労働災害104(青森三菱ふそう自動車販売事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、労働者の自殺につき業務起因性を否定した原審の判断が覆された事案を見てみましょう。

青森三菱ふそう自動車販売事件(仙台高裁令和2年1月28日・労経速2411号3頁)

【事案の概要】

本件は、Aらが、子でありY社の従業員であった亡Xが違法な長時間労働等により精神疾患を発症して自殺したとして、Y社に対し、使用者責任、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償及び亡Xが自殺を図った日を起算日とする民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

原審が、Aらの請求をいずれも棄却したところ、Aらは、控訴を提起した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消す。

Y社は、A1に対し、3681万3651円+遅延損害金を支払え

Y社は、A2に対し、3678万0062円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 亡Xは、平成28年1月上旬頃、それまでのY社八戸営業所における業務に起因して適応障害を発症したところ、その後も長時間労働が続き(平成28年1月上旬以降の労働時間についても、それまでの時期と異なる認定をすべき事情は見当たらず、むしろ、同年3月は繁忙な決算月として、他の月よりも長時間の労働を余儀なくされたと推認することができる。)、出来事に対する心因性の反応が強くなっていた中、同年4月16日、先輩従業員であるCから叱責されたことに過敏に反応して自殺を図るに至ったと認めることができる。

2 亡Xが適応障害を発症して自殺を図るに至ったことについては、Y社八戸営業所の長であるG所長及び亡Xの上司であるE課長代理において、亡Xに業務上の役割・地位の変化及び仕事量・質の大きな変化があって、その心理的負荷に特別な配慮を要すべきであったところ、亡Xの過重な長時間労働の実態を知り、又は知り得るべきであったのに、かえって、従業員が実労働時間を圧縮して申告しなければならない労働環境を作出するなどして、これを軽減しなかったことに要因があるということができ、G所長らには亡Xの指導監督者としての安全配慮義務に違反した過失がある。そうすると、Y社は、使用者責任に基づき、Aらに対し、亡Xの死亡につき同人及びAらが被った損害を賠償すべき責任がある。

長時間労働が原因となった労災は、パワハラ等と比べて、業務起因性や素因減額を争いにくいですね。会社によって繁忙期があるのはよくわかりますし、労働力不足も重なって、どうしても長時間労働になりがちです。

会社としては、労働時間を短縮するために、サービス内容を再定義するなど、できることをやっていくしかありません。

本の紹介1057(劣化するオッサン社会の処方箋)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは「なぜ一流は三流に牛耳られるのか」です(笑)

劣化しないようにがんばりまーす。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・ひるがえって、現在の日本のオッサンたちはどうでしょうか。ほとんどの人は理想もなく、ダラダラとただ昨日までの日常の延長線上を家畜のように生きているだけでしょう。・・・『現在挑戦していることはなにか』と問えば、30秒とて語れない人がほとんどのはずです。こんなことを数十年にわたって続けていれば、知的パフォーマンスが低下するのは当たり前のことです。」(145~146頁)

日常の延長線上を家畜のように生きているだけ・・・すごい言われよう(笑)

毎日、やりたいことをやりたいようにやって生きているので、こういうことを言われても完全に他人事ですが、基本的に世の中のオッサンに対する評価はこんなものでしょう。

人生は一度きりで、かつ、とても短いです。いつ終わるかわからないし、どちらにしてもあっという間に終わってしまいます。

嫌なことを我慢する人生を何十年と送るなんて、もう考えただけ気絶しそうです。

いろんな重い荷物を背負っているとそうもいかないかもしれませんが、自分の人生なのですから生きたいように生きればいいのです。

賃金199(大作商事事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、残業を月30時間以内とする指導の事実を考慮し、PCログ記録を根拠に労働時間が認定された事案を見てみましょう。

大作商事事件(東京地裁令和元年6月28日・労経速2409号3頁)

