Author Archives: 栗田 勇

本の紹介2152 億万長者の感謝力!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

感謝すること、感謝を伝えることがいかに大切であるかが説かれています。

人に何かをしていただいたときに「ありがとうございます」すら言えない人に何ができるというのでしょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

誰かになにかをしてもらったときに、『自分は相手にきちんと与えることができているだろうか』『相手に対して気遣いができているだろうか』と自問自答したり、『相手がこんなことをしてくれたのに、自分はまだまだなにもしてやれていないのではないか』という視点で考えてみればよいのです。」(177頁)

人間関係やビジネスは「お互い様」で成り立っています。

一方が他方に対して、与え続ける・もらい続けるという関係は、長続きしません。

特にまだ力がない若いうちは、上の人からいろいろなモノを与えられることが多いですが、そんなときこそ、自分に何が返せるのかを自問自答するのです。

人からもらうことに慣れてしまい、それが当たり前になってしまわないように気を付けましょう。

とはいえ、今の時代、そんなことを教えてくれる先輩はほぼいないと思います。

パワハラだの老害だのと言われるのが関の山ですからね(笑)

あほくさー

解雇415 採用内定辞退扱いは採用内定の取消であるとして、地位確認請求が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、採用内定辞退扱いは採用内定の取消であるとして、地位確認請求が認められた事案を見ていきましょう。

FIREST DEVELOP事件(東京地裁令和5年12月18日・労判ジャーナル149号62頁)

【事案の概要】

本件は、本訴において、XがY社に対し、Y社においてXが内定を辞退したと扱ったことは違法無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料200万円等の支払を求め、反訴において、Y社がXに対し、Xによる恐喝及び詐欺行為があったとして、不法行為に基づき、慰謝料405万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

本訴:地位確認請求認容、未払賃金等請求一部認容、損害賠償請求一部認容(30万円)

反訴:請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社代表者は、令和4年3月、XがY社で受講していた研修の進捗状況に不満を持ち、その旨をXに伝えていたこと、Y社は、同月22日には、Xに対し採用内定の辞退を促し、Xの研修を打ち切っていること、同月28日、Xに対し本件内定辞退通知を送付し、その中においてもXの入社前の研修の大幅な進捗遅れを指摘していたこと、Xは、Y社の上記対応について、東京都労働相談情報センターに相談に行っていたことなどが認められ、これらの事実からすれば、本件内定辞退扱いは、Y社代表者がXの研修内容等に不満を持ち、Xからの内定辞退の申出がないにもかかわらず、Xが採用内定を辞退したものとY社が取り扱ったものと認めるのが相当であるから、本件内定辞退扱いは、Y社による労働契約の一方的な解約の意思表示(採用内定の取消し)であるところ、客観的合理的理由を欠き、権利濫用に当たり、無効である。

2 Xは、Y社の指示に従い入社前に事前研修を受けたが、その内容・進捗状況等について、Y社からXが不足する部分について具体的な指摘はなかったこと、採用内定辞退の申出をしていないにもかかわらず、Y社から一方的にXが辞退したという扱いをされたこと、本件内定辞退扱いの数日後には説明もなく出社を命じられるなどしたことなどが認められ、また、Y社に対し、Xから、Y社の対応について説明を求めても、Xからの連絡に応答しないなどXからの連絡自体を拒絶されていたこと、Xは、Y社に入社できなかったことにより、就労可能な在留資格を維持するため、3か月以内に新しい仕事を見つけられなければ帰国せざるを得ない状況に置かれたこと、このような状況に労働者が精神的に追い詰められたことなども認められ、本件内定辞退扱いは、留学生であったXの生活状況を著しく不安定な状態に陥れるものであり、著しく相当性を欠くといえ、労働者に対する不法行為を構成するというべきであり、Xには、財産的損害を回復してもなお償えない精神的損害が存在すると認めるに足りる特段の事情があるというべきであり、その慰謝料は30万円と認めるのが相当である。

内定取消しについても、考え方は、解雇の場合と同じく、合理的な理由が求められます。

場面的には、感情的になってしまいがちですが、しかるべきプロセスを経ているかをできるだけ冷静に検討することが求められます。

内定取消しを有効にするためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃から顧問弁護士に相談できる体制を整えましょう。

本の紹介2151 成功の条件#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「『人』と『お金』と『選択の自由』」です。

