Category Archives: 賃金

賃金191(清和プラメタル事件)

おはようございます。

今日は、早出時間と固定残業代の成否に関する裁判例を見てみましょう。

清和プラメタル事件(大阪地裁令和元年8月22日・労判ジャーナル93号22頁)

【事案の概要】

本件は、プラスチック製品の製造、加工及び販売等を目的とするY社の元従業員XがY社に対し、労働契約に基づき、未払の時間外割増賃金等計約148万円等の支払、また、労働基準法114条に基づき、上記未払賃金のうち約84万円と同額の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 割増賃金等(固定残業代)支払の有無について、Y社は、Xに対し、平成27年4月頃、所定の始業時間(午前8時)より早く出勤する早出時間について、固定残業手当として月額5万円の「その他手当」を支給し、午後5時以降の時間を別途残業時間として算定することを説明し、その了解を得た旨主張するが、「その他手当」の名目からはその性質がわからない上、それが固定残業代であることを示す契約書や就業規則等の定めは存しないし、また、Xが平成27年5月頃に残業手当がないことについて質問していることからすると、その時点でXが「その他手当」を残業代であると認識していなかったことが窺われ、さらに、Xの労働実態に差がないにもかかわらず、平成27年3月以前の残業手当の額より同年4月以降の残業手当と「その他手当」の合計額が相当程度高くなっていることからしても、「その他手当」に従前の残業手当以外のものが含まれることが窺われること等から、Y社による割増賃金等(固定残業代)支払の主張は理由がない。

また固定残業制度の運用ミスです。

もう裁判所の判断が固まってきていますので、奇を衒わず、有効要件を意識すれば、それほど難しい問題ではありません。

弁護士・社労士に相談して、正しく運用するくせをつけましょう。

賃金190(富国生命保険事件)

おはようございます。

今日は、総合職加算及び勤務手当が法内残業の対価であると認められた裁判例を見てみましょう。

富国生命保険事件(仙台地裁平成31年3月28日・労経速2395号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結し、総合職として勤務したXが、退職後にY社に対し、在職中に時間外労働をしたと主張して、賃金請求権に基づく割増賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、上記割増賃金の不払について労働基準法114条に基づく付加金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、17万0063円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 内務職員給与規定において、総合職加算についても、勤務手当についても、その支給対象者は法内残業時間に対する時間外勤務手当の支給対象外とされていることに照らすと、総合職加算も勤務手当も、法内残業時間に対する時間外勤務手当としての性質を有していると解するのが相当である。
この点、Xは、Xのように法内残業が恒常化している者の場合には、総合職加算の額も勤務手当の額も法所定の残業代に満たないから、これらを法内残業手当とみることはできないと主張する。
しかしながら、所定労働時間を超えていても、法定労働時間を超えていない法内残業に対する手当については、労働基準法37条の規制は及ばない。また、所定労働時間内の労働に対する対価と所定労働時間外の労働に対する対価を常に同一にしなければならない理由はないから、清算の便宜等のために残業時間にかかわらず法内残業手当の額を固定した結果、法内残業をした日の多寡によっては、法内残業に対する時間当たりの対価が、所定労働時間内の労働に対する時間当たりの対価を下回る結果となったとしても、それだけで直ちに違法ということはできない

各種手当に関するルールをしっかり理解して運用すれば、裁判所はしっかり認めてくれます。

賃金189(飯島企画事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、実際の時間外労働時間数との間に相当程度の差異がある時間外手当が固定残業代として有効とされた裁判例を見てみましょう。

飯島企画事件(東京地裁平成31年4月26日・労経速2395号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結した労働者であるXが、Y社に対し、①時間外労働等に係る割増賃金+遅延損害金、②労働基準法114条に基づく付加金+遅延損害金、③月例賃金の減額に同意していないとして、減額前後の月例賃金の差額分合計26万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件雇用契約における時間外手当は、本件雇用契約締結当初から設けられたものであり、その名称からして、時間外労働の対価として支払われるものと考えることができる上に、実際の時間外労働時間を踏まえて改定されていたことを認めることができる
これらの事実によれば、時間外手当は、時間外労働に対する対価として支払われるものということができ、また、時間外手当と通常の労働時間の賃金である基本給とは明確に区分されているから、時間外手当について、有効な固定残業代の定めがあったということができる。