【事案の概要】

本訴請求事件は、Y社の従業員として稼働していたXが、在職期間中、時間外・深夜労働に従事していたとして、Y社に対し、労働契約に基づき、時間外労働等に係る割増賃金+遅延損害金、付加金の支払を求めた事案である。

反訴請求事件は、Y社が、Xにおいて、在職中、遅刻をしていたのに給与を不正に取得していたなどとして、Xに対し、不法行為又は不当利得に基づき、損害金又は不当利得金78万9577円+遅延損害金の支払を求めるとともに、Xが在職中、不正な出勤簿を作成し、不正なパソコンのログデータを作成し、挙句、不正な本訴請求に及んだことが不法行為又は債務不履行に該当するとして、Xに対し、不法行為又は債務不履行に基づき、損害金712万4040円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、139万8751円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、付加金50万円+遅延損害金を支払え

Y社の反訴請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、X主張を裏付ける証拠として、自身が利用していたパソコンから抽出した記録であるというログ記録を提出している。その内容は概ね別紙4記載のとおりであって、これによれば、Xが出勤簿記載の労働時間よりも長く業務に従事していた可能性があるとみることができる。
よって検討するに、X本人は、出勤簿を作成するほかログ記録を残していた理由について、要旨、残業実績が出勤簿記載の労働実績より実際には多かったため、念のため残しておいた旨の供述をしている、かかる供述内容自体に特段不自然な点は見出されず、その抽出方法も、他の証拠に照らし、自然なものとして首肯することができる
この点、Y社は、ログイン・ログアウトを人為的に行った記録を特定することは困難であるとの意見書を提出し、ログ記録について争うが、上記甲号証に照らせば、少なくとも使用していたパソコンのWindowsの起動と正常シャットダウンの日時の特定に妨げないものとはいえる。
また、Xは、Y社において本件業務に当たってきたものであるところ、その業務の性質上、パソコンを多く利用する業務であったことは前記認定のとおりである。しかも、Xの供述によればもちろん、証人Bの証言によっても、パソコンを利用するのは、基本的には当該パソコンを割り当てられた個々の従業員であったものである。この点、証人Bの証言中には、他の従業員がXのパソコンを使用することもあったという趣旨の供述部分はあるが、B自身も頻繁にはないとしている上、具体的な頻度について自発的に明確な供述をできておらず、その供述を裏付ける証拠もないから、その証言はたやすく採用できない。しかも、前記認定のとおり、Y社においては週初めの午前8時30分から朝礼が行われていたところ、ログ記録は、内容的にもこうした事実に多く沿っているとみることができるほか、グループウェアのタイムカード記録(出勤記録)との齟齬もほぼ認められず、むしろ、ごくごく断片的証拠ではあっても、Y社の業務に係る画像データや動画データの更新日時との符合も認められる。なお、Y社は、これらデータにつき、更新日時を変更することが可能で信用性がないなどとも主張しているが、そのように改変がなされたと見るべき形跡は認められない。

2 Y社は、X本人が、本人尋問において、新人研修の際にY社従業員のCから月当たりの残業時間を30時間以内としなければならない旨の指導を受けたなどと供述していることをとらえて、そのような事実はなく、その旨述べるX本人の供述は不自然であるなどと主張する。確かに、証人Cは、月30時間を超える残業時間を記載することを禁ずる指導をしたことを否定する証言をしており、他にそのような指導がなされたことを裏付ける的確な証拠もなく、かえって、Y社の従業員の中には月30時間を超える残業時間を申告していた者がいると認められることは前記認定のとおりである。
しかしながら、X申告の出勤簿の残業時間をみると、月当たり30時間未満とされている月も散見されるものの、どの月も30時間を超えることはなく、多くは寸分違わず30時間と申告されているところであって、このこと自体、Xが、実際の労働時間いかんにかかわらず、月30時間以内に残業時間をとどめようとしていたことを強く窺わせるものといえる。そして、証人Bや同Cも、業務の効率的遂行といった観点から、個々の従業員の月当たりの残業時間が30時間以内となるよう指導していたこと自体は否定をしていない。そうしてみると、Xがこうした指導故に出勤簿記載の残業時間を多くとも30時間にとどめることとしていたと推認するのが合理的というべきであって、X本人の供述は同旨を述べるものとしてむしろ首肯することができる。
したがって、Y社指摘の点は、上記説示の点においてXの供述の信用性を高めこそすれ、その信用性を損なうものということはできない

