Monthly Archives: 9月 2025

本の紹介2195 99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

この本を読むと、いかにマインドセットが大切であるかが本当によくわかります。

もう無理と思えば、もう無理。

まだいけると思えば、まだいける。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金を借りるという『リスク』よりも、何も変わらないことの『リスク』のほうが強い。いつ人生が終わるかわからない中で、動かないことのほうが、よほど大きいリスクなのだ。」(120頁)

リスク、リスクと言っているうちに人生は終わります。

ゼロリスクなんてこの世の中に存在しないのに。

リスクがあると言って、抽象的かつ大したリスクでもないことを針小棒大に評価して、やらない理由探しをしているだけですから。

リスクの有無ではなく、リスクの内容、程度を分析して、テイクできそうかを判断すれば足ります。

管理監督者64 経理課長の管理監督者該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、経理課長の管理監督者該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

スター・ジャパン事件(東京地裁令和3年7月14日・労判1325号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結して就労しているXが、Y社に対し、平成28年6月から令和元年11月までの期間(以下「本件請求期間」という。)における時間外労働、深夜労働及び休日労働に対する割増賃金の不払がある旨主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、各割増賃金の合計1523万0698円+遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条に基づき、付加金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、1523万0698円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、〈1〉Xが、雇用契約当初からその後本訴提起の直前に至るまで一貫してY社がXを管理監督者として扱うよう誘導し、〈2〉Xに対して時間外労働の抑制などの時間管理をする機会を奪わせ、〈3〉他方で自分で勝手に労働時間を長くしてから、〈4〉長期にわたりその状態を自ら放置して時間外の請求をすることなく、2年半以上過ぎてから請求したことを理由に、本件請求は禁反言の原則、信義則に違反する旨主張している。
しかしながら、Xは、Y社に正社員として入社した平成28年1月当時、自己が残業代の支払を受けることができる立場ではないと認識してはいたものの、就労する中で管理監督者としての権限を有していないという認識に至ったことから本件請求を行ったというのであるから、Xを管理監督者として扱うようY社を誘導したなどとは評価し難いし、入社後2年半以上過ぎてから請求したからといって、禁反言の原則や信義則に反するとはいい難い。また、Xは、平成30年8月頃に、正社員の増員についての打診があった際、採用は平成31年3月以降にするように希望を述べているが、これは、新規採用社員の入社時期が繁忙期に重ならないようにするためであるから、この点をもってXが自ら不当に労働時間を長くしているとはいえないし、Xの時間外労働を抑制する機会を失ったというのも、Y社が管理監督者に該当しない者を管理監督者として扱ったことによる帰結にすぎない。
したがって、XのY社に対する割増賃金請求が信義則に反するということはできない。

2 Y社が割増賃金を支払わなかったのは、Xが管理監督者に該当すると認識していたためであるところ、結果としては管理監督者に該当するとは認められないものの、XのY社内における肩書、労務管理権限及びその処遇に照らして、Xが管理監督者に該当すると認識したことには相応の理由があり、また、X自身、当初は割増賃金が支払われる立場ではないと認識していたことや、Y社は、管理監督者であっても支払義務のある深夜割増賃金については支払っており、労基法を軽視しているとはいえないことを踏まえると、Y社の割増賃金の不払は悪質なものとは評価できない。
したがって、本件において、Y社に付加金の支払を命ずるのは相当でない。

会社側の気持ちはよくわかります。

とんでもない金額ですしね・・。

とはいえ、管理監督者の有効要件の厳しさからすれば、そもそも管理監督者として扱うこと自体がとてもリスキーなのです(過去の裁判例を見ると、ほんの一部を除き、管理監督者性は否定されています。)。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。 

本の紹介2194 頭をよくするちょっとした「習慣術」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から20年以上前の本ですが、再度、読みかえしてみました。

読んでいてつくづく思うのは、やはりどこまでいっても、習慣が人生を決めているということです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

もう『おやじ』になっちゃったからとか、『おばさん』になっちゃったから、などと自分の加齢をマイナスに捉えて口にする人はいっぱいいる。そういう言い訳をすることによって、感情はよけいに老け込んでいく。『感情』というものも意識して使っていかないと老化する。この『感情の老化』が実はいちばん怖い。感情が老け込むと人間は、動かなくなる、考えなくなる、勉強しなくなるという状態に陥る。そうすると頭も悪くなるし、体も弱くなり、次から次へと悪いことが起こってくる。」(138頁)

「もう年だから」は、単なる言い訳です。

暑いから、寒いから、眠いから、だるいから、疲れるから、面倒だから、と全く同じです。

いつもやらないための言い訳探しばかり。

Age is just a number.

老けたとどうかは、年齢という数字が決めているのではなく、その人の感情・思考が決めているのです。

賃金295 名義借契約を理由に懲戒解雇となった保険営業員への退職金全部不支給が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう!

