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今日は、工事従業者の労務提供の内容自体を被告が決定するという関係にはなく、請負契約の性質を有するため、労契法上の労働者性を否定した事案を見ていきましょう。
ワットラインサービス事件(東京地裁令和6年10月21日・労経速2570号35頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との契約により電気メーターの取付・据付及び交換工事(以下「計器工事」という。)に従事し、a労働組合b地方本部c労働組合d分会(以下「分会」という。)に所属するXらが、Y社に対し、Y社が、労働組合攻撃のため、令和2年度、Xらに割り当てる計器工事数を減少させ(以下、割当計器工事数を「割当工事数」ということがある。)、令和3年2月20日、前記各契約の更新を拒絶したとして、以下の請求をする事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xら作業者の労務提供の内容(計器工事の内容)は、本件一連の契約書及び仕様書等によって明確にされており、Y社のその都度の指示により変更する余地はない。また、Xら作業者が担当すべき計器工事数についても、Y社とXら作業者の合意により、Y社には割当工事数の計器工事を依頼すべき義務が、Xら作業者には同数の計器工事を完成させるべき義務が生じ、本件各契約の内容になると解され、労働契約における業務命令のように、使用者たるY社が単独で決定することにより、Xら作業者に原則としてその決定に応じる法的義務が生じると解することはできない。OJTの担当についても、Xら作業者の同意なく義務付けることができると認めるに足りる証拠はない。なお、研修や夕礼への参加は、対応する対価がなく、本件各契約に基づく技能の維持や必要な事項の共有のためのXら作業者の義務ではあっても、労務の提供とはいえない。
2 Xらは、Xら作業者はY者の業務指示(割り当てた工事の全部完了など)を拒むことができないこと、Y者は、日常的にXら作業者を指揮監督するとともに、場所的時間的に拘束し、Xら作業者に代替性がないことを指摘する。しかしながら、労務提供の内容をY社が決定するという関係になく、時間的拘束性は、その間のいずれかの時点で計器工事を行うことを求めるという趣旨での時間枠を設定するにとどまる。場所的拘束性については、担当地域を定めた契約であることや、顧客宅で行うことが必要であるという計器工事の性質によるものである。代替性については、これがあることは、指揮監督下にあるかどうかの判断において重要な事情であるが、これがないことは重要な事情とはいえない。
3 また、Xらは、計器工事の報酬が作業量により増減し労務対償性がある旨主張するが、Xら作業者の報酬の大部分を占める「請負金」は、工事の完成に対する出来高であり、計器工事に時間をどれだけ費やしても完了しなければ、報酬の支払請求権は発生せず、その余の手当等の額はわずかであるから、労務の提供それ自体に対して報酬が支払われる関係にあるとはいえない。平成28年3月に支払われた最低補償金及び評価金は、計器生産の遅れという突発的な事態のためにY社が発注することとなっていた工事を発注することができなかったというY社側の事情でXら作業者の得ることができる請負金が大幅に減少したことを受けて支払われたものであって、労務対償性を欠く。
裁判所がどのような考慮要素に基づき労働者性を判断しているのかがよくわかりますね。
労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、判断に悩まれる場合には、事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。