残業時間を一定限度に制限するよう指導することはよくあることですが、ただ指導するだけでは足りず、当該指導に従わない従業員に対する労務管理を行わないと、結局、指導が有名無実化してしまいます。

本の紹介1056(スマホ人生戦略)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

堀江さんの本です。

もうパソコンは使わず、スマホだけで仕事しているということです。

これまでの本の寄せ集めのような内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

質・量ともに高い情報が大量に流布している現在、時間をかけて学びを得るという態度では、他人に後れを取ることにもなる。場合によっては、ステップアップのチャンスを逃すこともある。『急がば回れ』は間違いだ。正しくは、『考えながら急いで回れ』だ。ツールを駆使して、すべての時間コストを圧縮する。」(160~161頁)

仕事等が遅い人は、能力の問題と捉えるのではなく、やり方を変えることをおすすめします。

当然のことながら、能力の問題が9割なのですが、それを言っても始まらないので、方法論として捉えるのです。

自己流の遅いやり方に固執せず、仕事でも勉強でも、成果を上げている人のやり方をまねしてみるのです。

文章を読むスピード、書くスピード、調べるスピードを可能な限り上げる。

本来必要のないアイドリングタイムをなくす。

そして止まらず、流れるように仕事をする。

普通の人の数倍の速さで時間が流れているかのように次々と事を進めていく。

そんな習慣ができると劇的に効率が上がり、どんどん結果が出るようになります。

 

継続雇用制度29(学校法人Y学園事件)

おはようございます。

今日は、懲戒処分歴を理由とした定年後再雇用拒否を無効とした原判決が維持された事案を見てみましょう。

学校法人Y学園事件(名古屋高裁令和2年1月23日・労経速2409号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置するY大学の教授であり、平成29年3月31日をもって定年に達したXが、Y社に対し、(1)Y社による再雇用を希望する旨の意思表示を拒否する旨のXの意思表示が正当な理由を欠き無効であって、Y社との間で再雇用契約が成立していると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)当該雇用契約に基づき、同年4月1日から上記地位確認の判決確定日又は令和2年3月31日のいずれか先に到来する日までの間、毎月末日限り、賃金月額75万5040円の支払を求め、(3)無効な懲戒処分・再雇用の拒否によって精神的苦痛を被ったとして主張して、不法行為に基づき、慰謝料500万円の支払を求める事案である。

原審が、Xの地位確認請求を認めるとともに、賃金支払請求を月額63万0700円の限度で、慰謝料請求を50万円の限度で、それぞれ認めたところ、Y社が控訴し、Xが附帯控訴した。

【裁判所の判断】

控訴・附帯控訴いずれも棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件処分は純然たる大学内部の問題として一般市民法秩序と直接の関係を有するものではないから、司法審査は及ばず、仮に、本件処分の当否が司法審査の対象になるとしても、懲戒権者であるY社の所定機関の合理的な裁量に委ねられるべき旨主張する。
しかしながら、Xの請求は、本件処分が無効であることを前提に、雇用契約上の地位を有することの確認、同契約に基づく賃金支払及び不法行為に基づく損害賠償を求めるものであるから、民法、労働契約法等で規律される法律関係及び権利に関するものとして一般市民法秩序に直接の関係を有し、Xの単なる内部規律の問題にとどまらないことは明らかである。