今日は、名義借契約を理由に懲戒解雇となった保険営業員への退職金全部不支給が無効とされた事案を見ていきましょう。

マニュライフ生命保険事件(東京地裁令和6年10月22日・労経速2579号3頁)

【事案の概要】

本件は、生命保険会社であるY社において保険営業の業務に従事していたXが、Y社に対し、①労働契約上の退職金に関する規定に基づき、退職金999万7000円+遅延損害金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、299万9100円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 生命保険契約における名義借契約は、①生命保険の基本的な原則の一つである給付反対給付均等の原則と相容れないものであること、②名義上の保険契約者と営業職員との間の紛争を誘発するものであり、こうした紛争は、営業職員が属する保険会社への社会的な信頼を棄損することにつながり、保険会社も当該紛争に事実上巻き込まれることになりかねないこと、③営業職員の真実の営業成績を偽るものであり、保険会社による人事評価の適正を著しく害するものであることから、「保険募集に関し著しく不適当な行為」(保険業法307条1項3号)に当たるものと解される。このように名義借契約は、悪質性の高い行為であることから、保険会社から監督官庁に対する届出が必要とされており、Y社も、本件生命保険契約に係る名義借契約について、関東財務局長に対して、不祥事件として届出をしている。加えて、名義借契約を含む保険募集に関する不適切な行為については、社会的にも厳しい評価がなされている。本件生命保険契約に係る名義借契約は、営業成績を偽ることを目的とした典型的な名義借契約であるということができ、相当に悪質なものというべきである。
Y社は、本件生命保険契約の締結手続がなされる前から、名義借契約を含む作成契約を行った場合には、解雇ないし懲戒解雇になる旨、Xを含む営業職員に対して説明しており、実際、名義借契約を行った職員に対しては、懲戒解雇としている。したがって、Xは、名義借契約を行えば懲戒解雇等の厳しい処分がなされることを想定できていたはずであり、それにもかかわらず本件生命保険契約に係る名義借契約に及んだことは、それ自体、非難に値するといえるし、本件懲戒解雇が、Y社による他の職員に対する処分との間で不均衡があるともいえない

2 Xの本件懲戒解雇に係る懲戒事由に当たる行為は、Xのそれまでの勤続の功を一定程度減殺する悪質性があるものといわざるを得ない。Y社は、監督官庁に本件生命保険契約に係る名義借契約について、不祥事件として届出をしており、Y社の社会的な信用を棄損する事態となっていることや、Xが、一旦は名義借契約を認める趣旨の言動をしておきながら、その後、それを一転させ、全面的に否定する態度に転じ、これにより、Y社をして、Xの不適切な行為に対する対応に、相応な負担を生じさせていることも、軽視することはできない。
他方、Xは、本件懲戒解雇以外にY社から懲戒処分を受けたことはなかったこと、本件における名義借契約は、本件生命保険契約に係る1件のみであることなどを考慮すると、Xのそれまでの勤続の功を全て抹消するほどの著しい背信行為があったとまではいうことはできない
そうすると、本件退職金不支給条項は、Xの退職金の7割を超えて不支給とする限りで無効であると解すべきであり、Xは、Xに支給されるべきであった退職金999万7000円の3割である299万9100円については、退職金請求権を失わない。

7割という数字自体は、どこかに計算式があるわけではなく、担当裁判官の匙加減です。

現場において、適切な減額割合を客観的に判断することはほとんど不可能であるため、事案の性質上、全額不支給とすることも多いと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介2193 必ず役立つ!!「〇〇の法則」事典(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

世の中には、いくつもの法則があります。

この本では、70の法則が紹介されており、読み物としてとてもおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

幸運は突然、天から降ってくるものではなく、心がけ次第である。決まった習慣を身につけさえすれば、つまり、自ら決めた考え方や行動で幸運を招くことができる」(140頁)

ワイズマンの法則というらしいです。

法則それ自体を知らなくても、なんとなくそんなものかなと、多くの人が思っていることだと思います。

要するに、幸運は、日頃から準備をしている人のところにやってくる、ということです。

単に神頼みをしているだけでなく、毎日、コツコツと努力を続ける必要があります。

言うは易く行うは難し。

やっている人は、言われなくてもやっている。

やらない人は、どれだけ言われてもやらない。

従業員に対する損害賠償請求18 競合会社に顧客を紹介等した従業員の行為につき債務不履行に基づく損害賠償責任が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、競合会社に顧客を紹介等した従業員の行為につき債務不履行に基づく損害賠償責任が認められた事案について見ていきましょう。

トラスト事件(東京地裁令和6年10月23日・労経速2579号28頁)

