Author Archives: 栗田 勇

本の紹介2089 迷ったら、二つとも買え!#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には、「人生を豊かにするお金の使い方」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

本を読んできた人と、全く読まずにテレビばかりみてきた人とでは、50歳、60歳になったとき、その人となりに歴然とした差が生まれてくる。人相だって変化を生じる。だから、定年になってからといわず、本当は若いうちから読書に親しむ習慣をつけることが大切だ。」(80頁)

若いうちに読書の習慣が身についていない人が、50歳、60歳になって、突如、読書の習慣が身につくことはほとんどないと思いますが。

人生は、多くの場合、10代~20代で培った習慣によって形成されています。

何事も最初が肝心と言われる所以です。

良い人生を送りたければ、良い習慣を身に付けましょう。

管理監督者59 工場部門に置かれた業務部(製造部門)の責任者の管理監督者性が否定された事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、工場部門に置かれた業務部(製造部門)の責任者の管理監督者性が否定された事案を見ていきましょう。

三栄事件(大阪地裁令和5年3月27日・労判ジャーナル140号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員であるXが、Y社に対し、①雇用契約に基づき、平成30年9月21日から令和2年3月4日までの未払割増賃金合計745万4359円+遅延損害金、②労基法114条に基づき、付加金510万8321円+遅延損害金、③雇用契約に基づき、本件請求期間における未払の食事手当合計12万4950円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 Y社は、Xに対し、562万7090円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、付加金374万1093円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、13万0692円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、工場部門に置かれた業務部(製造部門)の練りの責任者であったことが認められ、Y社の役員を除けば、工場部門の長である工場長、業務部(製造部門)の長である総責任者に次ぐ地位にあったことが認められる。
しかしながら、他方、Y社の経営方針は幹部会議において決定されていたところ、幹部会議の出席者は、会長、社長、専務その他の役員のみであり、Xが出席したことは一度もなかったこと、Xは、労務管理や人事の権限を有していなかったことが認められ、これらのことからすると、XがY社の経営に参画していたとはいえず、Xが経営者と一体的な立場にあったとは認められない。
Y社は、Xが製造部門の中核かつ最も重い責任のある立場にあったと主張するが、そのことは、Y社が出荷する生コンの質の良し悪しを決定づけるという意味においてその立場が重視されていたというにすぎず、Xが経営者と一体的な立場にあったことを基礎づけるものとはいえない。
また、Xが他の従業員に対し業務上の指示を行い得る立場にあったことをもってXが経営者と一体的な立場にあったともいえない
   
2 Xが遅刻や欠勤をした場合でも賃金控除がされていなかったものの、Xの労働時間は、タイムカードによって管理されていたほか、Xは、就業時間中に被告営業所を中抜けして本件歯科医院に通院していたことが発覚してY社に始末書を提出していることが認められることからすると、Xが勤務時間に関する裁量を有していたとは認め難い。日曜日や大型連休に出勤を要することは直ちに勤務時間に関する裁量を有していたことに結びつくものではない。
   
3 Xの年収は、平成30年は729万円余り、平成31(令和元)年も679万円余りであったことが認められ、その金額自体はそれなりに高額であるといえるものの、かかる金額は、他の従業員と比較しても、時間外手当を含めれば、その年収が特に高額であったとは認められない。また、Xの平成24年4月分以降の給与の額は、X自身の同年1月分から同年3月分までの給与と比較しても、時間外手当を含めれば、その差は最大でも2万円程度にとどまり、遜色はないものと認められる上、平成30年1月から令和2年2月分までとの比較でも、基本給の増額分が2万0375円又は2万8486円が加算されるにすぎず、その差が大きいとまではいい難い。これらのことからすると、Xが管理監督者として相応の待遇を得ていたとまではいい難い。

4 以上によれば、Xは労基法41条2号にいう管理監督者には当たらないというべきである。

ご覧のとおり、管理監督者に該当する労働者はほぼ存在しませんのでご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