もうこれが答えです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

つき合っていく人や、仲間の存在っていうものは、君自身のセルフイメージにとても大きな影響を与える存在なんだ。成功の道を歩き始めるならなおさらのこと。これはとくに意識しておかなくてもいいけど、覚悟だけはしておいたほうがいい。必ず新しい出会いと別れがやってくるから」(122頁)

いつも書いていることですが、引き寄せの法則、類友の法則からいって、日頃、付き合っている人は、概ね、自分と同じレベルになります。

いつまでも気楽な関係を続けていると、気づいたらコンフォートゾーンから抜け出せなくなってしまい、何年経っても、ずっと同じレベルのままです。

自分に負荷がかかる環境にあえて身を置くことを意識的にやらないと、楽なほうへ楽なほうへと流されてしまいます。

気づいた時には、もう如何ともしがたいところまで落ちてしまいます。

人生は、いつだって弱い弱い自分との闘いです。

No pain, no gain.

賃金285 夜勤時間帯における割増賃金算定の基礎単価は、通常の労働時間の賃金額を基礎として算定すべきとしつつ、趣旨および内容が明確であれば別途の定め方も認容されるとした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、夜勤時間帯における割増賃金算定の基礎単価は、通常の労働時間の賃金額を基礎として算定すべきとしつつ、趣旨および内容が明確であれば別途の定め方も認容されるとした事案を見ていきましょう。

社会福祉法人A事件(東京高裁令和6年7月4日・労経速2562号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して、Y社の運営するグループホームの生活支援員として勤務していたXが、Y社に対し、夜勤時間帯(午後9時から翌日午前6時まで)の泊まり勤務について、Y社には労基法37条に基づく割増賃金の支払義務があると主張して、①平成31年2月から令和2年11月までに支給されるべき未払割増賃金312万9684円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②労基法114条所定の付加金312万9684円+遅延損害金の支払を求める事案である。
なお、退職日の翌日以降の遅延損害金については、原審では年3%の割合による請求であったところ、当審で上記のとおり請求が拡張されたものである。

原審は、夜勤時間帯が労働時間に当たると認めた上で、泊まり勤務1回につき6000円の夜勤手当が支給されていたことに鑑み、夜勤時間帯から休憩時間1時間を控除した8時間の労働の対価を6000円とすることが労働契約の内容となっていたと認定し、割増賃金算定の基礎となる賃金単価を750円としてこれを算定して、Xの請求を、①未払割増賃金69万5625円+遅延損害金、②付加金69万5625円+遅延損害金の支払を求める限度で認容したところ、Xが控訴し、前記1のとおり遅延損害金請求を拡張した。

【裁判所の判断】

 原判決を次のとおり変更する。
 Y社は、Xに対し、331万5789円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、付加金312万9684円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 当裁判所は、夜勤時間帯は労働時間に該当すると認められ、夜勤時間帯についての割増賃金の額は通常の労働時間の賃金額を基礎として算定すべきであり、そうすると、Xの請求は全部理由があると判断する。

2 Y社は、夜勤時間帯から休憩時間1時間を控除した8時間の労働の対価を夜勤手当6000円とする旨の賃金合意があったから、夜勤時間帯の割増賃金算定の基礎となる賃金単価は750円となると主張する。
しかし、Y社は、これまで、グループホームの夜勤時間帯にY社の指揮命令下で生活支援員が行うべき業務はほとんど存在しないという認識を前提として、就業規則においては、巡回時間を想定した午前0時から午前1時までの1時間を除き、夜勤時間帯を勤務シフトから除外し、本件訴訟においても、夜勤時間帯については緊急対応を要した場合のみ申請により実労働時間につき残業時間として取り扱う運用をしていると主張し、夜勤時間帯が全体として労働時間に該当することを争ってきたものであって、XとY社との間の労働契約において、夜勤時間帯が実作業に従事していない時間も含めて労働時間に該当することを前提とした上で、その労働の対価として泊まり勤務1回につき6000円のみを支払うこととし、そのほかには賃金の支払をしないことが合意されていたと認めることはできない
労働契約において、夜勤時間帯について日中の勤務時間帯とは異なる時間給の定めを置くことは、一般的に許されないものではないが、そのような合意は趣旨及び内容が明確となる形でされるべきであり、本件の事実関係の下で、そのような合意があったとの推認ないし評価をすることはできず、Y社の上記主張は採用することができない。

