名誉毀損18 名誉を毀損する内容の書面内に口外をしないように求める文面が記載されているだけでは伝播可能性は否定されないとされた事案(不動産・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、名誉を毀損する内容の書面内に口外をしないように求める文面が記載されているだけでは伝播可能性は否定されないとされた事案(東京地判令和4年2月15日)を見ていきましょう。

【事案の概要】

本件は、原告が、被告が原告について虚偽の事実を記載した文書をマンション内の77戸の郵便ポストに投函したことにより名誉を毀損され、精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料150万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

被告は、原告に対し、15万円を支払え。

【判例のポイント】

1 本件表現は、原告について、「二重人格の障害者です」、「彼女の解離性同一性障害(は)……ほぼ、間違いないと思います。」と述べるものであるから、それが記載された本件文書を本件マンションの約15戸に配布することは、原告の社会的評価を低下させ、名誉を毀損するものであり、不法行為に該当することは明らかである。
これに対し、被告は、本件文書は、特定かつ少数、すなわち、本件マンションの約15戸の本件組合の役員経験者等に限定して配布されたものであること、本件文書には内容を口外しないように求める旨の記載があることから、本件文書の配布により原告の社会的評価は低下しないと主張する。
しかし、本件マンションの約15戸もの世帯に対する本件文書の配布が、「少数」の者に対する文書の配布であるとはいえない。
また、その点を措いてみても、本件文書内に口外をしないよう求める旨を記載していることのみをもって本件表現が伝播する可能性は否定されないから、本件文書の配布によって原告の社会提起評価が低下する危険性があることは否定できない。

2 被告は、本件文書の配布は、本件組合の理事長としての地位を有しない原告が、理事長としての権限を行使して本件組合等に財産的損害を与えるのを防ぐ目的でやむを得ずしたものであり、正当防衛が成立すると主張する
しかし、仮に、本件組合等に財産的損害を与えるのを防ぐ目的で文書を配布するのであれば、原告が本件組合の理事長の地位を有しないことなどを記載すれば足り、原告の名誉を毀損する内容の本件表現を記載する必要性はいささかも認められない
したがって、本件文書の配布について、やむを得ずした行為として正当防衛が認められる余地はなく、被告の上記主張は採用することができない。

口外をしないように求める旨を記載しているだけでは伝播可能性は否定されませんのでご注意ください。

また、本件の事情を見る限り、正当防衛の主張が通らないことは言うまでもありません。

マンション管理や区分所有に関する疑問点や問題点については、不動産分野に精通した弁護士に相談することが肝要です。