本の紹介2088 仕事ができる人の心得(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

まるで辞書のように著者の考えが1つ1つ書かれています。

読み物としてとてもおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

【整理】いる物といらない物を明確にし、いらない物を捨てることです。捨てなければならない時、その大切さがわかるのです。捨てるのが一番難しい。社長(トップ)がいらない物を指示する。捨てる痛みを知る。」(142頁)

やることよりやらないことを決めるほうがはるかに大切です。

時間もマンパワーも有限だからです。

本当にやるべきこと、やりたいことに集中することが、今後ますます求められるのだと確信しています。

Time-consumingなルーティンをいかに思い切って捨て去るかが求められています。

不当労働行為315 団交拒否が不当労働行為にあたらないとされた事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、団交拒否が不当労働行為にあたらないとされた事案を見ていきましょう。

有田川漁業協同組合事件(埼玉県労委令和5年5月25日・労判1297号161頁)

【事案の概要】

本件は、組合が令和4年6月22日に団体交渉を申し入れたのに対し、Y社が本件申立てまでにおいて団体交渉に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない。

【命令のポイント】

1 本件申立てに至るまで、Y社は、組合からの団体交渉申入れに関して、その都度文書により対応しており、団体交渉そのものを拒絶する意思を示したとするような事実は認められない。その後も、Y社は、交渉日時や交渉方法について組合とのやり取りを継続し、交渉日時を調整して、令和4年8月30日、組合の希望通りリモート方式による団体交渉に応じている。また、当該団体交渉の日程を調整するに当たり、Y社が殊更開催を先延ばしにしようとした意図も認められない
したがって、本件申立時点では、まだ団体交渉は開催されていなかったものの、組合からの団体交渉申入れに対し、Y社がこれを正当な理由なく拒否したとまでは言えず、Y社の対応が労組法7条2号の不当労働行為に該当するとは認められない。

理由を読むかぎり、使用者側に団交拒否の姿勢は見られません。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介2087 マスターの教え#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から8年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

物語を通じて、「富と知恵と成功」をもたらす秘訣について伝えています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたの思いを弱めてしまうこころの混乱を作っている原因は、何なのでしょうか?それは、自分の外側には、自分の中にある力よりも大きな力が存在しているという、誤った思い込みなのです。」(74頁)

他人のことばかり気にして、

他人のせいにばかりして、

恨んで、憎んで、批判して。

気付けば、自分の人生なのに、自分の好きなように生きることを諦めてしまったかのようです。

他人に決められた人生を嫌々送るなんて私にはとてもできません。

いずれにせよ、どう生きたって人生はあっという間に終わります。

YOLO

退職勧奨23 精神障害発覚による退職勧奨の違法性等(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、精神障害発覚による退職勧奨の違法性等に関する裁判例を見ていきましょう。

中倉陸運事件(京都地裁令和5年3月9日・労判1297号78頁)

【事案の概要】

本件は、貨物自動車運送事業等を目的とするY社に、4トンウイング車乗務員として雇用され、令和2年8月1日から就労を開始したXが、同月4日に精神障害等級3級の認定を受けている旨の書類を提出したところ、即日解雇されたが、本件解雇は無効であるなどと主張して、Y社に対し、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②同月6日から本判決確定の日までの未払賃金+遅延損害金の支払を求め、また、③障害者を差別した不当解雇、あるいは違法な退職勧奨を受けたとして、不法行為責任に基づき、慰謝料500万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、80万円+遅延損害金を支払え。

その余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、以前にも、勤務していた会社を退職する際、退職届を提出したことが複数回あり、Y社において就労を開始するに当たっても、勤務していた食品会社を退職する際、同様に退職届を提出したというのである。そうすると、Xは、本件退職届を作成、提出した際にも、その意味するところを十分に理解していたというべきであるから、Xの本件退職届の作成、提出につき、心裡留保があるとか、これに対応する意思の欠缺があるということはできない。また、Xがいう動機の錯誤は、自身が令和2年8月4日に解雇されたと認識していたことを前提とするところ、Xが同日解雇されたと認識していたとは認められないから、その点で錯誤があるということもできない。

