解雇318(マルハン事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、職場の風紀を著しく乱す行為に基づく懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

マルハン事件(東京地裁令和元年6月26日・労経速2406号10頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、Y社により平成29年11月4日付けで懲戒解雇されたこと(Y社は、仮に本件懲戒解雇が無効であると判断された場合には、予備的に同日付けでXを普通解雇したと主張するとともに、更に仮に当該普通解雇も無効であると判断された場合には、予備的には平成31年2月25日付けでXを普通解雇したと主張する)について、本件各解雇が無効である旨等を主張して、Y社に対し、本件労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件懲戒解雇の後に生ずるバックペイとしての月額給与及び賞与等の支払を求めるほか、不法行為に基づき、慰謝料等500万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件懲戒処分が有効かどうかについて、Y社が主張する事実を認めるに足りる客観的かつ的確な証拠はなく、Y社が主張する懲戒解雇事由をもってXを懲戒解雇することには無理があるといわざるを得ず、さらに、本件懲戒解雇に至る手続をみても、Y社の従業員らからのヒアリング結果の報告書をそのままY社の懲戒委員会に提出したという以外に、Xからの異議申立てに対する対応を含めて、Y社の懲戒委員会においてどのような審議がされ、どのような判断の下に懲戒解雇処分を行うに至ったのかも明らかではなくXによる反論の機会が実質的に保証されていたのか、また、Y社において、Xによる反論等を踏まえ、慎重な検討、判断を経て懲戒解雇処分を行うに至ったのか疑問があること等から、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるというべきであり、労働契約法15条の規定により、懲戒権を濫用したものとして、無効となる。

2 本件懲戒解雇によりXは、相応の精神的苦痛を被ったものと認められるが、他方で、これまで店長として、従業員間の不倫関係や男女関係のトラブル等の職場内の風紀秩序を乱す行為について指導する立場にあり、現に指導を行ってきたにもかかわらず、Aと不倫関係にあったり、Bと一泊二日の温泉旅行に出かけたりするなど、懲戒解雇事由に当たるとはいえないにしても、一定程度、職場内の風紀秩序を乱す行為を行っていたことに加え、本件懲戒解雇後間もなく同業他社に再就職し、Y社における従前の待遇を上回るものとまではいえないものの、相当高額な賃金を得ており、本判決において、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認とともに、本件懲戒解雇の後に生ずるバックペイとしての月例給与として平均賃金額の6割に相当する額の請求が認められることにより、賞与の点を踏まえても本件懲戒解雇による経済的な損失はほぼ填補されることになることを考慮すると、本件懲戒解雇によるXの精神的苦痛を慰謝するための金額として、50万円を認めるのが相当である。

上記判例のポイント2のような事情があるにもかかわらず、バックペイとは別に慰謝料が認められています。

それほど懲戒解雇の根拠や手続が不十分であったということでしょうか。