非常に重要な高裁の判断です。

上記判例のポイント2を参考に賃金体系を変更する場合には、決して、素人判断でやらないことです。多くの場合、不利益変更になりますし、やり方を間違えると残業代の基礎賃金が増額することになりますので、細心の注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2150 この方法で、みんなお金持ちになった、人生の成功者となった#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

終始、王道中の王道の方法が紹介されています。

タイトルは決して誇張ではなく、真実です。

問題は、わかることとできることは全く異なる、ということです。

99%の人は、この本に書かれていることをやりませんので。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私はこれまで、成功できなかった人たちをよく観察して、その原因を探ってきた。そして気づいたのは、成功に至らなかったのは、想像力が委縮していたり、その夢に十分に時間をかけられなかったりしたためだということだ。これはあなた自身についても言える。時間をいかに使うかによって事の成否が決まる、とぜひ肝に銘じほしい。」(173頁)

「時間」はその人の「人生」そのものです。

時間を無駄にするということは、人生を無駄にしているのと全く同義です。

時間をいかに使ってきたか、何に投下してきたのかの結果が、今の自分を作り上げています。

これまでも、これからも、限りある時間をいかに使うか、何に投下するかが、その人の人生を作り上げます。

そして、大切なのは、その過程をいかに楽しめるか、です。

楽しい人生などありません。

人生を楽しめる自分がいるだけです。

配転・出向・転籍57 配転命令拒否を理由とした解雇を有効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、配転命令拒否を理由とした解雇を有効とした事案を見ていきましょう。

医薬品製造販売業A社事件(横浜地裁令和6年3月27日・労経速2559号20頁)

【事案の概要】

本件は、労働者であるXが、令和4年1月24日付けで行われた同年4月1日にb本社へ転勤させる旨の命令及び同年3月30日付けで行われた解雇の意思表示が、いずれも無効であると主張して、雇用契約に基づき、Y社に対し、①Y社との間で雇用契約上の権利を有することの確認及び②Xがb本社で勤務する義務がないことの確認を求めるとともに、③同年5月1日以降の賃金(バックペイ)として、令和4年5月1日から本判決確定の日まで、毎月25日限り、47万7500円(月給)、毎年7月31日及び12月31日限り、各98万9500円(賞与)+遅延損害金の支払、④割増賃金41万3050円+遅延損害金の支払、⑤令和4年4月分賃金につき、欠勤を理由に減額されたことは不当であるとして、未払賃金8万9133円+遅延損害金の支払、⑥Xに対して行われたハラスメントについて、Y社の安全配慮義務違反があると主張して、損害賠償金110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、20万6107円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、本件配転命令につき、①業務遂行能力及びチームマネジメント能力の見極めを業務上の必要性として挙げているほか、②環境を変え、新たな同僚や上司の下、業務遂行能力及びマネジメント能力を発揮するよう、人材活用を図ることについても、業務上の必要性に当たると主張している。
この点、Xは、本件試用期間延長措置が無効である以上、Xの業務遂行能力及びチームマネジメント能力の見極めの必要性はないかのような主張をしているが、雇用契約が継続している限り、使用者は、職員の配置のほか、賞与額の査定、昇給や昇格等、人事上の措置を講じるに当たり、様々な場面で、従業員の能力を見極め、その評価を行う必要があるのが通常であって、このような必要性は、試用期間中であるか否かを問わず肯定されるものであって、これに反するXの主張は、採用し得ない。
Xは、能力の見極めや、Xの能力の活用を図るのであれば、dオフィスに所属したままでも可能である旨主張しているが、Xは、最初に担当することになったO社PJで、派遣社員であるHから、Xによるパワハラ被害の申告を受け、そのような状況に陥った原因について、O社PJのメンバーであるHやPの能力不足と共に、F課長代理の指導力不足を強調していたものである。dオフィスは、Xを除けば、正社員がF課長代理とGの二名しかいない小規模な研究施設であって、GはXよりも10歳以上も年下であり、Xに対する能力の見極めや指導は、dオフィスにいる限り、F課長代理が行わざるを得ない状況にあったというべきところ、信頼関係が損なわれたF課長代理の下で勤務をさせるよりも、E部長を含め人員の充実したb本社で勤務をさせた方が、X自身の本来の能力が活かされ、より目の行き届いた形でその能力の見極めが可能であると判断したY社の決定は、十分に合理性のあるものというべきである。
また、Xは、Hが週報作成の前提となる実験ノートを作成できておらず、Pの日報や実験ノートにも不備が多かったにもかかわらず、F課長代理が適切な指導を行なわなかったことを論難し、問題の所在であるF課長代理を異動させるべきであった旨主張しているが、そもそも、職員の能力不足や経験不足は、上司の指示、指導や教育などによって直ちに改善するものではなく、F課長代理が的確な指導を行っていたとしても、Xが感じていたH及びPの能力不足や経験不足に起因する問題が、解決されたとは思われない。