2 退職勧奨行為自体は、その具体的内容や態様、これに要した時間等からみて、執拗に迫ってXに退職の意思表示を余儀なくさせるような行為であったとまでいうことはできず、退職に関するXの自由な意思決定を阻害するものであったとは認め難い

3 Y社は、Xが精神障害等級3級との認定を受け、通院して服薬治療を受けていることのみをもって、その病状の具体的内容、程度は勿論、主治医や産業医等専門家の知見を得るなどして医学的見地からの業務遂行に与える影響の検討も何ら加えることなく、退職勧奨に及んだものといわざるを得ない
そうすると、Y社の上記退職勧奨行為は、Xの自由な意思決定を阻害したものとまで評価できないにしても、障害者であるXに対して適切な配慮を欠き、Xの人格的利益を損なうものであって、不法行為を構成するというべきである。そして、Y社の上記退職勧奨行為の内容のほか、本件記録に表れた諸事情を考慮すると、Xの精神的苦痛を慰謝するには80万円をもってするのが相当である。

退職勧奨自体は有効にもかかわらず、障害者に対する配慮を欠いていたという理由で慰謝料が認められています。

退職勧奨が退職強要に及ばない限り、単に「勧奨」しているにすぎないため、それに応じるか否かは労働者の自由です。それにもかかわらず、上記判例のポイント3の第1段落の理由から裁判所が慰謝料を認めたのは驚きました。

退職勧奨の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介2086 「大人の人づきあい」でいちばん大切なこと#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

帯には「他人を気にしすぎる人生なんて、もったいない。」と書かれています。

気にしているうちに人生は終わってしまいます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

会話では自分のことをペラペラ話すより、相手の話を聞く側に回る。これが『会話上手』と呼ばれる人の鉄則だ。私の感覚でいえば、『聞きが七割、しゃべりが二割、沈黙が一割』でいい。」(145頁)

これは、このブログでもよく書いていることです。

会話を支配しているのは、話し手のように見えて、実は、聞き手です。

その人のコミュニケーション能力の高さは、話し方ではなく、聞き方の見ればわかります。

いかに話し手に気持ちよく話してもらうか、という話者への想像力が求められるわけです。

賃金276 酒気帯び運転による懲戒免職処分に伴う退職手当全部不支給の有効性(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、酒気帯び運転による懲戒免職処分に伴う退職手当全部不支給の有効性に関する判例を見ていきましょう。

宮城県・県教委(県立高校教諭)事件(最高裁令和5年6月27日・労判1297号78頁)

【事案の概要】

本件は、上告人の公立学校教員であった被上告人が、酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、職員の退職手当に関する条例12条1項1号の規定により、退職手当管理機関である宮城県教育委員会から、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けたため、上告人を相手に、上記各処分の取消しを求める事案である。

原審は、本件懲戒免職処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとした上で、要旨次のとおり判断し、本件全部支給制限処分の取消請求を一部認容した。
被上告人については、本件非違行為の内容及び程度等から、一般の退職手当等が大幅に減額されることはやむを得ない。しかしながら、本件規定は、一般の退職手当等には勤続報償としての性格のみならず、賃金の後払いや退職後の生活保障としての性格もあることから、退職手当支給制限処分をするに当たり、長年勤続する職員の権利としての面にも慎重な配慮をすることを求めたものと解される。そして、被上告人が管理職ではなく、本件懲戒免職処分を除き懲戒処分歴がないこと、約30年間誠実に勤務してきたこと、本件事故による被害が物的なものにとどまり既に回復されたこと、反省の情が示されていること等を考慮すると、本件全部支給制限処分は、本件規定の趣旨を超えて被上告人に著しい不利益を与えるものであり、本件全部支給制限処分のうち、被上告人の一般の退職手当等の3割に相当する額を支給しないこととした部分は、県教委の裁量権の範囲を逸脱した違法なものであると認められる。