2 これに対し、Xは、固定残業手当について、時間当たりの単価や、予定する時間外労働等に係る時間数が示されていないため、通常の労働時間の賃金である部分と時間外労働に対する対価である部分とが明確に区別されていないと主張する。
しかし、有効な固定残業代の定めであるためには、必ずしもXが指摘する各点を示すことは必要ないと解されるので、Xの上記主張を採用することはできない。

3 Xは、Y社が主張する実際の時間外労働に係る時間数と、上記の時間数が著しく異なるため、時間外手当は、時間外労働の対価としての性質を有しないとも主張する。そして、確かに、Y社が給与計算において考慮した時間外労働等に係る時間数と、上記時間数は相当程度異なるが、上記の各事実が認められることのほか、Y社の給与計算においてコース組みに要した時間が含まれていないこと、Y社の給与計算によっても平成28年2月16日から同年3月15日の間に38時間以上、平成30年1月16日から同年2月15日の間に47時間以上時間外労働をしていたことを考慮すると、上記判断は左右されない。

最近は、上記判例のポイント2のような判断が主流ですね。

賃金188(狩野ジャパン事件)

おはようございます。

今日は、長時間労働に従事させたことに対し、疾患未発症でも損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

狩野ジャパン事件(長野地裁大村支部令和元年9月26日・ジュリ1539号4頁)

【事案の概要】

Xは、Y社と、平成24年5月ないし6月に無期労働契約を締結し、Y社の製麺工場で小麦粉をミキサーに手で投入する作業等を行っていた。

Xは、平成27年6月から平成29年6月までの間、平成28年1月と平成29年1月を除く全ての月で月100時間以上(平成28年1月と平成29年1月も月90時間以上、長いときには月160時間以上)の時間外等労働を行っていた。

Xは、Y社に対し、①時間外、休日、深夜労働等に対する未払賃金、②労基法114条に基づく付加金、③長時間労働による精神的苦痛に対する慰謝料等の支払いを求めて提訴した。

【裁判所の判断】

請求一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、2年余にわたり、長時間の時間外等労働を行った。Y社は36協定を締結することなく、または、法定の要件を満たさない無効な36協定を締結して、Xを時間外労働に従事させていた上、タイムカードの打刻時刻から窺われるXの労働状況について注意を払い、Xの作業を確認し、改善指導を行うなどの措置を講じることもなかったことによれば、Y社には、安全配慮義務違反があったといえる。

2 Xが長時間労働により心身の不調を来したことを認めるに足りる医学的な証拠はないが、Xが結果的に具体的な疾患を発症するには至らなかったとしても、Y社は安全配慮義務を怠り、2年余にわたり、Xを心身の不調を来す危険があるような長時間労働に従事させたものであるから、Xの人格的利益を侵害したものといえる。Xの精神的苦痛に対する慰謝料は、30万円をもって相当と認める。

上記判例のポイント2は押さえておきましょう。

金額は大きくありませんが、担当裁判官によってはこのような事案でも未払賃金の他に慰謝料も認めます。

賃金187(東洋テック事件)

