同一労働同一賃金29 有期・無期労働者間の基本給格差の不合理性と無期転換後の格差の違法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、有期・無期労働者間の基本給格差の不合理性と無期転換後の格差の違法性について見ていきましょう。

学校法人明徳学園事件(京都地裁令和7年2月13日・ジュリ1608号4頁)

【事案の概要】

Xは、平成22年4月、Y社が運営するA高校の常勤講師として1年の有期労働契約でY社に雇用され、その後、XとY社は契約更新を繰り返した。
令和4年2月、XはY社に無期労働契約転換申込書を提出し、同年4月1日から無期契約に転換した。Y社はXに対し、同日付けで常勤講師から常勤嘱託(事務職員)への配転を命じた。
Xの賃金(基本給)月額は、勤続1年目(年齢33歳)は24万9400円(同年齢・同勤続年数の専任教員の年齢給〔基本給〕の約78%)、勤続5年目以降は29万4600円で昇給なし(同年齢・同勤続年数の専任教員の年齢給との比率は5年目約82%,10年目約74%、12年目約71%)であった。
Xは、Y社に対し、①本件配転命令は無効であるとして常勤講師としての労働契約上の地位(または常勤嘱託として勤務する義務の不存在)の確認、および、②Y社の専任教員と常勤講師間の賃金差は違法であるとして不法行為に基づく損害賠償を求めて、本件訴えを提起した。

【裁判所の判断】

1 配転命令は有効

2 賃金格差は違法

【判例のポイント】

1 専任教員には長期雇用を前提として年功的な貸金制度を設け、1年以内の雇用期間を定める常勤講師に専任教員と異なる賃金制度を設ける制度設計には一定の合理性がある。しかし、A高校では、常勤講師の契約更新を5年に制限するわけではなく、Xを含む常勤講師の勤務実態は短期雇用にとどまっていない。専任教員の年齢給の性質・目的に照らせば、少なくとも5年を超えて勤務する常勤講師には、専任教員と同様に、年齢による部分、職務遂行能力による職能給、継続的勤務への功労報酬という性質・目的は妥当するものといえる。にもかかわらず、常勤講師の賃金は、5年を限度とした職能給および勤続給としての性質にとどまるものであって、賃金の性質・目的から合理的とはいい難い。

2 採用方法の違いに基づく管理職登用の相違は将来的かつ潜在的な可能性にとどまり、業務内容・責任の程度の差として現れているとはいい難い。Xが常勤講師として在任した時期には、常勤講師であるXと管理職でない専任教員との間に、職務内容の明らかな差異は認められない。職務内容・配置の変更の範囲についても、両者の間に有意な差があるとはいえない。

3 Xと同年齢・同時期に採用された専任教員の賃金を比較すると、6年目以降は常勤講師の賃金は
昇給しないため、賃金差は広がっていくばかりとなる。Xは5年を超えて勤務し、専任教員の年齢給の性質・目的が妥当する上、管理職でない専任教員の間には、業務内容・責任の程度、職務内容・配置の変更の範囲において上記賃金差を設けるほどの違いは認められない。以上によれば、Xと同年齢・同時期に採用された専任教員との間に賃金差が生じ、年を経るごとに拡大していくことは不合理である。

賃金格差が違法であると判断されています。

職務内容や配置変更の範囲、責任の程度に大きな違いがないがその理由です。

同種の問題は、様々な企業において存在するので注意が必要です。

同一労働同一賃金の原則を意識した労務管理を行うためには、日頃から顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。