Daily Archives: 2025年10月8日

解雇425 不法な金銭の領得行為の金額が少額であっても、普通解雇の有効性を肯定した事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、不法な金銭の領得行為の金額が少額であっても、普通解雇の有効性を肯定した事案について見ていきましょう。

美容室A事件(東京地裁令和6年10月15日・労経速2580号24頁)

【事案の概要】

本訴は、Y社との間で労働契約を締結してY社の運営する美容室で美容師として稼働していたXが、Xによる売上金の領得行為を理由とするY社による普通解雇の意思表示が無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、民法536条2項に基づき、解雇日である令和3年10月8日から同月31日までの賃金13万9354円及び同年12月から本判決確定の日まで毎月10日限り18万円の賃金の支払を求める事案である。

反訴は、Y社が、XがY社の運営する美容室において継続的に売上金を不法に領得していたと主張して、Xに対し、不法行為に基づく損害賠償として、260万0400円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Xの本訴請求をいずれも棄却する。
2 Xは、Y社に対し、2200円+遅延損害金を支払え。

【裁判所の判断】

1 原告が顧客に対し、顧客から受領した額と代金額との差額の全額を釣銭として交付しており、認定事実(12)については、原告が顧客から代金額と同額を受領しており、いずれにおいても、顧客から本件美容室における代金額を上回る金額の交付を受けていない。そうすると、認定事実(4)、(8)、(9)及び(12)の機会において、原告がレジから五百円硬貨を取得する行為は、顧客から前記アのような態様で釣銭の一部等をチップとして受領する機会があることに乗じて、本件美容室の売上金を不法に領得したものと認めるほかない

2 原告は、4回にわたって本件美容室の売上金を不法に領得したものであるところ、その金額は合計2000円と少額であるものの、従業員を雇用して営利事業を営む者において、当該事業による売上金をレジから複数回にわたって不法に領得した者を雇用し続けることは不可能であって、原告の上記行為は、労働者と使用者の間の信頼関係を破壊するものというほかない。そして、原告が売上金を不法に領得したことを認めておらず、被害弁償をしていないことも併せ考慮すると、本件解雇について、客観的に合理的な理由を欠くとも、社会通念上相当であると認められないともいうことはできず、権利の濫用に当たるとはいえないから、本件解雇は有効というべきである。

原告が不法領得を認め、反省及び謝罪をし、被害弁償をしていたら、結論は変わったでしょうか。

犯罪については、被害額の多寡のみで判断せず、回数や犯行後の態度等も考慮要素となることを押さえていきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。