おはようございます。

今日は、未払割増賃金等支払請求と供託に関する裁判例を見てみましょう。

東洋テック事件(大阪地裁令和元年7月4日・労判ジャーナル92号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員らが、Y社に対し、労働契約に基づき、それぞれ平成24年10月から、元従業員Cについては平成26年7月まで、元従業員Bについては同年8月まで、元従業員A及びDについては同年10月まで、それぞれ毎月25日を支払期日とする労働基準法37条1項所定の割増賃金等の支払、同法114条に基づく付加金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 1か月以内の期間の変形労働時間制は、法定労働時間の規定にもかかわらず、特定の日又は特定の週において、法定労働時間を超えて、労働者に労働させることができるとするものであるから、変形労働時間制が労基法の要件を満たさず、その効力を生じない場合には、法定労働時間を超えて、労働者に労働させることができなくなるにとどまるものであって、当事者間の契約内容となっている月間の所定労働時間数に影響を及ぼすものではないと解するのが相当であるところ、本件では、元従業員らは、無効とされる1か月以内の期間の変形労働時間制によって定められた勤務シフトに従って、勤務をしているが、Y社が、給与規則中の割増賃金額の計算や、労働組合との労使協定の締結において、月所定労働時間数が163時間であることを前提としていることに照らすと、Y社とその従業員との間の契約内容は、月所定労働時間数が163時間となり、かかる内容は、変形労働時間制が無効であっても影響を受けるものではないから、労働基準法施行規則19条1項4号にいう「月における所定労働時間数」は、本件の場合、163時間であると認められる。

2 Y社は、元従業員らに対して支払うべき割増賃金額全てにつき、供託を行っているから、Y社は元従業員らに対する割増賃金等の支払債務を免れることができる。

変形労働時間制を採用しつつ、法定の要件を満たしていない会社は山ほどあります。

固定残業制度と同様、やるのであれば、中途半端にやらないことがとても大切です。

賃金186(メディカルマネージメントコンサルタンツ事件)

おはようございます。
96日目の栗坊トマト。もうそろそろ終了ですかね。

今日は、固定残業代としての賃金増額とその後の減額の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

メディカルマネージメントコンサルタンツ事件(大阪地裁令和元年7月16日・労判ジャーナル92号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で勤務している従業員Xが、平成27年10月分からの基本給増額分が、平成28年10月支払分の賃金から減額されたが、同減額は無効であるなどとして、減額分の賃金(基本給及び賞与の減額分)等の支払を求め、時間外労働に対する賃金が支払われていないとして、未払時間外手当等の支払を求めるとともに、労働基準法114条本文に基づく付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

賃金減額分等支払請求認容

未払賞与等支払請求一部認容

未払割増賃金等支払請求認容

付加金等支払請求一部認容

【判例のポイント】

1 平成27年9月分までのXの給与支払明細書には、基本給が18万円である旨記載され、試用期間が経過した平成27年10月分以降のXの給与支払明細書には、基本給が20万円である旨記載されていることが認められ、そして、Y社代表者は、平成27年10月分からの基本給の増額について、Xに対し、「試用期間も終了して・・・残業していただくことになるから・・・残業代も込みで2万円増額しますという臨時昇給の旨を申し渡し」たと供述するところ、同供述によれば、当該2万円の増額は、残業代込みでの臨時昇給であると認められ、そうすると、平成27年10月分からの基本給の増額分には、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とが混在していることになるから、上記基本給の2万円の増額全部が残業代見合いのものであると認めることはできないし、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することもできないから、平成27年10月分からの基本給2万円の増額分は、残業代であるとみることはできず、給与支払明細書記載のとおり、基本給であるとみるほかないから、Xの、Y社に対する、平成28年10月分以降の基本給2万円の減額分の未払賃金の請求は、理由がある。

いつもながら固定残業制度の運用ミスです。

そんなに難しくないのですが、まだまだ単純なミスがとっても多いです。

賃金185(KSP・WEST事件)

おはようございます。

81日目の栗坊トマト。現在、実が4つできています。

今日は、当直時間帯の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。

KSP・WEST事件(大阪地裁令和元年5月30日・労判ジャーナル91号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、労働契約に基づき、平成27年10月から平成28年9月まで毎月20日を締日とし、翌月5日を支払期日とする労働基準法37条1項所定の未払割増賃金合計約602万円等の支払、平成28年9月21日から同年10月20日までの未払割増賃金約17万円等の支払、労働基準法114条所定の付加金等の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 XとY社との間で交わされた雇用契約書には、基本給月額25万円、職種手当月額3万円であると記載されていることからすると、Xの賃金は、基本給月額25万円、職種手当月額3万円の合計28万円であると認められ、本件賃金規程は、職務手当について、割増賃金として支払う旨を定めているものの、職種手当については、何ら言及されていないから、Xの労働契約の内容上、職種手当が、労基法37条1項所定の割増賃金について支払われる趣旨のものであるとは認められない。

