名誉毀損20 原告が同和であるなどと発言するなどして原告の名誉を毀損したとの主張が認められなかった事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、原告が同和であるなどと発言するなどして原告の名誉を毀損したとの主張が認められなかった事案(東京地判令和4年2月3日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

原告及び被告らは、平成31年2月当時、本件マンション管理組合の役員を務めていた。
本件は、原告が、被告らに対し、被告らが、原告が同和であるなどと発言するなどして原告の名誉を棄損したと主張して、不法行為(民法709条、719条1項)による損害賠償請求権に基づき、連帯して慰謝料及び弁護士費用相当額の合計230万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【裁判所の判断】

1 Bは、平成30年冬から平成31年2月中旬頃までは、被告らと共に、原告を本件組合の理事から退任させようとする行動に出ていたが、その後、原告と共に被告Y2の発言(明白なものは後記(2)である。)を問題視するような態度をとるようになったこと、被告Y2が同和差別主義者である旨の匿名のインターネット掲示板への投稿をした者の発信者情報は、Bの住所地に本店を置く株式会社bであり、同社の代表取締役Iは、Bと共にc株式会社の代表取締役であること、原告は、Bの娘と共に、令和元年5月31日、d株式会社の取締役に(原告は併せて代表取締役にも)就任し、同社には上記Iも取締役として在任していたことが認められる。
このように、平成31年2月中旬以降、Bが原告に接近して、被告Y2の発言を問題視するなどの行動をとり、原告とBの親族や共同経営者が共に会社の役員を務める関係にあることや、B自身が原告と現在は友人関係にある旨供述していること(証人B)に照らすと、Bの上記陳述ないし供述の信用性は慎重に検討する必要がある

2 Cは、被告Y2の上記発言を聞いたのは、不特定多数の者がいた場所ではなく、CとBの前であったという記憶である旨供述していることに照らすと、Cの供述やCがBに対して送信したメッセージから、被告Y2が原告主張に係る発言をしたと認めることはできない。
また、被告Y2は、Bとの間のメッセージのやり取りでは同和という表現を用いていたが、その一方で、被告Y1、B及びCとの間のメッセージのやり取りには、原告を本件組合の理事から退任させようとするなどの打合せをする一方で、同和という表現を用いた部分は見当たらないから、被告Y2が日常的に、同和という表現を用いていたと認めることはできず、被告Y2がBに対して送信したメッセージから、原告主張に係る被告Y2の発言を推認することはできない。
さらに、平成30年2月10日及び同月12日の飲食に同席したEは、原告主張に係る被告Y2の発言を聞いたことがないと供述する。同月10日の飲食の席には、本件組合の役員ではないEの同居人(米国籍(証人E))も出席していたことに照らすと、原告が主張しBが供述するように、原告を本件組合の理事から退任させるための相談がされ、その過程で、被告Y2が原告主張に係る発言をしたとは、にわかに認め難い。
このように、原告の主張に沿うBの陳述ないし供述を裏付けるに足りる証拠がない上、被告Y2の発言に関するBの陳述ないし供述とは食い違う供述が存在し、会合の少なくとも一部については、その出席者の状況に照らし、被告Y2が原告主張のような発言に及ぶとは認め難いことに照らすと、Bの上記陳述ないし供述は、全体としてにわかに採用できない。そして、他に、原告の主張を認めるに足りる証拠はない。

証人と原告との関係等から供述の信用性を認めず、請求を棄却した事案です。

解釈に依拠する部分が多いので、裁判官により判断が分かれる可能性があります。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。