Category Archives: 解雇

解雇317(えびす自動車事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、解雇無効地位確認と不就労期間の未払賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

えびす自動車事件(東京地裁令和元年7月3日・労判ジャーナル93号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に就労を拒否され、その後、Y社から違法に解雇されたと主張して、労働契約に基づき、Y社に対し、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、就労が拒否された後である平成28年5月29日から平成30年4月15日までの賃金約589万円及び平成30年5月から本判決確定の日まで毎月25日限り賃金26万0673円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 平成29年5月18日にXがY社を退職したかについて、Xは、平成29年5月18日、Y社に対し退職届を提出しており、これにより辞職の意思表示をしたといえることから、Xは、同日、Y社を退職したと認められるから、本件請求のうち、労働契約上の地位の確認を求める部分及び平成29年5月18日以降本判決確定の日までの賃金の支払いを求める部分は理由がない。

2 平成28年5月29日から平成29年5月までの間、Y社の責めに帰すべき事由によって労務を提供することができなくなったかについて、Y社は、度重なる指導にもかかわらず重大な事故を繰り返し発生させ反省する様子を見せないXを、このままタクシー運転手として勤務させ続けることは危険であるとしてその就労を拒否し、事務職への転換を提案したX所長の判断は、安全性を最も重視すべきタクシー会社として合理的理由に基づく相当なものであったというべきであり、本件免許停止処分の期間が満了した後も、Xが事故防止に向けた具体的取組をY社に説明することはおろか、タクシー運転手として勤務を希望する旨を申し出ることすら一度もなかったことをも踏まえると、Y社が本件免許停止処分以降、約1年間にわたってXの就労を拒否し続け、Xが労務を提供することができなかったことについて、Y社の責めに帰すべき事由があると認めることはできないから、本件請求のうち、平成28年5月29日から平成29年5月18日までの賃金の支払を求める部分は理由がない。

上記判例のポイント2のようなプロセスをしっかり踏むこととそれをエビデンスとして残すことがとっても大切です。

解雇316(新日本建設運輸事件)

おはようございます。

今日は、退職合意と解雇の有効性を否定したが、再就職から半年乃至1年後に黙示の退職合意の成立が認められた裁判例を見てみましょう。

新日本建設運輸事件(東京地裁平成31年4月25日・労経速2393号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXらが、Y社により平成28年6月25日付けで普通解雇されたが、本件各解雇は無効である旨を主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件各解雇の後に生ずるバックペイとしての月例給与+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はX1に対し、389万9974円+遅延損害金を支払え

Y社はX2に対し、270万3331円+遅延損害金を支払え

Y社はX3に対し、274万0225円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xらは、本件各解雇からほとんど間を置かずに、同業他社に就職するなどしてトラック運転手として稼働することにより、月によって変動はあるものの、概ね本件各解雇前にY社において得ていた賃金と同水準ないしより高い水準の賃金を得ていたものである。これらの事情に加え、上記のとおり、本件各解雇に至る経緯を考慮すると、X1については、遅くともLに再就職した後約半年が経過し、本件各解雇から1年半弱が経過した平成29年11月21日の時点で、X2及びX3については、遅くとも本件各解雇がされ再就職した後約1年が経過した同年6月21日の時点で、いずれも客観的にみてY社における就労意思を喪失するとともに、Y社との間でXらがY社を退職することについて黙示の合意が成立したと認めるのが相当である。

2 ・・・もっとも、使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて収入等の中間利益を得たときは、使用者は、当該労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが、上記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解すべきであるから、使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務の額のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解するのが相当である。

解雇後、他社に就職し、正社員として就労していると、本件のように、就労(復職)の意思が喪失したと判断されることがあります。

もっとも、今回の裁判例は、他社に就職した時点ではなく、そこから相当期間経過した時点をもって就労(復職)の意思が喪失したと認定しています。

労使ともに参考になる裁判例だと思います。

解雇315(共栄セキュリティーサービス事件)

