1日から令和8年7月25日までに出向期間を延長して再度された出向命令は、権利を濫用したものとして無効であると主張し、現在、a社において勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求めるところ、これに対してY社が、Xのa社への出向はX、Y社及びa社の間で令和2年7月1日に成立した個別の出向合意に基づき現在まで有効に行われていると反論するとともに、仮に令和5年7月1日以降の出向がXの指摘する再度の出向命令に基づくものであったとしても、同命令は権利を濫用したものとはいえず有効であると反論し、Xの上記確認請求を争う事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 本件同意書は令和2年7月1日付けであるものの、Y社からXへの本件同意書の交付は、Y社の人事部長であるBによって本件辞令1と同時にXに行われていたものであって、しかも、その交付時に、Bは、Xのa社への出向に関して、出向期間が無期であることを含め、出向期間に関して特段の説明を行っていなかったことが認められる。出向期間の有無やその長さは出向する労働者にとって重要な要素であることに加え、Y社において、「出向期間は当年7月1日から令和5(2023)年6月30日までとするが、延長することがあるものとする。」との記載がされた本件辞令1をXに交付しておきながら、前件和解の履行として、Xとの間で、敢えて本件辞令1の上記記載と異なる内容として出向期間を無期とする個別の出向合意をするのであれば、単に本件同意書の契約期間欄の「2020年7月1日~」との表示のみならず、出向期間を無期とすることについての十分な説明を尽くした上でXの同意を得なければならないところ、Y社においては、本件同意書の上記交付時を含め、本件訴訟に至るまで、Xのa社への出向期間が無期であることの説明をしたことはなかったことが認められる。
そうすると、仮にY社において前件和解に至る経緯の中で出向期間を無期とすることがXとの間で共通認識となっているとの認識があったとしても、XがそのようなY社の認識を理解して自由な意思に基づく同意として本件同意書に署名及び押印をしたとは認められない
したがって、XとY社及びa社との間で、Xのa社への出向に関し、本件同意書により、本件辞令1の出向期間の記載と異なった無期の出向合意が成立したとは認めることができない。

ここでも「自由な意思に基づく同意」の有無という判断枠組みが用いられています。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。
 

本の紹介2227 品川嘉也の右脳勉強法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

非常に実践的な勉強方法や記憶する際のコツが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

脳は情報を作り出す器官ではなく、情報を捨てる器官である。そのためには、一つのテーマで多くの情報に接する必要がある。その中から自分が必要とする情報を選ぶのはまさに右脳の直観。・・・ふだんから問題意識を持っていることで、多くの情報に接していても、すぐに自分のアンテナに引っかかる、つまり必要とする情報を選ぶことができる。」(25頁)

同じ情報に触れていても、それを入手する人とそのまま素通りしてしまう人がいます。

これは能力というよりかは、物事に対する関心・興味の有無なのだと思います。

同じセミナーを受けても、同じ本を読んでも、受け手・読み手によって感じ方・捉え方は十人十色です。

同じような環境にいても人によって結果はまるで違うことの証左です。

有期労働契約131 1年間の有期雇用契約の試用期間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、1年間の有期雇用契約の試用期間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

TBWA HAKUHODO事件(東京高裁令和7年4月10日・労判1338号5頁)

【事案の概要】

Xは、令和4年3月1日から、Y社において、雇用期間を1年間、年俸450万円(月額37万5000円)とする契約社員として勤務していた(本件労働契約。本件労働契約の雇用形態、労働条件等については、後記のとおり争いがある。)。XとY社は、令和5年1月頃以降、本件労働契約の更新について交渉していたが、合意に至らなかった。その後、Xは、本件労働契約における雇用期間が満了した令和5年3月以降も引き続きY社において就業していたが、同年7月11日以降は就業していない。
本件におけるXの請求の要旨は次のとおりである。
(1) 本件主位的請求
本件主位的請求は、Xが、本件労働契約における1年間の期間の定めは試用期間を定めたものであり、本件労働契約は期間の定めのないものであって、試用期間経過後の令和5年3月1日からは正社員相当の賃金である年俸600万円(月額50万円)の請求権を有すると主張して、Y社に対し、
〈1〉年俸600万円で期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額50万円+遅延損害金の支払並びに
〈3〉令和5年3月分から同年6月分までの未払賃金合計50万円(月額賃金50万円と同37万5000円の差額の4か月分)+遅延損害金の支払を求めたものである。
(2) 本件予備的請求1
本件予備的請求1は、Xが、民法629条1項により本件労働契約は期間の定めのない労働契約として更新されたと主張して、Y社に対し、
〈1〉年俸450万円で期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額37万5000円+遅延損害金の支払を求めたものである。
(3) 本件予備的請求2
本件予備的請求2は、Xが、仮に民法629条1項による更新後の労働契約が1年間の期間の定めのあるものであるとしても、令和5年3月以降は労働契約法19条2号に基づき引き続き更新されている、又は仮に民法629条1項による更新自体が認められないとしても、本件労働契約は令和5年3月1日頃に明示若しくは黙示の合意により1年間の期間の定めのある労働契約として更新されており、令和5年3月以降は労働契約法19条2号に基づき引き続き更新されていると主張して、Y社に対し、
〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額37万5000円+遅延損害金の支払を求めたものである。