2 本件配転命令は、D市にあるdオフィスから、b本社への異動を命じるものであり、転居を伴う転勤命令であって、従業員であるXの私生活に、一定の影響を与えるものであること自体は疑いがない。
もっとも、給与その他、勤務地を除く労働条件については、本件配転命令により変更されるものではないほか、Y社は、転勤規程(書証略)を設けて、家具移転費用、転勤交通費、転勤一時金、賃貸住宅費用補助等の名目で、転勤にともなう諸経費の会社負担を認め、単身赴任者については、毎月1回の帰省手当を支給するなど、転勤に伴う経済的な負担を軽減する制度を定め、また、その案内をXに対して行っている。
そのほか、Xは、E部長やM取締役の入社時の面接においても、b本社でなければできない研究や実験があるとの認識の下、業務上の必要性があるのであれば、b本社への異動が可能である旨回答していることも踏まえれば、本件配転命令がB市への転居を伴うこと、単身赴任をするか、自宅周辺で就労している妻を退職させ、妻と共にB市に赴任するかいずれかを選択する必要が生じていたことといった事情を考慮しても、本件配転命令が、労働者に対し、甘受し難い不利益を与えるものとは言い難いというべきである。

3 以上によれば、本件配転命令は、業務上の必要性に基づくものであり、他の不当な目的・動機をもってなされたものであるとも、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとも認められないというべきであるから、Y社に裁量権の逸脱はなく、これが権利濫用であるとのXの主張は採用し得ない。

職員の能力不足や経験不足は、上司の指示、指導や教育などによって直ちに改善するものではないと、至極当たり前のことが述べられていますが、このような当たり前のことを裁判所に認定してもらうとなんだかほっとします。

配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介2149 営業の魔法#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトルのとおり、営業の心構えが書かれているのですが、営業職に限らず、すべての職業にあてはまる内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の人間力を高めなければ、いつも足元しか見られない小っぽけな視界で終わっちゃうんです。成長し続けなければ・・・成長することで遠くまで見渡せ、広く世間を見られるんです。」(41頁)

自分が成長していないと、成長している人との関係は続きません。

「類は友を呼ぶ」、「引き寄せの法則」からすれば、当然の帰結です。

もう40歳にもなれば、それまでの成長度合いは、もはや逆転不可能と言える程の残酷な格差として表れます。

遠くに行くためには、日々、足元の努力を着実に続ける以外に方法はありません。

退職勧奨25 退職勧奨による退職合意の有効性が肯定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、退職勧奨による退職合意の有効性が肯定された事案を見ていきましょう。

UNIVA・Oakホールディングス事件(東京地裁令和6年3月28日・労経速2562号33頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結しY社において勤務していたXが、Y社から退職扱いとされたことについて解雇であり退職合意が成立していないこと、仮に成立していたとしても意思表示に瑕疵があることを主張して、Y社に対し、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②平成29年法律第44号による改正前の民法536条2項に基づき上記退職扱い以降の賃金として、令和2年4月から本判決確定の日まで、毎月25日限り月額100万円の割合による金員+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社からの本件退職勧奨を受け本件退職届に署名押印してY社に対し提出したこと、令和2年1月15日が最終出社日となり以後Y社に出勤していないこと、本件退職勧奨の際もY社から解雇ではなく自主退職である旨明確に伝えられたことが認められる。
 これらの事実によれば、Xは、Y社からの本件退職勧奨に応じ、Y社との間で退職合意をしたと推認できる。

