Category Archives: 解雇

解雇332(本多通信工業事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、不正ダウンロード等を理由とする懲戒解雇等の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

本多通信工業事件(東京地裁令和元年12月5日・労判ジャーナル100号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、譴責、減給並びに諭旨退職及び懲戒解雇の各懲戒処分の無効確認を求めるとともに、労働契約に基づき、未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件懲戒解雇の有効について、本件メールは、Y社の代表取締役等の役員を誹謗中傷し、これらの者や賞罰委員会の構成員を威嚇又は挑発する内容のものというべきであり、また、Xは、Y社からの度重なる指示に従わず同様の行為を繰り返しており、Xが本件メールを送信した行為は、就業規則所定の「他人を中傷または誹謗し名誉・信用を傷つけ損ないもしくは秩序を乱す流言飛語を行ったとき」、「経営に著しく非協力なとき、もしくは業務上の指揮命令に不当に反抗し誠実に勤務しないとき」、「その他、再三注意するも規律、義務に違反したとき」に該当するというのが相当であり、また、Xは、私用であるヤフーメールにアクセスし、ヤフーメールを作成中の状態にした上で、ヤフーメールの添付ファイルとして、X社内パソコンの「PC纏め」という名のフォルダから、Y社の社内情報(Xの給与明細、Y社の経営方針、暗証番号等)をアップロードし、アップロードを完了した。当該アップロードは、就業規則所定の「経営に著しく非協力なとき、もしくは業務上の指揮命令に不当に反抗し誠実に勤務しないとき」、及び「その他、再三注意するも規律、義務に違反したとき」に該当するというのが相当である。

ポイントは、「度重なる指示に従わず同様の行為を繰り返しており」という点です。

解雇331(MAIN SOURCE事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、試用期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

MAIN SOURCE事件(東京地裁令和元年12月20日・労判ジャーナル100号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、試用期間中に行われたY社による解雇が無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金支払請求として平成30年8月以降本判決確定日まで毎月10日限り月額20万円(ただし,平成30年7月分については既払額を控除した残額である19万0480円)+遅延損害金の支払を求め、併せて、本件解雇が不法行為に該当し、また、Y社には職場環境配慮義務違反があると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、作業日報の記載方法や記載内容について説明を受けていたにもかかわらず、作業日報の問題点欄や今後の対策欄に何の記載もしなかったり「なし」とのみ記載したり、予定作業内容欄に簡略な記載しか行わないなど、Y社が求める記載方法や記載内容とは異なる方法で作業日報を作成しており、これについてBマネージャーやCからの指示、指導がされても改善されないといったことがあったことに加え、作業日報の作成時間等を巡ってY社側と意見を対立させた挙句、平成30年6月1日にはY社代表者に対して原田メソッドがXの思想良心の自由を侵害する違法なものであるから紹介をやめるよう求め、意見を聞き入れなければ訴える等と告げているのであって、BマネージャーがXの作業日報に記載しているXに対する肯定的な評価を踏まえても、Xに協調性がないとY社が判断したことはやむを得ないものといえる。
加えて、XがY社への就職内定後、Y社から借りた本件トラックを使用中に、結果として100万円以上の損害をY社に被らせた本件物損事故を起こしたにもかかわらず、事故後速やかな警察への連絡も、Y社への連絡、報告、相談も行っておらず、その後、本件トラックの損傷状況がY社に明らかになった後も、Y社からの要請があって初めて具体的な事故状況の報告を行ったり、本件物損事故の現場の調査を行っているといった不十分な対応しかとっていないことを、その後のXの作業日報に関するやりとりと併せて考えれば、Y社において大切なこととされている「報告・連絡・相談」をXが適切に行うことができないものと評価することもやむを得ないといえる。

2 Y社における業務内容が、複数の工程を限られた従業員(平成30年9月当時の従業員数は9人にすぎない)で分担して行うものであって、また、作業内容が技術的事項にわたるものであってOJTによる習熟を前提としていることからすれば、協調性や、適切な報告・連絡・相談の実施は、Y社の従業員として求められる適性であると解されるのであって、平成30年4月16日の採用内定後に発覚した上記事情によりXが上記適性を欠くと評価できる以上、Y社が留保解約権を行使することには客観的に合理的な理由が存在し、また、上記経緯に照らせば、その行使は社会通念上も相当と認められる。