原審は、Xの主位的請求について、〈1〉Xが、Y社に対し、年俸450万円(毎月37万5000円)の支払を受ける期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、37万5000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を求める限度で認容し、その余の主位的請求を棄却した(予備的請求1及び同2の各請求は、いずれも、認容された主位的請求の範囲内の請求である。)。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社が、Xに対し、本件労働契約の試用期間中である令和5年2月28日までに、本件労働契約について1年間の期間の定めのある契約として更新することを申し入れたことは認められるものの、これをもって、Y社が本件労働契約において留保された解約権を行使したと認めることはできない(なお、Y社がXに対して、契約期間について定めのある雇用契約書を交付したのは、上記試用期間経過後の同年3月1日以降のことである。)。
かえって、Xは、令和5年3月1日以降同年7月10日までの間、引き続きY社において就業していたことが認められるのであって、客観的に合理的な理由が認められる状況にもないことも考慮すると、Y社が、試用期間中に留保された解約権を行使したとは認め難いと言わざるを得ない。
したがって、Xが、Y社に対して、本件労働契約の試用期間の満了前に、本件労働契約における留保解約権を行使した事実を認めることはできない。

2 (原審:東京地裁令和6年9月26日)
本件においては、〈1〉Y社において、従前、正社員として採用する者に対しても、原則として最初の1年間は契約社員として期間の定めのある労働契約を締結し、この期間が経過した時点で適任と認められた者に限り、期間の定めのない労働契約を締結して正社員として雇用するという採用方法をとっており、これを変更した令和元年5月以降も、一定の場合には上記と同様の採用方法をとることが可能であったこと、〈2〉本件オファー面談の際、Y社の人事局長であったCが、Xに対し、本件労働契約における1年間の期間の定めが試用期間を設けるものであり、1年後には正社員となる旨の説明をしたこと、〈3〉Xは、これを踏まえて内定を受諾し、もって本件労働契約が成立したことが認められる。
これらの事情からすると、本件労働契約における1年間の期間の定めについては、Xの適性を評価・判断する趣旨・目的で設けられたものと認められるから、上記期間は、契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。
したがって、本件労働契約については、1年間の試用期間中における解約権が留保された、期間の定めのない労働契約であるというべきである(最高裁昭和48年12月12日、最高裁平成2年6月5日参照)。

有名な論点ですが、上記判例のポイント2は非常に重要ですので、しっかりと押さえておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介2226 人と競わない勉強法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

著者は弁護士の方です。

早い段階から人生設計をし、目標に向かって準備をすることの大切さを再認識できます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の能力など、多くの人が持っているものだろうと思う人は多いかもしれませんが、その通りです。しかしその能力と自分ならではの夢が結びつくと、同じような人はそういません。さらにあなたのネットワークや環境を加えると、決して同じ人間はいないのです。」(20頁)

そうなのです。

ビジネスは、全人格的な競技であることを忘れてはいけません。

知力も体力もネットワークもすべてが関係しています。

手持ちの武器を増やし、磨くとともに、それらを単体として評価するのではなく、掛け算をするのです。

そして、IQだけでなく、愛嬌もお忘れなく。

今後ますます人間としての魅力(かわいげ)が重要になってきますので。

不当労働行為321 組合脱退勧奨拒否後の自宅待機命令等の違法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、組合脱退勧奨拒否後の自宅待機命令等の違法性に関する裁判例を見ていきましょう。

