【遺産相続⑲】生命保険金は特別受益なの?

先日、父が亡くなりました。相続人は、私と弟の2人です。父の遺産は合計約5000万円です。父は、生前、私を受取人として、生命保険(500万円)を掛けてくれていました。弟は、この生命保険金500万円は特別受益に該当するので、持ち戻し計算してその分を差し引くべきであると言ってきました。弟の言っていることは正しいのでしょうか?

 
生命保険金が遺産分割協議の中でどのように扱われるのかについては、【遺産相続⑱】をご参照ください。
ご質問の件ですが、生命保険金は特別受益にあたるか、という問題については、最高裁判所が以下のとおり判断しました。
「養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。」(最高裁平成16年10月29日判決)
ただし、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。上記特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。」
つまり、生命保険金は、原則として、特別受益にはあたりませんが、その額や遺産に占める割合、被相続人への介護状況等を総合的に考慮して、例外的に特別受益に準じて取り扱う場合もありうるということです。
「特段の事情」は、保険金の額のみによって判断されるものではありませんが、保険金額が遺産総額の6割を超えるような場合は、持戻しの対象となると判断される可能性が高くなると思われます。
なお、持戻しの対象となる額については、保険金額とする見解、保険金額から当該相続人が負担した保険料に対応する額を控除する見解等の対立があります。