Daily Archives: 2025年7月14日

不当労働行為320 不当労働行為に基づく組合の損害賠償請求が一部認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう!

今日は、不当労働行為に基づく組合の損害賠償請求が一部認められた事案について見ていきましょう。

川上屋事件(岐阜地裁令和6年7月5日・労判ジャーナル152号20頁)

【事案の概要】

本件は、①X組合が、Y社の不当労働行為により非財産的損害を被ったと主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償として110万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、②X2が、Y社の安全配慮義務違反によって中等症うつ病エピソード等を発症するに至ったと主張して、Y社に対し、債務不履行に基づく損害賠償として185万3703円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、X組合に対し、33万円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、X2に対し、22万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 とりわけ先行配転命令の一部撤回及びその後本件配転命令に至るまでの人員配置の経緯等に照らせば、a店の喫茶部門から本店の製造部門への本件配転命令について、合理的な必要性があったとは認め難い。このことに加え、従前からのXらとY社の緊張関係、Y社による本件誓約書の徴求、安全衛生委員会の不開催(被告は、開催する時間的余裕がなかった旨主張するが、平成28年1月から同年7月までに計5回開催された同委員会がその後全く開催されなくなったことにつき、合理的な説明がされたとはいい難い。)といった経緯も考慮すれば、Y社による本件配転命令は、前訴判決の認定・判断のとおり、X組合の運営に介入してXらの影響力を低下させようとするものであって、労働組合法7条3号所定の支配介入に当たると認めるのが相当である。
そして、そのような本件配転命令について、X組合との関係で故意・過失や違法性を否定すべき特段の事情があることはうかがわれない。
以上によれば、本件配転命令は、故意又は過失によりX組合の法的利益を違法に侵害するものとして、不法行為にあたるというべきである。

2 X2は、本件要請書の内容に納得がいかず、他の従業員らが本当にそのように認識しているのかどうか、確かめようとしたものと解される。このような行為は、本件要請書に係る申告者に不安感等を抱かせかねず、ひいては以後のハラスメント申告等を思いとどまらせかねないものであって、問題がないとはいえないものの、申告者探しであるとまで断ずることも困難であり、当該申告者との関係で、その「プライバシー」(就業規則72条6項)を侵害するとか、「相談をしたこと…を理由として不利益な取扱い」(同項)をするとか、「職権等の立場または職場内の優位性を背景にして…人格や尊厳を侵害」(就業規則69条14項)するものであるなどと評価することはできず、懲戒事由にあたるとは認め難い

不当労働行為による組合等に対する損害賠償額のある程度の相場がわかります。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。