大浜資材事件(大阪高裁令和6年12月5日・労判1337号16頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されているXらが、本件自宅待機命令が無効であると主張して、自宅で勤務する雇用契約上の義務のないことの確認を求めるとともに、本件勧告及び本件自宅待機命令がいずれも不法行為に当たると主張して、X1が345万8119円の、X2が361万8826円の損害賠償+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、本件訴えのうち自宅で勤務する雇用契約上の義務のないことの確認を求める部分を却下し、損害賠償請求をX1につき275万8119円、X2につき291万8826円及びこれらに対する前同様の遅延損害金の支払を求める部分に限り認容し、その余を棄却した。

Xらは、損害賠償請求の請求棄却部分を不服として控訴を提起するとともに、X1につき123万0370円、X2につき129万2176円及びこれらに対する遅延損害金を更に支払うことを求めて訴えを変更した。

【裁判所の判断】

1 Xらの控訴及びY社の控訴をいずれも棄却する。
2 Y社は、X1に対し、123万0370円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、X2に対し、129万2176円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 広域協がY社に対し、本件組合は法令や社会的ルールを守ることができない組織であると再認識したため、本件組合に加入している従業員に対し、速やかに脱退することを勧告するよう依頼するとの文書を交付したことが認められ、これを受けてY社が本件勧告を行ったとしても、本件勧告は、Xらに本件組合から速やかに脱退することを勧告し、本件組合の組織や運営に妨害の意思をもって介入するものであるから、労組法7条3号の支配介入に当たり、不法行為法上も違法であると解すべきである。

2 本件自宅待機命令は、Y社の主張によっても、本件組合での活動について内省の機会を与えるものというのであって、Xらは本件組合に加入していることに関連して自宅待機を命じられたものというべきである。そして、これによりXらの収入は減少するのであるから、本件自宅待機命令は、労組法7条1号の不利益取扱いに当たり、不法行為法上も違法である。

組合脱退勧奨は、不当労働行為に該当し、不法行為となりますのでやめましょう。

また、業務上の必要性がない自宅待機命令も不法行為となりますので注意しましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2225 東大医学部生が書いた頭がよくなる勉強法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

今から13年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

いわゆる「頭がいい」人がどのような習慣を持っているのかを知ることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

天才と呼ばれることの多い、野球選手のイチロー選手は、試合が終わると必ずビデオで自分のフォームをチェックします。その真面目さにはアメリカの大リーガーたちも舌を巻きます。イチロー選手が圧倒的な強さを誇っている背景には、持ち前の才能だけではなく、物理的に多くの時間を野球に対して割いていることもあるのです。多かれ少なかれ、各界のトップで活躍する人たちというのは、才能に加えて、多大なる時間をその世界での活躍のために振り向けています。」(159頁)

「物理的に多くの時間を野球に対して割いている」

結果を出している人たちの共通点は、もうこれに尽きるのではないでしょうか。

スポーツの世界に労働基準法が適用され、1日の練習時間が制限され、年次有給休暇の取得が義務付けられたとしたらどうなるでしょう。

勉強もまたしかり。

ワークライフバランスなんて本気で言っているトッププレーヤーは、スポーツに限らず、どの業界にも存在しない説。

解雇433 解雇無効判決後の自宅待機命令の違法性等(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、解雇無効判決後の自宅待機命令の違法性等に関する裁判例を見ていきましょう。

西日本総合保険事件(福岡高裁令和6年6月25日・労判1337号79頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結したXが、Y社に対して、〈1〉雇用契約に基づき令和4年7月分から同年10月までの各月の未払賃金+遅延損害金の支払、〈2〉雇用契約に基づき令和4年11月から雇用契約終了までの間、毎月25日限り16万8000円の賃金+遅延損害金の支払、〈3〉雇用契約に基づき令和2年4月分から雇用契約終了までの間、毎月25日限り図書カードNEXT1000円分の交付、〈4〉賞与に係る期待権侵害(債務不履行又は不法行為)に基づき令和2年12月から雇用契約終了までの間の賞与相当損害金+遅延損害金の支払、〈5〉違法な自宅待機命令等(不法行為)に基づき慰謝料等及び同割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、上記〈2〉、〈3〉、〈4〉のうち、判決確定日の翌日以降に履行期が到来する部分について、将来請求に係るもので訴えの利益がないとして訴えを却下し、上記〈4〉のうち、令和2年12月から令和3年12月までのものについて訴訟上の信義則に反し不適法であるとして訴えを却下し、上記〈1〉の請求を認容し、その余の上記〈2〉のうち令和4年11月から令和5年1月までの賃金の一部及び遅延損害金の支払並びに同年2月から判決確定までの間の月額賃金16万8000円及び遅延損害金の支払を認容し、その余を棄却し、その余の上記〈3〉、〈4〉の請求及び上記〈5〉の請求はいずれも理由がないとして棄却した。