3 Y社は原田メソッドの考え方をY社の経営理念、経営方針に取り入れているにすぎず、また、作業日報は、Y社従業員の作業実態を踏まえ、各従業員の作業内容及び進捗状況の確認、作業時間、作業結果等に基づく習熟度の把握、業務の効率化等の就業意識の向上等を目的として作成を義務付けられているものであり、求められている記載内容も、Y社従業員において、日々の業務において気づく力を養い、自らの技術の精度を向上させ、より質の高い製品の製作を実現するとともに、各従業員を自立型社員へと育成するためのものであって、営利企業であるY社において上記目的をもって上記記載を求めることは必要なものと言えるから、不要、困難な記載を求めるものでも、思想良心の自由を侵害するものでもない。その他に、Y社が職場環境配慮義務に違反していることを認めるに足りる証拠はない

上記判例のポイント1のような事情についてしっかり証拠化しておくことが大切です。

解雇330(大阪府事件)

おはようございます。

今日は、適格性欠如等を理由とする分限免職処分取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

大阪府事件(大阪地裁令和2年2月26日・労判ジャーナル99号28頁)

【事案の概要】

本件は、大阪府知事が、大阪府知事の職員であったXに対し、平成26年3月19日付けで分限免職処分を行ったため、Xが、大阪府に対し、本件免職処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成18年4月17日から平成24年3月31日までの間及び同年4月1日から同年9月30日までの間の勤務実績は、いずれも不良というほかなく、適格性の欠如もうかがわれる状況にあったといえる。
そして、Xが、上記期間に6か所の職場で業務を担当しており、その都度、上司らから指導や注意を繰り返し受けていたが状況はさほど改善したとは評価できないこと、Xに対して個別能力向上研修や個別指導研修が実施されたものの、Xはこれらの研修に真摯に取り組むことがなく、改善が見られなかったこと、Xは、平成25年12月9日以降、適正な手続によらずに欠勤し、また、産業医との面談に応じるよう命じる職務命令に違反している状態を解消する旨を求められ、更には本件条例6条4項に基づき、分限免職処分が行われる可能性があることの警告を二度受けておきながら、かかる状態を解消する対応をしていない
以上のXの勤務状況ないし働きかけに対する対応状況等を踏まえると、Xには、簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる蓋然性が高いと認められ、職員として必要な適格性を欠くと認められるから、本件では、地方公務員法28条1項1号及び同3号に該当する事由があるといえる。

2 Xは、長期間にわたって勤務実績がよくない状態が継続しており、研修の機会を通じて業務遂行能力の向上を図る意欲を示すこともなく、平成25年12月9日以降、適正な手続によらずに欠勤し、また、産業医との面談に応じるよう命じる職務命令に違反している状態を解消する姿勢もみせていない
本件免職処分について、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいてされた事情は本件記録上窺われない。また、本件免職処分は、上述したXの勤務実績や勤務態度を理由としてなされたものであると認められること及び複数の職場での勤務実績や研修の結果を踏まえて判断されていることを踏まえると、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されたとも解されない。
その他、本件免職処分が、二度にわたる警告を経た上で行われたものであることを併せ考慮すると、免職処分を選択する判断が、合理性をもつものとして許容される限度を超えたものということはできないから、分限処分における裁量権行使の逸脱又は濫用は認められず、本件免職処分は違法であるとはいえない。

上記判例のポイント1のようなプロセスを経ることが大切です。

根気強さが求められますが、これができるかどうかが勝敗を決します。

解雇329(東芝総合人材開発事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、業務命令違反による解雇の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

東芝総合人材開発事件(東京高裁令和元年10月2日・労判1219号21頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、懲罰目的又はいじめ・嫌がらせ目的の業務指示に従わなかったことを理由にされた解雇は無効である等として、Y社に対し、①地位確認、②バックペイとして、平成28年2月から、毎月末日限り、31万3808円+遅延損害金、③賞与として、平成28年7月から、毎月7月及び12月の各月末日限り、48万1000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原判決は、Xの請求のうち、判決確定後の金銭支払請求については将来請求の必要性がないとして訴えを却下し、その余の請求をいずれも棄却した。