おはようございます。

今日は、配転命令拒否と懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

共栄セキュリティーサービス事件(東京地裁令和元年5月28日・労判ジャーナル92号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Xが配転命令に従わなかったことなどを理由として、Xを懲戒解雇したため、Xが、Y社に対し、上記懲戒解雇は無効であると主張して、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記配転命令も無効であると主張して、雇用契約に基づき、雇用契約上の勤務場所以外で労働する義務がないことの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、JR警乗の業務関連先でするべき行動につき、合理的な理由なくY社の指示に反抗したものであって、ひとたびこのような業務上の指示に反する行為をしたXをJR警乗の注文者でありY社の取引先であるJR東日本との関係を考慮して他の業務に配転する本件配転命令には、Y社の就業規則中の配転事由に係る規定(社員の適性を勘案し、適材適所に配置転換する場合、及び、経営上の判断により必要と認められる事由がある場合)に照らしても、業務上の必要があったものと優に認められ、また、Y社がXに対して本件配転命令後の労働条件として提示した賃金額はXがJR警乗に従事していた際の賃金と同額の1か月19万円とされていたことが認められ、本件配転命令後のその他の労働条件も客観的に見てそれより前の労働条件と比較して客観的に不利益なものではなかったことが認められることに照らせば、本件配転命令が不当な動機・目的をもってなされたとか、労働者に対し通常甘受するべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであったとの事情は認められないから、本件配転命令が無効であるとは認められない

2 Xは、Y社の業務上の命令・指示に対する不服従をかたくなに繰り返し、また、本件懲戒解雇を受けるまで3か月以上の長期にわたりY社での就労拒否を継続したものであって、これをやむを得ない行為であったと解するべき事情は特に認められないから、本件懲戒解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないものとはいえない

配置転換については比較的使用者に広範な裁量が認められていますが、不当な動機目的が認定される場合等には無効となります。

今回の事案のように、業務上の必要が認められ、かつ、賃金の減少がないといった場合には特に問題なく有効とされます。

解雇314(ナカムラ・マネージメントオフィス事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は試用期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ナカムラ・マネージメントオフィス事件(大阪地裁令和元年6月18日・労判ジャーナル92号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で勤務していたXが、Y社から解雇されたが、同解雇は無効であるなどと主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金及び賞与等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 Y社は、オーク会の理事長及びC事務長が、平成30年1月31日、Xと面談して解雇を通告したが、Xは、「はい」とだけ述べ、Y社との間の雇用契約の終了自体について異議を述べていなかったから、Xは、同日をもってY社を合意退職した旨主張するが、Xは、平成30年1月19日、C事務長から退職勧奨を受け、同月30日、C事務長に対し、賞与の支払がない限り退職勧奨を受け入れない旨伝えたが、オーク会の理事長は、同月31日の面談の際、賞与の支払について、これを拒否していること、同面談において、オーク会の理事長は、C事務長に対し、解雇の手続を取ること、Xに内容証明を送ること、解雇を行う際は録音を取ること等を指示し、実際に、Xは、C事務長から、同日解雇通知書を受け取ったこと、XはY社から、同年2月1日、郵送で同内容の書面を受け取り、同月6日には、解雇理由通知書の送付まで受けていること等の事実を併せ鑑みると、Y社は、Xを解雇したものと認めるほかなく、同年1月31日のやり取り全体を踏まえても、Xが、Y社を合意退職したものと認めることはできない

2 平成30年1月19日付け又は平成30年1月31日付け解雇予告による解雇の有効性について、Y社によるXの試用期間中の解雇、すなわち、留保した解約権の行使に客観的合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるか否かについて検討するところ、「コミュニケーション能力の欠如」に関しては、直接体験した者の供述等これらを認めるに足りる的確な証拠がなく、また、「業務遂行能力の欠如」に関しては、Xが、Y社の注意にもかかわらずXがミスを繰り返したといった事情も認め難いこと等から、留保解約権の行使においては、通常の雇用契約における解雇の場合よりもより広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきであることを踏まえても、本件雇用契約に基づく労務の提供に不足があるとしてXを解雇すること(留保した解約権を行使すること)に、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとは認められないから、Y社によるXの解雇(留保解約権の行使)は、無効であり、また、Xは、Y社から就労を拒否されている状況にあるから、解雇日以降も、Y社に対し、賃金の支払を求める権利を有する。