【事案の概要】

本件は、X社が、不動産の売買等の事業を行うX社のコンサルティング事業部の従業員であったYは、Y社の職務及び就業規則の定めに照らせば、X社と顧客との取引の成立に向けて誠実に職務を遂行すべきであったにもかかわらず、Y自身の利益やY社と同種同業で競合する会社の利益等を図る目的で、顧客を当該会社に紹介し、当該会社に利益を得させるとともに、紹介等に対する報酬として、当該会社より利益の一部を受け取るなどし、これらの一連の行為によりX社に損害を与えたとして、Yに対し、労働契約上の債務不履行に基づき、損害賠償金730万円及び+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Yは、X社に対し、310万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Yの職務内容に加え、X社の就業規則26条⑩は、社員は職務上の地位を利用し私的取引をなし、金品の借入または手数料、リベートその他金品の授受もしくはゴルフの接待など私的利益を得てはならない旨、同条⑪は、社員は会社に許可なく他の会社に籍を置いたり、自ら事業を営んだりしてはならない旨それぞれ定め、同規則37条が懲戒解雇事由として、「会社の許可を受けず、在籍のまま他の事業の経営に参加したりまたは労務に服し、若しくは事業を営むとき。」(⑥)、「職務上の地位を利用し、第三者から報酬を受け、若しくはもてなしをうける等、自己の利益を図ったとき。」(⑦)を挙げていることからすれば、Yは、X社との労働契約上の義務として、顧客から不動産の売却の相談を受けた際は、当該顧客とX社との間での取引の成立に向け、誠実に職務を遂行すべき義務を負っていたものと認められる。
そして、Yは、Aから本件マンションの売却の相談を受け、X社社内で情報の共有はしたものの、その後、Bの指示を受け、C社とAとの間で本件マンションの売却を成立させるよう行動しており、本件誠実義務に違反している。
また、Yの行動によりC社とAとの間で本件マンションの売買契約が成立していることから、Yが本件誠実義務を果たしていれば、X社とAとの間で本件マンションの売買契約が成立した蓋然性が認められる
したがって、Yは、X社に対し、本件誠実義務違反による債務不履行責任を負うものと認められる。

2 Yの尽力もあって、AとC社との間で本件マンションの売買契約が成立しているから、Yが本件誠実義務を果たしていれば、X社がAから、C社が買取りをした価額と同額の2450万円で本件マンションの買取りをすることができた蓋然性があるといえる。また、令和5年7月の時点で、本件マンションの時価相場は、5000万円程度であるから、C社が本件マンションを売却した令和3年6月から本件マンションが値上がり傾向にあることを踏まえても、X社が本件マンションを取得した場合、いずれC社が本件マンションを売却した価額と同額の3180万円では本件マンションを売却することができた蓋然性があると認められる。したがって、X社は、本件マンションに関する取引により、730万円の売却差額を取得した蓋然性があるといえる。
もっとも、C社は、Bに対し、本件マンションの不動産コンサルティング業務料の名目で、320万円を支払っており、また、X社代表者自身、取引に関与した不動産会社がある場合に報酬を支払ったことがある旨供述している。そうすると、YがX社とAとの間で本件マンションの売買契約を成立させた場合、Aは、元々Bの顧客であったことから、X社がBに報酬等を支払うことになった可能性は否定できない。そして、X社代表者は、X社が取引に関与した不動産会社等に対し、報酬等として、数十万円や物件価格の3%程度を支払うこともあった旨供述しているものの、前記のとおり、C社はBに対し、320万円を支払っていることから、X社とAとの間で本件マンションの売買契約が成立した場合に、X社がBに対し、報酬等として320万円を支払うことになった可能性を否定することはできない
なお、C社は、Yに対し、本件マンションの不動産コンサルティング業務料の名目で、300万円を支払っているものの、YはX社の社員であったから、X社とAとの間で本件マンションの売買契約が成立した場合、X社に当該費用が発生したものとは認められない。
また、X社は、C社が本件マンションを売却したのと同時期に本件マンションを売却したとまではいえず、本件マンションは賃貸中であったから、賃借人が退去するなどしてX社がリフォーム費用を要した可能性は否定できない上、X社が本件マンションの不動産取得税に加え、登記手続費用等を要した可能性も否定できない。したがって、X社が前記の費用に加え、100万円程度の費用を要した可能性は否定できない
以上によれば、Yの債務不履行によって、X社に310万円(=730万円-320万円-100万円)の逸失利益が発生したものと認めるのが相当である。

可能性、蓋然性という際どい判断ですが、このような事案では、責任論もさることながら、損害論での攻防が腕の見せ所です。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2192 人は見た目が9割#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう!

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

いいかどうかはさておき、多くの人が論理よりもなんとなくの直感で判断していることがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

見栄えと言葉、我々はどちらを信じればよいのか-。マルチ商法や新興宗教などで、ぼろ儲けをした人が逮捕されて、マスコミに顔が出てくる。その人のインチキ臭さは、顔や風体に如実に表れている。だがどの事件の場合でも、弁舌がたくみだったからつい信じてしまった、と被害者はいうのである。私は言葉より見栄えの方が、よりその人の本質を表していると考えている。」(14頁)

性格は顔に出て、生活は体に出ると言います。

私たちは、その人の人となりを、その人の全要素から判断します。

それこそ、意識的、無意識的を問わず、一挙手一投足を見て、その人のことを判断しているのです。

騙されやすい人とそうでない人の差は、その判断の巧拙から来るのかもしれません。

ベースが性善説の方と性悪説の方でも異なりますね。