これを不服とするXが控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xが担当を命じられたマーシャリング作業については、Xの従前の担当業務と比較すると、難易度が著しく低い単純作業であると認められる。他方において、マーシャリング作業の従前の担当者(実技担当者)に多忙による業務軽減の必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。しかしながら、問題行動を起こした従業員が、問題行為の性質上、従前の担当業務を担当させられない場合において、業務軽減の必要のない他の従業員の担当業務の一部を担当させることを、その一事をもって懲罰目的であるとか、難易度が低く業務上必要のない過小な行為を行わせるものとしてパワーハラスメントに該当するとかいうには、無理がある

2 反省文には、「上に立つ方の力量のなさとしかいえない私にもどうしようもないやり方や結果が多々あり」など、Xの意見、不満をにじませた記載がある。この時点においては、Xについては、今後も組織規律を乱す言動を行いかねないという大きなリスクを抱えた人材であると評価せざるを得なかったもので、従前業務に復帰させなかった判断は誠にやむを得ないものである。また、一般教養科目の講師業務は、まさに外部(派遣元から派遣された訓練生)と直接接触する業務であって、Xに担当させないこともやむを得ない業務である。

問題行動の内容によって、配置転換(業務内容の変更)の際に今回の裁判例が参考になります。

いずれにしても問題行動の内容、頻度、指導教育内容等を証拠として残しておくことが肝要です。

解雇327(学校法人A学園(試用期間満了)事件)

おはようございます。

今日は、コミュニケーション能力不足等を理由とした試用期間満了時の解雇が有効とされた裁判例を見ていきましょう。

学校法人A学園(試用期間満了)事件(那覇地裁令和元年11月18日・労経速2407号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、学校法人であるY社に日本語教師として採用されたところ、延長後の試用期間満了時に、主としてコミュニケーション能力の不備を理由に解雇されたが、債権者は必要なコミュニケーションをとり、また、このような指導はほとんど受けていなかったのであるから、同解雇には客観的合理性がなく、社会通念上相当ともいえないから無効であるとして、Xが、Y社に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることの仮の確認並びに解雇された平成30年12月から令和元年7月分の賃金及び同年8月分以降、本案判決確定の日までの賃金の仮払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

本件申立てをいずれも却下する。

【判例のポイント】

1 ・・・上記の一連のやり取りだけでも、Z1及びZ2副学長が様々な角度からXのコミュニケーション上の問題点を伝えようとしているにもかかわらず、Xは自身の問題点を省みる姿勢に乏しく、話し手の意図を正しく受け止められなかったり、言葉尻を捉えた反論に終始して論破しようとしたり、議論の前提を踏まえた会話ができなかったり、自身の意見に固執する姿勢が見て取れる。このようなXの応答にZ1とZ1副学長は対応に苦慮していたが、Xはそのことすら認識していたか疑わしい
Y社は、本件会議の後、Xがミーティングの場で最低限の発言すらしようとせず、素っ気ない態度に終始したと主張しているが、前記のとおりのXのコミュニケーション上の問題点に加え、Xは、日本語ランチテーブルのミーティングで反対意見を述べたこと自体がZ1及びZ2副学長によって失礼と取られたと憤慨し、本件準備書面で、意見を述べたこと自体が失礼と扱われて不当であり、このため発言を控えるようにしていたと主張していることからすると(なお、Z1及びZ2副学長は、発言内容やその伝え方を問題にしているのであって、反対意見を述べること自体を咎めているわけではなく、むしろ、積極的に意見を交わすべきと伝えている。)、Y社の主張に近い状況にあったことが窺える。このような状況では、XがZ1に友好的な対応をとるとは考えにくいから、Xは、ミーティング以外でもZ1やXと非友好的な同僚とは積極的なコミュニケーションをせず、むしろ、自身が許容されると考える中で最低限度のコミュニケーションに終始したことが推認できる