コミュニケーション能力の欠如や業務遂行能力の欠如といった理由で解雇する場合には、それを裏付ける事実を立証することが大変です。

事前の準備なく解雇をしてしまうとこのような結果となってしまうので注意してください。

解雇313(北海道社会事業協会事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

90日目の栗坊トマト。3か月でこんな感じです。

今日は、HIV感染不告知を理由とする採用内定取消しと当該情報の目的外使用の違法性に関する裁判例を見てみましょう。

北海道社会事業協会事件(札幌地裁令和元年9月17日・ジュリ1538号4頁)

【事案の概要】

本件はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しているXが、北海道内において病院を経営するY社の求人に応募し内定を得たものの、その後Y社から内定を取り消されたことをめぐり、①この内定取消しは違法である、②Y社が上記病院の保有していたXに関する医療情報を目的外利用したことはプライバシー侵害に当たると主張して、不法行為に基づき、330万円の損害賠償+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、165万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 HIVに感染しているという情報は、極めて秘密性が高く、その取扱いには極めて慎重な配慮が必要であるのに対し、HIV感染者の就労による他者への感染の危険性は、ほぼ皆無といってよい。そうすると、そもそも事業者が採用に当たって応募者に無断でHIV検査をすることはもちろんのこと、応募者に対しHIV感染の有無を確認することですら、HIV抗体検査陰性証明が必要な外国での勤務が予定されているなど特段の事情のない限り、許されないというべきである。
本件では、上記特段の事情は認められないのであって、Y社病院がXにHIV感染の有無を確認することは、本来許されないものであった。そうだとすると、Xが平成30年1月12日にY社病院総務課職員から持病について質問された際にHIV感染の事実を否定したとしても、それは自らの身を守るためにやむを得ず虚偽の発言に及んだものとみるべきであって、今もなおHIV感染者に対する差別や偏見が解消されていない我が国の社会状況をも併せ考慮すると、これをもってXを非難することはできない

2 確かに、本件ガイドラインにおいても、通常の勤務において業務上血液等に接触する危険性が高い医療機関においては、別途配慮が必要であるとされているところである。
しかしながら、HIV感染の事実は取扱いに極めて慎重な配慮を要する情報であるから、そのような医療機関においても、HIV感染の有無に関する無差別的な情報の取得が許容されるものではない。そして、医療機関においては、血液を介した感染の予防対策を取るべき病原体はHIVに限られないのであるから、Y社病院においてもHIVを含めた感染一般に対する対策を講じる必要があり、かつ、それで足りるというべきである。
現に、医療機関の参考のために作成された本件手引きにおいても、HIV感染について他の感染症とは異なる特別な対応をすべきことが提唱されているわけではなく、「職業感染対策」として、B型肝炎、C型肝炎等の感染症と並んでHIV感染対策に特化した記述がわずかに存するのみである。そうすると、医療機関といえども、殊更従業員のHIV感染の有無を確認する必要はないばかりか、そのような確認を行うことは、前記特段の事情のない限り、許されないというべきである。
ましてや、Xは、社会福祉士として稼働することが予定されていたのであって、医師や看護師と比較すれば血液を介して他者にHIVが感染する危険性は圧倒的に低いと考えられるし、Xが患者等から暴力を受けたとしても、Xが大量出血しその血液が周囲の者の創傷等を通じて体内に偶然に入り込むなどといった極めて例外的な場合でもない限り、これが原因で他者にHIVが感染することは想定し難いというべきである。
したがって、上記主張はいずれも失当である。そして、Y社病院に前記特段の事情があったとは認められないから、Y社病院が医療機関であることをもって、Xに対しHIV感染の有無を確認することが正当化されるものではない。