2 Y社は、平成29年度の再任用が認められなかったことにより、Y大学名誉教授の称号が授与されることもなくなった旨主張する。しかしながら、本件処分が無効であって、Xについて再任用規程3条3号の欠格事由がなく、定年後も再任用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続していることは、上記に判示したとおりであるから、Xに対してY大学名誉教授の称号が授与されるかどうかは、本判決確定後にXにおいて判断されるべきものであり、現時点において、上記称号の可能性の有無を慰謝料額算定の要素として考慮するのは相当でないというべきである。

上記判例のポイント1は大学等の紛争の際に登場する論点ですが、まず認められません。

本の紹介1055(ぜんぶ、すてれば)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

タイトルのとおり、余計なことやモノに固執・執着しない生き方を薦めています。

何事も執着・依存すればするほど、自由がなくなり生きにくくなります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

なぜ家を買うのか。『ここにいつでも戻って暮らすことができる』という安心感を得られるからでしょうか。でも、それは逆に言えば『ここにいつまでも縛られる』ということ。・・・ものを所有することは安定を生まない。むしろ不安が増えるだけ。『いつでも移れる。どこでもすぐに新しい生活を始められる』。人生の選択肢を広げてくれる、そんな軽やかさを持ちたいと僕は思います。」(46~47頁)

まさに「所有は安定を生まない」のです。

むしろ不安になるし、不安定になります。

典型例がマイホームですが、極力、モノを所有しないことが、身軽に、かつ、臨機応変に生きていく方法です。

変化の激しい今のような時代には、高度経済成長期とは異なる価値観・人生観を持つほうが生きやすいです。

労働災害103(住友ゴム工業(旧オーツタイヤ・石綿ばく露)事件)

おはようございます。

今日は、タイヤ製造業作業員の石綿ばく露の有無と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

住友ゴム工業(旧オーツタイヤ・石綿ばく露)事件(神戸地裁平成30年2月14日・労判1219号34頁)

【事案の概要】

本件は、(1)甲事件原告らの被相続人らが,いずれも被告ないし被告と合併したa株式会社の従業員として,被告の神戸工場又は泉大津工場においてタイヤ製造業務等に従事していたが,その際,作業工程から発生するアスベスト及びアスベストを不純物として含有するタルクの粉じんにばく露し,悪性胸膜中皮腫ないし肺がんにより死亡したとして,甲事件原告らが,被告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,それぞれの相続分に応じた損害賠償金+遅延損害金の支払を求め(甲事件),(2)乙事件原告亡X22及び原告X25が被告従業員として,神戸工場においてタイヤ製造業務等に従事していたが,その際,作業工程から発生するアスベスト及びアスベストを不純物として含有するタルクの粉じんにばく露し,石綿肺及び肺がんに罹患したとして,乙事件原告らが,被告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償金+遅延損害金の支払を求める(乙事件)事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 雇用契約上の付随義務としての安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は10年であり(民法167条1項),この10年の時効期間は損害賠償請求権を行使できるときから進行するところ,安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権は,その損害が発生した時に成立し,同時に,その権利を行使することが法律上可能になるというべきであって,権利を行使し得ることを権利者が知らなかった等の障害は,時効の進行を妨げることにはならないというべきである。
そうすると,亡M及び亡Oの債務不履行に基づく損害賠償請求権は,亡M及び亡Oにそれぞれ客観的な損害が発生した時から進行し,遅くとも,各人が死亡した日から消滅時効期間が進行しているというべきであり,安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償請求権の起算点は,亡Mにつき平成12年4月25日,亡Oにつき平成12年1月26日で,甲事件の訴えが提起された時点でいずれも10年が経過しているから,消滅時効が完成しているというべきである。

