Author Archives: 栗田 勇

本の紹介2259 彼はそれを「賢者の投資術」と言った(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

「インデックス投資」「ほったらかし投資」を推奨する本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金を増やすことばかりに集中していた若いころには想像もしなかったが、ある程度の資産を築いた後の『使い方』こそが、実は人生の満足度を大きく左右することがわかってきた。ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンの研究によれば、年収が一定水準を超えると、お金の『量』よりも『使い方』が幸福度に与える影響が大きくなるという。」(224頁)

「量」も「使い方」もどちらも大切です。

これはお金だけでなく、時間も同じです。

毎日の時間の使い方が、自分に対する「投資」なのか、それとも単なる「消費」なのか。

また、日々の生活の中で、いかに自己投資の時間を捻出するかも重要です。

時間的にも経済的にも余裕がある人はさておき、いかにして自己投資のためのお金と時間を捻出するかが、目下の課題かと思います。

いずれにせよ、日々のほんの小さな差の集積が、人生(特に後半戦)に多大な影響を及ぼすことは明白ですので、人生のできるだけ早い段階で自己投資の習慣を身につけると、後が楽です。

有期労働契約132 非常勤講師に対する雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、非常勤講師に対する雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

学校法人青山学院事件(東京地裁令和7年7月31日・労判1342号85頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期労働契約を締結し、非常勤講師として勤務していたXが、Y社から令和6年4月1日以降の労働契約の更新を拒絶されたため、労契法19条に基づき、労働契約は更新されたと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と、同日以降の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社において非常勤講師は、専任教員が担当できない授業を担当するために雇用されている。本件雇止めは、新規採用された特別教諭がクラス担任を担当しないことにより、非常勤講師に担当させるべきコマ数が減少したことを理由とするものであるから、Y社が非常勤講師を採用した目的に沿うものであって、合理性が認められる
また、非常勤講師の報酬は、担当するコマ数によるところ、非常勤講師が担当する8コマは一人の非常勤講師で担当できること、Hは被告高等部及び中等部でのみ勤務しており、他の学校では勤務していないと述べていたこと、Y社においては1日2コマだけのために勤務する非常勤講師を複数雇用するという状況は、非常勤講師にとっても割に合わないものと考えており、Xにおいてもそのような考えを持っていると認識していたこと、授業内容の統一性や質の確保、専任教員の負担軽減の観点からすると、複数の非常勤講師を雇用するよりも必要最小限の人数で実績のある非常勤講師に依頼することには相応の合理性があると考えられることなどからすれば、非常勤講師を一名のみ雇用するという判断も不合理とはいえない。
さらに、Y社高等部において3年生の授業はなるべく専任教員が担当する方針であるところ、2年生の科目である公共は、従前からHが担当していたこと、Hは約20年以上前からY社に雇用されており、労契法18条1項に基づく期限の定めのない労働契約の申込みをする権利を有していたこと、Xは在職中、複数のトラブルを起こしたが、Hについてはそのような事実は認められないことからすれば、XではなくHの雇用を継続したことも十分な理由があるというべきである。
本件契約更新の合理的期待の程度が高いとはいえないことも踏まえると、本件雇止めは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる。

非常勤講師の性質等から雇止めの合理性を導いています。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

本の紹介2258 市場サイクルを極める(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

投資に関する本ですが、人生全般に当てはまる内容です。

非常に示唆に富んでおり、勉強になります。

すべてはサイクルの中で上がったり下がったりしているのだとわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ウォーレン・バフェットいわく、『他人が慎重さを欠いているときほど、自分たちは慎重に事を進めねばならない』。他の人たちが気分を高揚させているときには、恐怖心を抱くべきだ。そして、他の人たちが怖気づいているときには、積極果敢になるべきなのだ。」(282頁)

言うは易く行うは難し。

もっとも、この感覚を持っていることで、心構えが大きく異なります。

これは投資に限った話ではなく、ビジネス全般に言えることです。

賃金303 年俸制の従業員の賃金について、客観的に合理的な年俸制の決定方法が合意されているとはいえないとして、使用者による一方的な賃金減額を否定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、年俸制の従業員の賃金について、客観的に合理的な年俸制の決定方法が合意されているとはいえないとして、使用者による一方的な賃金減額を否定した事案を見ていきましょう。

フォーラムエイト事件(東京地裁令和7年6月5日・労経速2601号12頁)