センシティブ情報に関する取扱いについて参考になる裁判例ですね。

解雇312(トヨタカローラ南海事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

79日目の栗坊トマト。実の数がどんどん増えてきました。

今日は、うつ病の業務起因性と解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

トヨタカローラ南海事件(大阪地裁令和元年6月4日・労判ジャーナル91号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、Y社の店舗に勤務していたXが、Y社から解雇されたが、同解雇は労働基準法19条に違反し無効であるなどとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、賃金及び賞与の支払等を求め、また、本件店舗の店長であったAからセクシャルハラスメント行為又はパワーハラスメント行為を受けてうつ病に罹患し、その後Y社担当者の不適切な行為によりうつ病が悪化したとして、Y社及びAに対し、連帯して、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償等の支払を、それぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ①Aが、本件店舗の店長として着任後、時期は不明であるが、Xに対し、数回、彼氏との性的行為があったのかどうかといった性的な発言を行ったこと、②AとB係長は、X以外の人物について、「病んでるらしいで」などと発言し、笑ったことが認められるが、①の発言の時期は不明であること、①は、身体への直接の接触を伴うような性的行為を受けたという性質のものではなく、またその回数も数回に止まること、Xは、休職より前に、Y社に対し、セクハラ行為の相談をしていないこと、②の行為は、X以外の人物に関する発言であることから、①については、厚生労働省労働基準局長発出の「心理的負荷による精神的障害の認定基準について」別表1の「〔6〕セクシュアルハラスメント」「セクシュアルハラスメントを受けた」の中の、「強」の例示に該当する程度のものとはいえず、強くても「中」程度のものと評価され、②については「弱」の例示に該当する程度のものと評価され、これらを総合的に評価しても、「強」程度の心理的負荷を有するものと認めることはできないから、Aの行為により、Xが、うつ病と診断され、出勤が困難になり、休職した旨のXの主張は採用できない

2 Xは、Xのうつ病が業務起因性を有するから、本件解雇は労働基準法19条1項に違反する旨主張するが、Xのうつ病の発病ないし悪化が、業務に起因したものとは認められず、また、復職後のXの勤怠状況は、週4日以上のペースで欠勤を続け、頻繁に早退を重ね、平成28年8月14日以降は一切出勤しておらず、また、Xの欠勤理由は、Xや子どもの体調不良のみならず、子どものキャンプあるいはキャンプに備えて休むといった用事、猫の葬儀等、理由としてやむを得ないものと判断しかねる理由も見受けられ、遅くとも同年7月後半以降、Xは、Y社に対し、労務を提供する意思と能力を欠く状況にあったことは明らかといえ、そして、Y社が、Xの復職に際して、主治医の診断書の内容を踏まえ、本社の保険業務課に配属し、始業時刻を午前10時とする特例措置を行っていることをも併せ鑑みれば、Xの勤怠状況は、解雇事由である就業規則所定の「精神又は身体の障害によって業務に耐えられないと認められ、かつ、他部署への配置転換が困難な著しく正常でない場合」に該当するとともに、Y社が、Xに対し、本件解雇を行うことは、労働契約法17条の「やむを得ない事由」があるといえるから、本件解雇は有効である。

ハラスメントが原因で休職した場合でも、その程度によっては本件のような判断がされることがあります。

解雇311(末日聖徒イエス・キリスト協会事件)

おはようございます。

68日目の栗坊トマト。前回よりも実がやや大きくなりました!

今日は、業務遂行能力不足等を理由とする降格減給及び解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

末日聖徒イエス・キリスト協会事件(東京地裁平成31年3月25日・労判ジャーナル90号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、平成28年12月21日付けで降格され、平成29年1月から賃金を減額されたことは人事権の濫用に当たり、その後更に同年6月12日付けで解雇されたことは解雇権の濫用に当たりいずれも無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件減給前の賃金との差額賃金、本件解雇後の未払賃金及び本件解雇までの一連の不法行為による慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、およそエリア・リアル・エステート・マネージャーとしての責務を果たしていない状態であったことが認められ、Y社の業務に支障を生じさせていることは、外部業者からも看取できるほどであったこと、Xの平成25年以降の人事評価は極めて低評価であったことが認められ、Y社は、Xに対し、自己都合退職するか降格減給を受け入れるかの選択肢を示し、Xの意向も踏まえて本件降格減給を行ったところ、減給は約1割に留めるものであって、本件降格減給は、Xの勤務成績や業務遂行能力、勤務態度の問題を理由に、業務遂行能力改善のため種々の方策を施した上で行われたものであって、Xを退職させようとする不当な目的に基づくものと認めることはできず、本件降格減給は、人事権の行使としてやむを得ず行われたものであり、人事権の濫用に当たらないから、Xの同意の有無について検討するまでもなく有効である。

