Daily Archives: 2013年12月24日

解雇125(秋本製作所事件)

おはようございます。 今年最後の1週間ですね。今週もがんばっていきましょう。

さて、今日は、分会長に対する非違行為等を理由とする降格・解雇等に関する裁判例を見てみましょう。

秋本製作所事件(千葉地裁松戸支部平成25年3月29日・労判1078号48頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社から降格処分を受けて賃金及び賞与を減額された上、普通解雇されたことについて、①賃金減額及び賞与減額は、そもそもY社にその権限がなく、仮に権限があったとしても人事権を濫用してされたものであるから無効であり、②上記普通解雇は、解雇事由が存在せず、仮に存在したとしても解雇権を濫用してされたものであり、不当労働行為にも該当するものであるから無効であるなどと主張して、Y社に対し、(1)雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、(2)平成20年8月以降減額されたことによる賃金未払分(月額15万円)及びこれに対する遅延損害金、(3)平成19年以降減額されたことによる賞与未払分及びこれに対する遅延損害金などの支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

降格処分、解雇はいずれも無効

賞与の減額分の支払請求は棄却

【判例のポイント】

1 人事権の行使としての降格処分は、労働者を特定の職務やポストのために雇い入れるのではなく、職業能力の発展に応じて各種の職務やポストに配置していく長期雇用システムの下においては、雇用契約上、使用者の権限として当然に予定されているということができ、その権限の行使については、使用者に裁量権が認められるというべきである。そうすると人事権の行使としてされた本件降格処分の有効性については、その人事権の行使に裁量権の逸脱又は濫用があるか否かという観点から判断していくべきである。そして、その判断は、使用者側の人事権の行使についての業務上・組織上の必要性の有無・程度、労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するか否か、労働者の受ける不利益の性質・程度等の諸点を総合してされるべきものである

2 本件解雇事由(ア)(懲戒処分後の就労拒否)及び(イ)(出勤停止期間中の出勤等)に係るXの行為は、ずれもY社の業務上の指示・命令に従わず、会社の秩序を乱すものであって、本件解雇に至る経緯に照らしても、本件解雇の主たる理由になったものということができる。
しかしながら、本件解雇事由(ア)については、本件解雇の際にXに示された事実自体についてはこれを認めることができないのであり、就業規則所定の解雇事由に該当する行為として認められるのは、懲戒処分2で既に制裁を受けた行為であって、解雇の理由としてこれを重視するのは相当でないというべきである
・・・以上の点を考慮すると、本件解雇事由として認められるXの行為は、いずれも解雇を相当とする重大なものではないのであって、これらの事実を総合し、かつ、本件情状事由を考慮しても、Xに対して解雇をもって対処するのは著しく不合理で、社会通念上相当性を欠くといわざるを得ない。したがって、本件解雇は、解雇権を濫用したものである。

本件では、Y社が数多くの解雇事由を主張しましたが、その多くが就業規則所定の解雇事由とは認められていません。

また、解雇事由と認められた数少ない事実についても、それだけで解雇とするのは不十分なものであるため、相当性を欠くという理由から解雇は無効と判断されています。

解雇事由については、単純な足し算ではないので、1つ1つの事実が解雇事由とはならない場合には、何百個主張しても、解雇は有効にはなりません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。