2 民法724条は「不法行為による損害賠償の請求権は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは,時効によって消滅する」と規定し,「損害及び加害者を知った時」とは,被害者において加害者に対する損害賠償が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれを知った時を意味し,単に損害を知るにとどまらず,加害行為が不法行為を構成することをも知ったときを意味するものと解される。
本件においては,原告X6及び亡X10が,それぞれ上記アの各労災請求に至った経緯までは判然としないものの,いずれも被告での職務従事における石綿ばく露を前提に上記各請求をしていることから,遅くとも,それぞれ上記アの各労災請求をした時点では,被告における石綿ばく露を原因に疾病を発症し死亡したことを認識しているといえ,「被害者が…損害及び加害者を知った」ものと認められる。
そうすると,上記アの各労災請求をした日から消滅時効期間が進行するというべきであるから,亡M及び亡Oの不法行為に基づく損害賠償請求権の起算点は,亡Mにつき平成21年9月15日,亡Oにつき平成18年3月20日であり,甲事件の訴えが提起された時点で,いずれも3年が経過しているから,消滅時効が完成しているというべきである。

3 一般に,消滅時効制度の機能ないし目的については,①長期間継続した事実状態を維持して尊重することが法律関係の安定のため必要であること,②権利の上に眠っている者すなわち権利行使を怠った者は法の保護に値しないこと,③あまりにも古い過去の事実について立証することは困難であるから,一定期間の経過によって義務の不存在の主張を許す必要があることなどであると説明されているが,時効によって利益を受けることを欲しない場合にも,時効の効果を絶対的に生じさせることは適当でないともいえるから,民法は,永続した事実状態の保護と時効の利益を受ける者の意思の調和を図るべく,時効の援用を要するとしている(民法145条)。もっとも,時効を援用して時効の利益を受けることについては,援用する意思表示を要件とするのみで,援用する理由や動機,債権の発生原因や性格等を要件として規定してはいない。このような債権行使の保障と消滅時効の機能や援用の要件等に照らせば,時効の利益を受ける債務者は,債権者が訴え提起その他の権利行使や時効中断行為に出ることを妨害して債権者において権利行使や時効中断行為に出ることを事実上困難にしたなど,債権者が期間内に権利を行使しなかったことについて債務者に責めるべき事由があり,債権者に債権行使を保障した趣旨を没却するような特段の事情があるのでない限り,消滅時効を援用することができるというべきである。
本件においては,本件被用者らの被災状況が判然としないことから,被告に対し,原因を明らかにするように求め,また団体交渉を申し入れるに至った経過や,この種事案における遺族による訴訟追行及び損害賠償請求自体に困難が伴うことに照らすと,原告X6及び亡X10が,上記各労災請求をした時点では,被告に対する損害賠償請求権を行使することには,法的なあるいは事実上の問題点が多く,損害賠償請求権の行使が容易ではなかったというべきであり,加えて,上記アのとおり,被告に対する損害賠償請求権を行使するための準備行為を行っていたことからすれば,権利の上に眠っている者すなわち権利行使を怠った者ともいえない
さらに本件組合による団体交渉の申入れから団体交渉が実現するまでに5年以上の期間を要しているところ,このことは,被告が,本件組合からの団体交渉の申入れを拒否した結果,訴訟にまで発展し,訴訟において被告が団体交渉に応じる義務があると判断されていることなどからすると,被告側の不当な団体交渉拒否の態度に起因するものといわざるを得ない。そうすると,原告らが,被告に対する損害賠償請求権を行使することに関し,法的なあるいは事実上の問題点を解消するために長期間を要したことについては,被告に看過できない帰責事由が認められるというべきである。
以上を総合すると,被告が,積極的に,原告らの権利行使を妨げたなどの事情は認められないものの,上記のとおり,被告の看過できない帰責事由により,原告らの権利行使や時効中断行為が事実上困難になったというべきであり,債権者に債権行使を保障した趣旨を没却するような特段の事情が認められる
したがって,被告が,亡M及び亡Oの損害賠償請求権に関して消滅時効を援用することは,権利の濫用として許されないものというべきである。

