賃金290 社宅制度の適用について均等法の趣旨に照らし間接差別を認めた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、社宅制度の適用について均等法の趣旨に照らし間接差別を認めた事案について見ていきましょう。

AGCグリーンテック事件(東京地裁令和6年5月13日・労経速2565号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の一般職の女性労働者であるXが、Y社が総合職のみに社宅制度(Y社の社宅管理規程に基づき、Y社が従業員の居住する賃貸住宅の借主となって賃料等の全額支払い、その一部を当該従業員の賃金から控除し、その余をY社が負担する制度)の利用を認めていることが、男女雇用機会均等法の趣旨に照らし差別にあたり違法である等と主張した事案である。

【裁判所の判断】

均等法の間接差別に当たるとして、損害賠償請求を一部認容。

【判例のポイント】

1 社宅制度適用対象の大半を占める営業職が、女性からの応募の少ない職種であることが原因であると認めることができ、社宅制度に伴う上記の待遇の格差が、性別に由来するものと認めることはできない。

2 社宅制度の利用を、住居の転移を伴う配置転換に応じることができる従業員、すなわち総合職に限って認め、一般職に対して認めていないことにより、事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められない。
Y社が上記のような社宅制度の運用を続けていることは、雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当する。

どのようなケースが間接差別に該当し得るのかについてはある程度勉強しておかないと、無意識に間接差別をしてしまうことがありますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。