Daily Archives: 2018年9月26日

労働時間51(南海バス事件)

おはようございます。

今日は、待機時間が労働基準法32条の労働時間に該当しないとされた裁判例を見てみましょう。

南海バス事件(大阪高裁平成29年9月26日・労経速2351号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されて路線バスの運転手として稼働するXが、Y社に対し、時間外割増賃金の一部が未払であると主張して、未払時間外割増賃金及びこれに対する各給与支給日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金並びに付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金をそれぞれ請求する事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。
 不活動時間においては、その間、労働者が労働から離れていることを保障されて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができるのであって、不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。

2 バスの移動、忘れ物の確認、車内清掃等は、基本的にはバスターミナル到着後2分間及び次の運行開始時間前4分間で行うことが可能であり、それ以外の待機時間について、乗務員は、休憩を取ることが可能であった。そして、Y社は、乗務員が休憩するための施設として一部のバスターミナルに詰所を設置しており、Xを含む多くの乗務員がこれを使用していたこと、休憩中にはバスを離れて自動販売機等に飲料を買いに行くことも許されていたこと、乗務員がバスから離れることができるようバスには施錠可能なケースや運転台ボックスが設置されていたこと、X自身もバスを離れてトイレや詰所に行っていたことなどの事実に照らせば、乗務員が待機時間中にバスを離れて休憩することを許されていたことは明らかである
そして、上記のとおり、乗務員は、予定時間より早くバスを移動させることができるように準備しておく必要もなかったのであるから、出発時間の4分前にバスを停留所に接着できるようにバスに戻ればよく、その間は自由にバスを離れることが可能であった。
このように、待機時間中、乗務員は自由にバスを離れて休憩をとることが可能であった上、Y社は、乗務員が休憩中であることを理由に乗客対応を断ることや貴重品や忘れ物をバス車内に置いてバスを離れることを認めており、乗務員は、待機時間中には、乗客対応、貴重品や忘れ物、バス車体等の管理を行うことを義務付けられていたとは認められない。

3 これに対し、Xは、待機時間中も臨機応変にバスを移動できるように態勢を整えておかなければならず、そのような態勢を整えることが黙示的に義務付けられていたと主張するが、かかる主張は、X自身、トイレ以外の不急の事由でバスを離れていたことと相容れず採用できない。
また、Xは、運行途中でのバスの車体点検が業務である旨主張するが、他方でd営業所における休憩については、休憩室等の設置やバスが車庫で管理されていることなどを理由に職務から解放されている旨主張しているところ、運行途中のバス点検業務の有無は休憩所等の設置やバスの管理方法とは無関係なものであるはずであり、その主張に整合性はなく採用できない。
なお、Y社が待機時間中に業務を行った場合には延着時分申告書を提出する旨取り決めていたとしても、そのことをもって、Y社がXら乗務員に待機時間中の乗客対応やバスの移動等を黙示的に義務付けていたと評価することはできない。
 ・・・したがって、乗務員は、待機時間中、労働からの解放が保障されており、待機時間は、労基法上の労働時間とは認められない。

上記判断は、控訴審(大阪高裁平成29年9月26日)、上告審(最高裁平成30年4月17日)でも維持されています。

休憩時間なのか手待時間なのかという論点はよく出てきますので、裁判所がどのような点を見て判断しているのかを理解しておきましょう。