【事案の概要】

本訴は、Y社との間で雇用契約を締結し、就労していたXが、Y社に対し、〈1〉Y社が、Xの給与につき、令和2年7月1日付けで、従前の年俸800万円から年俸650万円に改定したのは、違法な減額であるとして、Y社に対し、同年8月分から同年12月分まで賃金不足額として各月12万5000円+遅延損害金の支払を求めるとともに、〈2〉Y社がXに対し、令和2年7月1日に上記賃金の減額を行ったこと、同年12月9日に退職勧奨を行ったこと、令和3年6月21日に総合職から一般職に降格させるとともに、年俸を650万円から480万円に減額したこと、同年7月6日にNへの転勤及び営業職への変更を命じたことは、いずれも違法・不当であり、不法行為を構成するとして、Y社に対し、慰謝料として700万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

反訴は、Y社が、Xに対し、不当利得返還請求権に基づき、令和4年7月31日までにY社が立替払を行った原告の社会保険料等(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険、雇用保険及び住民税をいう。以下同じ。)及び勤怠控除すべき賃金の合計45万7200円の支払+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、62万5000円+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、110万円+遅延損害金を支払え。
3 Xは、Y社に対し、45万7200円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件雇用契約にかかる雇用契約書には、「給与の改定は、原則として7月と1月に実施する。ただし、改定が実施されない場合は上記年俸を継続して適用する。」(以下「本件給与改定合意」という。)とされているほかに、同書面及び本件就業規則上も、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、減額の限界の有無等具体的な定めが置かれていない
賃金が労働条件の中でも最も重要なものの一つであり、このような労働条件は、労働者及び使用者が対等の立場で合意して決めるべき事項であること(労働契約法3条、労働基準法115条、89条参照)に照らすと、本件給与改定合意は、XとY社が客観的で合理的な年俸額の決定方法を合意した場合に、これに従って、Y社にXの年俸額を決定する権限を付与することを合意したものと解するのが相当である。
Y社は、力量基準レベルに基づいて各従業員の力量・成果を各グループ長が査定し、100点を最高点として評価点を付け、従業員を順位付けし、かかる人事評価の序列と年収(諸手当、賞与等を加えたもの)が可能な限り一致するよう均衡を図り、給与額を決定するという方法をとっていたものである。力量基準レベルは、求められる力量が3段階で示されたものであり、査定する際の考慮要素は示されているものの、これがどのように評価されて点数化されるのかは明らかでなく、また、どのような場合に、どの程度の金額が減額されるのかといった客観的な基準が示されたものでもない
Y社は、Xについて、その査定の序列とXの年収の乖離が激しいとして、Xの年収を減額しているが、序列とそれに見合う年収の乖離率といった基準があるとも認められないし、そもそもその序列は新入社員を含めた全社員を一律に並べるというものであって、そのような序列とXの年収の乖離を見るということ自体の合理性も疑問がある。
さらに、減額の限界も設定されておらず、減額の幅が大きくなりすぎないようY社において事実上配慮して給与額を決定するというのであり、制度的に恣意性が排除されることが担保されているものともいえない。
そうすると、XとY社との間で、客観的で合理的な年俸額の決定方法が合意されているとはいえないから、本件給与改定合意をもってY社がXの年俸額を一方的に決定する権限を有しているとは認められない
したがって、Xの同意なくされた本件賃金減額〈1〉は無効である。
また、本件賃金減額〈1〉は、年俸を800万円から650万円とし、減額の幅は18.75%に及び、労働基準法91条が定める減給の制裁についての限界をも大きく超えるものであることからしても、無効であるというべきである。

2 本件賃金減額〈1〉は無効であり、その減額の幅は18.75%に及び、Xの生活を脅かす重大なものであったといえ、不法行為に当たるというべきである。Xの精神的苦痛は、減額分の給与が支払われることにより相当程度慰謝されるものといえることのほか、本件に顕れた一切の事情を考慮し、かかる不法行為に基づく精神的苦痛を慰謝するために必要な金額は、10万円と認めるのが相当である。

年俸制を採用する際の留意点がとてもわかりやすく記載されています。

本件裁判例が求める程度の具体的な年俸制度の内容を取り決めていないケースも散見されますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2257 1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

成功者の共通項を調査した本です。

読み物としてとてもおもしろいです。

もっとも、読んだだけでは億万長者にはなれません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功するためには、持って生まれた高い知能よりも、懸命な努力のほうが重要である。」(130頁)

持って生まれた高い知能が重要でないとは思いませんが、そのような知能は、成功するための絶対条件ではありません。

私たち凡人ができることと言えば、せいぜい、来る日も来る日も、努力をし続けることくらいしかありません。

人が休んでいるとき、遊んでいるときに努力をし続けられるかどうか。

継続的な努力こそ、唯一にして最大の武器なのです。

労働時間124 更衣時間の労働時間該当性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、更衣時間の労働時間該当性が否定された事案について見ていきましょう。

