Monthly Archives: 11月 2025

本の紹介2207 借金2000万円を抱えた僕にドSの宇宙さんが教えてくれた超うまくいく口ぐせ#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

日頃の「口ぐせ」がいかに大切であるかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

口ぐせで、そいつが何を心から信じているのか、一発でわかる。」(34頁)

典型例は、「どうせ無理」か「どうせできる」の違いです。

負け癖がついていて、すぐにあきらめてしまうのが前者。

勝ち癖がついていて、すぐにはあきらめないのが後者。

類は友を呼びますから、両者が交わることは、通常、ありません。

解雇428 経歴詐称等を理由とする解雇が認められた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、経歴詐称等を理由とする解雇が認められた事案を見ていきましょう。

Aston Martin Japan事件(東京地裁令和6年11月27日・労判ジャーナル159号48頁)

【事案の概要】

本件は、イギリスに本社を置く自動車メーカーの日本法人であるY社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した元従業員Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払賃金等の支払、Y社がした解雇は無効であり、不法行為に当たるとして、これによる精神的苦痛に相当する200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

損害賠償請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件解雇の理由として、Xが、〔1)英国籍であるにもかかわらず日本国籍であると偽ったこと、〔2〕前職における年間給与総額が約600万円にすぎないのに約700万円であると述べたこと、〔3〕経歴書に前職における地位(役職)が「デジタルプロジェクトマネージャー」であると記載したこと、〔4〕前職において秘密情報の持出しを行ったにもかかわらず、その事実を否認する本件誓約書を提出したことを主張するが、いずれも就業規則所定の解雇事由に該当すると評価することはできないか、仮に該当すると評価するとしても、これらをもって直ちに解雇につながる事由であるとはいえないから、本件解雇は客観的に合理的な理由があるということはできず、また、Y社がXを即日解雇とした時点においては、Xの経歴詐称や前職における情報の持出しを疑っていたにすぎない段階であり、Xに対してY社のかかる疑念を明示的に説明した上でその言い分を聴取するなどの手続も経ていないことや、Y社による書類の追加提出の求めに対し、その対応に不誠実な点があったとは認められないこと等を踏まえると、本件解雇が社会通念上相当であると認めることはできない。

2 Xは、本件解雇及び本件予備的解雇は不法行為であり、これにより精神的苦痛を受けたと主張するが、本件解雇及び本件予備的解雇は無効であるものの、解雇手続が別途Xに対する不法行為となるほどの違法性があるとは認められず、またXには賃金請求が認められることからすると、Xにおいてさらに填補すべき損害があるとは認めることができないから、Xの損害賠償請求は理由がない。

解雇に至る手続の履践が不十分であったことが敗因の1つとされています。

解雇をする際は、事前に顧問弁護士に相談をするようにしましょう。

本の紹介2206 NASAより宇宙に近い町工場#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

読んでいて、とても懐かしかったです。

0から1を生み出すことの大変さがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自信のない人間は、他の人間の自信を奪います。自信を少し持つだけで、他人の自信を奪わなくなります。優しくなってしまうんです。」(184頁)

自分に自信がない人の特徴は、自分を大きく見せようとすることです。

あの人と知り合いだと言ってみたり、車や時計を見せびらかしたり(笑)

周囲の「うわ~、すごいですね!」を真に受けて悦に浸っている場合ではありません。

そんなこと誰も思っていませんので。

本当にすごい人は、何もしなくても、何も言わなくても、すごさがにじみ出てしまうものです。

同様に、偉ぶれば偉ぶるほど、その人の自信のなさがにじみ出てしまうのです。

解雇427 パソコンの私的利用等を理由とした解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、パソコンの私的利用等を理由とした解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

明和住販流通センター事件(東京地裁令和6年3月21日・労判1330号39頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結し従業員として勤務していたXが、Y社から令和4年8月30日付けで懲戒処分として降給降格されたこと、同年9月27日付けで普通解雇されたことについて、いずれも無効である旨主張して、Y社に対し、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉本件降給降格処分前のクラス及び賃金を受ける地位にあることの確認、〈3〉平成29年法律第44号による改正前の民法536条2項に基づき本件解雇以降の賃金として令和4年11月以降月額33万4640円(本件降給降格処分前の時短調整後の金額。ただし、解雇予告手当37万8110円及び令和4年10月支払分の7万0160円を賃金として同月分及び同年11月分に充当してその残額を請求)及び同年12月及び同年7月の賞与各33万4640円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

