セクハラ・パワハラ58(N商会事件)

おはようございます。 今年も一年よろしくお願いいたします。

今日は、セクハラに対する会社の対応につき債務不履行責任を否定した裁判例を見てみましょう。

N商会事件(東京地裁平成31年4月19日・労経速2394号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社の従業員であるCからセクハラに該当する行為を受けたところ、Y社がこれに関する事実関係の調査をせず、安全配慮義務ないし職場環境配慮義務を怠ったこと等により精神的苦痛を被ったなどと主張して、債務不履行に基づき、損害金904万1960円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、平成25年9月頃に、Xから、Cよりメールを送信されて困っているなどとセクハラ行為に係る相談を持ち掛けられたのを受けて、まもなく、Cに対し、事実関係を問い、Cから事実認識について聴取するとともに、問題となっている送信メールについてもCに任意に示させて、その内容を確認するといった対応をとっているものである。
そうしてみると、Y社において、事案に応じた事実確認を施していると評価することができるところであって、Y社に債務不履行責任を問われるべき調査義務の違背があったとは認め難い
Xは、Y社において、CとXとの間で交わされたメールの提出を求め、あるいは、従業員全員から聴取を行うべきであったなどと主張しているが、Y社において、メールの確認はしているし、そのような事実確認も経ている中、プライバシーに関わる相談事象について、他の従業員に対し、殊更事実確認を行うことが必須ということもできず、Y社にXが主張するような具体的な注意義務があったとまでは認め難い。

2 Xは、Y社において、Xに対する職場環境配慮義務ないし安全配慮義務として、配置転換等の措置を取るべき注意義務があり、その違反があったとも主張する。
しかしながら、CがXに対してした所為が前記の範囲にとどまるものであったことや、そういった行為であってもXに不快な情を抱かせるものとしてCに対して厳重に注意もなされていること、そして、Cも自身の行為を謝し、Xもひとまずこれを了とし、その際、あるいはそれ以降、特段、Cから、メール送信等によりXに不快な情を抱かせるべき具体的言動がなされていたともY社に認められていなかったことは前記のとおりであるところ、Y社には本社建物しか事業所が存せず、配転をすることはそもそも困難であった上、この点措いても、そもそも倉庫業務担当者と営業補助担当者との接触の機会自体、伝票の受け渡し程度で、乏しかったものである(後に伝票箱による受け渡しで代替される程度にとどまっていることからもこの点は窺われる。)。しかも、Y社は、Xの発意に基づくものであったかは措くとしても、上記わずかな接触の機会についても、その意向も踏まえ、納品伝票を入れる伝票箱に入れることでやり取りをすることを認めたり、さらには担当者自体を交代するといったことも許容していたものである。そうしてみると、Y社において、事案の内容や状況に応じ、合理的範囲における措置を都度とっていたと認めることはできるところであって、Xが指摘するような注意義務違反があったとは認め難い。

ハラスメント事案が発生した場合の具体的な対応のヒントになる裁判例です。

どこまでいってもケースバイケースですが、考え方を学ぶにはこのような裁判例を理解しておくことが役に立ちます。