2 Xは、山梨県民信用組合事件において示された自由意思論は、退職合意の意思表示の場面においても適用され、本件におけるXの合意退職の意思表示は自由意思に基づくものとはいえない旨主張する(なお、当該主張は、退職合意の成立要件に位置付けるのが相当である。)。
上記判例においては、労働者側には意思決定の基礎となる情報を収集する能力が限られており、使用者側との間に情報格差があり、使用者から求められるがままに不利益を受け入れる行為をせざるを得なくなるような状況に置かれることも少なくないことから、「自由な意思と認められる合理的な理由」を検討して慎重に労働者の意思表示の存否を判断することが要請されているものと解される。しかしながら、そもそも、合意退職の意思表示は、退職することといったように効果が明確であり、X及びY社間で情報格差が類型的に生じるような場面とはいえない。そうすると、本件は、上記判例とは事案を異にするというべきであり、自由意思論を適用すべき事案であるとはいえない
もっとも、労働者の合意退職の意思表示は、重要な意思表示であるから、その認定には慎重になるべきとはいえるものの、本件においては、Xが本件退職願に記入した上で、XがY社から解雇通知されたことを認めるに足りる証拠がないにもかかわらず、同月16日以降出勤していないことからすれば、Xが合意退職の意思表示をしたことは明らかであるといえる。

上記判例のポイント2のXの主張は理解できるところですが、裁判所は事案を異にすると判断しています。

退職勧奨の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介2148 立ち読みしなさい!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

「幸せな人生」を送っている人と「不幸な人生」を送っている人の差は、はたしてどこから生まれるのでしょうか。

この本にはそのヒントが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人生80年であれば、1日24時間×1年365日×80年=700800時間が私たちの時間であり命です。70万時間です。たった70万時間しかありません。その限りある命をお金のためだけに切り売りするのはやめましょう。それは、あなたの貴重な1時間をワゴンセールのように叩き売っているのと同じ行為です。時間を切り売りしなくてもお金を稼ぐことはできます。」(225頁)

人生80年かどうかも定かではありません。

人はいつ死ぬかわかりません。

死期が目に見えてわかるのであれば、もっと時間を大切にするのでしょうね。

あと5年しか生きられないとわかれば、無駄なこと、やりたくないことに1秒たりとも時間を使いたくなくなるでしょう。

いろんなことを気にして、我慢して、体裁ばかり整えて生きていくなんて、まっぴらです。

そんなことをしているうちに人生は終わってしまいます。

YOLO

有期労働契約128 契約期間5年・更新4回での雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、契約期間5年・更新4回での雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

ドコモ・サポート事件(東京地裁令和3年6月16日・労判1315号85頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成25年9月4日に、期間を同年10月1日から平成26年3月31日までとして有期労働契約を締結し、その後、同契約を4回更新された後、4回目の更新期間満了時である平成30年3月31日にY社から雇止めされたXが、Xには労働契約法19条2号の有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、当該雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないため、従前の有期労働契約の内容で契約が更新され、平成31年3月31日に退職したことから同日に同契約が終了したと主張して、Y社に対し、同契約に基づき、平成30年4月分から平成31年3月分までの賃金として平成30年4月から平成31年3月まで毎月20日限り23万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 このようなY社における有期契約労働者に関する雇用制度及びその運用状況に照らせば、Y社では、有期契約労働者については、無期契約労働者へのキャリアアップ(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員へのキャリアアップ及びスタッフ社員からパートナー社員へのキャリアアップも含む。)の仕組みを設ける一方で、無期契約労働者の登用試験(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員への登用試験及びスタッフ社員からパートナー社員への登用試験も含む。)に合格しない者については、長期雇用の適性を欠くものと判断し、更新限度回数又は契約期間の上限により契約を終了するという人事管理をしているものといえる。そうすると、Y社の雇用制度においては、有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験に合格しない限りは、有期契約労働者として5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていないものといえる。

2 Y社における雇用制度及びその運用状況を踏まえると、Y社の有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員への登用試験及びスタッフ社員からパートナー社員への登用試験も含む。)に合格しない限りは、5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていないこと、また、Xにおいても、上記運用に沿った有期労働契約を締結し、その後の更新状況も同運用に沿ったものであるから、Xにおいて、本件契約が、更新限度回数4回を越えて、更に更新されるものと期待するような状況にあったとはいえないこと、加えて、Xは、平成28年度及び平成29年度に、エリア基幹職社員の採用募集に応募し、選考試験を受けたが、いずれの年度においても選考試験に合格できなかったことからすれば、Xが、平成30年3月31日の本件契約の満了時点で、本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めることはできない

無期契約労働者の登用試験を設けるという手法は、比較的よく目にしますが、試験の運用方法が恣意的な場合には、結論が異なり得ますので注意が必要です。

また、ここでも、更新上限回数を一番最初の契約のときに契約内容に入れておくことがポイントです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。