1 Xが、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、令和4年12月25日限り20万6530円及び令和5年1月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、月額29万2320円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、Xが令和4年6月から8月までの間に、毎月300時間から600時間程度業務に関係なく私的にパソコンを使用していた旨主張し、証拠によって裏付けられる旨主張する。
しかしながら、上記主張は、Xが所定労働時間の数倍に及ぶ時間についてパソコンを私的に閲覧していたというものであり、現実的にあり得ない荒唐無稽な主張である。また、上記証拠については、その時間数からしても、パソコンで画面を表示した時間数が表示され、同時に表示している場合は重複した時間数が計上されているものと推認できる上、Y社が主張するものが真に業務に関係ない画面であるか否かも判然としない。したがって、上記証拠をY社が主張する上記事実を認定するための証拠として採用することはできず、他にY社主張の上記事実を認めるに足りる証拠はない。
また、仮に、Xが業務に関係ないことをしていたのであれば、Y社としては、注意指導をしてこれを改善させるべきであるところ、こうした事実を認めるに足りる証拠はないし、Xの担当業務が著しく滞っていたといった事実を認めるに足りる証拠もない。

2 Y社は、Xが他の従業員とトラブルを起こすことや病気療養中のRクラスであることから、Xに対し入力作業等の単純作業を行うことを指示せざるを得ない状況であった旨、居眠りが多かった旨主張する。
しかしながら、そもそも、証拠によれば、Xは、Y社から、常に中位であるB以上の評価を受けていたことが認められるから、解雇事由に該当するような職務能力の欠如があったと認めることはできない。また、Xと他の従業員との関係については、解雇事由に該当するようなものとはいえないし、病気療養中であることについては、Rクラスに位置づけられ賃金等の面でもそれ相応のものになっていたわけであるから、Rクラスであることを職務能力の欠如を表す事情として主張することは暴論である。さらに、居眠りについては、投薬の影響であることや徐々になくなってきていたことが認められるし、Xの居眠りによって業務に重大な支障が生じていたことを認めるに足りる証拠もない。

上記判例のポイント1のような主張立証では、争う前から結論は見えています。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。

本の紹介2205 会社の目的は利益じゃない#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から11年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

サブタイトルは、「誰もやらない『いちばん大切なことを大切にする経営』とは」です。

大切なことが何であるかを日々、強く意識することが大切ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『人のせいにしない』ということは、たいへんむずかしいことなのかもしれません。多くの人が、なんでもかんでも人のせいにして、問題を自分のこととして受け止めようとしません。・・・すべて人のせいにしていると、自分が変わっていくことができません。ということは、成長も進歩も、なくなってしまうのです。」(154頁)

思考はその人の癖・習慣によるため、簡単には直りません。

他責の人の多くは、生涯、自身の不幸を誰かのせいにして生きていくのでしょう。

今の自分が不甲斐ないのは、国、政治、社会、会社、親、上司、制度、時代のせいなのでしょう。

本当は、日々の自分の選択の結果なのに。

労働時間116 割増賃金請求と管理されていない労働時間算定(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、割増賃金請求と管理されていない労働時間算定に関する裁判例を見ていきましょう。

T4U事件(東京地裁令和6年3月28日・労判1331号87頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、以下の請求をする事案である。
(1)Y社代表取締役は時間外勤務手当を支払う意思がなかったにもかかわらず、Xに対し、時間外労働を命じ長時間労働をさせたが時間外勤務手当を支払わず、時間外勤務手当相当額の損害を加えたとして、会社法350条に基づく損害賠償請求及びこれに対する遅延損害金の請求として、割増賃金請求権としては時効消滅した平成27年12月11日から平成29年1月10日の間の割増賃金相当損害金+遅延損害金
(2)Xが時間外労働をしたにもかかわらず割増賃金が支払われなかったとして、労働契約に基づく割増賃金及びこれに対する遅延損害金の請求として
ア 平成29年1月11日から平成30年11月23日までの間の割増賃金+確定遅延損害金の合計953万0389円+遅延損害金
イ 平成30年11月24日から同年12月10日までの間の割増賃金+確定遅延損害金の合計45万8340円+遅延損害金
(3)労基法114条に基づく付加金請求及びこれに対する遅延損害金請求として