少々長いですが、上記判例のポイント3は、消滅時効に関する議論としては大変参考になります。

是非、押さえておきましょう。

本の紹介1054(1兆ドルコーチ)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」です。

人材管理とチームコーチングに関する本です。

管理職の方は一度読んでみると参考になると思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

大多数の人にとっては、報酬イコール金額だ。だがそれがすべてではない。報酬は経済的価値だけでなく、感情的価値の問題でもある。報酬は会社が承認、敬意、地位を示すための手段であり人々を会社の目標に強く結びつける効果がある。」(108頁)

プロ野球選手等が契約更改の際、かなり高額の年俸にもかかわらず納得がいかない表情を浮かべることがありますが、まさにこれです。

一般の人からすれば、「いやいや2億でしょ。それで納得いかないってどんだけお金欲しいんだよ」という解釈をしがちですが、そうではないのです。

お金の問題であっても、お金の問題ではないのです。

適正に評価されないことに納得がいかないのです。

このことがわからないとどこまでいってもお金の問題と捉えてしまうのです。

解雇329(東芝総合人材開発事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、業務命令違反による解雇の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

東芝総合人材開発事件(東京高裁令和元年10月2日・労判1219号21頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、懲罰目的又はいじめ・嫌がらせ目的の業務指示に従わなかったことを理由にされた解雇は無効である等として、Y社に対し、①地位確認、②バックペイとして、平成28年2月から、毎月末日限り、31万3808円+遅延損害金、③賞与として、平成28年7月から、毎月7月及び12月の各月末日限り、48万1000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原判決は、Xの請求のうち、判決確定後の金銭支払請求については将来請求の必要性がないとして訴えを却下し、その余の請求をいずれも棄却した。

これを不服とするXが控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xが担当を命じられたマーシャリング作業については、Xの従前の担当業務と比較すると、難易度が著しく低い単純作業であると認められる。他方において、マーシャリング作業の従前の担当者(実技担当者)に多忙による業務軽減の必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。しかしながら、問題行動を起こした従業員が、問題行為の性質上、従前の担当業務を担当させられない場合において、業務軽減の必要のない他の従業員の担当業務の一部を担当させることを、その一事をもって懲罰目的であるとか、難易度が低く業務上必要のない過小な行為を行わせるものとしてパワーハラスメントに該当するとかいうには、無理がある

2 反省文には、「上に立つ方の力量のなさとしかいえない私にもどうしようもないやり方や結果が多々あり」など、Xの意見、不満をにじませた記載がある。この時点においては、Xについては、今後も組織規律を乱す言動を行いかねないという大きなリスクを抱えた人材であると評価せざるを得なかったもので、従前業務に復帰させなかった判断は誠にやむを得ないものである。また、一般教養科目の講師業務は、まさに外部(派遣元から派遣された訓練生)と直接接触する業務であって、Xに担当させないこともやむを得ない業務である。

問題行動の内容によって、配置転換(業務内容の変更)の際に今回の裁判例が参考になります。

いずれにしても問題行動の内容、頻度、指導教育内容等を証拠として残しておくことが肝要です。

本の紹介1053(サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

著者は、サイゼリヤの創業者の方です。

10年程前に書かれた内容ですが、今読んでも非常に参考になります。

飲食業界に限らず、あらゆるビジネスにおいて示唆に富む内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

つまり、異常事態のときには、平時にはできないことができて、平時には考えつかないことをひらめくかもしれないということだ。物事を真剣に考えるということはとても大変で疲れる作業だ。だからこそ、平時にはなかなかできない。その意味で、異常事態は新しい力やアイデアを生むきっかけになる。」(93頁)

業界によってはまさに今が異常事態です。

運命に翻弄されてただ立ち尽くすだけではなく、いかにこの異常事態を切り抜け、さらなるステップアップにつなげるか。

どうしよう、どうしようと嘆いていても状況は一向に好転しません。

そんな暇があるのなら、大量の情報収集を続けるのです。

あとはトライアンドエラーです。

座して死を待つなんて死んでもしません。