2 Xのコミュニケーション及び上司や同僚との関係構築に向けた姿勢には数々の問題点があり、上記のとおり必要なコミュニケーションがとれず、むしろ試用期間の延長によって悪化したことが認められる一般的に本採用を目指して必要以上に努力し、同僚に気を遣いがちな試用期間ですら、Xは上司や同僚との間で種々の軋轢を生じさせてしまったといえる。これらの問題点は、いずれも試用期間を経て初めて発覚し得るものであるといえ、上記の経過によれば、Xが上司からの指導等によって上記の問題点を改善できる見込みは薄い。Y社が雇用を継続していれば、Xのコミュニケーション上の問題によって更に職場環境が悪化していくことが容易に想像できることからすると、本件の雇用が2年間の期間限定であることを考慮しても、債務者が試用期間終了をもって解雇を選択したこともやむを得ないといえる。

解雇を過度に制限的に考える裁判官に当たると、ほとんど非現実的な解雇回避努力を求められることがありますが、今回はそうではなかったようです。

実務においては、日頃のやりとりをいかに証拠化できるかが勝敗を大きく左右します。

解雇326(ヤマダコーポレーション事件)

おはようございます。

今日は、試用期間満了時まで指導を継続せず決定した本採用拒否が有効と判断された事案を見てみましょう。

ヤマダコーポレーション事件(東京地裁令和元年9月18日・労経速2405号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に正社員として採用されたXが、Y社から試用期間満了により解雇されたが、Y社による解雇は無効であるとして、Y社に対する雇用契約上の地位確認及び解雇時からの未払賃金の支払とともに、不当解雇等による不法行為ないし債務不履行に基づく損害の賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xには協調性に欠ける点や、配慮を欠いた言動等により、Y社の車内関係者及び取引先等を困惑させ、軋轢を生じさせたことなどの問題点があり、Y社の指導を要する状態であったと認められる。
そして、試用期間中の解雇は、本採用後の解雇より広汎に許容されることに加え、試用期間が3か月間と設定され、時間的制約があることにも鑑みれば、比較的短期間に複数回の指導を繰り返すことを求めるのは、使用者にとって必ずしも現実的とは言い難いところ、現に、Xの上司であるZ12室長やZ5課長が、入社から2か月目面談の実施まで、Xの上記問題点を改めるべく、機会を捉えてXに対する相応の指導をするも、それに対するXの反応や態度等を踏まえると、上記問題点に対するXの認識が不十分であるか、Xが指導に従う姿勢に欠ける等の理由で、改善の見込みが乏しい状況であったことが認められる。
さらに、XのITの専門家としての経歴及びY社における採用条件や職務内容、Xと他部署との関係等を考慮すると、Y社において、Xについて配置転換等の措置をとるのは困難であり、かつ、前述したXの問題点は、配置転換をすることにより改善が見込まれる性質のものでもないこと、Y社が主張する解雇事由は、結局のところ、Xの勤務に臨む姿勢や態度といった根本的で重大な問題を含むものであって、係長としての管理職の資質に関するものであると解されること、Xは当時試用期間中であり、Y社への入社までにすでに3年に勤務しており、システムエンジニアとして約27年間の社会人経験を経ているのであって、上司からの指導を受けるなど、改善の必要性について十分認識し得たのであるから、改めて解雇の可能性を告げて警告することが必要であったともいえないことなどの事情に加え、Y社の取引先との関係悪化等の上記事実関係からすると、深刻又は重大な結果が生じなかったとしても、Xの雇用を継続することにより、今後、Y社側の経営に与える影響等も懸念せざるを得ないことなどを総合的に考慮すると、Y社が、試用期間中である同年11月30日の時点において、試用期間の満了までの残り2週間の指導によっても、Xの勤務態度等について容易に改善が見込めないものであると判断し、試用期間満了時までXに対する指導を継続せず、Xには管理職としての資質がなく、従業員として不適当である(就業規則39条1項)として、Xの本採用拒否を決定したことをもって、相当性を欠くとまではいえない