2 当直時間帯における仮眠時間について、仮眠時間中の保安警備は、仮眠中に起こされて業務に従事するよう命じられることはなかったことから、Xは、所定の仮眠時間において、労働契約上の役務の提供を義務付けられていなかったものと評価することができ、また、当直時間帯における食事休憩について、当直勤務においては、労働契約上、30分の食事休憩が予定されているから、かかる時間については、労働契約上役務の提供を義務付けられているとはいえず、そして、その他の休憩時間について、Xは、雇用契約書によると、労働契約上、午前9時から午後5時45分の時間帯において、1時間の休憩を取得することが予定されており、労働契約上、役務の提供を義務付けられているということができず、以上より、当直時間帯における仮眠時間及び食事休憩時間並びに午前9時から午後5時45分の勤務時間帯のうち1時間については、労働時間に該当しない。

上記判例のポイント1はもったいないですね。

「職種手当」と「職務手当」。似て非なる手当。固定残業代として認められるか、基礎賃金に含まれるか・・・大きな違いです。

賃金184(結婚式場運営会社A事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

47日目の栗坊トマト。この休日中に成長を加速させたようです!

今日は、プランナーにおける定額残業代の割増賃金該当性に関する裁判例を見てみましょう。

結婚式場運営会社A事件(東京高裁平成31年3月28日・労判1204号31頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、Y社との間の雇用契約に基づいて、未払賃金等512万1111円(残業代483万3379円、遅延損害金28万7732円)+遅延損害金+付加金の支払を求めた事案である。

原審は、法内残業代87万2095円、時間外割増賃金224万1433円+遅延損害金並びに155万1380円+遅延損害金の支払を求める限度でXの請求を認容したところ、X及びY社が、同判決を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、3万9565円+遅延損害金を支払え

2 Xのその余の請求を棄却する。

3 Xの本件控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 被用者が時間外労働等を立証した場合に時間外労働手当等が発生するかどうかと、定額残業代の約定として効力を有するかどうかとは、別の問題であって、使用者の労働時間管理の有無によって定額残業代の効力が左右されるものとはいえない

2 本件特約によれば、職能手当は、時間外・休日・深夜割増賃金として支給されるものであって、基本給と明確に区分されており、その割合賃金に適用される基礎賃金の1時間当たりの金額(残業単価)を具体的に算定することも可能であるから、明確性の要件に欠けることはないというべきである。

3 本件雇用契約書及び本件特約によれば、職能手当相当額と労働基準法所定の割増賃金との差額精算の合意は存在している上、支給が行われた場合に、その超過分について割増賃金が別途支払われることは労働基準法上当然に求められるから、差額の精算合意を定額残業代の定めの有効要件とする必要はない

4 職能手当が約87時間分の時間外労働等に相当することをもって、給与規程及び本件雇用契約書において明確に定額残業代と定められた職能手当につき、時間外労働等の対価ではなく、あるいはそれに加えて、通常の労働時間内の労務に対する対価の性質を有すると解釈する余地があるというには足りない。

5 Y社は、実際に行われた時間外労働等の時間に基づいて計算した割増賃金の額が、職能手当で定めた定額割増賃金の額に満たない月があったとして、Xに対し、その差額を請求する権利があることを前提に相殺の主張をするが、一般に、定額残業代に関する合意がされた場合についての当事者の合理的意思解釈としては、実際に行われた時間外労働等の時間に基づいて計算した割増賃金の額があらかじめ定められた定額割増賃金の額に満たない場合であっても、満額支払われると解するのが相当である。XとY社との間の本件雇用契約においても同様であって、差額を請求しない旨の合意があったと解するのが相当であるから、Y社の差額請求及びその存在を前提とする相殺の主張は認められない。

いつも言っていることですが、しっかり要件を満たしながら運用している限り、裁判所はちゃんと固定残業制度を認めてくれます。

是非、痛い目に合う前に、ちゃんと賃金制度を運用するようにしましょう。

賃金183(キムラフーズ事件)

おはようございます。

43日目の栗坊トマト。順調に大きくなっています!

