【交通事故㉓】むち打ち症における後遺障害のポイントは?

いわゆる「むち打ち症」の場合の後遺障害について教えて下さい。
1 むち打ち症は、正確な医学上の病名ではなく、さまざまな病態を含んでいます。

その大部分は頚椎捻挫(「頚椎挫傷」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」)です。

むち打ち症の症状は多種多様であり、自覚症状には、頭痛、頸部痛、頸部運動制限、眼精疲労、視力障害、耳鳴り、上下肢のしびれ感、首・肩のこり、めまい、吐き気、疲労感等が見られます。

このように、むち打ち症は自覚症状が多彩なわりに他覚的所見が少ないため、後遺障害の認定には困難が伴います。

2 実務上、いわゆるむち打ち症状に関する後遺障害等級認定において、「非該当」や「第14級」と認定されたことに対し、異議申立てが行われることはとても多いです。

むち打ち症状による後遺障害として該当する可能性があるのは、第12級10号「局部に頑固な神経症状を残すもの」(労働能力喪失率14%)、第14級12号「局部に神経症状を残すもの」(労働能力喪失率5%)の2つです。

第12級10号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」の意味については、【交通事故㉚】をご参照ください。

自賠責保険の実務では、労災保険における障害の等級認定の基準に準拠して局部の神経症状が「他覚的所見によって医学的に証明される場合」は第12級13号に該当、「医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかでないが、頭痛、めまい、疲労感などの自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定される場合」は第14級9号に該当、「自覚症状に対して医学的に推定することが困難な場合。事故と因果関係がない場合」は非該当としています。

他覚的所見とは、XP、CT、MRI等の画像所見や神経学的検査等の客観的な医学的所見のことであり、被検者の意思に左右される検査結果は他覚的所見には含まれません。

3 逸失利益の算定については、労働能力喪失期間が問題となります(逸失利益については【交通事故⑱】をご参照ください)。

労働能力喪失期間は、就労可能年齢である67歳までとするのが原則ですが、むち打ち症を始めとする比較的軽微な精神神経症状については一般に労働能力喪失期間を限定する傾向にあります。

裁判例では、第12級13号該当については、5年~10年の喪失期間を、第14級9号該当については、5年以下の喪失期間を認める例が多いように思われます。