義務違反者に対する措置29 区分所有者がショーウィンドウ部分及び看板部分を権限なく使用していることを理由とする看板等の撤去請求が棄却された理由とは?(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、区分所有者がショーウィンドウ部分及び看板部分を権限なく使用していることを理由とする看板等の撤去請求が棄却された理由とは?(東京地判令和4年1月28日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、マンション管理組合である原告が、当該建物の区分所有者である被告に対し、被告が当該建物の共用部分に該当する別紙物件目録記載の物件(ショーウインドウ)等に別紙撤去対象物目録記載の看板等を設置するなどして権原なく使用していると主張して、管理規約による共用部分の妨害排除請求権及び妨害予防請求権に基づいて、上記看板等の撤去を求めるとともに、上記物件の使用の禁止を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分は、いずれも本件マンションの外壁の外側の空間に存在し、当該空間内に設置されたガラス扉等とともにショーウインドウとして使用することや、看板をはめ込むことによって看板として使用することができる設備であることからすると、本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分は、本件マンションの建物本体である外壁の一部に該当するものと認めるには疑問が存するものの、いわゆる躯体部分の上塗り部分と同様のものであり、建物に備え付けられ、その構造上及び効用上、建物と不可分の関係にあるものとして、本件マンションの建物の附属物であると認めることができる。
そして、本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分は、本件マンションの外壁の外側に存在しており、特定の専有部分と接続していないことからすると、その位置や構造に照らし、特定の専有部分の区分所有者による排他的使用が当然に予定されているものとはいい難いから、区分所有法2条4項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共有する共用部分に当たると認めるのが相当である。

2 本件マンションの建築に当たり、被告が、かつて借地上に所有していた建物の賃借人から、107号室を賃貸するとともに106号室の南側にショーウインドウを設置するよう求められたことを受け、107号室の賃借人が使用するために本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分が設置されたこと、本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分内に設置された電気設備は、107号室のために設置された分電盤から電気が供給されており、その電源スイッチも107号室の室内に存すること、本件マンションの建築後、被告が本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分を継続的に管理し、107号室とともに第三者に賃貸しており、平成20年頃に至るまで、本件マンションの区分所有者から、本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分の使用状況について異議が述べられたことはなかったことが認められる。
本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分の設置や使用に関する上記経緯を総合すると、本件マンションの建築計画の段階から、被告が取得する107号室の賃借人が使用するために本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分が設置されることが予定され、本件マンション建築時及び建築後において、被告あるいはその賃借人が本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分が管理使用することについて本件マンションの区分所有者も異議なく承認していたと認められるのであるから、本件マンションが建築された昭和56年頃、本件マンションの区分所有者全員の間において、本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分を被告が排他的に使用することができる旨のいわゆる専用使用権を設定する旨の黙示の合意が成立したものと認めるのが相当である。

本件では、①本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分が本件マンションの共用部分であるか否か、及び、②本件ショーウインドウ部分及び本件看板部分について被告が専用使用権を有するか否か、という2つの争点について判断されています。

①はさておき、被告としては②の争点について、これまでの経緯や使用実績等を詳細に主張立証したことが奏功した結果となっています。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。