Daily Archives: 2026年5月11日

労働時間121 労働者が他の事業主の下でも労働しており、労働時間を通算すると労基法32条所定の労働時間を超えることを事業主が知らなかったときは、労基法38条1項による割増賃金の支払義務を負わないとした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、労働者が他の事業主の下でも労働しており、労働時間を通算すると労基法32条所定の労働時間を超えることを事業主が知らなかったときは、労基法38条1項による割増賃金の支払義務を負わないとした事案を見ていきましょう。

タイミー事件(東京地裁令和7年3月27日・労経速2593号3頁)

【事案の概要】

Y社は、アプリケーションソフトウェアを利用して、日雇い労働者を求める事業者(求人者)と求職者との間の労働契約の成立をあっせんする、「Timee(タイミー)」と称するマッチングサービスを提供している。
本件は、Xが、本件サービスを利用して事業者(求人者)との間で労働契約を締結し、同契約に基づいて就労したが、併存的債務引受により当該事業者のXに対する賃金支払債務を負担するY社から賃金が支払われていない旨主張して、Y社に対し、未払賃金1675円(割増賃金335円を含む。)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労働者が複数の事業主の下で労働に従事し、それらの労働時間数を通算すると労基法32条所定の労働時間を超える場合には、労基法38条1項により、時間的に後に労働契約を締結した事業主はその超えた時間数について割増賃金の支払義務を負うとされているが、当該労働者が他の事業主の下でも労働しており、かつ、同所での労働時間数と通算すると労基法32条所定の労働時間を超えることを当該事業主が知らなかったときには、同事業主の下における労働に関し、当該事業主は、労基法38条1項による割増賃金の支払義務を負わないものというべきところ、本件では、XがA社において勤務していた間、事業主であるA社が、Xからの申告等により、他の事業主の下における労働時間と通算すると原告の労働時間が労基法32条所定の労働時間を超えることを知っていたとは認められないから、この点からしても、Y社がXに対し労基法38条1項による割増賃金の支払義務を負うものとは認められない。

2 これに対し、Xは、Y社の提供する本件サービスの内容等に照らせば、Y社及びA社は、他の事業主の下での労働について、Xからの申告等を待たずに自ら確認すべき義務があるといえるところ、かかる義務を怠ったのであるから、労基法38条1項による割増賃金の支払義務を免れないなどと主張する。しかし、この点に関してXが主張する事情等を踏まえても、Xが本件サービスの利用者であることをもって、当然に、A社あるいはY社において、労基法38条1項の規定を念頭に置いて、原告の申告等がない場合にも、自ら、他の事業主の下での労働についてXに確認する義務を負っていたものと解すべき根拠は見出せず、Xの上記主張は採用できない。

上記判例のポイント1の結論はこれでいいとして、どのような根拠に基づき、「当該事業主が知らなかったとき」という規範を導けるのか判然としません。

まあ、そもそも副業・兼業における労基法38条1項の行政解釈自体がなんだかな~という感じですけどね。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。