【裁判所の判断】

原判決主文第2項から第4項までを次のとおり変更する。
上告人の控訴に基づき、第1審判決中、上告人敗訴部分を取り消し、同部分につき被上告人の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 被上告人は、自家用車で酒席に赴き、長時間にわたって相当量の飲酒をした直後に、同自家用車を運転して帰宅しようとしたものである。現に、被上告人が、運転開始から間もなく、過失により走行中の車両と衝突するという本件事故を起こしていることからも、本件非違行為の態様は重大な危険を伴う悪質なものであるといわざるを得ない
しかも、被上告人は、公立学校の教諭の立場にありながら、酒気帯び運転という犯罪行為に及んだものであり、その生徒への影響も相応に大きかったものと考えられる。現に、本件高校は、本件非違行為の後、生徒やその保護者への説明のため、集会を開くなどの対応も余儀なくされたものである。このように、本件非違行為は、公立学校に係る公務に対する信頼やその遂行に重大な影響や支障を及ぼすものであったといえる。さらに、県教委が、本件非違行為の前年、教職員による飲酒運転が相次いでいたことを受けて、複数回にわたり服務規律の確保を求める旨の通知等を発出するなどし、飲酒運転に対する懲戒処分につきより厳格に対応するなどといった注意喚起をしていたとの事情は、非違行為の抑止を図るなどの観点からも軽視し難い
 以上によれば、本件全部支給制限処分に係る県教委の判断は、被上告人が管理職ではなく、本件懲戒免職処分を除き懲戒処分歴がないこと、約30年間にわたって誠実に勤務してきており、反省の情を示していること等を勘案しても、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。

最高裁は、非常に厳しい判断をしました。

同じ事実関係でも、評価のしかた一つで、180度異なる判決が書けることの例です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2085 一切なりゆき~樹木希林のことば~#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。

今から5年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトルのとおり、物事に執着しない生き方がよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

モノを持たない、買わないという生活は、いいですよ。部屋がすっきりして、掃除も簡単。汚れちゃったけど、いまは忙しいから掃除ができない、どうしよう・・・なんていうストレスもない。暮らしがシンプルだと、気持ちもいつもせいせいとしていられます。」(23頁)

あらゆることに依存・執着しないほうが人生は楽です。

これがないとダメ、あの人がいないと生きていけない・・・こんな依存度の高い生き方を選択してしまうと、それを失うことを恐れ、また、失うまいと執着し出すのです。

そんな人生は窮屈ですし、常に何かを気にしていなければいけません。

できるだけ依存度を高めない生き方を選択するを心掛けています。

不当労働行為314 団体交渉において組合が要求している資料を提示しなかったことが不誠実団交にあたるとされた事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、団体交渉において組合が要求している資料を提示しなかったことが不誠実団交にあたるとされた事案を見ていきましょう。

夢kitchen事件(奈良県労委令和5年1月23日・労判1298号99頁)

【事案の概要】

本件は、団体交渉において組合が要求している資料を提示しなかったことが不誠実団交にあたるかが争点となった事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 就業規則は、同法89条により事業所に常時10人以上の労働者を使用する場合には、その作成及び労働基準監督署への届出が義務づけられており、賃金台帳及びタイムカードは、同法第109条により一定期間の保存が義務付けられている。
これらの就業規則、賃金台帳及びタイムカードはいずれも団体交渉の主要な議題であった組合員の時間外労働について交渉するに当たって重要な基礎資料となるものである。Y社は、タイムカードは店長主催の会議での要望を受けて廃棄したと主張するが、そうした事情があるからといって保存義務のある書類の保存期間が経過する前にこれを廃棄することは到底許されない
以上のことから、これらの書類の提示を組合が要求したにもかかわらず、Y社が提示しなかったことには合理的な理由がなく、労組法7条2号の不誠実団交に該当すると判断するのが相当である。

廃棄したという主張がまかり通りのであれば、都合の悪い資料は全部廃棄したことにするでしょう。

そんなことが認められているのは、どこかの国の官僚と政治家くらいなものです(皮肉)。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。