管理組合運営48 組合員の管理組合に対する組合員名簿の閲覧請求が認められた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員の管理組合に対する組合員名簿の閲覧請求が認められた事案(東京地判平成29年10月26日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、被告(マンション管理組合)の組合員である原告が、被告に対し、マンションの管理規約に基づき、被告の組合員名簿の閲覧を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 被告は、原告が被告の理事であるにもかかわらず、理事会での議論を通さずに、本件議案を直接総会に提案するために本件閲覧請求をしていることなどによれば、本件閲覧請求は正当な理由を欠き、権利濫用に該当する旨主張する。
しかし、本件閲覧請求は、被告の組合員である原告が、組合員による総会招集権を行使して本件規約の改正を内容とする本件議案を総会に提案するため、他の組合員の連絡先を把握することを目的としている。
まさに組合員としての正当な権利行使のための名簿の閲覧請求であって、本件閲覧請求の目的に不当性又は濫用的な側面を見出すことはできない。
被告は、原告が理事会を通さずに本件議案を直接総会に提案することが問題であるなどと主張するが、被告又は被告の理事会がそのように考えるのであれば、本件議案が提案された総会においてその旨主張し、他の組合員の賛同を得るよう努力すべきであって、本件議案の総会への提出自体又は本件閲覧請求が妨げられる理由にはなり得ない。
このような被告又は被告の理事会の対応は、本件議案に反対であるがために、本件議案の総会への提案を阻止するための便法として、本件閲覧請求を拒否しているといえるのであって、少数組合員による権利実現の機会を保障するため、組合員に総会招集権を認めた本件規約46条の趣旨を没却するものであり、言語道断というほかない。
本件規約に基づく組合の公正な運営を歪め、その立場を濫用しているのは、被告又は被告の理事会であって、その主張には一片の合理性も認められない
また、被告は、本件閲覧請求が権利濫用に該当する根拠として、本件名簿に極めて機密性の高い個人情報が記載されていることを主張する。
しかし、本件閲覧請求は、組合員による総会招集権の行使という被告全体の利益に資する重要な権利の行使を準備するためにされており、その目的の重要性に照らすと、本件名簿に組合員の個人情報として前記記載の各情報が記載されているからといって、本件閲覧請求が権利濫用に該当すると認めることはできない。
その他、本件全証拠によっても、本件閲覧請求が権利濫用に該当すると認めるに足りる事情は見当たらない。

2 被告は、本件閲覧請求が認められるとしても、組合員の自宅電話番号や携帯電話番号、備考欄など極めて機密性の高い個人情報が記載されていること、本件閲覧請求の目的を達成するには、組合員の氏名、部屋番号及び送付先住所のみ閲覧すれば十分であることから、閲覧の範囲を組合員の氏名、部屋番号及び送付先住所に限定すべきである旨主張する。
しかし、本件閲覧請求は、組合員による総会招集権の行使という被告全体の利益に資する重要な権利の行使を準備するためにされており、その目的の重要性に照らすと、本件名簿に個人情報が記載されているとしても、その閲覧の範囲を限定することには慎重な検討が必要である。
特に、本件では、被告が本件議案の総会への提案自体を阻止することを目的として本件閲覧請求を拒否していると認められるのであり、なおさら慎重な検討が必要といえる。
以上の観点に立った上で、本件閲覧請求の目的の重要性に照らしてもなお、本件閲覧請求による本件名簿の閲覧の範囲を制限すべき事情があるかどうかについて検討すると、本件名簿の記載内容その他本件全証拠によっても、そのような事情を認めるに足りない。

裁判官、なんか怒ってます?(笑)

言語道断と一片の合理性も認められないなんて、私、言われたことないですー。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。