おはようございます。
今日は、排水管の不具合を理由に2年近くにわたり賃料の一部を支払わなかった賃借人に対する建物明渡請求が認められた事案(東京地判令和4年1月19日)を見ていきましょう。
【事案の概要】
本件は、本件マンションの専有部分である本件建物の区分所有者であり、被告会社に対して本件建物を賃貸していた原告が、被告会社による賃料の不払を理由として本件賃貸借契約を解除したと主張して、①被告会社に対し、本件賃貸借契約の終了に基づき、②本件建物を占有している被告Y1及び被告Y2に対し、区分所有権に基づき、本件建物の明渡しを求める事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 被告会社は、排水管の不具合に伴うユニットバス及びキッチンの排水の支障により本件建物の使用収益を妨げられるという事象が発生した令和元年7月以後、2年近くにわたり(本件訴状が送達された令和2年3月以後について見ても、1年以上にわたり)、月額7万7500円の賃料しか支払わないなどの行為を継続しており、令和元年7月分~令和3年6月分の賃料に係る未払額の合計も、112万7000円に及ぶ。
他方、原告は、本件報告書において、排水管の詰まりを抜本的に解消するためには、本件建物の下階の専有部分の居室に立ち入った上で、当該専有部分と本件建物との間に存するスラブの下に配管された排水管の交換をする必要があるとされていること、当該排水管は、本件マンションに係る共用部分に属すると解されること等から、原告において本件建物に属する排水管の修繕のみを行うのではなく、本件管理組合において本件マンション全体の排水管の修繕を行うのを待つとの判断をしたものと考えられるが、この判断自体は相応の合理性を有するものということができる。
また、原告は、本件建物の管理を委託している本件管理会社を通じて、本件マンションの管理組合に対し、本件マンションの排水管の修繕をするよう求めており、その結果、本件管理組合の理事会によって、令和2年2月頃から、排水管の配管ルートの確認等のため、本件マンションの各専有部分への事前入室調査等が行われ、遅くとも同年12月までに、本件マンションの排水管の改修工事を行う方針が固められ、令和3年1月頃、本件マンションの住民等に対する当該改修工事の説明会が行われていることに照らすと、被告会社としては、令和2年2月頃~令和3年1月頃にかけて、本件マンション全体の排水管の修繕が進捗していることを十分認識可能であったにもかかわらず、その間、一貫して、原告に対して支払うべき月額賃料額(12万4000円)より4万6500円も少ない月額7万7500円の賃料しか支払っていない。
これら諸事情に加えて、賃貸借契約において賃借人が賃貸人に対して賃料を支払う義務は、賃借人の基本的かつ重要なものであることに鑑みると、平成26年7月~令和元年7月の約5年間、ユニットバス及びキッチンの排水管の排水状況は、使用収益に関する具体的な支障が生ずる程度には至っていなかったものの、必ずしも良好ではなかったことを考慮しても、原告と被告会社の間の信頼関係は、遅くとも原告準備書面3をもって未払賃料の催告がされた令和3年6月30日までには、破壊されていたことは明らかである。
したがって、本件賃貸借契約は、原告準備書面3をもってされた解除の意思表示により、解除されたというべきである。
賃貸物件の一部に支障がある場合、賃料の一部を減額して支払うという対応が考えられますが、本件同様、債務不履行と判断される可能性がありますので、対応方法は慎重に検討しなければいけません。
マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。