今日は、賃金減額に関して、将来請求及び一定の賃金の支払いを受ける地位の確認請求が認められた裁判例を見てみましょう。

キムラフーズ事件(福岡地裁平成31年4月15日・労経速2385号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務するXが、Y社に対し、①平成29年5月支払分以降の月額賃金のうち、基本給について1万円、職務手当について5万円及び調整手当について1万円をそれぞれ減額されたことについて、上記賃金減額は労働契約法8条に違反し、また、Y社の給与決定に関する裁量権を逸脱したものであるから、無効であると主張して、(ア)月額賃金として基本給13万5000円、職務手当5万5000円及び調整手当8万0900円の支給を受ける労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、(イ)平成29年5月支払分から労働契約終了時までの間の差額賃金の支払を求め、(2)平成27年夏季賞与から平成29年年末賞与までの各賞与額を不当に減額されたことにより、本来支給されるべき賞与額との差額分の損害を受けたとして、又は精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償金の支払を求め、(3)Y社代表者及びY社従業員からのパワーハラスメントにより精神的苦痛を受けたとして、労働契約上の就業環境配慮義務違反による債務不履行責任若しくは民法709条、会社法350条及び民法715条による不法行為責任に基づく損害賠償金+遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Xが、Y社に対し、基本給として月額13万5000円、職務手当として月額5万5000円及び調整手当として月額8万0900円の支給を受ける労働契約上の地位にあることを確認する。

2 Y社は、Xに対し、平成29年5月からXとY社との間の労働契約が終了するまでの間、毎月10日限り7万円を支払え。

3 Y社は、Xに対し、20万円を支払え。

4 Y社は、Xに対し、50万円+遅延損害金を支払え。

5 Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 本件賃金減額は、Xの同意なくされたものであることが認められ、また、Y社の就業規則及び給与規程には、懲戒処分としての減給の定めがあるほかは、降格や減給についての規定はなく、本件賃金減額は懲戒処分としてなされたものではないから、本件賃金減額は、就業規則等に基づく処分や変更としてなされたものであるとも認められない。

2 本判決確定後の将来請求分については、本件賃金減額が2回目の賃金減額であり、前件訴訟における和解成立からわずか半年余り後に行われたものであることや、Y社代表者が、本件訴訟の尋問において、たとえXの給料を元に戻すという判決が出ても、また減額する旨供述していることを考慮すると、今後もこのような賃金減額を継続する蓋然性はあると認められるから、あらかじめその請求をする必要があり、適法であると認める

3 賞与の支給及び算定が使用者の査定等を含む裁量にゆだねられていても、使用者はその決定権限を公正に行使すべきであり、裁量権を濫用することは許されず、使用者が公正に決定権限を行使することに対する労働者の期待は法的に保護されるべきであるから、使用者が正当な理由なく査定その他の決定を怠り、又は裁量権を濫用して労働者に不利な査定その他の決定をしたときは、労働者の期待権を侵害するものとして不法行為が成立し、労働者は損害賠償請求ができるというべきである。