西日本高速道路サービス関西事件(大阪地裁令和7年10月30日・労判ジャーナル166号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されて高速道路の料金ステーションで勤務するXが、所定始業時間前の制服への更衣時間、更衣室から呼気アルコール検査場所までの移動時間及び呼気アルコール検査時間並びに深夜時間帯の仮眠時間終了前の制服への更衣時間に対する時間外勤務手当が未払であるほか、同仮眠時間終了前の更衣時間に対する深夜勤務手当が未払である旨主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、未払割増賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社はXに対し、Y社の指定する制服を着用して業務を行うよう指示していたものの、料金ステーションの更衣室において制服に着替えることを義務付けていたとは認められず、Xが所定始業時間前の更衣時間においてY社の指揮命令下に置かれていたものと評価することはできないから、所定始業時間前の更衣時間が労働時間に当たるとはいえない。

2 仮眠時間終了前の更衣時間の労働時間性について、Y社は、休憩時間中、Xを就業を命じた業務から解放して社会通念上休憩時間を自由に利用できる状態に置けば足りるものと解されるから、休憩時間中における制服の着脱等に要する時間は、特段の事情のない限り、労働時間に該当するとはいえないというべきであるところ、本件における仮眠時間終了前の更衣時間についてみるに、料金ステーションのスタッフが着用する制服は、上衣がシャツとファスナ一付きのブルゾン、下衣が長ズボンというものであって、社会通念上、これらを着用した状態では休憩時間を自由に利用できないとはいえず、その着脱に要する時間もごく短時間であると考えられるから、本件において、上記特段の事情は認められず、仮眠時間終了前の更衣時間が労働時間に当たるとはいえない。

3 所定始業時間前の更衣室での更衣時間は労働時間に当たるとはいえないから、更衣室から呼気アルコール検査場所への移動時間についても労働時間に当たるとはいえず、所定始業時間前の労働時間として認められるのは、呼気アルコール検査の所要時間1分のみであるが、呼気アルコール検査の所要時間を加味しても、所定時間外の労働時間の切り捨て処理により、追加で支払われるべき時間外勤務手当は発生しない

上記判例のポイント1によれば、自宅から制服で通勤することも認めていれば、更衣時間の労働時間該当性は否定されることになりますね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2256 投資で一番大切な20の教え(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

この本に書かれている教えは、投資のみならず、人生においての教訓にもなります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

心理的要因の影響力を決してあなどってはならない。強欲、恐怖、不信の一時停止、同調、嫉妬、うぬぼれ、降伏はすべて人間に生来、備わっているものであり、行動を強いる大きな圧力となる。極端な状況で群衆がこれらを共有した場合は特にそうだ。・・・理性をもって感情に打ち勝つ必要があるのだ。」(303頁)

理性をもって感情に打ち勝つ必要があるのは、投資に限った話ではありません。

あらゆる重要な決断の場面において、例外なくあてはまります。

多くの方は、理性ではなく、感情に基づき判断し、行動しているように見受けられます。

人はそう簡単に変わりませんので、思考の習慣(癖)を修正することは実際は至難の業です。

せめてできることとすれば、判断に迷った際は、自分が信頼する人に相談する、ということくらいでしょう。

解雇440 自主退職する旨の書類に署名しないのに合意退職と扱い、解雇でもあるとする会社の主張に対し、いずれも否定したうえ、不法行為が成立するとした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、自主退職する旨の書類に署名しないのに合意退職と扱い、解雇でもあるとする会社の主張に対し、いずれも否定したうえ、不法行為が成立するとした事案を見ていきましょう。

CTW事件(東京地裁令和7年6月30日・労経速2600号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、Y社において就労していたXが、Y社に対し、【1】上記雇用契約に基づき、令和5年9月21日から同月29日までの未払賃金34万3636円+遅延損害金の支払を求めるとともに、【2】Xが退職の意思表示をしていないにもかかわらず、Y社から退職したものと扱われたことが不法行為を構成し、これにより逸失利益として1296万円、慰謝料として100万円及び弁護士費用相当損害金として139万6000円の各損害がそれぞれ生じたと主張して、不法行為よる損害賠償請求権に基づき、損害合計1535万6000円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、34万3636円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、356万円+及び遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、令和5年9月29日、Y社を自主的に退職する旨記載された書類に署名せず、また、退職の合意に至っていないにもかかわらず、Y社から、セキュリティカード等の返却を求められ、他の従業員に伴われて退社させられ、就労を求める旨の同日付けの連絡等にも応答してもらえていないことからすれば、Xは、Y社を退職していないにもかかわらず、Y社から、同日付けで退職したものと扱われた(本件解雇)というべきである。