裁判所がいかなる要素を重視して判断するか参考になりますね。

解雇325(日本郵便事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、金員の不正授受を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本郵便事件(令和2年1月31日・労判ジャーナル97号10頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に郵便局長として勤務していたXが、定年退職間際にY社から懲戒解雇されたことについて、本件懲戒解雇は客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当とはいえないから、権利濫用として無効となるなどと主張して、Y社に対し、定年退職したことを前提とする退職手当約635万円等の支払を求めるとともに、定年退職後も同年4月から平成28年3月まで再雇用されていたことを前提とする賃金合計約568万円及び賞与合計約189万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却
→懲戒解雇有効

【判例のポイント】

1 Xは、平成22年1月頃から平成27年1月頃までの間、郵便局長採用試験を経て大阪市南部地区の郵便局長に採用された者合計9名に対し、同試験の受験時又は採用通知後に、紹介料と称して金員の支払等を要求し、商品券合計210万円分を受け取ったほか、ある団体の会費として現金をX指定口座に振り込ませるなどしたことが認められるところ、本件行為は、Y社の郵便局長に採用されるためには、金品の授受が必要であるとの誤解を生じさせ、ひいては郵便局長の採用選考の公正性に強い疑問を生じさせ、その結果、郵便局という公共性の高い機関の長として、高い清廉性が求められる郵便局長の職務ないし職務上の地位に対する信用を著しく毀損するものであるといえるから、本件就業規則所定の懲戒事由に当たり、以上のような本件行為の性質及び態様その他の事情に照らせば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠くとはいえず、また、社会通念上も相当であると認められるから、これが権利を濫用したものとして無効になるとはいえない

2 本件行為の性質及び態様その他の事情、とりわけ、本件行為がXのY社における勤続期間11年の約半分に当たる5年間にわたり反復して継続的に行われてきたこと、これによってXが得た利益は400万円近くという多額に上ること、本件行為が発覚しなければ、郵便局長らによる指定口座への振込送金は引き続き行われていた可能性が高いといえることに照らせば、Xの本件行為は、XのY社における約11年にわたる勤続の功を抹消するほどの重大な不信行為であるといえるから、Y社が本件懲戒解雇を受けたXに対して退職手当規程に従い退職手当を支給しなかったことが不相当とはいえない。

上記判例のポイント1からすれば、退職金不支給は相当であると思いますが、ときどき、「え!こんなことしていても退職金出るの?」という事案があるので、労働者側としてはチャレンジしてみたくなってしまうのです。

解雇324(中村工業事件)

おはようございます。

今日は、解雇の意思表示と解雇予告手当等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

中村工業事件(大阪地裁令和2年1月16日・労判ジャーナル97号20頁)

【事案の概要】

本件は、土木工事業等を目的とするY社の元従業員Xが、Y社に対し、労働基準法20条1項に基づき、解雇予告手当約41万円等の支払、Y社による解雇がXの権利又は法律上保護に値する利益を侵害したとして、不法行為に基づき、慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇予告手当等支払請求は一部認容

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 解雇の意思表示の有無について、Xの賃金が毎月末日締め翌月6日払いであったことに加え、Xが平成29年4月以降平成31年3月まで毎月20日前後勤務していたこと、Y社がその間のXの労働時間・出勤状況等をタイムカードや出勤簿兼賃金計算簿によって管理していたことが認められ、これらの事実からすれば、XとY社との間の労働契約は、日雇ではなく、継続的なものであったものと認められ、そして、Y社代表者がXに対し、平成31年3月30日、「もう来てもらなくてよい」旨伝えたことによれば、Y社は、Xに対し、同日、解雇の意思表示をしたものと認めるのが相当である。

2 XがY社に対し、解雇から間もない令和元年5月29日に解雇を理由とする損害賠償請求を求める労働審判手続申立てを行っている(労働契約上の権利を有する地位の確認は認めていない)ところ、XとY社との間の労働契約が継続したのが締結から約2年間にとどまること、Xが解雇直後の平成31年4月以降、Y社以外の設備会社や友人のところで働いている旨認めていることも考慮すると、Y社による解雇により、損害賠償請求を認めるほどのXの何らかの権利又は法律上保護に値する利益侵害があったとまでは認められず、また、Y社に故意又は過失があったとも認められない

