解雇426 普通解雇事由の「労働能率が劣悪であるか、または勤務成績不良であると認めたとき」に該当し、普通解雇を有効とした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、普通解雇事由の「労働能率が劣悪であるか、または勤務成績不良であると認めたとき」に該当し、普通解雇を有効とした事案を見ていきましょう。

東武ビルマネジメント事件(東京地裁令和6年12月20日・労経速2584号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結して建物の設備管理等の業務に従事していたXが、Y社に対し、Y社による普通解雇は無効であると主張して、〈1〉労働契約上の地位確認を求め、〈2〉解雇後の賃金として令和5年1月分の賃金2万2582円及び同年2月分から判決確定日まで賃金月額20万9890円並びにこれらに対する遅延損害金(賃金の支払期日の翌日から支払済みまで、民法所定の年3分の割合による。)の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 項目7、15、18は、XがY社からの電話連絡に応答しなかったものであり、項目19は、Xが懲戒処分書を交付するための待機指示に従わなかったものであるが、いずれも勤務時間外の指示であって、Xがこれらに従うべき義務があるとはいえないから、いずれも解雇理由とされるべき事実とはいえない。
項目14は、Xのルーフドレン清掃に十分とはいえない点があったとしても、清掃前と清掃後の写真を比較すると落ち葉の量は明らかに減っており、Xが側溝の清掃作業自体を怠ったとは認められないこと、XがY社から指導を受けたのは3回にとどまることからすれば、解雇理由とされるほどの事実であるとはいえない。
その他、指示に反して施設内を通過したこと(項目1)、施設内の鍵の閉め忘れ(項目2)、無断欠勤(項目7及び15)は、いずれも同種の事実が頻発していたとは認められず、清掃をしていない場所について清掃をしたと回答したこと(項目20)は、Xの思い違いによる可能性も否定できず、いずれも解雇理由とされるほどの事実であるとはいえない。

2 他方で、Xは、本件管理所に異動してから間もなく、ブレーカートリップの故障対応を命じられながら何もせず、Y社にはあたかも対応済みであるかのような報告をし(項目3)、その後も、オートドレンの触診による固着確認を横着して実施せず、これに起因して施設に漏水事故を生じさせ(項目6)、さらにその後、メモリハイコーダに一見して確認できる異常表示が生じていたにもかかわらず、異常なしとの報告をし(項目8)、その後も、施設の蛍光灯のソケ社ト部を損壊し、しかもその事実をY社に報告しなかった(項目9)。このようにXは、過誤にとどまらない、業務の不実施、報告の不実施又は虚偽報告を繰り返しており、いずれも委託者である施設に損害を生じさせる、又は施設のY社に対する信用を低下させる行為である。こうした事情は、指示に従って設備を正確に点検するという、設備員としての基本的な役割を果たす能力及び適正の著しい欠如を推認させるものである。
 また、施設で勤務する他社の従業員からは、Xの対応や応答に問題があるとの指摘がされ、業務から外すことの要請も受けている(項目4、10)。Y社が挨拶について繰り返し指導していたことと相まって、他の職員との間で的確に意思疎通をする能力の不足を推認させるものである。
そして、Y社はXについて、主に軽作業を実施させつつ、業務内容を日々確認することとしたが、それでもXは、作業日誌を責任者に提出して了解を得るよう指示を受けながら、了解を得ずに退勤し(項目12)、整理整頓作業に際し明確な作業内容の指示を受けながら、合理的理由なく指示と異なる整理をし(項目13)、令和3年11月に厳重注意を受けた後も、エレベーターで待機しての案内業務に際し待機中に眠り込んで案内業務ができず(項目16)、使用禁止とされている施設の設備を使用し(項目17)、排水先を図面で確認するよう指示を受けながら図面での確認をせず(項目21)、フェンスの内側からの確認指示を受けながら不十分な装備でフェンスの外側に行く(項目22)というように、これらが単なる注意力不足に起因するのかは不明であるが、本件監督所での勤務期間を通じて、Y社の指示に従った行動を取ることができていない。これらの事情は、重大とまではいえない事情も含むものの、総合的に観察すれば、今後の指導や注意によっても、前記で認定した問題点の改善が困難であることを推認させるものである。
以上検討したところによれば、Xの設備員としての能力及び適性は著しく欠如しており、今後の改善も期待できない。よって、Xは、就業規則15条1項の「労働能率が劣悪であるか、または勤務成績不良であると認めたとき」に該当するから、本件解雇には客観的合理的理由があるというべきである。

勤務成績不良、能力不足を理由とする普通解雇がいかに大変かがよくわかりますね。

忍耐力がないとできません。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。