2 本件降格減給、本件解雇は有効であり、Xを嫌悪したり、Y社から排除するために行われたものとは認め難く、また、本件アンケートは、Xについて、監査指摘事項の是正訓練を受けたFMやその他の関係職員を対象としたアンケートを実施し、本件異動後の評価資料を得ることを目的としたものであって、嫌がらせのためX自身にアンケートの文案を作成させたとまでは認め難く、さらに、部長がXに対して自身の市場価値を調べるため本件調査を指示したことは、その必要性に疑問が残るものの、宗教法人という特殊な団体における職員の評価に関して、当該職員において自身の客観的な市場価値を認識することを促したものと理解することができ、これが嫌がらせであるとか違法であるとまでは評価することができないこと等から、XのY社に対する慰謝料請求にも理由がない

降格減給も解雇同様、合理性が立証できるかが鍵となります。

また減給幅が大きくなりすぎないようにすることも有効に降格減給するために必要な視点となります。

解雇310(フジクラ事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

64日目の栗坊トマト。写真だとわかりにくいですが、ちっちゃい実がなりましたー!

今日は、退職勧奨を拒否し、配置転換された後の人事評価が不当とされた解雇が無効等と判断された裁判例を見てみしょう。

フジクラ事件(東京地裁平成31年3月28日・労経速2388号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xを労働者とし、Y社を使用者とする期間の定めのない労働契約をY社との間で締結したXが、Y社に対し、Y社がした人事評価に基づくものとする月例賃金(加給)及び賞与の各減額が無効である旨を主張して、平成26年4月から平成28年3月までの期間に係る各減額分並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまでに生ずる商事法定利率の割合による遅延損害金の支払を求め、さらに、Y社がXに対してした同月31日付けの配転命令、同年6月1日付けの出向命令、平成29年9月22日付けの戒告及び同年12月13日付けの普通解雇がいずれも無効である旨を主張して、配転先及び出向先において勤務する労働契約上の各義務が存在しないこと、当該戒告が無効であること並びに労働契約上の権利を有する地位に在ることの各確認を求めるとともに、当該解雇の後に生ずべきバックペイとしての月例賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 回答書の受取の拒絶が問題となるところ、確かに、この行為が懲戒事由に該当する余地のない問題のない行為であるとは解し難い。もっとも、これによって重大な影響がY社ないしX2に生ずるといった事情は考え難いから、このことのみをもって直ちに解雇を基礎付けるようなものということはできない。また、この行為を含めたXの行為について本件戒告処分が行われたとしても、その後に同種の行為が繰り返されたということを認めるに足りる証拠もないから、結局、当該回答書の受取の拒絶をもってXの解雇の客観的な合理的理由とみることは困難である。

2 Y社は、障碍者の雇用義務を果たすためにX2を設立したものであり、このようなX2の業務は、障碍者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進し、もって障碍者の職業の安定を図るという障碍者雇用促進法の目的にかなう重要なものであったということができる。そして、本件出向命令が発令された旨、その設立後間もないX2では、従業員の増員や事業の拡大が予定されており、早急に取り組む必要はないとしても、社印の管理、経理・購買等の様々な分野にわたる各種の規程等を整備するなどして会社としての基盤を整備し、かつ、事業の拡大について順次検討を進めていくことが求められる状況にあったと推認することができる。そうすると、本件出向命令が発令された当時、総務・経理について相当程度の知識を有し、新規事業の立ち上げへの力の発発揮を期待することができる従業員をX2に配置する業務上の必要性があったことは否定し難いところ、XがX2について求められる知識、経験及び能力を備える者に合致した者であったと評することができる。そして、本件出向命令が発令された当時、Xがうつ病や本件通勤災害のためにその健康に大きな不安を抱えていたことから、Y社において、業務量やこれに従事する時間を調整しやすい部署にXを配置する必要性が高かったと考えられる上、Y社及びY社グループ会社の中でも、X2は、その業務量等を調整しやすい部署であったと認めることができる。したがって、本件出向命令については、業務上の必要性があり、合理的な人選が行われたということができる
また、本件出向命令が減給を必ず伴うものであったものと認めることができる証拠はなく、XがX2への勤務に伴って転居したという事実もないから、本件出向命令によってXが大きな不利益を受けたということもできない
以上によれば、本件出向命令が権利の濫用したものであるとは認めることができないから、本件出向命令は、有効であるというべきである。

解雇をする際は、行為の悪質性とともにその行為によって会社に対していかなる影響が出たのかを冷静に検討する必要があります。

また段階を踏んでいくという忍耐力を要するプロセスを十分理解しておく必要があります。

解雇309(日東精機事件)

おはようございます。

62日目の栗坊トマト。2か月経ってここまで大きくなりましたー!