2 Xには当該取扱いによって逸失利益が生じたといえ、その金額は、Xが就職活動に着手した時期及び再就職先での就労開始時期等に照らし、324万円(=108万円/月×3か月)と認めるのが相当である。
また、Xは、本件訴訟を原告訴訟代理人らに委任しているところ、本件事案の内容、性質、審理経過及び認容額等に照らし、Xには当該取扱いによって32万円の弁護士費用相当額の損害が生じたと認めるのが相当である。
なお、Xは、当該取扱い(本件解雇)によって精神的苦痛を被り、金銭の支払をもって慰藉されるべき旨主張するが、本件訴訟に顕れた一切の事情を考慮しても、上記逸失利益の賠償とは別に、さらに賠償すべき精神的損害が生じたと認めることはできず、Xの上記主張を採用することはできない。

不法行為構成のため、上記金額で済んでいますが、バックペイを求められたら、金額はもっと増えていたかもしれません。

日頃から労務管理については、顧問弁護士に相談しながら行うことが大切です。

本の紹介2255 桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から12年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

すべては日々の習慣の差であることを改めて実感しました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

スポーツでは毎日トレーニングをするのに、仕事ではなぜ何もしないのか」(35頁)

日々のルーティンに「仕事の準備」がどれほど含まれているかは、個人差が激しいと思います。

オンとオフを完全に分けている人もいれば、スポーツで言うところの自主練を行っている人もいます。

私の場合、早朝の3時間と休日を、読書等を通じた情報収集や筋トレ等の運動といった自主練に充てています。

一生懸命に生きる、限られた時間(命)を無駄にしたくない。

ただそれだけです。

配転・出向・転籍62 出向期間延長のうえ再度された出向命令につき、同意書に基づく個別の出向合意は成立しておらず、同書に基づく出向命令も権利濫用で無効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、出向期間延長のうえ再度された出向命令につき、同意書に基づく個別の出向合意は成立しておらず、同書に基づく出向命令も権利濫用で無効とした事案について見ていきましょう。

図書館流通センター事件(東京地裁令和7年6月26日・労経速2600号48頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であって令和2年7月1日から現在までa株式会社へ在籍出向しているXが、Y社に対し、Xのa社への出向は、XとY社との間の本件に先立つ訴訟で成立した訴訟上の和解の履行として、同日から令和5年6月30日までを出向期間とする出向命令に基づき行われたものであるが、その後の同年7月1日から令和8年7月25日までに出向期間を延長して再度された出向命令は、権利を濫用したものとして無効であると主張し、現在、a社において勤務する労働契約上の義務のないことの確認を求めるところ、これに対してY社が、Xのa社への出向はX、Y社及びa社の間で令和2年7月1日に成立した個別の出向合意に基づき現在まで有効に行われていると反論するとともに、仮に令和5年7月1日以降の出向がXの指摘する再度の出向命令に基づくものであったとしても、同命令は権利を濫用したものとはいえず有効であると反論し、Xの上記確認請求を争う事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの年額900万円の賃金水準はY社の賃金制度下では支社長クラスとなるところ、不適切な経理処理及びセクハラ発言のいずれの言動も全く反省していないXに、Y社の支社長ないしそれに準ずる重要なポジションを任せることはできないなどとも主張するが、Y社が指摘するXの上記各言動は現時点で既に7年以上も前の出来事であり、上記各言動についてのXとY社との見解の相違を契機としてされた配転命令の有効性が争われた前件訴訟は前件和解により終局していることに加え、Xが現在までの間に同種の言動で問題を生じさせたことも認められない以上、Y社の指摘するXの上記各言動を業務上の必要性に当たって重視することは相当ではない。
このほか、Y社は、平成27年4月以降Y社の営業業務を離れ現在の営業担当に必要な知識、手法を身に付けられていないXには、年額900万円の賃金水準に見合うポストがY社に存在しないとも主張するが、そもそもY社は、Xがa社へ出向して以降、Xとの面談やXの人事評価をしておらず、Xの現在の営業に関する知識や技量等を何ら把握していない状況であることからすると、Y社の上記主張に関しては根拠が不明であるといわざるを得ず、本件全証拠を検討しても、これを認めるに足りる的確な証拠は存在しない。
以上によれば、本件辞令2に係る出向命令による出向の延長を肯定し得るほどの業務上の必要性があったとは認められない。

これでは配転の必要性の裏付けとして不十分ですね。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。