4 製造部門に異動後のXの勤務成績やY社に対する貢献度は他の従業員と比べて必ずしも芳しくなかったことが認められる。
しかし、他方で、Xが製造部門に配転されてからそれほど期間が経過していないことに加え、配転前の営業担当時期のXに特段の問題行動や失敗があったことはうかがわれず、前記認定のとおり、上記配転がY社の経営判断として行われたことを考慮すると、Xの賞与を査定するに当たって、配転先の業務における作業の速度や成果等の勤務成績を大きく考慮することは、査定における公平を失するといわざるを得ない。そして、Y社が賞与の減額要素として主張する事情のうち、Y社の業績が良くなかったという事情については、他の正社員についても共通の事情であること、Xの勤務成績についても、前記のとおり作業速度や成果の点において芳しくないとしても、XにY社やその従業員に大きな損害を与えるような事故や失敗があったことは認められないことなども考慮すると、他方で、Xの給与及び賞与等を併せた年収額が、本件賃金減額及び本件賞与減額後においてもなおY社における他の正社員の各年収額を上回っているというY社における従業員全体の賃金の実情があることを斟酌しても、本件賞与減額のうち、少なくとも、Xが平成26年以前に支給された賞与の最低額の2分の1を下回り、かつ平成27年から29年までの間の他の正社員の賞与支給率のうちの最低の支給率をも下回った平成28年夏季賞与以降の賞与の査定については、これを正当化する事由を見出しがたいというべきである。
・・・以上によれば、Y社は、平成28年夏季賞与から平成29年年末賞与までのXの賞与については、裁量権を濫用して、これを殊更に減額する不公正な査定を行ったことが認められ、これは、Y社が査定権限を公正に行使することに対するXの期待件を侵害したものとして不法行為が成立するというべきである。

上記判例のポイント2は参考になりますね。

通常、将来請求までは認められませんが、このような事情があれば、裁判所は認めてくれるようです。

賃金182(洛陽交通事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

29日目の栗坊トマト。どんどんたくましくなってきています!

今日は、歩合給、祝日手当等が時間外労働等の対価として支払われたかを賃金項目ごとに判断した裁判例を見てみましょう。

洛陽交通事件(大阪高裁平成31年4月11日・労経速2384号3頁)

【事案の概要】

本件は、タクシー乗務員としてY社に勤務するXが、Y社に対し、時間外労働及び深夜労働に対する未払割増賃金合計235万4107円+遅延損害金、付加金+遅延損害金の支払を求めた事案である(その後、Xは、当審において請求を拡張)。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、293万9348円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、付加金188万7132円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 「本給」が最低賃金額に抑えられ、「基準外手当I」及び「基準外手当Ⅱ」は、いずれも、時間外労働等の時間数とは無関係に、月間の総運送収入額を基に、定められた割合を乗ずるなどして算定されることとなっていること、②Y社において、実際に法定計算による割増賃金額を算定した上で「基準外手当Ⅰ」及び「基準外手当Ⅱ」の合計額との比較が行われることはなく、単に、上記各手当等の計算がされて給与明細書に記載され、その給与が支給されていたこと、③Y社の求人情報において、月給が、固定給に歩合給を加えたものであるように示され、当該歩合給が時間外労働等に対する対価である旨は示されていないこと、④上記のような賃金算定方法の下において、Y社の乗務員が、法定の労働時間内にどれだけ多額の運送収入を上げても最低賃金額程度の給与しか得られないものと理解するとは考え難いことからすると、「基準外手当Ⅰ」及び「基準額手当Ⅱ」は、乗務員が時間外労働等をしてそれらの支給を受けた場合に、割増賃金の性質を含む部分があるがあるとしても、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない

2 「祝日手当」は、Y社において「祝日」と称する休日に勤務した場合に支給される手当であることからすると、通常の労働日の賃金であるとは認められない。

3 「時間外調整給」は、月間の総運送収入に一定の割合を乗ずるなどして算定されるものであり、時間外労働等の対価であることをうかがわせる定めも見当たらない。また、Y社の乗務員が時間外労働等をして「時間外調整給」の支給を受けた場合に、「時間外調整給」に割増賃金の性質を含む部分があるとしても、通所の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とはを判別することはできない。

4 「公休出勤手当」は、Y社では、2車3人制においては2日乗務し1日休業(「公休日」と称する法定外休日)となるところ、この休日に勤務した場合に支給される手当であることからすると、通常の労働日の賃金であるとは認められない。

この例も固定残業制度の運用方法を誤ったものです。

判例の基準に則り、適切に運用していけば、しっかり裁判所は固定残業制度を認めてくれます。