【裁判所の判断】

1 本件控訴及び附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1) 本件訴えのうち、本判決確定の日の翌日から毎月25日限り16万8000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分、本判決確定の日の翌日から毎月25日限り図書カードNEXT1000円分の交付を求める部分、令和2年12月25日、令和3年6月25日及び同年12月25日限り各10万8550円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分、本判決確定の日の翌日から毎年6月25日及び12月25日限り各10万8550円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める部分をいずれも却下する。
(2) Y社は、Xに対し、本判決別紙未払賃金一覧表の「未払賃金額」欄記載の各金員+遅延損害金を支払え。
(3) Y社は、Xに対し、令和6年4月から本判決確定の日までの間、毎月25日限り16万8000円+遅延損害金を支払え。
(4) Y社は、Xに対し、55万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 当裁判所も、本件自宅待機命令は、当初は業務上の必要性があり、Y社に対する不法行為を構成するものではなかったと判断する。
しかしながら、Y社は、もともと令和4年7月中にはXに復職後の担当業務を伝える予定であったものであり、にもかかわらず令和5年6月30日時点で本件自宅待機命令は1年にも及んでいるもので、上記の事情があることを考慮しても、Y社としては、同日までには検討を済ませ、Xを復職させていて然るべきであったといわざるを得ない。
したがって、本件自宅待機命令は、令和5年7月1日をもって、業務上の必要性を欠く違法なものとなっており、Xの雇用契約上の地位を脅かし、その人格権を侵害するものとして不法行為を構成するに至っているといわざるを得ない。

2 本件自宅待機命令が不法行為に転化した令和5年7月1日以降、Y社は月額16万8000円の賃金を支払い続けていることなども総合考慮すると、令和5年7月以降、Xが本件自宅待機命令により被った精神的損害に対する慰謝料としては50万円が相当と判断する。また、弁護士費用としては5万円を認めるのが相当である。

業務上の必要性を欠く自宅待機命令は、仮に賃金を支払い続けていたとしても、不法行為となり得ますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2224 資格試験「半年・独学」勉強法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、本の紹介です。

このような本を数冊読むと、王道の勉強法がわかってきますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

何か目標を達成しようと決めたときには、それに対するお金の投資は惜しむべきではありません。とくに書籍代や知識を得るためにする投資は、長い目で見ると非常にいい自分への投資と考えることができます。」(54頁)

特に若いうちは、自己投資が最もリターンが大きいです。

株式投資と同様、まずはタネ銭をつくることがとても重要です。

人生の早い段階で、自分の商品価値を高めるための努力をする。

みんなが遊んでいるうちにがむしゃらに勉強し、猛烈に働く。

その結果、労働収入が増えていき、それをベースとして次第に自分以外の金融商品に投資をしていく。

FIREの「RE」には関心がなくても、「FI」を獲得している人たちの歩んできた王道です。

解雇432 調査協力指示違反等を理由とする普通解雇が有効された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、調査協力指示違反等を理由とする普通解雇が有効された事案を見ていきましょう。

X社事件(東京地裁令和7年2月7日・労経速2589号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され特定有料老人ホームの施設長等を務めていたXが、Y社に対し、雇用契約に基づき、①令和3年4月16日付でした同年5月30日をもって普通解雇する旨の意思表示が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②本件解雇前に支払われた令和3年4月分及び同年5月分の給与につき、されるべきであった昇給がされなかったと主張して、支払われた賃金と昇給後の賃金との差額1万円(各月5000円)+遅延損害金の支払、③民法536条2項に基づき、本件解雇後の賃金(令和3年6月分から本判決確定まで。ただし令和3年から令和6年まで毎年4月に月額5000円の定期昇給がされたとした場合の賃金額。)及び賞与(令和3年夏季から令和5年冬季)+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの上記各業務命令違反行為のうち、特に本件調査協力指示違反については、Y社の従業員に対する安全配慮義務の履行を困難にするものと言わざるを得ず、企業秩序の維持に重大な影響を与えたといえる。また、本件立入禁止命令違反についても、これまで良好な関係を維持していた重要な取引先である本件医療法人及びXグループとの関係を破壊しかねないものであり、実際、Y社が、本件病院から、口頭での叱責にとどまらず、院長名義の書面での抗議を受けたことからしても、その影響が小さいとはいえない。
したがって、違反の程度が軽度であるとは到底いうことができない