解雇の効力を争う場合に、地位確認ではなくあえて不法行為に基づく損害賠償請求を選択する理由はありません。

仮に心底復職する意思がない場合でも、要件、効果のいずれの点でも前者を選択するのが得策です。

解雇323(JFS事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、懲戒解雇と就業規則の存在に関する裁判例を見てみましょう。

JFS事件(大阪地裁令和元年10月15日・労判ジャーナル95号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社と雇用契約を締結し稼働していたところ、Y社から懲戒解雇されたが、同解雇は無効であるとして、地位確認、未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件契約の性質について、c専務が、Y社の規程として研修期間があるので、役員の場合は給料が45万円だがそれより5万円アップの50万円で、3か月だけは様子は見よう、それでだめなときは契約しませんよという話をXにしたこと等から、「3か月」というのは、試用期間であり、Y社代表者が、平成29年12月28日に、Y社訴訟代理人に対し、Xに対する解雇通知を出してほしいと相談し、その意を受けて、Y社訴訟代理人が、Xに対し、「誓約書(入社時)」に違反したことを理由とする懲戒解雇の意思表示として本件内容証明郵便1を送付したこと、以上の点を併せみれば、Y社代表者自身の認識及び行動に基づいてみても、XとY社との間の本件契約は、試用期間付き雇用契約であるとみるほかない

2 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するところ、Y社が、Xに対し、懲戒解雇の意思表示をした当時、Y社に就業規則が存在しなかったことについては当事者間に争いがないから、Y社のXに対する平成29年12月28日付け及び平成30年2月9日付けの懲戒解雇の意思表示は、いずれも懲戒権の根拠を欠き、無効というべきであるから、Xの地位確認請求は理由がある。

前記判例のポイント2は、初歩中の初歩のレベルの話です。

しっかり、顧問弁護士・顧問社労士の指導の下で労務管理をしましょう。

解雇322(ゴールドマン・サックス・ジャパン・ホールディングス事件)

おはようございます。

今日は、中途採用のアナリストに対する本採用拒否の適法性に関する裁判例を見てみましょう。

ゴールドマン・サックス・ジャパン・ホールディングス事件(東京地裁平成31年2月25日・労判1212号69頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのない労働契約を締結してその労働に従事していた労働者であるXが、使用者であるY社がXを解雇したこと(主位的には試用期間の満了に伴う普通解雇であり、予備的には事業の縮小等に伴う普通解雇である。)について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たり、無効である旨を主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位に在ることの確認並びに当該解雇の後に生ずるバックペイとしての未払賃金+遅延損害金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、いわゆる大学新卒者の新規採用等とは異なり、その職務経験歴等を生かした業務の遂行が期待され、Y社の求める人材の要件を満たす経験者として、いわば即戦力として採用されたものと認めるのが相当であり、かつ、Xもその採用の趣旨を理解していたものというべきである。

2 解約権の行使の効力を考えるに当たっては、上記のようなXに係る採用の趣旨を前提とした上で、当該観察等によってY社が知悉した事実に照らしてXを引き続き雇用しておくことが適当でないと判断することがこの最終決定権の留保の趣旨に徴して客観的に合理的理由を欠くものかどうか、社会通念上相当であると認められないものかどうかを検討すべきである。

3 BVPがCリーダーやD代理に対して平成27年8月19日からXの業務遂行の状況やミスの発生の状況等を記録して組織的に共有するように指示をしているところ、毎営業日についてその記録が取られており、少なくとも同日以後は、毎営業日についてXが少なくない数の業務遂行上のミスをしているものである。また、同日より前の時期についても、詳細かつ具体的な記録が取られていたわけではないものの、BVPは、その陳述書及び証人尋問において、Xの業務遂行の状況等の記録を取り始めるように指示をした契機について、Xの仕事上のミスが多く、このままでは業務に支障が生ずる旨の報告をA氏から受けたことにある旨を陳述しているところ、この陳述の内容は、客観的な経緯に整合するものとして採用することができるから、同日より前の時期についても、上記に認定した同日以降の状況と同様に、Xが業務遂行上のミスを少なからずしていたものと推認するのが相当である。

上記判例のポイント3の流れは、労務管理上、大変参考になります。

訴訟に発展することを想定して準備をすることが大切です。