今日は、私用・不適切メール等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日東精機事件(大阪地裁令和元年5月21日・労判ジャーナル90号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において勤務していたXが、Y社から普通解雇されたが、同解雇は無効であるなどとして、地位確認並びに賃金(未払分及び将来分)等の支払を、同僚からいじめを受け、これをY社の元代表者を報告したにも関わらず、Y社は、何らの対応を取らずに放置し、これによって、Xは精神疾患を発病して休職を余儀なくされたとして、不法行為に基づく損害賠償等の支払を、それぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 Xの解雇事由に該当し得る事実は別紙1の番号13(Xが、インターネット上に「無能上司」等の表現を含む会社や上司に関する不満を書き込んだ)、14(Xは取引先従業員、会社従業員らに関する不満を述べるメールを送信した)、16(Xは、取引先従業員らに対し、就業時間中に不動産や年賀はがき関係等の私的な内容を含むメールを送信した)となるところ、Y社の事務所の他の社員も、就業時間中に、画像を添付したメールを送信していることが認められ、上司等に対する不満を抱いてあだ名をつけたり、就業時間中に業務と直接関係ないメールを送信したりすることは会社の企業全体の体質としての問題とも言い得ること、Y社が、Xに対し、別紙1の番号13、14、16の事実について指摘した上で、注意を与えたが、Xの行状が改善しなかったといった事情を認めるに足りる的確な証拠も認め難いことからいえば、本件解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとは認め難いから、本件解雇は無効である。

2 XとY社との間に、黙示的にせよ退職合意が成立したと認める余地はなく、また、Xが解雇予告手当を返金しているのは、解雇を拒絶していると解するのが合理的であり、当該事実や、その後3年間、雇用継続の有無を確認する措置を講じなかったことをもって、XとY社との間で黙示の退職合意があったと認めることもできない。

3 Y社が、Xの休職までの間に、X主張の他の従業員らの行為について調査をしなかったとしても、それが直ちにY社のXに対する不法行為を構成するとまではいえないし、Y社が何の対策も取らなかったため、Xが休職するに至ったとも認められず、また、Xと、他の従業員4名との間に、高さ約180㎝のパーティションが設置されたことが認められるが、当該パーティションの設置によって、Xが精神疾患を発病したと認めることはできないこと等から、XのY社に対する不法行為に基づく損害賠償請求には理由がない。

いろいろと問題があったことが推測できますが、解雇の手順としては不十分と言わざるを得ません。

解雇308(協同組合つばさ事件)

おはようございます。

56日目の栗坊トマト。花が咲きそうになっています!

今日は、職場の秩序を乱したことを理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

協同組合つばさ事件(東京高裁令和元年5月8日・労判ジャーナル90号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間の雇用契約によりY社の被用者として稼働していた元職員Xが、Y社から解雇の意思表示を受けたところ、この解雇が無効であるとして、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び賃金の支払いを求めたところ、原判決が、Xの請求をいずれも棄却したため、Xが控訴した事案である。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xの警察への通報(警察に対し、自らがY社の職員であることを説明せず、女性の技能実習生が男に拉致されそうだという虚偽の通報をしたもの)は、Y社の信用を毀損し、又はその業務を妨害するもので、Xが監査結果報告書(入国管理局に提出するもの)を持ち出したことはY社の業務を妨害するものであり、さらに、Xは明示の職務命令に反して外出した上、Y社に敵対的な感情を明らかにし、Y社の職場の秩序を乱したものであって、その内容に照らせば、いずれもその程度は強いものというべきであるから、解雇をするについての客観的に合理的な理由があると認められ、そして、Y社の業務を妨害し、その信用を毀損する警察への通報を繰り返したこと、監査結果報告書を持ち出してY社の業務を妨害したこと、明示の職務命令に反して外出し、Y社に敵対的な感情を明らかにし、Y社の職場の秩序を乱したことによれば、これらの言動によってY社とXとの信頼関係は完全に失われていたといわざるを得ず、個別的な指導等によってもXがY社の職務に戻ることについては社会通念上相当なものと認められるから、解雇権を濫用したものとはいえず、本件解雇は有効である。

大切なのは、このような行為をいかに立証するかということです。

日ごろから記録を残すことを意識することがポイントです。