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、別紙1認容目録の「認容額」欄及び各「組入れ額」欄記載の各金員+遅延損害金を支払え。
2 Y社は、Xに対し、156万5223円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 XとY社との間の雇用契約書には、「残業代を含む」と記載されているのみである。Y社の就業規則39条4号には、「月間40時間が契約上の勤務時間に含まれるとみなしている」とあるものの、記載からしてその趣旨が明確であるとはいえない。また、年俸制なので残業代は不支給(年俸制規定12条)とされていることなども併せ考えると、基本年俸の中に月当たり40時間分の固定残業代が支払われていると認めることはできない。そうすると、就業規則や上記雇用契約書においてXの賃金における割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかったというべきであり、本件全証拠によっても、Xに支払われた年俸について通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができるとは認められない。
これに対しY社は、社内ルールでは退社時間は遅くとも午後9時までとされており、これが上記雇用契約書における「残業代を含む」の内容を示しているとして、本件労働契約に基づき月額支給する金額の中には午後6時30分から午後9時(休憩時間30分含む。)までの1日2時間、月40時間分が固定残業代として含まれていた旨主張する。
しかしながら、そもそも社内ルールは就業規則ではない。この点を措くとしても、「退社時間は遅くともPM9時まで」とする旨の記載も、その趣旨が不明確である上、社内ルールに「PM9:00を超える作業実施は人事評価(給与査定)での評価が下がる要因となります」とされていることからすれば、午後9時までの退社は人事評価の観点からの趣旨であるとも解し得、また、休憩時間30分についてはなんらの言及もないことからすれば、午後6時30分から午後9時までの間、休憩時間30分を除いて1日2時間、月40時間分が固定残業代として含まれていたと解することはできない。よって、Y社の主張は採用できない。

2 Xは、〈1〉請求の趣旨第1項及び第2項について、令和4年4月23日までの間に発生した遅延損害金を複数回に分けて順次元本に組み入れる旨、〈2〉請求の趣旨第4項について、令和4年4月23日までの間に発生した遅延損害金について元本に組み入れる旨の意思表示をしたとして、上記各意思表示で組み入れるとした期間に対応する遅延損害金を元本に組み入れた後、組入れ額も含めた元本についてさらに年14.6%の遅延損害金が発生しているとした上で算出した割増賃金元本及び遅延損害金を請求している。
民法405条はいわゆる法定重利を認めた規定であるが、同条は遅延損害金についても準用されると解される(大審院昭和17年2月4日判決・民集21巻3号107頁参照。)。
そして、Xは訴状において平成29年1月11日から平成30年12月10日までの間の割増賃金(ただし、実際に算出しているのは平成30年11月23日まで。)及びこれに対する各支払日の翌日から平成30年12月31日までの改正前商法所定の商事法定利率年6%と平成31年1月1日から支払済みまで賃確法所定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求めているところ、これはかかる金員の支払の催告に当たり、本件訴訟の係属中は同催告が継続していたものと解するのが相当である。
なお、Xは、組み入れられた金員に対しても年14.6%の割合による遅延損害金を請求し、これにより発生した遅延損害金をさらに組み入れ、それに対しても年14.6%の遅延損害金を請求する旨主張する。しかしながら、組入れにより組み入れられた金員は、もともと賃金ではなく、組入れによって賃金としての性質を有することになるものでもなく、単に重利の対象となったにすぎないから、これについて賃確法6条1項、同法律施行令1条を適用することはできず、これに対する遅延損害金の利率は民法の法定利率年3%によるのが相当である。

この事案でも、固定残業制度が無効と判断されています。

有効要件を満たすことはそれほど難しくありませんので、しっかりと準備をしておけば防げる紛争類型です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。