2 また、Xは、Y社から本件訪問1に係る報告書の提出を求められた際、B専務に対し、激しい口調で「よくこういうメールが来れるなと。報告書出せと。親分(判決注:A会長)のこと助けに行ったのが。」、「Aも守れない人たちだったら辞めたらどうですか。」と述べ、本件訪問1はA会長の妻であるDの依頼でA会長を助けたのであるから何ら問題はなく、むしろ報告書を出すように命令する社長やB専務がY社を辞めるべきである旨の発言をし、その後、報告書を求める理由(本件病院で混乱が生じたと聞いており、今後、本件訪問1について病院側から詳細な説明を求められた場合の対応として必要であること)を説明した上で出した2度にわたる提出命令に対しても、「報告書を提出するのであればDに提出する」などと独自の見解を述べてこれを拒否した。
また本件立入禁止命令のわずか3日後に本件訪問2を敢行し、その理由として、A会長の親族から「A会長が快適に療養生活を送れるよう、医師及び看護師の医療的ケアの及ばない精神的なケアをするように個人的に依頼」されたと回答し、「貴社がその内容をあれこれ詮索すべき範疇を超えていると考えられます。」として、Y社が本件訪問を制限する理由もなければ、報告を求める権限もないとの考えに固執し、全く歩み寄りの姿勢を見せることがなかった

3 さらに、本件調査に当たっても、Y社から、本件調査委員会が中立性及び公平性に配慮して組織されたこと、及びY社に安全配慮義務違反がなかったとの結論を得るためにはXによる事実・資料の提示が必要であることを説明され、協力を指示されたにもかかわらず、不公正な調査が行われているとの考えを変えることなく、本件調査委員会への協力を拒み、本件接触行為に至ったといえる。
このようなXの姿勢は、本件調査委員会による調査結果が出された後、Y社から、本件調査委員会の調査における言動やそれによってY社や役職員に与えた影響等について、どのように受け止めているかを回答するよう求められた際、「事前に関係者への接触については、株式会社Xより、禁止されていませんでした」、「お会いしてくれた方は自らの意思で応じてくれました。」、「私の言動が貴社や役職員へどのような影響を与えたのでしょうか。」と述べるなど、本件解雇に至るまで変わることがなかったと言わざるを得ない。
そうすると、Xは、今後も、Y社からの指揮命令に対し、自己の考えに固執し、歩み寄りをせず、これに従わない可能性が相当程度あると言わざるを得ない

4 さらに、Y社は、全従業員が60名程度の中小企業であり、東京本社(従業員8名程度)、本件秘書室、本件施設及び北海道A市にて営業する「グループホームX」で構成されているところ、Xが本件ハラスメント言動及び本件不適切言動をしたと認識している以上、Xを本件施設及び同様の介護施設である「グループホームX」に配置することはできず、本件秘書室も、本件病院が了承しないため、配属の可能性はない。そして、上記各業務命令違反はいずれも、Xを東京本社に配属し、社長及びB専務が上司として業務上の指揮命令を直接に及ぼす体制のもとにおいて生じたことからすれば、Xを配置可能な他の部署は見当たらず、配置転換によって解雇を回避することも困難であったと認められる。
そうすると、Y社において、今後も予想される、XがY社の指揮命令に従わないことによる業務上の支障を回避するために取り得る手段は乏しいものと評さざるを得ず、普通解雇という手段を選択することも、やむを得ないものであったと解される。

解雇事案においては、業務命令違反行為の悪質さのみならず、上記判例のポイント2、3のような視点も忘れないようにしましょう。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。 

本の紹介2223 一生モノの勉強法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度読み返してみました。

京大の鎌田先生の勉強法に関する本です。

いかに勉強時間を捻出するか、あらゆる勉強の基礎となる「読む力」の大切さ等が書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ノンフィクション作家の佐野眞一さんは、日本人に『読む力』が衰えていることを危惧しています。佐野さんによれば、『読む』というのは、ひとり読書にとどまらず、相手の気持ちを『読む』、あたりの気配を『読む』、将棋の手を『読む』ことにも通じているといいます。つまり『読む力』の減退は、単なる『活字離れ』などという次元を超えた由々しき問題であるということなのです。」(113頁)

読む力に限らず、書く力も、です。

AIの進化によって、私たち人間の基礎的な力は日々、衰える一方です。

もはやAIがないと何もできない、という時代になろうとしています。

人間がメイン、AIがサブというのはファンタジーで、実際はその逆です。

みなさんが思い描く10年後の未来は明るいでしょうか。